トマトは、ビタミンC、カロテン、リコピンなどを多く含み、栄養や機能性に優れた野菜です。また、イタリア料理はもちろんのこと、日本でも家庭料理によく使われる人気の作物です。
栽培の時期や期間、方法によって、栽培の管理が異なります。家庭菜園では、プランターや鉢植えなどでも育てることができ、比較的手軽に栽培できる作物です。トマトとミニトマトでは、栽培の難易度が異なり、基本的にミニトマトのほうが育てやすく、トマトのほうが難しいと言われています。しかし、管理作業をしっかり行えば、トマトでも問題なく収穫まで栽培することができます。
日本ではプロ農家がビニールハウスを使った施設栽培(ハウス栽培)で長期間栽培(長期採り)されることが多く、トマトが一年中スーパーの店頭に並びます。
この記事では、肥料袋や土嚢袋(土のう袋)、培養土の袋などを使って手軽にできるトマト・ミニトマトの袋栽培・バッグ栽培について、トマトの基礎知識を交えて栽培方法を解説します。
基本的な栽培の考え方は同様なので、トマトとミニトマトを同じように記載しています。栽培したい作物に合わせて読み替えてください。また、袋栽培とバッグ栽培は同一に記載しています。記事が長いため、目次を見て必要な部分から読み進めてください。
トマトの基礎知識
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格の価格(円/1粒) | 苗の価格の価格(円/1苗) | 収穫までの日(目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度(pH) | 連作障害 | 発芽適温 | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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トマト | ナス科 | 南アメリカ | ★★★★☆ | 10円〜50円程度 | 200円〜1,000円程度 | 開花から40日〜60日 | 全国 | 促成栽培 半促成栽培 抑制栽培 など | 露地栽培 プランター・鉢植え栽培 雨よけ栽培 施設栽培養液栽培 養液土耕栽培 | 6.0〜6.5 | あり(3〜4年) | 25〜28℃ | 10〜30℃ | 日なた | 70klx |
トマトは、南アメリカのペルー・エクアドルなどのアンデス山脈高原地帯原産の作物です。日本では糖度の高いフルーツトマトやミニトマトが注目されていますが、昔ながらの味わい深いトマトも根強い人気があります。レシピも豊富にあるのでいろいろな楽しみ方ができます。
トマト・ミニトマト 袋栽培・バッグ栽培のポイント
- 家庭菜園初心者の方は、ミニトマト栽培をおすすめします。一般的にトマト栽培はミニトマト栽培よりも難しく、管理作業もしっかりやらないと良いものが収穫できません。
- 肥料袋や培養土の袋、土嚢袋(土のう袋)でも十分に栽培することができます。
- 手軽に始めたい場合、トマト用や野菜用の肥料入り培養土を購入、使用してください。
- 土壌の物理性(主に排水性・水はけ)は大きな影響を与えます。用土の排水性が悪い場合には、赤玉土やバーミキュライトなどを混ぜ込んで排水性を高めてください。
- 強い光、昼夜の気温差を好み、多湿を嫌います。
- トマトは、日射量を多く必要とする作物です。日照が不足すると徒長気味(茎や葉が必要以上に伸びる)になったり、結実、果実肥大が悪くなります。
- 過湿に弱いため、地下水位の高い圃場や水はけの悪い土壌では畝を高めにするなど対策が必要となります。潅水(水やり)も一度に水をあげるよりは、少しずつ複数回に分けて行うほうが良いです(少量多頻度潅水)。
- 種まきから植え付けまで、植え付けから収穫開始までの各期間は2ヶ月ほどかかります。
- 露地栽培の場合、うまく栽培ができれば暑い夏が終わった9月下旬、10月でも果実をつけ、収穫することができます。
- 急激な温度変化や最高・最低気温の推移に気をつけましょう。日中は30℃以上を超えると節間が伸び、着果や肥大が悪くなったりします。夜は、夜温が高すぎると徒長気味になりやすいので、生育適温にあった環境制御、シーズンを選んで栽培をすると良いでしょう。
