農業者にとって非常によく聞くカビの病気の代名詞「うどんこ病」。その名の通り、葉や茎がうどん粉をかけたみたいに白くなる病気です。ここでは、イチゴのうどんこ病予防、治療に特化して、おすすめの農薬、またその他の効果的な防除方法を解説します。
イチゴで使える、うどんこ病に効果がある農薬
うどんこ病は非常によく発生する病気で、イチゴに使える様々な適用農薬があります。ここでは代表的な農薬を紹介します。
予防のため
トップジンM水和剤(FRAC 1)
トップジンM水和剤は速攻性と残効性を有し、優れた効果が長続きする、広範囲の作物の病害に基幹防除剤として使用できる殺菌剤です。低濃度で高い効果があり、作物の汚れが少なく、定期的な予防散布に、激発時のまん延防止に優れた効果を発揮します。
ボルドー
無機銅と硫黄を有効成分とする殺虫殺菌剤です。無機銅が広範囲の病害に効果を発揮し、同時に高い保護作用も発揮します。硫黄がうどんこ病などに対して高い殺菌効果を示します。
アフェットフロアブル(FRAC 7)
アフェットフロアブルは担子菌、子のう菌、不完全菌に属する幅広い植物病原菌に対し、高い活性を示す新規なチオフェン系殺菌剤で、多くの病害に優れた予防効果を有する薬剤です。
治療のため
パンチョ TF顆粒水和剤(FRAC U6)
パンチョは各種作物のうどんこ病に優れた効果を示し、予防効果のみならず治療効果や残効性に優れた薬剤です。シフルフェナミドとトリフルミゾールの二つの有効成分を混合することで、それぞれの効果がさらに増強されています。
ポリオキシンAL水溶剤・水和剤(FRAC 19)
ポリオキシンは日本で発見された農薬用抗生物質で、野菜・花き類のうどんこ病、灰色かび病などの重要病害にすぐれた予防、治療効果があります。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
ガーデニング・家庭園芸用、また家庭菜園用でうどんこ病を予防したい場合は、「ベニカXスプレー」「ベニカXファインスプレー」「ベニカグリーンVスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「カリグリーン」「モレスタン水和剤」「STサプロール乳剤」「カダンD」「カダンセーフ」「カダンプラスDX」「フローラガードAL」「オルトラン」「サンヨール」と本当に多くあります。
家庭園芸用の殺菌剤は、住友化学園芸、フマキラー、ハイポネックスから販売されており、殺虫成分も混合されているなど、アブラムシ類やコナジラミ類、黒星病なども退治してくれます。詳しくはラベル、説明書を確認してください。
うどんこ病とはどんな病気?
うどんこ病とは?
うどんこ病はウドンコカビ科の糸状菌によって起こる病害の総称で、糸状菌が繁殖して、葉や茎がうどん粉をかけたみたいに、はじめは白い斑点から、末期は光合成を阻害するくらいに葉全体が白くなる病気です。英語では、「Powdery mildew」と呼ばれます。
うどんこ病は他の灰色かび病などとは異なり、寄生した植物に拒絶反応を起こさせないため、枯らさない、という特徴があります。このため、うどんこ病が蔓延して作物が全滅、ということにはならないのですが、植物と共存する共生菌のため、繁殖しやすく、しぶとくて完治し辛い病気です。
枯れなくても、うどんこ病にかかった農作物は商品にならないので、農家の方にとって厄介な病気であるのは間違いないでしょう。
さらにうどんこ病が蔓延すると、糸状菌を食べるハダニなどが増加し、食害や灰色かび病などのキズ感染性の、被害の大きい病原菌が侵入し、二重感染を引き起こします。
最近はうどんこ病に耐性を持つ品種も広がっていますが、特にイチゴやウリ科の植物(メロン、スイカ、きゅうり、カボチャ、ズッキーニ)、トマト、ぶどう、ナスなどが被害作物として有名です。
うどんこ病と一言で言っても、作物毎に菌は違うことに注意しましょう。ムギのうどんこ病は水に弱いですが、キュウリやピーマンにつくうどんこ病は水に強かったりします。このため水をかけても大半は防ぐことはできないなど、注意が必要です。
発生する原因
