葉に水分を蓄えることができるので、水が少ない場所でも自生する多肉植物。最近は100均などでもさまざまな種類の多肉植物が売られています。過湿が苦手な多肉植物ですが、水栽培(水耕栽培)で育てることもできます。
この記事では、多肉植物の水栽培の始め方、失敗しない育て方などを初心者の方でもわかりやすく説明します。
多肉植物の水耕栽培について
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つ。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく果物や花など、様々な植物を衛生的簡単に育てることが可能です。プロの農家だけではなく、家庭菜園・園芸でも人気の栽培方法で、最近では室内やベランダなどで簡単にできる水耕栽培キットが人気です。
ハイドロカルチャーも土をつかわず、水で栽培する方法の一つで、土の代わりにハイドロボールやゼオライトと呼ばれる培土をつかって栽培する方法です。培土を使うと、根が伸びやすく植物を固定させることができるので、観葉植物にもよく使われます。
野菜などは水耕栽培の方が成長が早いといわれますが、多肉植物で水耕栽培を育てる場合はあまり大きくはなりません。多肉植物を大きくさせたり、たくさん増やして多肉丼などを作りたいという方には、向いていません。
まるで花瓶に花を飾るように多肉植物を楽しんだり、あまり大きくなると植え替えが必要になる「テラリウム」を楽しみたいという方には、多肉植物の水耕栽培はおすすめです。
水耕栽培におすすめの多肉植物
土で育っている多肉植物を、水耕栽培で育てる場合は植え替えが必要になります。根を切ったりする必要があるため、うまくいかないこともあります。長い間土に植えた植物を、水栽培に変えるのはリスクが大きいので、小さな苗や、子株ができるタイプでしたら子株から始めるのがおすすめです。
初めての水耕栽培には、サボテンがおすすめです。サボテンは多肉植物の中でも丈夫で、子株をふやして増えるものが多いので、失敗が少ない多肉植物です。
その他、根が付いていない状態の裸苗で販売もされているサンスベリアは、水栽培で発根が容易です。また強い光が苦手なハオルチアは室内でも育てやすいですし、セダムやエケベリアも丈夫な品種が多いので、初心者の人でも育てやすい品種です。
また根腐れしてしまったアガベなどは、水栽培で復活させてから土壌栽培に移行される人も多いようです。
個性的な葉をもつカランコエや、グリーンネックレスは水挿しから水耕栽培に移行できるので、剪定した茎などを使って水耕栽培を始めるのもよいでしょう
水栽培を始める時期
水栽培を始めるには植物の生育期が適期です。多肉植物は、原産地の環境ごとに「春秋型」「夏型」「冬型」の3つの生育サイクルに分かれています。それぞれ生育期と休眠期が異なります。
それぞれの生育期時期に始めると、失敗が少なくなります。また生育初期に行うと、植え替え後の生育期が長くなりうまく育ちやすいので、おすすめです。夏型は、夏が生育期ですが日本の夏は、多肉植物にとって湿度が高すぎます。「春秋型」と同様に春か秋に始めるとよいでしょう。
多肉植物の水耕栽培の手順
ここでは、鉢植えの多肉植物の苗をつかった、水栽培への植え替えの手順について説明します。土で育った根を終わらせ、水栽培用の根を生やす方法です。
準備するもの
- 多肉植物の苗
- 透明なガラスの器(空き瓶やグラス・ペットボトルなどでもOK)
- ハサミ、カッター(ライターなどであぶって消毒しておく)
手順
- 土から水に植え替える多肉植物は1週間ほど水を上げずに乾燥させてから、鉢から外します。
- 根っこをほぐすように土を落とし水で洗い流します。
- 根元を2㎝ほど残して、カッターやハサミで切り落とします。カッターやハサミはライターなどであぶって消毒をしておきましょう。
- 室内の日の当たらない場所で、新聞紙などの上で2~3日乾かします。切り口が湿ったままだと病原菌が発生する恐れもあり、根の傷口をふさぐためにも大切なステップです。ここで土で育っていた根が役割を終えます。
- 切り口が乾いたら、多肉植物の根が、水面ギリギリになるように水をいれて、器にセットします。
- 室内に日陰に置いて、2~3日に一度水を交換して発根するまで待ちます。早ければ2~3週間で根がでてきます。
発根促進剤について
多肉植物は、生育期であれば水だけでも発根しますが、発根を早くしたり太く元気な根を促進させるために、発根促進剤も有効です。植物活力素 メネデールは、発根だけでなく肥料でも農薬でもないので、発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます
ハイドロカルチャーへの植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります
ハイドロカルチャーでの植え替え方法の手順を説明します。鉢植えで育った苗は土をよく水洗いして、乾燥させてから植えつけるやり方もありますが、できれば土の根を終えて水栽培用の根を生やしてから使うのがおすすめです。
準備するもの
- 水栽培用に発根した多肉植物の苗
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- ハサミ
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろや、ピンセットなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- 多肉植物の苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の5分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
