トウモロコシは野菜の中でも肥料食いの代表格で、肥料が不足すると実入りがわるくなったり、トウモロコシの糖度が上がらなかったりします。ここではトウモロコシへの上手な肥料のやり方、おすすめの肥料や栽培のポイントをまとめています
トウモロコシの肥料の時期と与え方
トウモロコシに施肥は基本的に3回。植えつけ時に元肥を、追肥を雌穂が分化する直前に1回目の追肥を、雄穂の出始めに2回目の追肥をします。
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
トウモロコシは、種まきから収穫まで約90日と成長期間が短いので元肥が大切です。畑や庭植えなどでは、堆肥を1㎡あたり2kg~3kgたっぷり入れ、さらに有機肥料や化成肥料を施します。
鉢植えやコンテナでは、野菜用の培養土を使い、緩効性肥料を施します。
追肥1回目
1回目の追肥は、雌穂(しすい・めすほ)が分化する直前に、本葉が5~6葉(草丈50㎝程度)になったら追肥をします。窒素分とカリ分の多い化成肥料を、株元に追肥し倒伏防止のため土寄せをしておきます。
追肥2回目
2回目の追肥は、株の先端に雄穂(ゆうすい・おすほ)が見えたら、追肥を行います。1回目と同様に窒素分とカリ分の多い化成肥料を、株元に追肥し倒伏防止のため土寄せをしておきます。
土壌と肥料について
美味しいトウモロコシを収穫するためには土作りが重要です。土作りは、4週間くらい前、遅くとも植え付けの2週間前には行いましょう。トウモロコシは、比較的土壌を選ばない植物ですが、吸肥力が非常に強いため、堆肥や化成肥料を使って土壌を肥沃にする必要があります。また、土壌酸度があまりにも酸性側に傾いているときには、石灰質肥料(苦土石灰など)による土壌酸度のアルカリ性側への矯正も必要となってきます。
- 植え付けの3〜4週間前石灰質肥料の散布、植え付け(定植)予定の3〜4週間前に苦土石灰や炭酸カルシウム(炭酸石灰)などをまいて、耕しましょう。
- 植え付けの1〜2週間前堆肥、元肥の散布、植え付け予定の1週間前には完熟堆肥と元肥(緩効性肥料、有機質肥料など)をまいて再度よく耕します。
堆肥について
土づくりに大切なのは、堆肥です。堆肥には木の葉などを主原料にした植物性堆肥と動物の糞などを主原料とした動物性堆肥があります。
土壌改良効果が高いのが、植物性堆肥のバーク堆肥や腐葉土、動物性堆肥には牛糞や馬糞が繊維分を多く含むため、土をふかふかにします。腐葉土は用土の一種のため野菜用の培養土などによく使われ、鉢植えやプランターなどでもつかわれます。
肥料不足について
トウモロコシは、肥料を好みます。特に追肥のころは、収穫時の実の大きさが決まる大切な時期です。一番わかりやすいのは、葉が黄色くなったり、下葉が枯れたりします。肥料の過不足をきちんと確認してから、追肥をすると実つきのよいおいしいトウモロコシを収穫することができます。肥料不足の確認方法と対処法の記事もありますので参考にしてください。
肥料のあげすぎ
肥料は、多ければ多いほどよいというわけではありません。土中肥料の濃度が高くなりすぎると、根が吸水できなくなり、植物に障害が発生したり枯れてしまったりすることがあります。これが「肥料焼け」です。
トウモロコシの場合は、肥料不足のほうに気が行きがちですが、生育状態が悪い場合には肥料をあげすぎの可能性もあります。最初の追肥の後、生長が遅れて生育不良で背丈が伸びないときは肥料不足を疑いますが、肥料過多の可能性もあります。葉の色で判断できます。葉が一様に濃い緑色の場合で生育が遅れている場合は、肥料が過剰になり根が傷んでしまったことが原因です。
健康な葉は、新葉は色が薄めで展開葉は緑色が濃くなるため色のコントラストがはっきりと出るのです。この場合は、肥料を与えると余計に弱ってしまうため水をたっぷり上げて肥料を流してください。
トウモロコシ肥料の種類とおすすめ肥料
有機肥料
畑や地植えなどには、有機肥料がおすすめ。トウモロコシには鶏糞、米ぬか、油かすなどが使えます。鶏糞は肥料成分が高く、元肥や追肥にも使えます。油粕はトウモロコシを甘くするとよくいわれますが油粕単体だと元肥にはリン酸やカリウムが足りないこともあります。油かすを原料とした発酵油かすやぼかし肥料などで、リン酸やカリ分が入っているものを使いましょう。
米ぬかは効果がゆっくりでるため元肥に向いています。肥料として使う場合は脱脂米ぬかをつかいましょう。生の米ぬかは、分解が遅く土の中で固まりやすいので、害虫の発生害虫の巣になってしまうこともあります。生の米ぬかはぼかし肥料の発酵促進剤として使えます。
化成肥料
固形肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。追肥には、NK化成など窒素とカリのみを含む肥料でもよいでしょう。
手に入りやすい肥料としては、メーカーが野菜や果菜用の肥料もおすすめです。ハイポネックスジャパンの「Plantia 花と野菜と果実の肥料」や住友化学園芸の「マイガーデンべフル」などが使えます。またトウモロコシ専用の肥料も初心者の人にはおすすめです。
液体肥料
肥料不足の場合やプランター栽培には追肥として液体肥料をつかってもよいでしょう。育苗を別で行ったり、購入した苗は一度希釈した液肥につけてから植えつける方法もあります。液体肥料は野菜用のものを使うとよいでしょう。住友化学園芸の「マイガーデンベジフル」やハイポネックスジャパンの「野菜の液肥」などがあります。