カビ(糸状菌)の胞子が風によって運ばれ、葉に付着することで感染します。
ほとんどのカビ(糸状菌)が多湿を好むのに対し、うどんこ病は適温で湿度が低い乾燥した時に発生しやすいのが特徴です。このため真夏のような猛暑下や梅雨時期はそんなに発生しません。
防除における、予防と治療
病原菌の中でも、カビ(糸状菌)は以下のような3段階で病気の発病させます。
- カビの胞子が葉に付く
- 付いた菌が葉の表面のワックス層を溶かして菌糸を伸ばし、植物の細胞内に吸器を作る
- 植物の細胞から栄養を取り、、分生胞子を作って繁殖し、再び胞子を拡散、増殖させる
1の段階でカビを防ぎ、2の段階に行かないように、胞子の発芽を抑制したり菌糸の侵入を阻害するのが「予防剤」で、2、3以降になり、菌糸を死滅させたり、分生胞子が作られるのを阻害するのが「治療剤」になります。
農薬のラベルには、「予防剤」「治療剤」の表記はありません。菌が蔓延した状態で完全に効く治療剤はほぼないため、「治療剤」と名乗ると、効かなかった場合にメーカーとして不利益を被るのを避けるためだと思われます。
「予防剤」か「治療剤」かは、「病気の初発後に使用しても効果が期待できる」など、発病後でも防除効果が期待できるような記載があるかどうかで判断することができます。
重曹液
その他、重曹1gを水1L(リットル)で希釈した重曹液の散布は、予防効果があると言われています。重曹は特定農薬に当てはまるので有機栽培でも使うことができます。同じく、特定農薬の次亜塩素水も効果があると言われています。
この他、虫除けの忌避剤としてよく使われる木酢やえひめAIを希釈して散布するのも予防に効果があると言われています。
防除する際のポイント
うどんこ病に限りませんが、菌が一度蔓延し、発病してしまうと、完全に防除するのは非常に難しくなります。このため、防除において最も大事なのは、如何に予防剤などを用いて初発で叩いて、発病させないか、です。
また同じ系統の治療剤・予防剤の連続使用は、農薬が効かなくなる耐性菌の発生を招いてしまいます。菌が抵抗性を持つのを避けるために、系統の異なる薬剤を使うことが重要です。
化学的防除以外の防除方法
発症した葉っぱは早めに除去する
うどんこ病は胞子が風で飛んで伝染します。このため、うどんこ病が発生した葉はすぐに切って取り除きましょう。
チッソ(窒素)を減らす
施肥がチッソ過多になると、うどんこ病の発生を招きやすくなってしまいます。このため、チッソ過多にならないように適切な施肥量を保つことが重要です。
酸性電解水を利用する
電解水とは,塩類溶液を電気分解したときに生成する水のことを言います。酸性電解水には,pHの低い強酸性水とpHが5.6~6.0程度の弱酸性があり、散布することでうどんこ病の殺菌効果が期待できます。
紫外光照明装置タフナレイ
タフナレイのような紫外光(U V-B)の照射はイチゴの免疫機能を高め、うどんこ病の発症を抑制します。また免疫機能を高めることにより。病気に罹りにくい丈夫な体質にします。ただし、症状が発生した後では防除効果が低くなるので、予防的使用が重要です。
周りをしっかり除草する
圃場の周りに雑草が多くあるとその雑草にうどんこ病が発生し、繁殖、促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、被害を少なくするのに重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
うどんこ病は他の灰色かび病などとは異なり、寄生した植物に拒絶反応を起こさせないため、蔓延して作物が全滅、ということにはならないのですが、植物と共存する共生菌のため、繁殖しやすく、しぶとくて完治し辛い病気です。野菜から果実、観葉植物、多肉植物、草花、球根/宿根・多年草まで幅広く発生します。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
多く発生してからの完治は非常に難しいので、予防でしっかり防除することを心がけましょう。
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