大規模農業をやるにあたって、必要不可欠な農業機械「トラクター」。トラクターなどの農業機械は高額であり、購入するにはハードルが高いです。「補助金を利用してトラクターを購入できないだろうか」と考えた新規就農者や農業者もいるのではないでしょうか?
この記事では、トラクターなど農業機械購入に補助金は利用できるか、詳しく解説します。
※この記事は2023年11月時点の情報です。補助金の内容等の変更や公募が終了している可能性もあるため、必ず各公募の公式ページをご確認ください。
トラクターなど農業用機械等を補助金で導入する場合は注意が必要
トラクターなど農業用機械等の導入に補助金を活用できるか、その答えは「補助金による」となります。
トラクターは、汎用性が高い車両、機械とみなされて、適用外とされるケースもあります。そのため、補助金の要件をしっかりとチェックする必要があります。
例えば、経済産業省の「ものづくり補助金」など、機械や施設の購入に充てられる補助事業は多くありますが、トラクター単体など汎用性の高い車両には使えないことになってることがほとんどです。
トラクターのアタッチメント(ロータリ、プラウ、ブロードキャスター、マニュアスプレッダー、田植え機等)は、適用となる場合があります!
トラクターなど農業機械購入時に活用できそうな補助金
トラクターなど農業機械購入時に活用できなそうな補助金をまとめました。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金(先進的農業経営確立支援タイプ・地域担い手育成支援タイプ)
強い農業・担い手づくり総合支援交付金は、下記を目的に公募されました。
- 産地の収益力強化と担い手の経営発展のため、産地・担い手の発展の状況に応じて必要な農業用機械・施設の導入を切れ目なく支援します。
- また、地域農業者の減少や労働力不足等生産構造の急速な変化に対応するための生産事業モデルや農業支援サービス事業の育成を支援します。
しかし、令和3年度でこの交付金事業は終了しています。
令和4年度(2022年度)に「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」から「強い農業づくり総合支援交付金」に変更となりました。
強い農業づくり総合支援交付金
強い農業づくり総合支援交付金は、令和5年3月31日に改正された交付金です。特に生産事業モデル支援タイプは、農業用施設(パイプハウス、耐候性ハウス等)や農業用機械(トラクターや収穫機、播種機、定植機、選別機等)の導入にも活用できるものとなっています。
農林水産省の強い農業支援のパッケージは、基本的に農業用機械や施設(ビニールハウス、パイプハウス等)、スマート農業機器に活用できることが多いので注目しておくと良さそうです。
農地利用効率化等支援交付金
農地利用効率化等支援交付金は、下記を目的に農林水産省が公募しています。
事業内容は、タイプによってわかれており、下記の3タイプがあります。
融資主体支援タイプ
融資を受けて、経営改善のために必要な農業用機械・施設の導入を支援するものです。
地域計画のうち目標地図に位置付けられた者等が融資を受け、農業用機械・施設を導入する際の融資残について支援します。また、優先枠を設定し、(ア)ロボット技術・ICT機械等の導入や、(イ)中山間地域等での集約型農業に必要な機械の導入、(ウ)「みどりの食料システム」を踏まえた環境に配慮した営農に必要な機械等の導入を推進します。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 1.農業経営基盤強化促進法に定める地域計画のうち目標地図に位置付けられた者 2.実質化された人・農地プランに位置付けられた中心経営体 3.実質化された人・農地プランが作成されている地域において、継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者 4.農地中間管理機構から貸借権の設定等を受けた者(地域計画及び実質化された人・農地プランが作成されていない地域に限る) |
補助率 | 事業費の10分の3以内 |
補助上限額 | 300万円等(必要な要件を満たす場合は600万円) |
融資主体支援タイプのうち先進的農業経営確立支援タイプ
より高い目標をもって、農業経営の主体性を発揮した取組、農業経営体と地域との相乗的発展を目指す取組、より規模拡大を図るための取組等を行おうとする農業経営体に対して、支援を行うものです。
地域計画のうち目標地図に位置付けられた者等が融資を受け、農業用機械・施設を導入する際の融資残について支援します。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 1.農業経営基盤強化促進法に定める地域計画のうち目標地図に位置付けられた者 2.実質化された人・農地プランに位置付けられた中心経営体 3.実質化された人・農地プランが作成されている地域において、継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者 4.農地中間管理機構から貸借権の設定等を受けた者(地域計画及び実質化された人・農地プランが作成されていない地域に限る) |