- トマト・ミニトマト栽培はハウス栽培(施設栽培)、露地栽培どちらでも栽培することができます。ご家庭では、ベランダでのプランター、鉢による栽培、袋栽培、水耕栽培、養液土耕栽培も可能です。
- 安定的な品質、収量を得るためには、芽かき、整枝、摘果などの作業が重要となってきます(非芯止まり系品種)。手をかけた分だけ良いものが穫れるので、可能な範囲で管理作業を実施しましょう。
- トマト・ミニトマトは連作障害が起きやすい植物です。連作障害により最悪の場合、トマト・ミニトマトが枯れる場合があります。連作障害が恐い方は、毎作用土を入れ替えることをおすすめします。ただし、土壌消毒や微生物、有機物による土作りにより、連作障害を防ぐ方法もあります。
トマト・ミニトマトの品種
トマト・ミニトマトの袋栽培・バッグ栽培に合う品種はあるのでしょうか?結論から話すと、基本的にどのような品種でも構いません。ただし、大玉トマトの品種は果実と植物の生長に多くの栄養が必要となり、それを管理するための作業をしっかり行う必要があります。ミニトマトのほうが栽培しやすい作物ですので、まずはミニトマトで挑戦してみると良いでしょう。
トマトの品種は、世界では10000種類以上あるとされ、日本だけでも275種類の品種が登録されています(登録維持数は116種類、農林水産省品種登録ホームページより2021年4月末時点の情報)。その中でも主に流通している種類は、15種類〜20種類程度とされています(alic 独立行政法人農畜産業振興機構 野菜ブック2019)。
大玉トマト、中玉トマトの代表的な品種には、下記のものがあります。
開発者 | 愛知県農総試 | 愛三種苗 | 朝日工業 | カネコ種苗 | サカタのタネ | シンジェンタジャパン | タキイ種苗 | ナント種苗 | 丸種 | みかど協和 | むさし育種農場 |
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大玉トマトの品種名 | ルネッサンス | 感激73 | アニモTY-10, アニモTY-12 | 耐病竜福, いちふく, SR彩福 | 麗容, 麗夏, りんか409, ごほうび, ろくさんまる, マイロック, サンロード, 秀麗 | TYまもる | 桃太郎, 桃太郎T93, 桃太郎8, 桃太郎なつみ, 桃太郎ギフト, 桃太郎サニー, CFハウス桃太郎, CF桃太郎J, CF桃太郎はるか, CF桃太郎ヨーク, CF桃太郎ファイト, 桃太郎グランデ, 桃太郎あきな, 桃太郎コルト | 大安吉日 | 優美, スーパー優美, 冠美, 賛美, 甘っこ | みそら64 | 甘太郎トマト, 木熟麗玉トマト, 823トマト, 841トマト |
開発者 | カネコ種苗 | サカタのタネ | タキイ種苗 | 福井シード | エンザ・ベストクロップ |
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中玉トマトの品種名 | レッドオーレ, レッドホープ, オレンジオーレ・イエローオーレ | シンディースイート | フルティカ | 華小町, 華おとめ | カンパリ |
ミニトマトの代表的な品種には、下記のものがあります。
- 小鈴系(CF小鈴、小鈴FC、小鈴キング、小鈴クイーンなど)
- 千果系(千果、ペコ、CF千果、オレンジ千果など)
- アイコ系(アイコ、イエローアイコなど)
- キャロル系(オレンジキャロル、イエローキャロル、キャロル7など)
- その他食品メーカー系の品種(デルモンテやサントリーなど)
ミニトマトは、食味や色、大きさなど品種によって特性が大きく違います。また、栽培のしやすさも異なるため、苗や種を購入するときにはよく調べてから購入すると面白さが増すと思います。ホームセンターで売られている苗は、アイコや食品メーカー系の苗が多く出回っている印象です。
何より自分が育てたいものを見つけて、育てるのが一番良いですよ!
