トマト栽培では肥料を適切に与えないとおいしい果実を収穫できません。ここではトマト栽培で肥料が不足すると、どのような症状がでるのか、肥料不足の時はどのように対処するべきかわかりやすく説明します。
トマトの肥料不足の症状
では最初に、肥料不足になるとどのような症状になるか説明していきます。
草勢が弱い
生育のステージに合わせて、追肥をしていくトマト栽培では追肥のころに、茎葉の勢いで追肥の時期や量を決めていく必要があります。
通常苗から育てる場合、最初の追肥は、第一果房(一番目に付いた果実)がゴルフボール大くらいの大きさになったころ。苗の一番頂上の部分(生長点付近)の葉や花・蕾の姿を見てみましょう。草勢が足りない苗は、生長点付近の葉は、肉薄で小型化し淡い緑色に、上方に伸長します。茎は先細りし、落花が多くなります。
このような症状が出た場合は、植え付け時に施す肥料(元肥)が足りなかった可能性があります。トマトの場合は、肥料過多で草勢が強くなりすぎる、つるボケの症状が多くみられます。
夕方になっても葉がカールしない
追肥1回目の時期は、第3花房が開花するころ。この頃は生育が最も盛んに行われているため、肥料と水分を多く必要とします。今まで順調に育ってきても、急に弱ることがあります。
正常な苗は、朝は葉の色は薄く、上向きに立ち上がり、カールしていません。全体にハリがあって、葉先から水滴が多くています。昼になると葉が水平になり夜になると、葉の色の緑が濃くなって葉が弧を描く(カール)します。夕方になってもカールしないのは生育不足です。肥料や水やりで肥料生長を促す必要があります。
葉の色が薄くなり、黄化する
葉色も植物の状態を示す重要なパラメーターです。肥料が不足してくると葉の色が薄くなってきます。どの位置の葉の色が薄くなるかによって、不足していると考えられる栄養素が異なります。
- 下位葉(下の方の葉)から順番に色が薄くなったり、黄化する場合→窒素欠乏
- 下位葉から順番に黄化し、生長が止まる場合→リン酸欠乏
- 下位葉あるいは果実付近の葉の葉脈間が黄化する→マグネシウム欠乏
- 葉の縁から黄化する→カリウム欠乏
- 新葉(新芽)が葉脈も含めてすべて黄化する場合→鉄欠乏
葉枯れ・芯枯れ
トマトは、他の野菜にくらべカルシウムを多く必要とします。カルシウムが不足するとではトマトの果実のお尻(果頭部)の部分が、陥没して黒褐色になる「尻腐れ」してしまいます。カルシウム不足だけでなくカリウム不足も尻ぐされの原因となります。
カルシウムが欠乏すると、先端部の葉が黄色くなり枯れたり、生長点のある茎がかれてしまう芯枯れがおきます。早めの対応が必要です。
肥料不足の対処法
トマトの肥料不足の追肥は、速効性の化成肥料や液体肥料を使います。化成肥料の場合は土の上に化成肥料50g程度を置いて、水やりをします。液体肥料は水やりがわりに規定量に薄めた肥料を与えましょう。
また草勢が弱い時には、早めに摘果をしてから追肥をしましょう。形の良いものを1果房あたり4個程度残して、ほかは摘果(実を除去)しましょう。特に「裂果」と呼ばれる果実が割れているものや「尻腐れ果」、「乱形果」など異常がある果実は必ず摘果するようにしてください。摘果は、晴れた日に収穫バサミや剪定バサミなどで行いましょう。
追肥におすすめの化成肥料
液体肥料
肥料不足の場合やプランター栽培には追肥として速効性の液体肥料がおすすめです。チッソ・リン酸・カリ分の肥料が含まれています。住友化学園芸の「マイガーデンベジフル液肥」やハイポネックスジャパンの「ハイポネックス原液」などがあります。
カリウムの肥料
トマトの栽培にはカリウムを多く吸収します。欠乏症になると、収穫量が減ったり品質が低下します。葉先枯れ症状はカリウムの欠乏症状です。欠乏症状がでたら液体肥料で補いましょう。「トマト元気液肥」は、チッソ分が入っておらず、リン酸とカリウムを含む液肥のため窒素過多による障害の心配がありません。
カルシウムの肥料
カルシウムが不足すると、トマトに尻腐れ果が発生しやすくなります。幼苗に症状がでてから肥料を与えても回復しないため、予防としての肥料も効果的です。「トマトの尻腐れ予防スプレー」は、植物が吸収しやすい水溶性カルシウムが処方され、希釈する必要もなくそのまま散布することができます。開花後に1週間に1度、1花房ごとに3回~4回ほど行います。
その他 固形の化成肥料
肥料不足の追肥には、化成肥料もおすすめです。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、N-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。施肥した後、水やりを忘れずにしましょう。
その他のトマトのトラブル
肥料過多
肥料は与えすぎてもつるボケが起きて、収穫に影響を及ぼします。追肥をする前には草勢が強くなりすぎていないか注意する必要があります。
肥料過多の症状については、下記で説明していますので追肥の前に確認してみてください
病害虫
病気
肥料不足で葉が黄化することもありますが、病害でも葉が黄化したり、枯れることもありますので、まず最初に肥料不足より、病害虫を疑ってください。病気の場合は、病斑や萎縮(しおれ)がおきたりします。
トマトは、モザイク病、黄化葉巻病、萎凋病、疫病、葉カビ病などにかかることがあります。モザイク病はアブラムシが黄化葉巻病は、タバココナジラミがウイルスを媒介するため、害虫対策をしましょう。その他もカビ菌が病気の原因となりますので、排水を良くし、水はけのよい環境で育てましょう。
害虫
トマトの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。アブラムシ、コナジラミ、オオタバゴカ、ネコブセンチュウ、ハダニ類などの害虫が発生しやすくなります。
これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
【補足】トマトの肥料の時期と与え方
トマトの肥料の与え方のポイントは、元肥は控えめにしてコンスタントに追肥をすること。吸肥力が強いトマトは、元肥で窒素分を多く与えすぎると、茎葉が大きく育ちすぎるつるボケ(木ぼけ)がおきたり、病害虫の原因ともなります。
元肥
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
苦土石灰を苗を植え付ける3週間前くらいに散布し、一度耕うんします。1〜2週間前には、堆肥や化成肥料、リン酸肥料などを混ぜ込んでおきましょう。そのあとに畝を立てます。
畝に溝を掘り、そこに元肥を入れ込んでおくのもおすすめです(待ち肥)。
追肥
第一果房がゴルフボール大(≒ピンポン玉)くらいの大きさになってきたら、追肥を始めます。追肥は半月〜1ヶ月くらいに1回くらいの頻度で良いでしょう。化成肥料の肥効の持続性によっても変わるので、使用する肥料の使い方を確認しましょう。
液体肥料のみの追肥の場合は、1週間〜10日に1回程度の施肥が必要です。1回目の追肥は、雌穂(しすい・めすほ)が分化する直前に、本葉が5~6葉(草丈50㎝程度)になったら追肥をします。窒素分とカリ分の多い化成肥料を、株元に追肥し倒伏防止のため土寄せをしておきます。