雑草はたくさんの種類がありますが、大きく分けると、一年で枯れる「一年生雑草」、複数年生育する「多年生雑草」があり、それぞれ「イネ科雑草」「広葉雑草」に分類されます。ここでは雑草の中でも特に芝生に生えやすい雑草の種類、品種、特徴と、それぞれを駆除、防除するにはどんな方法があるのか、徹底解説していきたいと思います。
ハマスゲ
科 | カヤツリグサ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 関東以西 |
学名 | Cyperus rotundus L. |
別名 | コウブシ、ヤカラ、クグ |
ハマスゲの特徴
ハマスゲは種子と塊茎で繁殖する夏生多年草で、親株の基部から何本もの根茎をだして、それが小株になって、その基部が新しい塊茎になって、と増殖を繰り返す大変厄介な雑草です。草刈り機で刈る、刈り込む、またロータリー耕で根茎を刈り取る、切断すると、さらに増殖してしまいます。砂浜や川原、果樹園、畑地、芝地に多く見られます。
ハマスゲの防除方法
畑地の場合は、塊茎は乾燥と寒さに弱い(-5°C以下に2時間放置すると死滅)ので、施肥、種まき前の冬場に耕起することは、外に触れさせることで死滅させることができるので、大変有効な防除方法になります。
しかし、芝生ではその手法は使えません。土壌処理剤で種子からの出芽を抑え、ある程度生長している場合は、基本的には葉茎処理剤を散布を何度も行うことで全ての枯死、駆除を目指していくことになります。根茎が増殖していくため、地下部をしっかり枯らすことが重要です。下記のアージランなど選択性の葉茎処理剤を散布してください。
スズメノカタビラ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Poa annua L. |
別名 | – |
スズメノカタビラの特徴
スズメノカタビラはもともとヨーロッパ地方原産です。種子で繁殖する冬生一年草です。空き地や駐車場、また水田の畦畔や水田、畑地とあらゆるところに生息します。
スズメノカタビラの防除方法
基本的には、芝生に使える葉茎処理剤を散布する方法で防除します。ある程度除草した後は、土壌処理剤を撒くことで出芽を防ぐことができます。
オヒシバ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 本州以南 |
学名 | Eleusine indica (L.) Gaertn. |
別名 | チカラグサ,チカラシバ |
オヒシバの特徴
道路の端や校庭、農道によく見られる、種子で繁殖する夏生一年草です。オオバコと同じく踏み付けに強く、平たい形をしています。出芽は5月の気温15°C以上で始まり、メヒシバよりも遅いのが特徴です。
オヒシバの防除方法
根の張りが強いため、生長したオヒシバを引っこ抜くのは大変です。出芽前に土壌処理剤を撒いて防除するのがおすすめです。生育する前は耕起するか、手で草取りするのが良いでしょう。また、イネ科雑草に有効な芝生に使える葉茎処理系の除草剤(アージラン液剤など)を使用するのも有効です。しっかり枯死させましょう。
メヒシバ
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Digitaria ciliaris (Retz.) Koeler |
別名 | メシバ、スモウトリグサ、ハタカリ、ホトクイ |
メヒシバの特徴
道路の端や校庭、農道によく見られる、種子で繁殖する夏生一年草です。畑地や路上、空き地や畦畔、至る所で発芽、発生し、休耕地、不耕起栽培では特に多く発生します。
メヒシバの防除方法
出芽前に土壌処理剤を撒いて防除するのがおすすめです。生育する前は手で草取りするのが良いでしょう。また、イネ科雑草に有効な芝生に使える葉茎処理系の除草剤(アージラン液剤など)を使用するのも有効です。しっかり枯死させましょう。メヒシバの種子は機械、レーキなどに付着しやすいため、メヒシバの除草、刈り取りなどに使用した機械や工具、器具、長靴は芝生の外に持ち出し、しっかりと落とすことが重要です。
スギナ
科 | トクサ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 北海道~九州 |
学名 | Equisetum arvense L. |
別名 | ツクシ、ツギナグサ |
スギナの特徴
スギナは越年する多年草で、一部の地下茎からでも繁殖し、少し経っただけでスギナだらけになるくらいの高い繁殖力を持っています。地下茎を伸ばして地中に根びこってしまうため、引っこ抜いても、地下茎の一部は地中に残存し、またそこから繁殖するため、本質的な駆除にはならないケースが多いです。
