ヒエは、畑や水田の生える雑草で、特に水田ではイネの生育に影響を及ぼすだけでなくヒエが多発すると、斑点米カメムシ類も発生し斑点米被害が生じる恐れもあります。
この記事では、ヒエに効く除草剤について効果的な散布方法や、水田・畑などにおすすめの除草剤についてまとめています。
ヒエ(ノビエ)の特徴
ヒエの基礎情報
ヒエはイネ科ヒエ属の一年草の植物。種類にもよりますが日本全国に分布します。日本を含むアジア、アメリカのアジア,アメリカの水湿地に広く分布しています。日本では明治時代まで主食用として栽培されてきた歴史があります。
ヒエの種類
ヒエ(稗)には、水田雑草として代表的な野生種と、食用のヒエがあります。野生種には、タイヌビエ、ケイヌビエ、イヌビエ、ヒメタイヌビエなどの種類があり、これらのヒエの総称がノビエです。
ヒエの名前 | 特徴 |
---|---|
タイビエ | 全国の水田に発生する、最も代表的な水田雑草のヒエ。 |
イヌビエ | 全国に発生し、水田や畑などどこにでも発生するヒエ。 湛水状態でも発芽し、生命力が強い |
ヒメタイヌビエ | 乾燥を好むため、水田には発生せず畑に発生するヒエ。 関東以西に発生する |
ケイヌビエ | イヌビエの変種。水田や湿地、畔などに発生するヒエ。 形状はイヌビエだが毛が生えているのが特徴 |
ヒエとイネの見分け方
ヒエは生長初期は、水稲と見た目が似ています。イネには節の部分に「葉耳」と呼ばれる毛が生えています。またその節に葉舌と呼ばれる、突起があります。迷った時には、この葉耳と葉舌がないものがヒエと憶えておきましょう。
田んぼ(水稲)に効果のある除草剤
初期剤・一発剤
ヒエには、生長すればするほど除草が難しくなります。3葉期までにきっちり抑えるのがポイント。初期剤や一発剤で早期に対応しましょう。初期剤や一発剤は、水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。ジャンボ剤や豆つぶ剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
ヒエに効果的な除草剤は初期剤ではソルネット、一発剤ではホクト粒剤などがあります。
その他ヒエの除草剤については、詳しい記事がありますのでそちらも参考にしてください。
後期剤
後期剤は、初期剤や一発剤を散布した後に除草しきれなかったヒエ(ノビエ)に散布する除草剤です。水稲の後期剤は茎葉処理剤が多く、イネ科のヒエには効果のないものも多くあります。ヒエには、ヒエに効く除草剤を使うことが大切です。
ヒエに効果のある除草剤は、トドメバスMF液剤やヒエクリーンバサグラン粒剤が高葉齢のノビエにも効果があります。ノビエの葉齢に合わせて、なるべく早く散布しましょう。
ヒエに効果のある後期剤については、詳しい記事がありますのでそちらも参考にしてください。
稲刈り後
畑に効果のある除草剤
イヌビエやヒメタイヌビエは、畑などの農耕地でも発生します。イネ科雑草に効く除草剤が効果的です。ポルトフロアブルは、大豆の畑などの除草によく使われる除草剤です。10葉期のノビエのも効果を発揮します。大豆以外にもにんじん、玉ねぎ、白菜などの広い適用作物があります。
ノビエの葉期の数え方
田んぼ(水稲)の除草剤には、移植後〇日もしくは、収穫前〇日などの記載と同時に、ノビエ〇葉期までと、除草剤の使える期間が、初めの日から終わりの日まで記載されています。この時期にキチンと散布することで除草剤は効果を発揮します。
この除草剤に書かれているノビエの葉期について、きちんと理解しておきましょう。ノビエの葉期とは、田んぼに生えている中でも一番大きく育ったノビエの葉数です。ノビエの平均の葉数ではないことに注意しましょう。期間内の始めと終わりの期間ギリギリより真ん中ぐらいに余裕をもって散布します。
ノビエは、水稲と異なり、鞘葉の次にすぐ本葉が抽出します。これを1葉として数えます。0.5葉は成長が止まった時の葉の大きさを1としたときに、伸長中の葉の長さが、半分ほどになった時の頃を指します。
キシュウスズメノヒエの除草について
キシュウスズメノヒエは、ヒエと名前がついていますが1年草のヒエではなく、除草方法も異なります。
イネ科の多年草で、アジア、アメリカの熱帯に湿地に広く分布しています。日本では1924年に和歌山県で発見されて以来、関東、北陸地方以西の水田でよく見られるようになりました。ほふくするイネ科多年生雑草の総称として、ヤベヅル、ヨバイヅルとも呼ばれます。
キシュウスズメノヒエは主に畦畔から侵入してくるため、畦畔に生えているキシュウスズメノヒエをしっかり防除することが重要です。水田で発生した場合には、稲刈り後に根まで枯らすグリホサート系の除草剤がおすすめです。畔では根まで枯らす除草剤を使うと、畔が崩れる要因ともなりますので接触型のバスタ・ザクサなどのグリホシネート系の除草剤がおすすめです。
田んぼ(水田・水稲)への効果的な使い方
除草剤の効果を最大限まで広げるには、散布の方法にもいくつか気をつけたいポイントがあります。これらのポイントを抑えることで、より効果的に雑草を防除することができます。
初期・中期除草剤・一発剤
- 丁寧な耕起・代かきを行って、凸凹をなくし平坦な田んぼにすること
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
- 水稲をしっかり植え付ける。代かき不足による浮き苗や浅植えは、稲に薬害が生じる可能性があります
- 水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。ジャンボ剤や豆つぶ剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください
後期除草剤などの茎葉処理剤
使用方法に「落水散布又はごく浅く湛水して散布」かかれている場合は、下記のことに気をつけましょう。茎葉処理剤は、薬剤が付着するところが多いほどよく枯れます。
- できるだけ落水して、散布しましょう。
- 雑草の茎葉に直接かかるよう丁寧に全体に散布します。
- 散布後雨が降ると効果が劣るため、2日間は雨の降らない日を選んで散布してください。
- 散布後少なくとも3日間(浅水処理は5日間)はそのままの状態を保ち、入水、落水、かけ流しは行わないようにします。また散布後7日間は降雨の有無にかかわらず落水、かけ流しはしないでください。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布してください。