トマトは、カルシウムが不足すると尻腐れという症状がでます。ここではトマトの肥料に大切なカルシウム肥料について、使い方やおすすめの肥料をわかりやすく説明します。
カルシウム肥料とは
まず初めにカルシウム肥料について説明します。カルシウム肥料には様々な種類があります。家庭菜園でもよく使われ土壌酸度調整に使われる、苦土石灰もカルシウム肥料の一つです。肥料で「石灰」と名前が付くものは、カルシウム系の資材となります。
「石灰」は、生石灰(酸化カルシウム・CaO)または消石灰(水酸化カルシウム・Ca(OH)2)のことを指しますが、一般的に単純な炭酸カルシウム(CaCO3)やカルシウム(Ca)を指すこともあります。
トマトのカルシウム欠乏の原因
カルシウム欠乏は、なぜ起こるのでしょうか。それは「肥料分にカルシウムが足りなかったから」と思う方もいると思いますが、実は原因はそれだけではありません。もちろん土壌中にカルシウムが足りなければ欠乏症になりますが、土壌にカルシウムがあって欠乏症がおきることがあります。
その原因は、多肥により土壌に、チッソ、カリウムやマグネシウムが多くて吸収できない。根の傷みや高温・乾燥による場合もあります。畑などではまずは土づくりをしっかりし、多肥にしすぎず適切な生育環境を整えることも大切です。
トマトに必要な肥料分について
トマトに必要な肥料成分について、説明していきます。下記のトマトの成分吸収量をみていただけるとわかるように、トマトは肥料の3要素(窒素・リン酸・カリウム)以外にカルシウムを多く吸収することがわかります。カルシウム欠乏するとトマトは、果実のお尻の部分が変色してしまう「尻腐れ果」なります。
成分吸収量(kg/a) | 窒素 | リン酸 | カリウム(加里) | カルシウム | マグネシウム |
---|---|---|---|---|---|
トマト | 2.01 | 0.60 | 3.06 | 2.64 | 0.57 |
出典:農林水産省 都道府県施肥基準等 5.野菜の養分吸収量(PDF)
カルシウム肥料の使い方
元肥
地植えでは、土壌の調整に苦土石灰を使う場合には、他にカルシウム肥料を追加する必要はありません。pHの値にもよりますが、目安は1㎡あたり100g~150g程度です。苗を植え付ける3週間前くらいに散布し、よく耕しておきます。
土壌の酸度調整が不要な場合は、pHを高める苦土石灰は使えないので、アルカリ分の含まれていない塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムを施します。こちらを使う場合は元肥や肥料と同時に行うことができます。
プランターなどでは、野菜の培養土やトマト用の培養土も販売されているのでそちらを使うとよいでしょう。元肥入りのものであれば、通常カルシウムも含まれているので追加で与える必要はありません。元肥が入っていないものは、緩効性肥料でカルシウム入りのもの(マグアンプKなど)を使うとよいでしょう。
追肥
トマトの追肥は、第1果房がピンポン玉ぐらいになったら追加を始めます。追肥にはカルシウムが含まれてれている肥料を使いましょう。しかしカルシウムは植物体内の移行性が遅く、乾燥や根の傷み、肥料過多などにより根からカルシウムを吸収できず、欠乏症になることもあります。
そんなときは、直接葉っぱからカルシウムを吸収させる「葉面散布」がおすすめです。尻腐れは、幼苗に発生した後に葉面散布しても、回復は難しいのでその前に予防としてカルシウム剤を開花後に1週間に1度、3回~4回ほど行います。
おすすめのカルシウム肥料
土壌の酸度(pH)調整が必要な場合
まずは土壌が酸性に傾いているときに使える元肥としておすすめの、カルシウム肥料を紹介します。
苦土石灰
苦土石灰はドロマイトと呼ばれる原料を粉砕後、粒度調整した肥料です。粉状または粒状の形態で販売されています。カルシウム分とマグネシウム分を含んでおり、主に肥料や土壌改良材等に利用されております。苦土石灰の一番の使用目的として、土壌酸度(pH)の矯正があります。
苦土石灰に含まれるカルシウムは、水に溶けにくく、カルシウムの効きは遅いです。しかし、植物の根を痛める心配は少ないため、プロ農家だけではなく家庭菜園や園芸でもよく使われる資材です。
有機石灰肥料
有機栽培で、石灰も有機肥料を使いたい場合には、有機石灰肥料がおすすめ。有機石灰肥料には、「貝化石」や「カキ殻石灰」などがあります。貝化石は、貝化石層から原料を採取し、加工した肥料です。炭酸カルシウム、マグネシウムなどを含むほかミネラル分も含んでいます。アルカリ分も含んでいいますがカキ殻石灰より成分が少ないです。
カキ殻石灰は、カキの殻を焼いて細く砕いたもので、カルシウムの補給や土壌酸度(pH)の矯正によく使われます。家庭菜園や園芸には使いやすい資材です。
酸度調整が不要な場合
硫酸カルシウム
硫酸カルシウムは、「石膏」とも呼ばれ、水溶性であり土壌溶液に溶けやすく、作物が根からカルシウムを吸い上げやすいことが特徴です。また、弱酸性または中性であるため、土壌酸度(pH)が上昇しにくいため、土壌酸度(pH)を高めずにカルシウムを施したい場合に最適です。
肥料名称として有名なものは、「畑のカルシウム」や「エコカル」です。最近では散布がしやすいようにペレット上に加工されているものもあります。土にまくタイプと葉面・果面に散布するタイプがあります。
葉面散布
有機キレートカルシウム
近年、カルシウムの葉面散布剤としてよく使用されている肥料が「有機キレートカルシウム」です。
従来、無機のカルシウムイオンである硝酸カルシウムや塩化カルシウム、硫酸カルシウムなどをそのまま水に溶かして葉面散布をしていましたが、植物への吸収や植物体内の移行性が低く、効果が思ったよりも見られないことがありました。これは植物体内の有機酸とカルシウムが結合してしまい、不溶性のカルシウムとなってしまうためです。
有機キレートカルシウムは、無機のカルシウムを水に馴染みやすい有機酸(キレート剤:クエン酸やりんご酸、EDTAなど)とあらかじめ結合させ、葉の中にある他の有機酸には反応しないように加工し、植物体内でカルシウムが移動しやすくするようにしたものです。家庭菜園や園芸にも使いやすい「カルプラス」や「ファイト・カル」「カルタス」などがあります。
トマトの尻腐れ予防スプレー
マイガーデンなど多くの肥料を作っている、住友化学園芸が家庭菜園のトマト用に開発した葉面散布専用の、「トマトの尻腐れスプレー」もあります。植物が吸収しやすい水溶性カルシウムを使用しており、希釈も不要なのでそのまま葉にスプレーすることができます。