栽培期間の長いネギは肥料を切らさずに育てる必要があります。この記事では、ネギ栽培で大切な肥料を中心に、時期ややり方、おすすめの肥料や育て方のポイントを説明します。
ネギ栽培におすすめの肥料と与え方のポイント
ネギ栽培では、元肥に緩効性肥料を使い、追肥で速効性肥料を使います。肥料の与え方のポイントは肥料を切らさずに育てること。月に1度追肥をして、土寄背して育てます。
畑などの地植えでは、元肥には有機肥料がおすすめです。特に鶏ふんは肥料成分が豊富で、速効性もあるため追肥にも使うことができます。
臭いや虫などが気になるプランター栽培や追肥には化成肥料もおすすめです。ネギの専用肥料や一発肥料と呼ばれる元肥だけで追肥のいらない肥料は誰でも使いやすい肥料です。
ネギの肥料の与え方
ネギは、タネから育てることもできますが、長ネギや九条ネギなどは育苗期間が3カ月ほどど長い野菜です。
時期になるとホームセンターやインターネットなどでも多くの苗が、販売されています。小ネギ(万能ねぎ)もポット苗で売られています。
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
元肥は、ネギの苗の植えつけ時に行います。溝を掘り苗を並べます。溝の深さや幅などは下記の表を参考にしてください。浅く土をかぶせて踏みしめます。そこに鶏糞を撒いてさらにワラを敷きます。
溝の幅 | 溝の深さ | 溝と溝の間 | 条間(列間) | 株間(苗と苗の間隔) |
---|---|---|---|---|
20cm | 20cm〜30cm | 80〜90cm | 1溝に1列植え | 5〜15cm程度 |
土壌と肥料について
健全なネギを栽培し、収穫するためには土作りが重要です。土作りは、遅くとも植え付けの2週間以上前には行いましょう。土壌状態にもよりますが1㎡あたり、牛糞などの堆肥を1kg苦土石灰100g程度施用しよく耕して畝を立てます。ネギ栽培のための土作りについて、大事な点は以下のとおりです。
- 土壌酸度(pH)は、弱酸性(pH6.0〜6.5)になるように調整する。酸性側によっている場合は、アルカリ性資材(苦土石灰などのカルシウム資材など)で矯正する。
- 物理性が悪い土壌(粘土質の土壌や水はけの悪い土壌)では、栽培を避けるか、堆肥などの有機資材を多く使用して改善しましょう。
- ネギの根張りを良くするために、土壌にはしっかりと苦土(マグネシウム)を散布しましょう。苦土(マグネシウム)は、ネギの根張りを良くしてくれ、初期生育がよくなったり、早期に収穫することが可能となる効果があります。
追肥
栽培期間の長い、長ネギ(根深ネギ)の追肥は白い根の生長に合わせて、1か月に1度、化成肥料や有機肥料をばらまき、土寄せをします。収穫まで3回ほど行います。
葉ネギも九条ネギなどは、収穫まで時間がかかるので長ネギと同様に、1か月に1度化成肥料や有機肥料を施肥します。小ネギなど収穫まで短いものは元肥だけでも育ちます。大きくなったものから葉の部分だけ切り取って収穫し、追肥で速効性の肥料を与えておくと、新芽がでて再度収穫することができます。
タネから育てる場合(育苗)
地植え(育苗畑・直播)
育苗畑などで種から育てる場合は、種まきの1週間ほど前に元肥を施しておきます。堆肥や化成肥料、鶏糞などの有機肥料を施しておきます。追肥は、草丈が7㎝ほどになったら、株間が1.5㎝程度になるように間引いて追肥します。次の追肥は1回目の追肥から1か月ほどたったら、株間が5㎝になるように間引いて追肥します。育苗が90日を超える場合にはさらに追肥します。追肥には化成肥料などを使います。
セルトレイ
セルトレイやチェーンポットで種まきから育てる場合には、培土はネギ専用の培土を使いましょう。元肥が含まれているので、基本的に追肥は必要ありません。ただし、育苗期間が60日を超える場合には適宜化成肥料を追肥を行いましょう。(肥料期間などは培土のパッケージで確認してください)草丈が30cm程度になったら、定植のサインです。
鉢植え・プランター
鉢植えやプランターから種まきから育てる場合は、直播きが簡単です。用土は野菜の培養土などをつかいましょう。培養土を使用している場合、発芽から1ヶ月程度は追肥の必要は基本的にありません。本葉が4枚程度、太さが鉛筆より少し太いくらいになってきていたら、育苗がうまくいっている証です。その後は苗から育てるときと同様に、1か月に1度ほど追肥をしていきます。
水耕栽培
購入してきたネギから育てる(リポベジ・再生栽培)や、葉ネギは水耕栽培でも育てることができます。
タネから育てる場合は、スポンジなどにタネをまき、発芽してから2~3㎝ほどになったら、水耕栽培用の肥料を与えて育てます。購入してきたネギは、肥料がなくても育ちます。水耕栽培やリボベジに挑戦してみたいかたは詳しい記事がありますので参考にしてみてください。
ネギにおすすめの肥料
有機肥料
畑などの地植えの元肥には、有機肥料もおすすめです。有機肥料には鶏糞・油粕・米ぬか、ぼかし肥料などが使えます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。元肥でしっかりリン酸を与えれいれば、追肥には、NK化成など窒素とカリのみを含む肥料でもよいでしょう。
またメーカーが販売している野菜用の肥料も手軽に使えておすすめです。「マイガーデン 花・野菜用」やハイポネックスジャパンの「今日から野菜 野菜の肥料」などがあります。