トマト・ミニトマト栽培のスケジュール
発芽適温 | 生育適温(昼間) | 生育適温(夜間) |
---|---|---|
25〜28℃ | 20〜30℃ | 10〜15℃ |
一般的な露地栽培をベースに考えたトマト栽培のスケジュールです。比較的温暖な気候の場合は、上の図に示したスケジュールの早め、逆に冷涼な気候の場合は遅めに各作業を実施すると良いでしょう。また、品種によっても違いがありますので、購入する種・苗のラベルを参考に年間スケジュールを想像すると良いでしょう。
露地栽培の場合は、施設栽培のように環境の制御が難しいため、生育適温に近い環境となるシーズンに栽培することが望ましいです。生育適温ですが、昼間(日中帯)の温度と夜間の温度で異なります。施設栽培におけるトマト栽培については、こちらの記事を参照してください。
プロ農家の場合は、袋栽培・バッグ栽培であっても施設(ハウス)を使った栽培がほとんどです。施設栽培(ハウス栽培)の場合は、気温などを人工的に管理して栽培する促成栽培、抑制栽培が可能です。
トマト・ミニトマトの袋栽培の流れ・栽培方法
トマト・ミニトマトの袋栽培の流れ・栽培方法は下のカレンダーのようになります(関東地域の目安です)。袋栽培の場合、畑のように大々的な土作り、畝立て、マルチ張りは必要ありませんが、袋や培養土などが必要となりますので、早めに準備しましょう。
- 3月上旬〜
4月中旬 - 植え付けの
2〜3週間前 - 4月下旬〜6月下旬
- 5月〜10月
- 6月下旬〜10月
- 10月頃
- 10月頃片付け
トマト・ミニトマトの種まき(播種)
トマトの種まき(播種)方法は大きく2つあります。
- ポットに種をまく方法
- 育苗箱に種をまく方法
発芽適温は、25〜28℃です。ポットの場合も、育苗箱の場合も適温となるように工夫をしましょう。ポットや育苗箱に培養土を入れ、種まきをします。種まき後は昼夜の気温差は小さくし、育苗、成長していくにつれて少しずつ昼夜の気温差を大きくしていきます。
種まきの時期を過ぎた場合や接ぎ木された病気に強い接木苗、健康な苗を手軽に手に入れたい場合は、ホームセンターや園芸店で購入して、育苗、栽培することをおすすめします。現在では、インターネットにて予約購入することもできます。
下の記事に、トマトの育苗期の管理方法について詳しく解説していますので、参考にしてください。
トマト・ミニトマトの育苗
発芽後、2ヶ月(55日から65日)ほどで、植え付け(定植)適期となります。育苗は栽培において、とても重要な時期となります。「苗半作」という言葉があるくらい重要です。植え付け(定植)適期になるまで大事に育苗しましょう。
下の記事に、トマトの育苗期の管理方法について詳しく解説していますので、参考にしてください。トマトもミニトマトも、育苗の基本的な考え方は同じです。
袋の準備・培養土の敷き詰め
袋栽培で必要なものの準備
まず、栽培に必要なものを準備しましょう。袋栽培で一般的に使用される道具は、下記のとおりです。
名前 | 用途 |
---|---|
袋 | 作物を栽培するための容器。プランターや鉢などでも可能だが、袋の場合、省力、省スペースで栽培できる。 |
移植ゴテ | 長さ30cm程度のミニスコップ。苗を植えるときに掘る穴や土をかけたりするために使う。 |
ジョウロ | 水やりに使う。プランター栽培の場合、外部からの水(雨など)がないため、こまめに水やりが必要でありその際に重宝する。 |
園芸用ハサミ(剪定バサミ・収穫バサミなど) | 手入れ作業(剪定、整枝、摘葉、摘果、摘心など)や収穫作業に使用する。紐や資材なども切れる便利なグッズ。 |
支柱 | 上に伸びていく作物(トマトなど)の株を支えるために使用する。支柱の長さは、栽培する作物の大きさや場所によって選択すると良い。 |
紐(麻ひもやビニールひもなど) | 支柱の固定や誘引(支柱に枝をくくりつける作業)に使用する。 |
ネット | 蔓性の作物(キュウリなど)を育てるときに使用する。蔓(つる)をネットに這わせていくことで植物体を大きくしていく。 |
マルチトレイ | 培養土と堆肥・肥料を混ぜる作業や収穫など、トレイがいくつかあると便利。 |
袋栽培に使用する「袋」はどれが良いのか?
