麦の生育や品質に影響を及ぼす雑草の防除は生産農家にとって重要です。この記事では、麦栽培に適用のあるおすすめの除草剤や、効果的な使い方についてわかりやすく説明します。
除草剤の種類と麦類栽培での効果的な使い方
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前や生育初期に土に散布して、雑草の発芽を阻害したり枯死させたりする「土壌処理剤」と、成長してきた雑草の葉や茎に散布する「茎葉処理剤」があります。
雑草の防除は、土壌処理剤を使って播種前に、雑草を生やさないのが基本ですが、栽培期間の長い麦は、体系的に雑草対策をする必要があります。
- 手順1耕起前
すでに雑草が生えている場所には、非選択性の茎葉処理剤でしっかり除草する
- 手順2播種直後
播種(種まき)から出芽までの間に、土壌処理剤を使って雑草の発生を抑制
- 手順3麦の生育期
土壌処理剤で抑制できず、成長してきた雑草には茎葉処理剤を使って、雑草を駆除する。選択制の除草剤が全面散布できるので効率的です。
麦類の耕起前におすすめの茎葉処理剤
麦は生育期の除草剤に効果にムラがあったり抵抗性のある雑草も増えているため、事前にしっかりと雑草が生えないように防除しておく必要があります。耕起(こうき)や土壌処理剤では駆除できないものもあります。
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全 な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、土壌に根を張っている雑草にも効果的です。麦畑で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布時期は、耕起の1週間前までに散布するのがおすすめです。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
麦類使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~ 20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。散布の際には、しっかり薬液を雑草の茎葉にかける必要があります。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤がありますが、小麦・大麦に使えるのはバスタ液剤のみです。
商品名 | バスタ液剤 |
---|---|
概要 | |
販売元 | BASFジャパン(株) |
有効成分 | グルホシネート |
麦類使用 | ○ |
この他、接触型の除草としては、プリグロックスも麦には使えます。農薬登録上の毒物に該当しますので扱いには十分な注意が必要です。
麦の播種直後におすすめの土壌処理剤
ボクサー乳剤
有効成分 プロスルホカルブ 78.4%
ボクサー乳剤は、雑草発生前に散布して使う畑作用土壌処理除草剤です。1成分ながらイネ科から広葉までカバーする選択性除草剤です。幼芽部、根部、初生葉からそれぞれ吸収されることで安定した効果を発揮します。土壌中での移行性が小さいため、安定した処理層を形成します。性状は、淡黄色澄明可乳化油状液体です。抵抗性雑草のスズメノテッポウにも効果があり、ノミノフスマに効果が劣ります。
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤
有効成分 トリフルラリン44.5%(乳剤)、トリフルラリン2.5%(粒剤)
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤は、トリフルラリンを成分とするジニトロアニリン系の除草剤で、発芽時の雑草の成長分裂を阻害することで、雑草を抑える土壌処理剤です。イネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ、ノビエ、イヌビエ、スズメノテッポウなど)に優れた効果を発揮し、スベリヒユ、ハコベにも効きます。ネズミムギやカラスムギにも効果があります。
トレファノサイドは、古くから麦の栽培につかわれてきたため、地域により、抵抗性のあるスズメノテッポウが発生しています。その場合は、成分の異なる除草剤を使いましょう。
リベレーターフロアブル
有効成分 ジフルフェニカン 0.2%, フルフェナセット 0.6%
リベレーターは、麦用除草剤で、種後から麦3葉期までと幅広い期間散布できます。スズメノテッポウなどの抵抗性のある一年生イネ科雑草のも効果があるフルフェナセットと、一年生広葉雑草に効果のある ジフルフェニカンの2つの成分が配合されています。
スルホニルウレア系およびジニトロアニリン系の除草剤に抵抗性のある雑草にも効果が高いので、それらの抵抗性雑草が生えている圃場におすすめです。粒剤もあります。
土壌処理剤の使い方
麦の防除には土壌処理剤が基本です。効果や薬害を生じないためにもラベルや注意書きを読むことは重要です。基本的な使い方を説明します。土壌処理剤は、播種直後(種まき後すぐに)全面に土壌散布します。ラベルに決められた薬量を守って散布します。乳剤は希釈して使います。
- 雑草発生前に散布すること。すでに生えている雑草には効果がありません
- 砕土、整地はていねいに行い、土壌表面をなるべく均等に平にすることで薬害を防ぎ、防草効果が高くなります。
- 播種後は、しっかり覆土をして鎮圧し水やりをした後、表面が乾いたら除草剤を散布します。
- 噴霧器(散布機)を使って散布しましょう。ジョウロでの全面散布は薬量を超える可能性があります。
- 使い方は除草剤によって異なります。しっかりラベルを読んで使いましょう。
麦類の生育期におすすめの茎葉処理剤
。除草剤によって効果のある雑草が異なりますので、それぞれ圃場に合わせて選んで使いましょう。
ハーモニーDF
有効成分 チフェンスルフロンメチル 75.0%
ハーモニーDFは、チフェンスルフロンメチルを成分とする、スルホニルウレア系の選択制の葉茎処理剤です。一年生広葉雑草やスズメノテッポウに効果があり低薬量で効果が出る薬剤です。イネ科には効果が劣るため、土壌処理剤でしっかり防除しておく必要があります。
地域により、抵抗性のあるスズメノテッポウが発生しています。その場合には、異なる系統の除草剤を使い、抵抗性スズメノテッポウに有効な土壌処理剤を使って防除しておく必要があります。
エコパートフロアブル
有効成分 ピラフルフェンエチル…2.0%
エコパートフロアブルは、一年生広葉雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤です。一年生広葉雑草の2葉期~4葉期まで散布することで、高い除草効果を示します。速効性があり低温時でも同様です。イネ科雑草には効果がありません。イネ科雑草が発生している圃場では、土壌処理剤でしっかり防除しておく必要があります。
MCPソーダ塩
有効成分 MCPAナトリウム塩 19.50%
MCPソーダ塩は、水稲や麦、芝などに使われる一年生及び多年生広葉雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤です。ホルモン型で吸収移行性を持っています。カラスノエンドウが発生している圃場では1葉~4葉までに散布すると効果的です。イネ科には効果がありません。イネ科雑草が発生している圃場では、土壌処理剤でしっかり防除しておく必要があります。
麦栽培で発生する雑草の種類
麦を栽培する圃場では、その地域により異なりますが、麦の生育期に散布できるイネ科雑草に効果のある茎葉処理剤には登録ががない、土壌処理剤での効果が不十分である雑草があります。特に問題となる雑草には、イネ科のカラスムギ、ネズミムギ(イタリアングラス)、スズメノテッポウやマメ科のカラスノエンドウなどがあげられます。
これらが発生している圃場は、初期防除はもちろんのこと、それぞれの雑草に合わせて雑草の発生時期に合わせた対応が大切です。
その他麦に適用がある除草剤
この他、麦類に適用がある除草剤は、「農家web農薬検索サービス」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、さといもに使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。
麦類の栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
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