また、草刈などで衝撃を与えると胞子を撒き散らして、より多くのスギナの繁殖を産んでしまうという、誠に厄介な雑草です。山地、開墾地、果樹園、畑地、麦畑に多く見られます。
スギナの防除方法
基本的には葉茎処理剤を散布することで生長を抑え、何度も投与することで全ての枯死、駆除を目指していきます。根茎が増殖していくため、地下部をしっかり枯らすことが重要です。芝生の場合は非選択性のグリホサート系除草剤は使用できないので、アージラン液剤などのアシュラム剤を使用したいところです。
スギナの駆除・防除については、具体的な除草剤など下記に詳しく説明していますのでご参考ください。
ドクダミ
科 | ドクダミ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 北海道~九州 |
学名 | Houttuynia cordata |
別名 | – |
ドクダミの特徴
ドクダミは、毒下しの効果が高いことから、「毒を矯める(おさえる)」→ 毒矯み(ドクダミ)と呼ばれるようになったと言われているくらい、昔から優秀な薬草として、ゲンノショウコ、センブリと共に日本の三大民間薬の一つに数えられていて、欧米でも東洋のハーブとして人気があります。また、葉を乾燥させたどくだみ茶も有名です。
ドクダミは越年する多年草で、ちぎれた、一部の地下茎からでも繁殖するため、ほかの雑草が生えなくなるくらい高い繁殖力を持っています。放置しておくと一面ドクダミだらけになるほどです。また強い臭気があることと、地下茎を伸ばして地中に根びこってしまうため、退治しにくい、しつこい難防除雑草の代表格としての側面も持っています。
ドクダミの防除方法
基本的には葉茎処理剤を散布することで生長を抑え、何度も投与することで全ての枯死、駆除を目指していきます。根茎が増殖していくため、地下部をしっかり枯らすことが重要です。
ドクダミの駆除・防除については、具体的な除草剤など下記に詳しく説明していますのでご参考ください。
セイタカアワダチソウ
科 | キク科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Solidago altissima L. |
別名 | セイタカアキノキリンソウ |
セイタカアワダチソウの特徴
セイタカアワダチソウはもともと北アメリカ原産で、明治時代に日本に導入された植物です。地中に長い地上茎を横行させ、種子と根茎で繁殖し、越年する多年生の雑草です。空き地や整地、駐車場に直立で生長しているのがよく見られますが、酸性土壌では生長が弱くなるため、きちんと耕起された圃場、菜園では種子が入ってきてもそんなに繁殖はしません。
セイタカアワダチソウの防除方法
基本的には、土壌を酸性にし、繁殖を防ぐ方法があります。また、生育してしまっている場合は、複数回地上部分を草刈りし、草丈と花木を抑えることが有効です。駆除するためには、葉茎処理剤を複数回散布していくことになります。一度の処理での根絶は難しいので、再生しなくなるまで定期的に何度も散布してください。
カタバミ
科 | カタバミ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Oxalis corniculata L. |
別名 | スイモノグサ、トンボグサ |
カタバミの特徴
カタバミは種子とほふく茎で繁殖する多年草です。冬でも地上部が枯死することなく、根は非常に細長く地中に入ってしまって抜きにくいのが特徴です。畑地、庭、芝地に目立って出現します。
カタバミの防除方法
耕起出来ない芝地に発生すると、千切れやすいために手での草取りは困難です。芝生で使える選択性の葉茎処理剤を使用することで防除することになります。
カラスノエンドウ
科 | マメ科 |
種類 | つる性の冬生一年草 |
分布 | 本州以南 |
学名 | Vicia sativa L. subsp. nigra (L.) Ehrh. var. segetalis (Thuill.) Ser. |
別名 | ヤハズエンドウ |
カラスノエンドウの特徴
カラスノエンドウは種子で繁殖する冬生一年草です。特徴は出芽深度が10cm以上と深く、種子が大きいため麦に似ているため、麦(ムギ)収穫物に混入してしまうと選別が難しくなり、農家にとっては大問題となる雑草です。田んぼの畔畦や水田、麦畑、空き地、庭、芝地によく見られます。
カラスノエンドウの防除方法
カラスノエンドウは、特徴として出芽深度が地面から10cm以上と深いため、土壌処理剤の効果は他の雑草と比べて低いです。芝生に繁殖した場合は、芝生で使える選択性の葉茎処理剤母を散布するのが有効です。
