炭疽病(炭そ病)はイチゴやスイカでよく聞く、非常にメジャーで厄介な病気です。育苗期に発生が多く、感染すると最終的には枯死に至るため被害が大きい病気です。
ここでは、炭疽病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。
スイカの炭疽病防除のポイント
炭疽病は薬剤による科学的防除だけでは防ぐのに不十分な、非常に厄介な病害です。農薬による化学的防除だけでなく、耕種的防除や物理的防除を上手く組み合わせて、予防していくことが重要です。
スイカに使える、炭疽病に効果がある農薬
炭疽病は一旦発生してしまうと、ほとんどが枯死するため、治療するのは大変困難です。このため、予防することが非常に大事になってきます。
予防が大事であることを踏まえた上で、下記の薬剤を有効に利用してください。
ボルドー、ICボルドー(銅水和剤)
有効成分の銅剤(ボルドー)は古くから幅広い野菜や果樹の病害防除に効果を発揮する汎用性殺菌剤として使え、幅広い病害に効果を発揮します。
トップジンM水和剤(FRAC 1)
トップジンM水和剤は速攻性と残効性を有し、優れた効果が長続きする、広範囲の作物の病害に基幹防除剤として使用できる殺菌剤です。低濃度で高い効果があり、作物の汚れが少なく、定期的な予防散布に、激発時のまん延防止に優れた効果を発揮します。
シグナムWDG
シグナムWDGは、互いに作用機作の異なる薬剤成分(ボスカリド、ピラクロストロビン)が配合されており、より幅広い病害に対応するように作られた野菜用殺菌剤です。 炭疽病(炭そ病)のほか、うどんこ病、つる枯れ病、すすかび病など幅広い病害に優れた効果を示します。 性状は、褐色水和性細粒及び微粒です。
ジマンダイセン水和剤
ジマンダイセンは、主成分マンゼブの分解物であるイソチオシアネートが、菌の生合成に必要な酵素類の不活化,ATP形成阻害,SH基の不活化などに作用し,菌体の酵素取込みやCO2放出を阻止したり原形質活動を阻害し、幅広い病害虫から作物を守る殺菌殺虫剤です。 性状は淡黄色水和性粉末です。
この他、ダコニール、ベンレート水和剤、セイビアー、アミスター、チオノック、ストロビー、デランフロアブル、フェリオゴールド、ファンベル、ベジセイバー、ベルクート、オーソサイド、キノンドーなどがあります。
作物や病害で詳細に適用農薬を検索したい方は、是非、下記を使ってみてください。
薬害等を出さないように製品ラベルをよく読んで使用しましょう。上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
化学的防除以外の防除方法
残渣を除去する
炭疽病菌は前年に発病した株の中で越冬し、翌年に他株に伝染するため、残渣を除去することは何よりも大事です。
被害が出た株、落葉等の残渣は袋に入れて熱によって死滅させるようにしましょう。また、土壌中の残渣も殲滅するために土壌処理剤を有効に活用してください。
雨滴伝搬を少なくする
炭疽病の病原菌は、雨滴伝搬による胞子飛散で広がって多発します。このため、できる限り灌水時間を短くすることは有効です。例えば、点滴冠水を利用する、葉面の遅い時間の多湿状態を避けるために、灌水を午前中に済ませる、といった対応は有効です。
苦土石灰の散布
苦土石灰を苗や葉に適量振りかけることで、炭疽病、軟腐病、褐班病、べと病、葉かび病の発病を予防する効果があるとして、防除に利用している農家の方がいらっしゃいます。
炭疽病とはどんな病気?
炭疽病とは?
植物炭疽病菌は、 Glomerella 属(有性時代)あるいは Colletotrichum 属(無性時代)に所属する子のう菌系の糸状菌(Colletotrichum acutatum)であり,様々な植物に「炭疽病」を引き起こします。
これら炭疽病の病原菌は、あらゆる部位に感染、発病し、進展するとほとんどが萎凋・枯死してしまうため、非常に被害が甚大です。特にイチゴでは最も厄介な病害の一つと言っても過言ではないでしょう。
炭疽病の伝染方法
低温期には発病はしないで、潜在感染するため、感染している株が健全な株と見た目が変わらないのが、炭疽病の大きな特徴です。炭疽病菌は前年に発病した株の中で越冬し、翌年に他株に伝染していきます。
そして、炭疽病は高温多湿な環境を好み、20℃以上で発生します。特に、雨や灌水による雨滴伝搬による胞子飛散で広がって感染します。例えば、スプリンクラー等の利用、降雨時の雨除けの不備など、水が残る環境下で発生が急激に拡大しやすいのです。逆に点滴灌水を行なっている圃場では発生が少ない傾向があります。
このことから、伝染を防ぐのに何よりも大事なのは、被害が出た残渣を、肥料袋などに入れて密封し、熱によって死滅させる、残渣処理になります。
発病した残渣は土壌中などに残ることも多いので、太陽熱や土壌くん蒸剤による消毒が必要になってきます。このように、翌年の感染源をしっかり取り除くことが大事と言えます。
炭疽病の症状
炭疽病に感染すると発生する主な症状は、下記の写真のように、葉っぱに2〜3mm程度の褐色、黒褐色、うす墨色の丸い円形の斑点ができることです。これが広がると、上記のような多数の斑点ができた状態になります。
また、葉っぱではなく、葉柄やランナーに発生した時は、下の写真のように、黒色、褐色の紡錘型の病班が形成されます。
まとめ
炭疽病は発生してからの防除が困難な厄介な病気で、発生すると枯死に至る割合が多いことから、収穫時の収量に多大な影響がでます。野菜、果実、様々な作物に発生しますが、特にイチゴで有名で、イチゴ農家にとって最も厄介な病害と言っても過言ではないでしょう。スイカでも発生する厄介な病気です。
とにかく、早めの薬剤の散布等、予防措置を取るようにしましょう。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
また、最近では病害虫の抵抗性発達を避けるために、農薬にRACコードがわかるようになっています。RACコードについては下記を参考ください。
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。
農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます。
農家web かんたん栽培記録
作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。
農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
(補足)殺虫剤など、他の農薬について
農家webでは、下記のような害虫別のコンテンツがあります。気になるコンテンツがあれば、ぜひ参考にしてみてください。