ハイドロカルチャーでの多肉植物の育て方の詳しい記事もありますのでハイドロカルチャ―に興味のあるかたはお読みください
多肉植物の水耕栽培での育て方のポイント
環境・日当たり
多肉植物は、日の当たる風通しの良い場所を好みます。日が当たらないと、ひょろひょろと徒長してしまったり、ぷっくりとした葉が薄くなってしまったりします。室内でもできるだけ日の当たる窓辺で育てましょう。しかし水耕栽培では、室内のどこにでも飾れるのが魅力です。日の当たらない場所に置きたい場合には、1週間ごとにローテンションさせてあげるのもおすすめです。
耐寒性や耐暑性は、生育タイプによりますので、その多肉植物の性質に合った温度で育てましょう。暑さに強い品種でも、高温多湿な日本の夏はあまり得意ではありません。夏場は直射日光は避け、風通しの良い場所で管理しましょう。
冬型の多肉植物は比較的低温を好みますが、寒さに強いというわけでありません。室内の5℃以下にならない場所で管理しましょう。
水やり
水栽培で育てる場合には、根が生えるまでは根が水面ギリギリつくくらいで育てますが、根が生えてきたら水位を変えて育てます。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水の交換は週に1回、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、特に夏場は注意し、水の交換頻度を増やしてあげましょう。
ハイドロカルチャーの水やり
多肉植物は、生育期と休眠期で水やりの量を変える必要があります。ハイドロカルチャーでもそれは同じです。
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てるます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。生育期である春から夏は、鉢の中が乾いてから3日~5日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の5分の1程度まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから3~5日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。秋から水やりの回数を減らし、休眠期の冬は、月に1~2回、霧吹きで水を上げる葉水で行います。多肉植物の場合は葉水といっても、葉ではなく根元を濡らしましょう。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
水位計は、ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、水位計があると安心です
肥料
多肉植物は、水だけでも育てることができます。肥料を使うと生育が早くなったり、葉が大きく広がります。肥料を使いたい場合には、水耕栽培用の肥料を使いましょう。肥料はそれぞれの生育タイプに合わせ、生育期に月に1回~2回ほど、水に薄めて使います。
水の交換のときか、ハイドロカルチャーの場合は水やりのときに水代わりに規定量より薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、ガラスの容器を使っている場合は、水草用の肥料もおすすめです。
水栽培やハイドロカルチャーに使える液肥は、ハイポネックス微粉やハイポニカ液体肥料や水草用メネデールなどがあります。
多肉植物の選び方
多肉植物は春秋型、夏型、冬型の3タイプに別れ、それぞれ生育期と休眠期が異なります。水栽培を始めるときにには、それぞれの生育期に苗を購入するのがおすすめです。
手軽に買える100均で売られている多肉植物は、比較的増やしやすく丈夫な品種が多いので、インターネットなどで、多肉植物の名前から生育タイプを調べて育ててみましょう。
葉がつまっていて、ハリがあるもので、根がさわっていてもグラグラしていない苗を選びましょう。根がついていないカット苗も最近は見かけます。さし木用の苗で、多肉植物は挿し木でも簡単に育つので、根が乾燥しているならそのまま植えつけることもできます。
多肉植物の生育タイプと特徴
多肉植物は、雨が少ない場所や岩場などに生育するものが多い植物で、乾燥した過酷な環境を生き抜くために、根や茎、葉などを肉厚にして水分を蓄える性質をもつ植物です。サボテンも多肉植物の一種です。
多肉植物は、原産地の環境ごとに「春秋型」「夏型」「冬型」の3つの生育サイクルに分かれています。それぞれ生育期と休眠期が異なるため季節ごとの管理方法が変わります。
春秋型
春と秋に盛んに生育するタイプです。多くは生育適温が10〜25°Cの範囲にあり、夏は暑さのせいが生育が悪く、根腐れや蒸れを避けるために、休眠させる必要があり、冬は寒さのために自然に休眠します。茎や葉が柔らかく、色鮮やかで草花のような雰囲気を持つ多肉タイプです。
夏型
夏に盛んに生育するタイプです。多くは生育適温が20〜30°Cの範囲にあり、春と秋はゆっくり生育し、冬は休眠します。このため、春と秋は、水やり、肥料を少な目にする必要があります。
シャープなフォルムの多肉植物はこの多肉タイプです。
冬型
冬に盛んに生育するタイプです。多くは生育適温が5〜20°Cの範囲にあり、気温が一定以下になると生育を始めます。高温多湿が苦手で、冬であっても高温多湿な室内などでは生育を止めてしまうことがあります。春と秋はゆっくりと生育するため、水と肥料を少量施します。個性的な多肉植物はこのタイプが多いです。