トマト・ミニトマト栽培の場合、以下の種類の袋が栽培の容器として使えるでしょう。正直な話、ビニール袋などでも育てることは可能だと思いますが、耐久性のある素材を選んだほうが無難です。また、土嚢袋(土のう袋)や麻袋は、性質上、破けやすいので二重にするなど補強しておくと良いでしょう。
使用できる袋の例 | 概要 |
---|---|
麻袋 | 作物を栽培するための容器。プランターや鉢などでも可能だが、袋の場合、省力、省スペースで栽培できる。通気性に優れている。 |
フィルム製米袋 | ポリエチレンやナイロンなどでできた米袋。厚手のため、丈夫で使いやすい。紙製のものは水に濡れて耐久性が落ちるのでおすすめしない。 |
土嚢袋(ポリエチレン他) | ポリエチレンなどの素材でできた土嚢袋。安価で品質が安定しており、丈夫で使いやすい。ただし、ポリエチレンは紫外線に弱く、劣化しやすいので注意。編み込んで作られているため、通気性は優れている。 |
不織布バッグ(不織布ポット) | 不織布を使用した栽培バッグ。通気性や排水性が良いため、様々な作物の栽培に用いられる。取っ手が付いているものもあるので便利。 |
培養土や肥料が入った袋(ポリエチレン他) | 培養土や肥料が入った袋。丈夫で使いやすい。新品で購入した培養土の入った袋は、そのまま栽培に使用できて便利。 |
1株のトマト・ミニトマトを育てるためには、最低でも10L以上の用土が入る大きさの袋が良いでしょう。特に、トマトは広く深く根を張る植物なので、15L/株くらいあると栽培しやすいです。基本的には、1つの袋に1株程度の苗を植え付けて、栽培すると良いでしょう。
袋栽培の土 用土と培養土
もちろん、上記の道具を用意しただけで終わりではありません。栽培において、いちばん大事なものは土(用土)です。袋栽培では、手軽に始めるために培養土を使用することが一般的です。
トマト・ミニトマトは、弱酸性土壌を好みます。肥料入りの培養土の場合は、特に施肥をせずにそのまま使用します。培養土の中には、トマト・ミニトマト用として販売されている培養土も多いので、それらを購入すると良いでしょう。
肥料が入っていない培養土(用土)でも始めることができますが、その場合は植え付け前に元肥の施肥が必要となります。
培養土の敷き詰め、栽培準備
準備ができたら、培養土を敷き詰めていきましょう。培養土の敷き詰めの手順は、以下のとおりです。
- 手順1袋を用意する
まずは袋栽培に使用する袋を用意しましょう。袋の素材や製造方法によって、特性が違います。詳しくは、袋栽培に使用する「袋」はどれが良いのか?をご覧ください。
編集さん私のオススメは、新品の培養土を購入してその袋をそのまま使用する方法です!袋の購入の手間もかからないし、何より培養土の敷き詰めなどの作業も不要となります(下記手順2、3が不要)。
麻袋や土嚢袋(土のう袋)、不織布バッグは、編み込んでありますので、余分な水が流れ出ますので排水性は十分です。そのまま使用することができます。
しかし、培養土の袋などのフィルム製の袋は、風も水も通しませんので、排水性が不十分です。使用するときは、底面から高さ10cmくらいのところに30箇所くらい、先の尖ったもの(ドライバーなど)で穴を空けてください。
また、袋の口は切ったりはせず、そのまま使用します。培養土の入った袋の場合も同様に、上部の端を切って袋の口をそのままにしてください。「こんな高さにはならないので、不要では?」と思うかもしれませんが、土寄せ(増し土)のときに重宝します。
- 手順2培養土を用意する
培養土を用意します。すでに肥料入りの培養土を購入の場合は、特に実施することはありません。どうしても培養土に堆肥を混ぜたい場合には、培養土2〜3:堆肥1の割合で配合させてみてください。
用土からご自身で培養土を配合する場合には、赤玉土6:堆肥2:腐葉土1:バーミキュライト1くらいの割合で作ってみてください。
肥料入りの培養土の場合、元肥は必要ありません。含まれていない場合、もしくは自作した場合は、元肥を混ぜ込んでおきましょう。用土10Lあたりの目安量を下記に記載しておきます。肥料がなじむように、可能であれば、植え付けの1〜2週間前には終わらせておいてください。