ヤブカラシ
科 | ブドウ科 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 北海道(西南部)以南 |
学名 | Cayratia japonica (Thunb.) Gagn. |
別名 | ヤブガラシ,ビンボウカズラ |
ヤブカラシの特徴
ヤブカラシは地下部で栄養繁殖し、地上茎を萌芽して、地上30cmくらいに伸長すると,巻きひげを出して、物体に絡みついて伸長していきます。ヤブカラシはその名の通り「藪を枯らす」、他の植物や樹木に絡みついて巻き付き繁茂し、全面的に被覆して枯死させることがあるため、茶畑、さとうきび畑などの畑や果樹園では非常に厄介な雑草です。地下部で地下繁殖が広がるため,非常に防除しにくく、地上部は冬期に枯死するものの、地下部は休眠し、春先、地下茎から繁殖する多年草です。
ヤブカラシの防除方法
基本的には、地下から新芽が出てきたら早めに抜き取ります。茎が伸長している場合は、根元を草刈りした後、葉茎処理剤タイプの除草剤を散布することで除草、防除します。
芝生ではグリホサート系などの非選択性の除草剤の散布が出来ないため、芝に当たらないようにピンポイントで散布するか、おすすめなのは高濃度に希釈した非選択性除草剤をヤブカラシに直接塗る方法です。しっかり塗って、確実に駆除しましょう。
その他、芝生にはクローバーや苔も生えます。これらの防除方法は下記を参考にしてみてください。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしても、スギナ、スベリヒユ、シロツメクサ、チドメグサ、セイタカアワダチソウ、ツユクサ、ツメクサ、オオイヌノフグリ、オオアレチノギク、トウダイグサ、コニシキソウ、ゴマノハグサ、ナデシコ、ハコベ、セイヨウタンポポ、カズノコグサ、カタバミ、ナズナ、クログワイなどの難雑草がしっかり枯れるので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
展着剤で除草剤の効果を高める
展着剤とは、界面活性剤や接着剤となるパラフィンや樹脂酸エステルを有効成分としたもので、薬剤の付着性や浸達性を高めたり、溶けにくい水和剤や乳剤などの混用性を高めて、農薬の効果のムラを減らす働きをしてくれます。
展着剤は、使う農薬に合わせて選ぶのが大切です。グリホサート系には、「サーファクタントWK、30」という除草剤に機能性展着剤(アジュバンド)などが使えます。
また展着剤ではないですが、肥料の尿素も、農薬に混ぜると農薬の効果を高めるといわれています。尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。
まとめ
芝生に生える雑草は、その他ヒメジョオン、タンポポ、セイヨウタンポポ、シロツメクサ(クローバー)、チドメグサ、ツメクサ、ナズナ(ぺんぺん草)、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、トクサ、チガヤ、ノボロギク、エノコログサ、チチコグサ、ヒメクグとたくさんあり、多年生から一年生まで、様々です。中には、非常に駆除、防除が難しい難雑草もあります。まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、生育したものに対しては、芝生に使える薬剤を散布する方法などで繰り返し枯らし、駆除をしていきましょう。ある程度除草できたら、土壌処理剤でしっかり防除することで、害虫の発生、病害虫による病害の発生も防ぐことができます。何よりも早め早めの対策、予防が重要です。
商品名 | シバキープエースシャワー | シバキープII粒剤 | シバキーププラスα(肥料入り) | グリーンアージラン液剤 | シバゲンDF | MCPP液剤 | ザイトロンアミン液剤 |
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概要 | |||||||
販売元 | レインボー薬品(株) | レインボー薬品(株) | レインボー薬品(株) | 石原バイオサイエンス(株) | 石原バイオサイエンス(株) | 丸和バイオケミカル株式会社 | 石原バイオサイエンス(株) |
有効成分 | アシュラム MCPP | シアナジン | トリアジフラム DBN | アシュラム | フラザスルフロン水和剤 | メコプロップ(MCPP) | トリクロピル(PRTR・1種) |
タイプ | 葉茎処理剤 | 土壌処理剤 | 土壌処理剤 | 葉茎処理剤 | ハイブリッド | 葉茎処理剤 | 葉茎処理剤 |