おいしい人参を栽培するには肥料はどのように与えたらよいのでしょうか。この記事では人参の肥料について、必要な肥料成分や地植えやプランターでの与え方、時期、おすすめ肥料の他栽培のポイントなどを説明します。
人参(ニンジン)栽培に肥料を与えるポイント
人参は品種や、育てる場所によって施肥量は異なりますが、1㎡あたり、窒素(N)=15g・リン酸(P)=20g・カリ(K)=15g程度が目安です。8割を元肥で、追肥で2割ほど与えます。
元肥には緩効性肥料を追肥には速効性肥料を使いましょう。
畑などの地植えでは、有機肥料がおすすめですが、未熟な堆肥や有機肥料を使うと、根の先端が枝分かれしたり、尻つぼみになってしまう岐根(またね)などの障害が起きやすいため完熟肥料を使いましょう。溝施肥も有効です。
プランターなどでは有機肥料は臭いが気になるという人には、有機入りの化成肥料もおすすめ。追肥には速効性の化成肥料がおすすめです。
人参はホウ素が不足すると、表面が黒ずみ、サメ肌のようになります。米ぬかや油粕などの有機肥料には微量要素が含まれているため、不足の心配はあまりありませんが、化成肥料のみを使う場合は、ホウ素が配合されているものがおすすめです。
人参(ニンジン)におすすめの肥料
有機肥料
人参栽培の元肥には微量要素の含まれる有機肥料がおすすめです。しかし有機肥料は未成熟のものを使う時は、人参の生育に影響がある場合があるので注意して使いましょう。
鶏ふん
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。堆肥としても使われますが、土壌改良効果はあまりないので肥料として使うのが一般的です。全面施肥の場合は、発酵鶏糞でも腐熟が不十分な場合もあるので、1か月までには施しましょう。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
元肥として使う場合には、骨粉、草木灰でリン酸とカリウムを補充します。ダイズの油粕がホウ素が豊富に含まれています。
ぼかし肥料
ぼかし肥料とは、米ぬかや油粕などの有機物が含まれた有機肥料を土やもみがらなどと混ぜて、微生物の力を借りて一次発酵させた肥料です。散布する前に微生物の力で分解させておくことによって、未発酵の有機肥料よりも効き目が表れるのが早まります(速効性肥料に近づきます)。
また、一次発酵で分解されていない有機物はそのまま残りますので施肥後にそれらが分解されて肥効が長続きします。有機質肥料であり、土壌の物理性や生物性の改良にも繋がります。
有機100%配合肥料
肥料成分のバランスがよくなるよう配合された肥料です。製品によって異なるのでパッケージをよく読んで使いましょう。基本的には元肥、追肥にも使えるものが多くあります。
化成肥料
肥には有機肥料がおすすめですが、プランターなどでベランダで育てる人には臭いや虫が気になる人もいるでしょう。その場合は化成肥料を使いましょう。また実がついた後の追肥にはすぐ効く化成肥料がおすすめです。
固形肥料
化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。追肥にも使えます。追肥には、NK化成肥料など窒素とカリのみを含む肥料もおすすめです。
人参専用肥料
人参専用の肥料は、人参に必要な成分が既に含まれており施肥量などもパッケージに書かれているので、初心者の方にもおすすめです。元肥にも追肥にも使えます。「サンアンドホーム 大根・人参・かぶの肥料 」は100%化成肥料ですが、ホウ素と苦土の微量要素が配合されています。「アミノール化学 大根・人参専用肥料」は有機配合肥料です。
野菜用の肥料
ホームセンターなどで手に入りやすいのは、メーカーから販売されている野菜用の肥料をつかってもおいでしょう。有機肥料が配合されている「ハイポネックスジャパンのいろいろな野菜用粒状肥料」や「住友化学園芸のマイガーデンベジフル」などがおすすめです。