肥料(全種類施用) 施用目安量(用土10Lあたり) 緩効性化成肥料 20g程度 石灰 10g程度 トマト・ミニトマト専用の培養土は、土壌酸度(pH)がトマトに適した状態になっていたり、トマトの初期生育に必要な栄養分がバランス良く含まれているのでおすすめです。
- 手順3培養土を入れる
袋に培養土を敷き詰めます。このとき、赤玉土があれば鉢底石の上に2cm程度敷き詰めてから、培養土を入れると排水性が高まります。
土を入れる量は、1株あたり最低10L以上です。入れ終わったら、余分な袋の口を折り曲げて完成です。
袋・培養土の準備が終わったら、支柱も立てていきましょう。トマトの場合は1本仕立てで、らせん支柱や園芸支柱を使って誘引していくと良いと思います。ミニトマトの場合は、2本〜3本仕立てでリング式(あんどん式)に支柱を立てると誘引しやすいでしょう。
トマト・ミニトマトの植え付け
本葉8枚から9枚になったころが植え付けのタイミングです。
その頃には一番花(初めて咲く花)が咲き始めていると思います。植え付けは晴れている日の午前中に行いましょう。植え穴、苗にも予め十分に水やりをしてから植え付けます。植え付けの方法は寝かせ植えが良いとされていますが、接木苗を使う場合には絶対にしないでください。
下の記事にトマトの植え付けについて記載していますので、参考にしてください。ミニトマトの同様の考え方です。
トマト・ミニトマトの手入れ作業(管理作業)
植え付けがようやく終わると、トマト・ミニトマトをしっかりと育てるために手入れ作業が必要です。手入れ作業は大きく8つあります。
- 仕立て、誘引
- 受粉
- 追肥(肥料)
- わき芽かき
- 葉かき(摘葉)
- 摘心(摘芯)
- 摘果
- 除草・病害虫管理
仕立て・誘引
仕立て・誘引についての基本的な考え方を説明します。
大玉・中玉トマトの場合は、1本仕立てで挑戦することをおすすめします。養分を分散させずに、一つの枝に集中させることで、確実に果実を付けて生長させるようにします。1本仕立ての場合は、らせん支柱を使用すると麻ひもなどによる誘引が不要になるため便利です。
ミニトマトの場合は、2本〜3本仕立てで挑戦することをおすすめします。ミニトマトの場合、トマトに比べて着果による負担が少ないため、複数本仕立てでも十分に果実を付けることができます。袋に園芸支柱を複数本挿し、リング式(あんどん式)に組み立てると誘引がしやすくなるでしょう。
下記の記事に、仕立てと誘引の方法について記載していますので、参考にしてください。
わき芽かき
わき芽はトマトの成長し、節が増えるたびに出てきます。そのため、わき芽かきは晴れた日に定常的に行いましょう。わき芽は小さいうちに指先でかき取る(摘み取る)ことがベストです。少なくとも5cmくらいの大きさまでにはかき取りましょう。
葉かき(摘葉)
葉かき(摘葉)は、露地栽培においては必須の作業というわけではありません。ただし、余分な葉は病害虫の温床となることがあります。そのため、病害虫などが発生した場合には、晴れた日に葉かきをすることをおすすめします。
葉かきをする場合には、「果実がなっている、もしくは花が咲いている節よりも2段下」からの葉をかき取ります。葉が老化して黄色くなっているものや枯れているものはかき取ってしまって問題ありません。葉かきをすることによって、風通しがよくなり、病害虫に侵されるリスクが下がります。
着果処理(受粉)
着果処理とは花が咲いた頃に確実に受粉をさせて実をつけるための作業です。風や昆虫など自然の力を利用しても着果することは可能ですが、確実に収穫するためには晴れた日に着果処理を施したほうが良いです。着果処理の方法は大きく2つあります。
- ホルモン処理
- 振動処理
1. ホルモン処理
植物成長調整剤(品名:トマトトーンなど)を使用して着果処理をする方法です。開花前3日〜開花後3日くらいの間に植物成長調整剤を1花ずつさっと一回〜二回吹きかけます。このとき、幼葉(若い葉)や生長点、他の花、蕾などにかからないように手で遮ってから、噴霧してください。かかると萎れてしまうことがあります。
また、植物成長調整剤を使用するときには必ずラベルをよく読み、使用濃度を確認してください(通常は100倍で希釈し、スプレーなどで噴射します)。使用するときには必ずビニールなどの手袋をしてください。
2. 振動処理
