ワタアブラムシは多くの作物に寄生し、ウイルスを媒介します。早期発見とローテーション散布が重要です。この記事では、ワタアブラムシに効く農薬や、無農薬の防除法を紹介しています。
ワタアブラムシとは、どんな害虫?
ワタアブラムシとは? その生態
ワタアブラムシはネギアブラムシやモモアカアブラムシと並んでアブラムシの代表格です。キュウリ、メロン、ナス、ピーマン、キクなどの花き、イチゴなどさまざまな農作物に寄生します。羽のない成虫(無翅型)は体長がおおよそ1.3mm前後、色は黄色や緑、濃緑色と様々です。羽のある成虫(有翅型)は無翅型よりもやや小さく1.3mm程度、色は黄緑や青緑で、写真のように、黒斑点があるのが特徴です。
ワタアブラムシは春から秋にかけて発生し、梅雨時に発生しやすいと言われています。逆にネギアブラムシは初夏や秋といった冷涼な時期によく発生します。
アブラムシは直接植物の汁を吸うことで作物に害を与えるだけでなく、排泄物を作物にかけ、黒いすす状のカビを増殖させたり、光合成が妨げられて作物の生育を悪化させます。
ワタアブラムシは他のアブラムシと同様、ウイルスを媒介します。口針を植物に探り挿入するため、ウイルスを持っていると口針から簡単にウイルスの感染が広がってしまうのです。ワタアブラムシが運ぶモザイクウイルスに感染してしまうと葉が奇形となり、萎縮して最悪枯死し、収穫、収量に大きな影響がでてしまいます。
ワタアブラムシの防除ポイント
なるべく発生初期に駆除できるのがベストです。すでに多発してしまっている場合は、しっかり散布ムラのないように丁寧に散布するようにしましょう。散布1~2日後に葉上の虫の寄生状況を目視して,生存しているアブラムシがほとんどいない状況になっていれば効果があったと言えます。
ローテーション散布について
農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のアブラムシが、世代を重ねて集団化する、抵抗性アブラムシが近年、問題になっています。
特にワタアブラムシは有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系の農薬が効きにくくなっている抵抗性のワタアブラムシの発生が多く報告されています。殺虫剤を散布しても、翌日集団でアブラムシが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。
このような場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、さらには生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。
抵抗性が疑われる場合は、具体的には、ピリジン アゾメチン誘導体(9B)のコルトやチェス、ジアミド系(28)のヨーバルやベネビア、またスルホキシミン系のトランスフォームなどをメインに使用しながら、有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系の農薬を補助的に使うのが良いでしょう。
ワタアブラムシに効く農薬
アブラムシに効く代表的な農薬
ネオニコチノイド系
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
マラソン
有機リン系殺虫剤の代表、マラソンもアブラムシに効く農薬です。マラソンについては下記をご参考ください。
コルト
コルト顆粒水和剤は、日本農薬などが販売する昆虫の行動を制御する昆虫行動制御剤(IBR剤)で、従来の有機リン系やネオニコチノイド系に対して抵抗性を発達させた害虫にも有効なため、ローテーションのなかに組み込みやすい殺虫剤です。
トランスフォーム
トランスフォームフロアブルは2017年12月に農薬登録が認可された新規殺虫剤です。ネオニコチノイド系や有機リン系などの既存の殺虫剤とは構造が異なる新規系統の殺虫剤なので、コルトと同様、ローテーションに組み入れやすい殺虫剤です。
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
また、より詳しく網羅的に使える農薬を検索したい方は、是非、この農薬検索をご利用ください。
殺虫剤はアブラムシだけでなく、カイガラムシ類やハダニ類、アザミウマ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、アオムシ、ハムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
(参考)ピーマンで使える、アブラムシに効く農薬一覧
IRACコード | グループ名 | 主な農薬 |
---|---|---|
1B | 有機リン系 | オルトラン マラソン |
3A | ピレスロイド系 | アディオン トレボン テルスター ロディー |
4A | ネオニコチノイド系 | モスピラン アドマイヤー ダントツ スタークル アルバリン アベイル アクタラ ベストガード |
4C | スルホキシミン系 | トランスフォーム |
9B | ピリジン アゾメチン誘 導体 | コルト チェス |
23 | テトロン酸および テトラミン酸誘導体 | モベント |
28 | ジアミド系 | ヨーバル ベネビア |
29 | フロニカミド | ウララDF |
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
有機JAS縛りでアブラムシ駆除に使える農薬
有機JASで使用できる農薬の代表的なものは、生物農薬が挙げられます。生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
また、還元澱粉糖化物を有効成分とする農薬、商品名だと、「エコピタ液剤」「キモンブロック液剤」「ベニカマイルドスプレー」「ベニカマイルド液剤」もアブラムシ駆除に使えます。
その他、マシン油(機械油)「クミアイ 機械油乳剤95」や、薬液が虫体を被覆することによる窒息やでんぷんの粘着効果で防除できる、デンプン水和剤「粘着くん水和剤」などがあります。
無農薬でアブラムシを駆除する方法
アブラムシにはてんとう虫(幼虫、成虫)などの天敵が存在します。これらを利用したり、物理的に防除することでアブラムシを防ぐことができます。
無農薬でアブラムシを駆除する、生物的防除、物理的防除、耕種的防除について詳しく知りたい方は、下記を参考にしてみてください。
上記には、コレマンアブラバチ、ヤマトクサカゲロウ、ナミテントウ幼虫を使った生物的防除、アルミホイル、シルバーマルチなど、光を乱反射させて防除する方法、黄色の粘着テープやバケツで捕まえる方法、くん炭を株間に撒く方法、デンプン水和剤を散布する方法や、ソルゴーなど様々な防除方法を解説しています。
まとめ
ウイルスを保毒した有翅型のアブラムシが作物に飛来する際に初期の感染が生じている可能性が高いです。このため、苗に寄生される前の早期発見が鍵になります。
圃場の横の露地に生えたアブラナ科雑草を定点観測し、アブラムシの早期発見、忌避、退治に役立てている農家の方もいます。早期発見し、適切な薬剤でしっかり発生を予防、防除できるとベストです。