液体肥料
肥料不足の場合やプランター栽培には追肥として液体肥料をつかってもよいでしょう。液体肥料は野菜用のものを使うとよいでしょう。液体肥料を使う場合は、本葉が5~6枚になり1本立ちしたら、2週間に1度水やり代わりに与えます。住友化学園芸の「マイガーデン液肥」やハイポネックスジャパンの「野菜の液肥」などが人参に使えます。
人参(ニンジン)の肥料の与え方
人参は畑などの地植えでも、プランターでも基本的に肥料は元肥を施して種をまき、本葉が4~5枚ほどになったら、間引き後追肥をします。
地植え
未熟な堆肥や有機肥料を種まき前に施すと、根の先端が枝分かれしたり、尻つぼみになってしまう岐根(またね)がおきるリスクが高くなります。できれば前作で堆肥は施しておきましょう。未熟堆肥でも種まきまでに腐熟する期間が十分あれば全面施肥で行うことができます。施肥前に時間がない場合は、溝施肥がおすすめです。
元肥① 全面施肥
元肥の方法で、畑全体にまんべんなく肥料を与えることを全面施肥(全層施肥)といいます。多くの野菜に使われる元肥の方法で、肥料が緩やかに長く効く施し方です。堆肥や肥料に有機肥料を使う前には、種まきの1か月前までに、寒い時には発酵が遅くなるため春まき、冬まきは2か月前までに行いましょう。化成肥料のときは2週間前までに行います。
- 栽培するスペース(畝)を決め、深さ30~40㎝ほどに深く耕し、土や石などを取り除きます。
- 完熟堆肥1㎡あたり1kgを畝全体にまきます。
- 元肥として化成肥料や有機肥料をまき、土を細かく耕しておきます。
- 畝幅60cm~70㎝の平畝を作ります。
- 1カ月ほどたったら、種まきをします。
元肥② 溝施肥
元肥の方法で、畝の中央に溝を掘って肥料を埋め込んで与えることを溝施肥といいます。初期生育がよくなり、岐根(またね)などのリスクを軽減します。
- 栽培するスペース(畝)を決め、深さ30~40㎝ほどに深く耕し、土や石などを取り除きます。
- 畝の中央に深さ20~30㎝、15㎝ほどの溝を掘る。
- 溝に、完熟堆肥と元肥として化成肥料もしくは有機肥料をれ土を戻しよく、混ぜ込みます。
- 2週間ほどたったら、種まきをします。溝から15㎝ほど離したところに種をまきます。
追肥
追肥は間引き後に行います。間引きは基本的には2回行います。1回目は、本葉が2~3枚の時期に、株間が2~3㎝になるように間引きします。2回目は本葉が4枚~5枚の時期に、株間が10㎝程度になるように間引きをします。
2回目の間引きが終わったら、追肥をします。畝の横の通路に化成肥料をまいて5㎝ほど軽く耕す中耕をして、人参の株元にその土を盛り上げて軽く土寄せをします。土寄せは、中心の新芽が埋まらない程度に行います。
鉢植え・プランター
ミニニンジンであれば、鉢植えやプランターでの栽培も可能です。ミニニンジンは、そのままサラダとして食べれるものが多く、葉っぱもおひたしやてんぷらで食することができます。鉢植えなら8号~9号、プランターなら横幅60㎝~65㎝程度のものを使って育てます
元肥
ミニニンジンであれば、鉢植えやプランターでの栽培も可能です。ミニニンジンは、そのままサラダとして食べれるものが多く、葉っぱもおひたしやてんぷらで食することができます。鉢植えなら8号~9号、プランターなら横幅60㎝~65㎝程度のものを使って育てます。
用土は野菜の培養土が便利。元肥入りのものは肥料が入っているため追加で与える必要はありません。自分で配合する場合は、赤玉土7、腐葉土3などの配合がよいでしょう。元肥には、緩効性肥料を用土に混ぜて施します。
追肥
追肥は、地植えと同様に2回目の間引きが終わった後、速効性の固形の化成肥料を株と株の間に施します。水やりがわりに液肥を与えてもよいでしょう。追肥をしたら、土を足して株のまわりに土寄せをおこないます。土から除く根の直径が1.5㎝ほどになったら収穫します。