ネギ専用肥料
ネギ専用の肥料のあります。ネギに必要な成分が配合され、施肥量などもパッケージに書かれていることも多いので、栽培初心者の人でも簡単につかうことができます。「花ごころ ねぎ・たまねぎの肥料」は少量サイズもあります。畑で使う場合には「セントラルグリーン ネギ類専用肥料」などもあります。
水耕栽培用肥料
水耕栽培には、水耕栽培用の肥料を使いましょう。液体肥料ハイポニカや、微粉ハイポネックスなどがホームセンターなどでも手軽に買うことができます。
肥料過不足について
ネギは栽培期間が長いため、肥料切れに注意してくださいとネットや園芸本でもよく見かけます。その反面、肥料は不足しても枯れることはあまりありませんが、上げすぎると肥料焼けして枯れてしまうことがあります。また窒素が多いと葉枯病を発症しやすくなります。
肥料が不足すると葉が黄色くなったり枯れたりしますが、葉先が枯れる原因は肥料不足だけではなく、病害虫や、肥料過多の場合にも起こります。元気がないからと肥料をあげると逆に弱ってしまうこともありますので、施肥量はパッケージなどをよく読んで使いましょう。
ネギの葉が黄色くなる要因の記事もありますので、参考にしてください。
その他ネギ栽培のポイント
ネギの基礎知識
ネギといって思いつくのは、関東の人と関西に住んでいる人では違うかもしれません。ネギには多くの種類がありますが、関東とその以北で栽培されている主に白根の部分を食べる「根深ネギ(長ネギ)」と、関西以西に普及している主に葉の部分を食用とする「葉ネギ」に大きく分けられます。
栽培が簡単なのは、葉ネギです。小ネギなどは収穫も早くプランタ―などでも簡単に育てることができます。
項目 | 根深ネギ | 葉ネギ |
---|---|---|
栽培の特徴 | 葉鞘が伸びるにつれて土寄せをすることで、葉鞘を軟白化させる。別名「長ネギ」「白ネギ」と呼ばれたりする。 | 土寄せはほとんどせず、長くて柔らかい葉を育てる。別名「青ネギ」と呼ばれたりする。 |
主な品種 | 深谷ねぎ、下仁田ネギなど | 九条ネギ(九条葱)、小ねぎ(万能ネギ) など |
耐寒性、耐暑性が比較的強い作物です。夏の暑さは30℃程度、冬の寒さにはマイナス8℃程度まで耐えることができます。乾燥に強く、多湿が苦手で病害虫などの予防のためにも水はけのよい土壌で育てます。
土よせ
根深ネギ(長ネギ)をしっかりと育てるためには、土壌への栄養分補給と土寄せが欠かせません。追肥は、溝にそのまま散布するのではなく、両側に盛り上げた土に散布して、土を混ぜながら土寄せすることで行います。土寄せをするとき、もともと溝に埋めていた稲わらが多かった場合には取り除いてあげてください。
畑の場合
畑で育てている場合は、4回程度に分けて追肥をしていきます。それぞれの実施時期と施肥量の目安についてまとめましたので、参考にしてください。
追肥・土寄せ | 実施時期 | 施用目安量(1平方メートル当たり) | 土寄せの量 |
---|---|---|---|
1回目 | 植え付けの約1ヶ月後 | 化成肥料50g程度 | 厚さ6cm程度 |
2回目 | 1回目の約1ヶ月後 | 化成肥料50g程度 | 厚さ6cm程度 |
3回目 | 2回目の約20日後 | 化成肥料50g程度 | 緑葉の合わせ目の少し下まで |
4回目 | 3回目の約1ヶ月後 | なし | 緑葉の合わせ目の上まで |
根深ネギの栽培でいちばん重要な点と言ってもいいのが「土寄せ」です。ポイントは「1回の土寄せを深くしすぎない」ことです。複数回に分けて少しずつ土寄せしていきましょう。そうすると軟白の部分がしっかりと作れますよ!
プランター・鉢植えの場合は?
プランターの場合でも土寄せを実施します。余っている用土・培養土で土増しをするのが基本的なやり方です。
もう一つのやり方として、「新聞紙で軟白部分を覆う」ことで土寄せの代わりをします。新聞紙は、ネギの軟白部分全体が隠れるように覆い、生長に合わせて高さを変えていってください。このとき、高さの目安は、緑葉の付け根部分(葉が分岐し始めているところ)が隠れるくらいの高さです。
追肥も必要ですが、畑の場合と同じタイミングのときに、化成肥料や発酵鶏糞などを軽く散布してあげてください。
病害虫
病気
ネギは過湿になるとカビが原因で起こる病気「べと病」「黒斑病」が発生しやすくなります。また土壌pH低く、窒素肥料の多いと「葉枯れ病」が発生しやすくなります。これらの病気は、葉が枯れるだけでなく黒や白色の斑点がでます。葉先だけでなく、葉全体をみて病気かどうか判断しましょう。
害虫
ネギは、ネギアブラムシ、ネギアザウマ、ヨウトウムシなどの害虫が付きやすくなります。これらは食害により葉に穴を開けたり、白い筋をつけそこから枯れていきます。またアブラムシやアザウマはウイルスを媒介するため、病気を発生させるので見つけたらすぐに駆除しましょう。
まとめ
ネギは、リボベジすればすぐに収穫できますが、タネから育てるには日数も手間もかかります。また根深ネギは土よせして、甘く白い根をつくるのは家庭菜園では難易度が高いともいわれます。
初心者の方にも、家庭菜園のベテランの方でも広くたのしめる奥の深いネギ。毎日の食卓にも使えるのでぜひ工夫しながら、楽しいネギ栽培を始めてみてください。農家webには肥料の記事のほか、下記の記事以外にも、いろいろなネギの栽培の記事もありますので、検索バーから一度検索してみてください。