植物成長調整剤を使わずに着果処理する方法として、振動処理があります。その名の通り、花房の開花時に毎朝一回程度、支柱を数回叩いて振動を与え、花粉を飛びやすくする方法です。
追肥(肥料)
トマト・ミニトマトは元肥だけでは栄養分が不足し、追肥で育つ植物です。そのため継続的な追肥が必要となります。下に追肥の一例を紹介します。
- 第一回追肥第一果房(一番目に付いた果実)がピンポン玉大(ミニトマトの場合はビー玉大)くらいの大きさになったら施肥をします。施肥をするときは、株元ではなく株から少し離れた袋の側面に軽く穴を掘って、施してください。このとき、複数箇所(4箇所程度)に分けて施肥をすると効果的です。
肥料(全種類施用) 施用目安量(1袋あたり) 化成肥料 約15g程度 編集さん株元(根元)に肥料をやるのが一番効くんじゃないかって思いがちですが、根は土壌中でどんどん外側に張っていきます。一般的に、先のほうの新しい根からどんどん栄養分を吸収しますので、株元(根元)から少し離したくらいのところがちょうど良いのです。
- 第二回追肥第三果房がピンポン玉大(ミニトマトの場合はビー玉大)くらいの大きさになったら、一回目と同じ方法、施肥量で施肥します。
- 第三回以降の追肥生育の様子を見ながら半月に一回程度、施肥をします。施肥量は、樹勢を見ながら調整していきましょう。
肥料(全種類施用) 施用目安量(1袋当たり) 化成肥料 約15g程度
摘果
トマトの場合
適切な生長管理のため、果実がゴルフボール大くらいのときに形の良いものを1果房あたり4個程度残して、ほかは摘果(実を除去)しましょう。特に「裂果」と呼ばれる果実が割れているものや「尻腐れ果」、「乱形果」など異常がある果実は必ず摘果するようにしてください。摘果は、晴れた日に収穫バサミや剪定バサミなどで行いましょう。
ミニトマトの場合
適切な生長管理のため、果実がビー玉くらいの大きさのときに、形の悪いものや腐り始めているものは摘果しましょう。特に「裂果」と呼ばれる果実が割れているものや「尻腐れ果」、「空洞果」など異常がある果実は必ず摘果するようにしてください。摘果は、晴れた日に収穫バサミや剪定バサミを使うって切り取るか、手でもぎ取りましょう。
摘芯(摘心)
収穫果房の限界が見えてきたら、摘芯をして残りの栄養成分を現時点で付いている果房に回します。摘芯とは、植物の最上部の生長点(枝が伸び、葉が生成される場所)を切除し、植物の栄養成長を止めることを言います。
収穫果房数(収穫ができる段数)は一般的には4〜5段です。上手い人は6〜7段まで収穫することが可能です。逆に早めに切り上げてしまっても構いません。
着果目標の最上段の花房の上に2枚程度、葉を残し、その上の生長点などを指先で摘み取ります。5段までを着果目標にした場合、5段目の上に2枚程度、葉を残すと良いでしょう。
手が届かなくなるくらいの高さまで育てられたら万々歳ですよ!
病害虫管理
病害虫と聞くと少し怖いですよね。しかし、病害虫に対して適切に処理することでまん延を防ぐこともできます。「トマト・ミニトマト栽培の生理障害・病害虫管理」にトマト・ミニトマト栽培の主な生理障害、病害虫の対処方法をまとめました。症状などと照らし合わせながら、適切な対処を行いましょう。
アブラムシの防除には、アルミシートやアルミホイルが手軽にできる有効策です。アルミシートやアルミホイルは太陽光を反射しますが、この反射光をアブラムシは嫌がります。理由はまだ解明されていないようですが、どちらが空かわからなくなったり、水面と勘違いしたりするのではないかと考えられています。
上の画像のようなアルミシートの商品も販売されています。まずは身近にあるアルミホイルから試してみるのも良いでしょう。
地植え栽培などさらに詳しく知りたい
地植え栽培(露地の普通栽培)のやり方や収穫方法など、詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてください。
トマト・ミニトマト栽培の生理障害・病害虫管理
トマト・ミニトマトを栽培していると、いろいろなトラブルが発生します。しかし、適切な対処方法を知っていれば慌てる必要はありません。代表的な生理障害と病害虫を列挙しますので、参考にしてください。また、各病害虫の詳細については、リンク先の記事をご覧ください。