補助率 | 事業費の10分の3以内 |
補助上限額 | 個人1,000万円、法人1,500万円 |
条件不利地域支援タイプ
経営規模が小規模・零細な地域において、農作業の共同化や農地の利用集積の促進等により、生産性の向上や農作業の効率化等を図り、意欲ある経営体を育成するため、必要となる共同利用機械・施設の導入を支援します。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 1.農家3戸以上が構成員に含まれている団体であって、当該農家が全体の議決権の過半を占める等当該団体の事業活動を実質的に支配すると認められる次に掲げる要件を満たす団体 2.要件を全て満たす参入法人 |
補助率 | 事業費の2分の1以内、農業用機械にあっては3分の1以内 |
補助上限額 | 4,000万円 |
担い手確保・経営強化支援事業(令和4年度補正予算)
担い手確保・経営強化支援事業は、下記を目的に農林水産省が公募しました。
助成対象となるものの具体的な例は、以下のとおりです。もちろん、ビニールハウスやトラクターにも使えます。
- トラクタ、田植え機、コンバインなどの農業用機械の取得
- 乾燥調製施設(乾燥機)、集出荷施設(選果機)、農畜産物加工施設(加工設備)など設備の取得
- ビニールハウスの整備
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
ただ単にトラクターを増台、新規購入するといった経営計画では難しいかもしれませんが、経営転換などによって導入せざるを得ない場合などに活用できると考えられます。
産地生産基盤パワーアップ事業
産地生産基盤パワーアップ事業とは、その名の通り、収益性向上や生産基盤の強化を主目的とした補助事業です。かつては、「産地パワーアップ事業」という名称で実施されていましたが、内容の拡充などを経て現在のものになっています。
この補助事業では、トラクターやコンバイン、ドローン、農業ロボット(収穫ロボット)等の農業機械の導入に補助金が活用できます。
ただし、支援内容によってはトラクターのリース、買い替え(更新)等に活用できない場合があります。例えば、産地生産基盤パワーアップ事業(新市場獲得対策)のうち園芸作物等の先導的取組支援(野菜)では利用できないと定められています(出典:産地生産基盤パワーアップ事業(新市場獲得対策)のうち園芸作物等の先導的取組支援(野菜)Q&A)。
取組事例も掲載されているので、検討するにあたって参考にすると良いでしょう。
新規就農者向け補助金
新規就農者の方には、新規就農者向けの補助金を活用することをおすすめします。新規就農者向けには、国や都道府県、市区町村など各実施機関からいくつか補助事業が公募されています。
営農を開始するには、多額な初期投資が必要となるため、ぜひこれらも積極的に活用していきましょう。
新規就農者育成総合対策のうち経営発展支援事業
新規就農される方に、機械・施設等導入にかかる経費の上限1,000万円(経営開始資金の交付対象者は上限500万円)に対し、都道府県支援分の2倍を国が支援する補助事業です。
助成の対象は、下記1〜3の取組であって、自らの経営においてそれらを使用するものであることとなっています。
- 機械・施設等の取得、改良又はリース
- 家畜の導入、果樹・茶の新植・改植
- 農地等の造成、改良または復旧
もちろんですが、乗用トラクターの購入にも活用できます。事例集にも、パイプハウスと自動灌水装置、環境制御装置、トラクターを導入した事例が掲載されていますので、参考にすると良いでしょう。
就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)
ビニールハウスなどの施設やトラクターなどの機械に直接できるわけではありませんが、就農準備資金・経営開始資金も魅力的な支援です。研究期間や農業経営を始めてから経営が安定するまでの間、月々12.5万円が交付される補助事業です。
対象者の要件としては、独立・自衛就農を目指し、5年以内に認定農業者または認定新規就農者になること等があります。
これらの活用も検討しつつ、初期投資、運転資金の計画を立てると良いでしょう。もちろん、しっかりとした事業計画の策定も必要です。
都道府県・市区町村の補助金
他にも都道府県や市区町村が独自に補助事業を策定している場合もあります。
例えば、庄内市では令和5年度の事業として、農業者の農業収入の向上のために、必要な機械・施設等の導入に対し、助成を行っていました。補助率は4分の1以内、上限金額は40万円となっています。
このように都道府県、市区町村独自で補助金事業を行っている場合があります。
トラクターなど農業機械購入時の補助金活用事例
ネット上には、補助金の活用事例も掲載されているので、他の補助金活用検討時の参考にすると良いでしょう。「作業効率化により大規模農地を引き受け、輸出拡大に取り組む事例(茨城県下妻市)」では、作業効率化のため高馬力のトラクターを導入した事例が紹介されています。
農業補助金検索なら農家web補助金データベースが便利
農家webでは、農業で利用できる補助金情報を「農家web補助金データベース」にまとめています。「トラクタ」などで検索することもできます。ぜひ、活用してください。