その他 甘いトウモロコシを栽培するポイント
トウモロコシの基本情報
作物名 | トウモロコシ |
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科目 | イネ科 |
原産地 | メキシコからアメリカ北部 |
収穫までの日数(目安) | 播種後、約90日前後 |
栽培できる地域 | 全国 |
土壌酸度(pH) | 5.5〜7.0 |
連作障害 | なし |
発芽適温(地温) | 25〜30℃ |
生育適温 | 20〜30℃ |
トウモロコシは、イネ科トウモロコシ属の1年生植物です。高温、多日照の環境を好み、夏場の栽培作物としてとても育てやすく、栄養価も高いことから家庭菜園でも人気があります。
品種
スーパーで売られているトウモロコシは、スイートコーンです。スイートコーンの中でも実がやわらかく、糖度が高いのが「ハニーバンダム」。受粉率の高い「ゴールドラッシュ」黄色と白色のまだらの実で、実が甘くやわらかい「しあわせコーン」「カクテル84EX」などが人気があります。
ポップコーンになる爆裂種の品種には「まるカップ」などがあります。
日当たり
トウモロコシは高温、多日照の環境を好みます。光飽和点も高いので、日照に当たれば当たるほど生長が良くなります。直射日光のあたる日なたで管理しましょう。
水やり
水やりのポイントは、3つ。
- 種を直播した場合は、種をまいたらたっぷり水を与え発芽までは、こまめに水やりをしましょう。
- 追肥の後の水やりも重要です。追肥のころは水を欲する時期でもあります。追肥後はたっぷりみずやりをしましょう
- 生育後半の水やりはたっぷり。受粉以降から収穫までは水切れに注意しましょう。
受粉
トウモロコシは、風によって受粉します。畝は2列以上で植えましょう。品種は同じものを一種類植えましょう。株の頭に雄花が出た少し後に、雌花の絹糸のような毛がでます。この毛で雄花から飛んできた花粉を受け止めて受粉します。
鉢植えなど、栽培株数が少ない場合は受粉不良で実入りが悪くなることもあるので、人工受粉をしましょう。雄花を切り取って、雌花の毛に花粉を振りかけてあげるようにして行います。
摘果
トウモロコシは、複数の雌穂を付けて生長していきますが、栄養分を集中させるために1つの雌穂だけを残して他のものは摘除(摘果)してあげましょう。雌穂の間引きのタイミングは、1番上の雌穂の絹糸(ヒゲ、毛)が出始めた頃に実施します。
大きな雌穂だけを残して、下のほうの小さな雌穂は取り除きます。基本的には1番上にある雌穂が1番状態が良いものになりますので、それ以外は取り除くイメージで大丈夫です。このとき、株元の脇芽はそのままにしましょう。株元の脇芽は、光合成をしてくれる重要なエネルギー源となります。
摘除した雌穂は、小さいものはヤングコーンとして食しても良いでしょう。ただし、以下の場合は控えてください。トウモロコシとヤングコーンは全く別の作物なのです。
- トウモロコシ適用の農薬などを散布した場合
- 食用として販売する場合
収穫
スイートコーンは収穫期を逃すと、実が固くなり味が落ちてしまいます。収穫適期を知るには雌穂の絹糸(ヒゲ)が出た日をメモしておきましょう。おおよそ20日後が収穫適期です。絹糸(ヒゲ、毛)が茶色に地縮れてきた頃が収穫のタイミングです。そのころに先端まで実が入っているのを確認して収穫しましょう。トウモロコシは冷え込んだ夜に糖度があがるため、早朝に収穫するのがおすすめです。
収穫したものは時間が経つにつれて甘みがなくなってきますので、早いうちに召し上がることをおすすめします。もし、すぐに食べることができない場合は茹でておきましょう。
除草
トウモロコシの栽培期間は、雑草も大きく成長する時期でもあります。雑草が畑に生えるとトウモコロシの生育に影響を与えるだけでなく、病害虫などの被害にあうリスクも増えます。
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽、生育を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
とうもろこしの栽培には、土壌処理剤を播種と同時に散布し、その後土壌処理剤で処理できなかった雑草を、茎葉処理剤を使って体系的に除草剤を使うとよいでしょう。とうもろこし栽培に使える除草剤や使い方については、こちらの記事を参考にしてください
病害虫
病気
トウモロコシは、病気には比較的強いですがモザイク病、倒伏細菌病、すす紋病などの病気にかかることがあります。モザイク病はアブラムシがウイルスを媒介するので害虫対策をしましょう。カビ菌が病気の原因となりますので、梅雨時期などが注意が必要です。水はけのよい環境で育てましょう。
害虫
トウモロコシの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。トウモロコシには、アワノメイガの幼虫、アブラムシ、イヨミトウ、アワヨウトウ、カメムシなどの害虫が発生しやすくなります。
これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。アワノメイガが特に注意が必要なので専用の殺虫剤もあります。
アブラムシ・カメムシの防除に関しては詳しい記事があります。
種まき・畝立て・育苗・マルチング
その他、種まき・畝立て・育苗・マルチングなどはトウモロコシ栽培の記事がありますので、詳しい栽培方法はそちらも参照ください。