水だけで育てられる球根の水耕栽培(水栽培)は、インテリアとしてもおしゃれで人気があります。しかしすべての球根が水栽培に向いているというわけではありません。
この記事では、球根で水栽培を始めたい方のために、おすすめの球根や始め方、育て方など初心者の方にもわかりやすく説明します。
水耕栽培向きの球根
そもそも水耕栽培とは、土を使わず培養液(肥料分を含んだ水)で、野菜や草木を栽培する方法です。しかし球根は、内部に養分をたっぷり含んでいるため、肥料がなくとも水だけで花を咲かせることができます。
しかしすべての球根が水栽培に向いているわけではありません。球根は、生育時期の違いにより「秋植え(春咲き)」、「春植え(夏咲き)」「夏植え(秋咲き)」の3つに分けられます。水栽培に向いているのは、球根内部に花芽ができている「秋植え(春咲き)」球根に多くあります。
秋植え球根の中でも、丈夫で育てやすいのは、「ヒヤシンス」「クロッカス」「ムスカリ」「スイセン(水仙)」は初心者にもおすすめです。チューリップも秋植え球根ですので水栽培は可能ですが、少し温度管理が難しくなります。
球根の選び方・殺菌・保管
秋植えの球根は、9月頃からお店に並び始めます。水栽培を成功させるには、よい球根を選び、植え付けまでしっかり保管しておくこと。時間があれば殺菌作業をしておくと。カビや病気にかかりにくくなります。
よい球根の選び方
水栽培には、栄養が必要なので大きい球根を選びましょう。
- 全体的に大きく張りがあり、ふっくらとして厚みがある
- 虫に食われていないか、カビが生えていたり、変色していないか確認
- 早い時期に買う場合は、皮がむけていないもの
球根の殺菌
球根はカビが生えたり、病気になることがあります。殺菌してから保管しておくと、カビが生えるのを防いでくれますし、植え付け後もカビや病気の予防になります。ひと手間かかりますがやっておくと安心です。
球根の殺菌剤は、ホームセンターなどで購入できます。「GFベンレート水和剤」や「オーサイド水和剤」などがあります。薬剤を水に溶かしてつけるだけです。時間や水・薬剤の量などは、説明書をよく読んで使いましょう。そのあとは日陰で干して乾燥させます。販売されるときのネットを使うと、そのまま、干して乾燥させられるので便利です。
保管
球根を手に入れてから、植え付けまでに時間がある場合は「日が当たらない風通しのよい屋外」で管理しましょう。
秋植え球根は、一定期間低温を経験させないと花が咲きません。これを休眠打破といいます。屋外で花芽がでるまで育てれば、球根はきちんと育ちます。九州や沖縄などの気温が暖かい地域や、早く花を咲かせたい人には、この特性を生かした冷蔵球根が販売されています。また購入した球根を、紙袋にいれ冷蔵庫に1か月程度入れてから、植え付けをする方法もあります。
水耕栽培(水栽培)の手順
では、球根の水栽培の基本の手順を説明します。ここでは発根していない球根で説明しますが、12月以降に芽がでていすでに芽がでている球根(芽出し球根)から、水栽培に移行することも可能です。秋植え球根は、10月~11月頃が植え付けの時期です。年内に開花するスイセンは少し早く9月下旬ころから植えつけできます。
必要なもの
- 球根
- 水耕栽培用の器(根が見えるようにガラスなどがおすすめ。球根が支えられる形のもの。花瓶などでも代用が可能です)
- 水
- 段ボールの箱(器を包んで暗くするものなら、黒い筒や袋などでもOK)
手順
- ふっくらして大きな球根を使います、カビなどが生えていないか確認します。
- 器に水を入れる
- 球根を尖ったほうを上にして、2の器にセットする。水位は、球根の底がわずかに水にぬれる程度に調整する
- ガラスの器は、光を通すため土と同じ状況を作るために、根が十分に伸びるまで、(1か月~1か月半程度)段ボールを被せたり、黒い筒上のものを被せたりして暗くします。
- 球根は寒さに当てないと、花芽が伸びません。戸外や軒下など寒い場所で管理します。2~3か月程度たったら暖かい室内へ移動することで、美しい花が咲きます。
- 水は1週間に1度は替えましょう。水が濁っている場合はすぐに換えます。根が伸びたら水位を下げ、球根の根元が空気に触れるようにすることが重要です。
ハイドロカルチャーなどの資材について
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。
球根の水栽培では、根が固定できる砂利や、ビー玉、おはじきなども人気があります。ナチュラルな雰囲気がだせる、水苔も秋から冬には管理しやすいのでおすすめです。
これらの資材は、一度水で洗い(水こけは、水に浸してから使います)、ゼオライトやミリオンなどの根腐防止剤は、最初に器の底が見えなくなる程度いれておくと、腐りにくくなるのでおすすめです。
球根 水栽培の育て方
置き場所、日当たり
ヒヤシンスの球根は、発芽するまでは寒い場所で、光を当てずに育てます。発芽をしたら日によく当てて育てるのがヒヤシンスの基本ですが、水栽培の場合、直射日光は容器内の水温が高くなりすぎる危険があるため、避けた方がよいでしょう。
理想的なのは植え付け後3カ月程度は、屋外と同じ温度で管理すると花茎が良く伸びます。明るい日陰の屋外や北向きの部屋などで管理しましょう。花芽が伸びたら、日当たりの良い暖かい場所に移動させまることで、美しい花を咲かせます。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。
理想的な水栽培の水位は、発根するまでは、球根の底に水が触れる程度、発根したら根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水の交換は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
肥料
球根の水栽培の場合、肥料は基本的には必要がありません。肥料がなくても球根に蓄えた栄養を使って美しい花を咲かせることができます。球根によっては、内部の栄養が足りない場合もあり、その場合は花を咲かせられません。
肥料を使いたい場合には、水栽培用の液体肥料(液肥)を使うか、活力剤もおすすめです。球根には「ハイポネックス キュート cute」が使えます。うすめずそのまま鉢の中の水にひと押しするだけなので簡単です。ヒヤシンスには、芽が出た後に水の交換と一緒にあげるとよいでしょう。
土壌栽培と、水耕栽培では使える肥料が異なります。水栽培の肥料についてはこちらも参考にしてください。
花が咲いた後について(球根の養生)
水栽培の球根は、球根の中にある養分を使いきってしまうので、1年で使い切りというのが一般的です。しかし土に植え替えることで翌年も花を咲かせる可能性があります。
- 花がしおれてきたら、花茎をカットする
- 植木鉢に培養土を半分ほどいれ、球根を根を広げておきます。その上から球根が見えなくなるまで、土を入れて固定します。
- 鉢から水がでるまで水やりをし、日当たりの良い屋外で管理します。
- 肥料は固形肥料を1か月に1度与えるか、液体肥料(液肥)を10日に1度与えます。(水栽培と土の肥料は異なります。土用の肥料を使いましょう)
- 5月~6月に、葉が黄色くなったら休眠状態に入る合図です。水やりをやめて、日陰の雨のあたらない場所で休眠させます。
- 秋になったら、再び水やりをしましょう。半日陰から日向に移動させて育てます。
球根別の育て方
秋植えの球根の水栽培については、それぞれの球根ごとに詳しい記事がありますので、植え付け時期などの参考にしてください。