間引きは、本葉が2枚ほどになったら1回目の間引きをします。2回目は本葉が4~5枚になったころ株間が6㎝ほどに間引きます。
土壌と肥料について
人参だけでなく野菜づくりには、その野菜に適した土づくりが大切です。人参は酸性土壌が苦手です。人参の最適土壌pHは、5.5~6.5です。ダイコンは酸性土壌にも強いですが人参は、pHが5.3以下になるとあきらかに生育不能になります。
日本の土壌は酸性に傾きやすいため、苦土石灰などを種まきの2週間前には施しておきましょう。phの値を1上げるには1㎡あたり100g~150g必要になります。
人参は種まきの直前に未熟な堆肥や、鶏糞などを使うと又根になる可能性が高いため、基本的に堆肥は前作で施しておき、有機肥料を使う場合は発酵済のものを使うようにし、1か月までに施肥しておくと安心です。
追肥のポイント
追肥は、庭植えも鉢植えも最終間引きの後に行うのが基本です。しかし本来追肥は、苗の様子をみて追肥する量や頻度を決めるものです。
肥料を与える前に、苗の様子を観察してみましょう。草勢いが強く、葉の色が濃く地面についたようになっているのは肥料が多い可能性があるので、追肥は行わなくても大丈夫です。また生長途中で葉っぱが黄色くなってきたら肥料切れの可能性もあるので、病害虫の害でなければ追肥をしてあげます。
その他 人参の栽培のポイント
人参(ニンジン)の栽培時期
人参はセリ科の野菜で、冷涼な気候を好みます。最適生育温度は、18℃~21℃です。発芽温度は15℃~25℃で、30℃を超えると発芽しにくくなります。
家庭菜園などでは、幼苗の時期は比較的暑さに耐えることができるため、夏まき栽培が一番作りやすくおすすめですが、春まき栽培や秋まき栽培でも育てることができます。
夏まきの場合は、7月中旬から下旬に種をまき、秋の生育適温時期に根を肥大・着色させて秋から冬に収穫します。春まきは、寒冷地では4月以降に種まきをしても夏が涼しいため収穫が可能ですが、関東西以では、3月中旬から下旬にマルチ栽培でタネをまいて育てます。生育後半に気温が高すぎると、黒葉枯病や黒斑病などの病気にかかりやすくなります。
発芽の成功率を上げるには
人参は発芽が成功すれば、栽培の半分が成功といわれるほど発芽不良が起こりやすい野菜です。タネは多めにまいた方がよいでしょう。発芽の成功率を上げるにはいくつか注意点があります。
- 種を選ぶ ニンジンの種は短命で、採取翌年の夏を越すと発芽が悪くなります。タネはあたらしいものを、また人参にはペレット種子もありますので、そちらもおすすめです。
- 覆土は薄くしすぎない 人参の種は好光性だからと覆土を薄くしすぎると、乾燥や温度が高温になったり低温になりすぎたりします。裸種子が5mm~10mm、ペレット種子の場合は10mm程度がよいでしょう
- 乾燥させない 発芽の好適水分は20%~60%で土をもったときに崩れない程度の水分が必要です。夏まきで発芽まで8日程度かかるのでこの間は乾燥しないように注意が必要。とくにペレット端子は乾燥に弱いので注意しましょう。わらやもみ殻をかるく被せるのも乾燥や雑草も防ぐことができます。
- 温度 発芽温度は4℃~33℃と幅広いのですが、適温は15℃~25℃。できるだけこの温度にちかいときに種まきしましょう
病害虫
人参は、肥料切れをおこすと黒葉枯病や黒斑病にかかりやすくなります。また高温多湿によりしみ腐病が発生しやすくなります。畑の排水をよくし多発するようでしたらしみ腐れ病に強い品種を植えるとよいでしょう。
害虫は、アブラムシやキアゲハの幼虫が発生しやすいので、見つけたらすぐ駆除しましょう。夏まき栽培ではやや遅く種まきをした方が病害虫の発生を抑えることができます。連作も可能ですが、ネコブセンチュウの被害により又根の原因にもなりますので、被害が心配されるときは作付け前に、殺虫剤で土壌を消毒しておきましょう。