ヤブカラシとは?
ヤブガラシの特徴・生態
ヤブガラシ(藪枯、Cayratia japonica)は、ブドウ科ヤブガラシ属の植物で、つるを伸ばすつる植物です。熱帯アジアから東アジアにかけて自生し,日本では北海道の南側から本州、四国、九州にかけて広く分布します。薮を覆って枯らしてしまうほど繁殖することからヤブガラシという名が付けられたと言われています。写真のように、葉は5枚から成る複葉です。
科 | ブドウ科 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 北海道(西南部)以南 |
学名 | Cayratia japonica (Thunb.) Gagn. |
別名 | ヤブガラシ,ビンボウカズラ |
つる性の夏生多年生草本で、おもに地下部で栄養繁殖します。地下のクリーピングルート系が旺盛に伸び,地表のあちこちから発芽、萌芽します。他の植物や果樹などに絡み、巻きついて繁茂し,枯死させてしまうこともあります。
根は成長するとゴボウのように太くなり、地中で旺盛に広がります。このため、地上部だけ除草しても地下部にダメージを与えにくく、種子繁殖する場合も地下部で旺盛にはびこるため、きわめて防除しにくい雑草です。関東では7~9月,南西諸島では5~1月ころに花を咲かせ(開花)、地上部は冬期に枯死するものの、地下部で自生、越冬し、地下茎から繁殖します。
発生しやすい条件
日本では林、緑道、畑地、茶園,樹園地などの圃場,生垣、空き地など,広い範囲に生育します。有機質の豊富な,肥沃な土壌の部分に発生しやすい雑草です。果樹園では樹木の株元に多く目立ちます。いったんヤブカラシが侵入・定着すると防除が難しく,雑草害を受けやすいのが特徴です。上面までつるが伸び,全面的に被覆して栽培している農作物に大きな被害を及ぼすことがあります。
ヤブガラシの除草方法
ヤブガラシは根が繁茂する多年生雑草なので、地上部を草刈り、除草しても本質的な解決にはなりません。長期に及ぶ防除が必要になってきます。
基本的には、地下から新芽が出てきたら早めに抜き取ります。根は全てを除去するのは難しいですが、なるべく先まで掘り取り、残根は丁寧に除去するようにしましょう。中耕などを行うと逆に根を切断して繁殖を促してしまうのでやらないようにしてください。
既にヤブガラシがある程度繁殖している場合は、根に栄養を蓄えさせるのを防ぐために、梅雨明けに伸長した茎を草刈り機(刈払機)などで刈りましょう。夏場に茎、葉を茂らせて光合成を盛んに行い栄養分を地下部に溜め込むので、伸長したら刈るを1シーズン、梅雨明けから9月上旬にかけて3回くらい刈り取れるとベストです。こうすることでヤブガラシは地下部に栄養を溜め込むことができなくなります。
草刈りのための農機具、農具、草刈機(刈払機)、ブレード(チップソーなど)、資材については、こちらをご参考ください。
その後、9月上旬〜中旬に、下記で紹介する葉茎処理剤を散布しましょう。
その後、春、生育初期の気温が高くならないうちに下記で紹介する土壌処理剤を撒くことで、芽が出ることや、生長をしっかり抑えていきます。
ヤブガラシにおすすめの葉茎処理剤
ヤブガラシは、地下部の根、地下茎を枯らす必要があるので、地下部まで浸透して枯らすことができるラウンドアップ やサンフーロンなどのグリホサート系の葉茎処理剤タイプの除草剤を散布するのがおすすめです。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV9 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
さとうきび畑や菜園など、グリホサート系などの非選択性の薬剤の全面散布が出来ない環境の場合は、他の植物に当たらないようにピンポイントで散布するか、おすすめなのは除草剤を高濃度に希釈した液剤をヤブカラシに直接塗る方法です。しっかり塗って、確実に駆除しましょう。
ヤブガラシにおすすめの土壌処理剤
生育初期の気温が高くならないうちにDBN剤カソロンを散布するのは非常に効果的です。
カソロンとは、DBNを主成分とする土壌処理剤で、DBN(2,6-ジクロロベンゾニトリル (別名: ジクロベニル)(PRTR・1種))とは、非ホルモン系の除草剤で,根部や生長点から吸収される移行型です。細胞分裂を阻害することで枯れさせる効果があります。
最大の特徴はギシギシ、ヨモギ、スギナ、ヤブガラシなど、非常に厄介な難防除雑草に効果を示す点と、60~90日間と長期間効果が持続することです。春期の発生始めに散布するようにしましょう。
粒剤2.5 | 粒剤4.5 | 粒剤6.7 |
農耕地、圃場以外で使用する場合は、クサノンなども使えます。除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのかは、下記を参考ください。
除草剤の効果をパワーアップさせる方法
市販の除草剤を一度散布しても地下茎を完全に枯らすことはできません。地下茎雑草は思っている以上に生命力が強いものです。除草剤の効果を上げるために以下のような方法も取り入れてみましょう。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしても、スギナ、スベリヒユ、シロツメクサ、チドメグサ、セイタカアワダチソウ、ツユクサなどの難雑草がしっかり枯れるので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
サーファクタントのような展着剤を混ぜる
展着剤を混ぜることで雑草への除草剤の浸透を高めることができます。また、アジュバントと呼ばれる機能性展着剤は単に雑草への浸透を高めるだけでなく、速効性・難防除雑草処理・耐雨性の向上など、プラスαの効果があります。
除草剤と展着剤との組み合わせについて詳しく知りたい方は下記を参考にしてみてください。
防草シートで防ぐ
しっかりと草刈り、除草剤の散布をおこなった後、その場所に防草シートを貼ることが可能であれば、防草シートを貼ることは、非常にに有効な防除になります。防草シート(除草シート)は、光をほぼ遮光することで、植物に光合成を行えないように抑制するもので大変有効です。
防草シートについては、下記のコンテンツに詳しく説明していますので、防草シートを貼ることが可能な方は、是非参考にしてください。
まとめ
ヤブガラシは農家の方にとって、放置するとたちまち繁茂し、果樹や農作物に絡み付く、撲滅が非常に難しい指折りの難雑草です。庭でも、庭木・花木に絡み付いて枯らしたりしてしまいます。本記事が防除の一助になれば幸いです。
また、つる性の雑草は、その他クズ、ガガイモ、ヤブツルアズキ、ヘクソカズラ、アサガオ、ヒルガオ、ノウゼンカズラ、ヤマノイモ、カラスウリと色々ありますが、長期間土中で生育するものも多く、駆除、退治が困難な、やっかいな雑草ばかりです。
まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、生育したものに対しては、直接葉茎処理剤を散布、茎に塗る方法で繰り返し枯らし、駆除をしていくことが基本になります。早め早めの対策を心がけましょう。