さわやかな香りをもつタイムは、魚料理や肉料理の臭い消しや、料理のスパイスとして、西洋料理に欠かせないハーブです。収穫しながら育てるタイムは、キッチンハーブとして人気があり水耕栽培でも育てることができます。
この記事では、タイムの水耕栽培について、タネや挿し木からはじめる水耕栽培の手順や収穫までの育て方についてわかりやすく説明します。
タイムの水耕栽培について
水耕栽培とは、土を使わず培養液(肥料分を含んだ水)で、野菜や草木を栽培する方法です。水耕栽培で育てる場合には、土から栄養をとれないため水耕栽培で使える液体肥料を使って育てます。
タイムの基礎知識
タイムはシソ科の多年草で、多くの種類があります。一般的にタイムといわれるのは「コモンタイム」という品種で、抗菌・防腐効果があるため料理だけでなく、防腐剤としても使われます。小さく肉厚な葉がこんもり茂り、種類によって白やピンク色のかわいらしい花を咲かせるため鑑賞用としても楽しめます。
栽培は丈夫で繁殖力が強いため、比較的容易です。生育適温は15℃~20℃ですが、寒さには強く、比較的乾燥した気候を好み、高温多湿が苦手です。蒸れると枯れたり、病気にかかりやすくなります。またほおっておくと、木質化しやすいので、こまめに収穫をかねて剪定し、風通し良く育てます。
学名 | Thymus |
---|---|
属名 | シソ科イブキジャコウソウ属 |
原産地 | 地中海沿岸 |
草丈 | 5cm~30cm |
耐寒性等 | 耐寒性 強い 耐暑性 普通 |
生育温度 | 15℃~20℃ |
花言葉 | 「勇気」「活動力」 |
品種
タイムには多くの種類があります。枝や茎が立つように育つ「立ち性」のものと、枝や茎が這うように生長する「ほふく性」のものがあります。タイムは常葉性で踏まれても丈夫なことからグランドカバーにも使われます。
品種 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
コモンタイム | 食用のタイムの代表格 立ち性で淡いピンク色の花を咲かせます。 | |
レモンタイム | ほんのりレモンの香りがする食用のタイム 立ち性で、タネは手に入りにくいので苗から育てます | |
クリーピングタイム | ほふく性の代表品種で、花色も白、赤色などがある グランドカバーに最適 |
栽培期間
タイムの水耕栽培は、タネまきか挿し木から始めます。スーパーなどに売っている生のタイムからも挿し木ができます。発芽温度は20℃前後なので、タネまき、さし木の適期は4月~6月、9月~10月頃で真夏と真冬を除けばいつでも行えます。
種まきから収穫できるようになるまでには、40日~50日ほど。5月~6月が開花の時期です。茎葉を利用する場合には、開花すると香りが弱くなるのでその前に刈り取ります。常葉性なので冬は葉色が悪くなることはありますが、葉は落ちません。冬は株が弱るので収穫は控えめにして冬越しします。多年草なのでそのまま何年か育てることができます。土耕栽培では植え替えや株分けなどをしますが、水耕栽培では株が傷んできたら、挿し木でまた新しい株を作って育てます。
タネまきから始めるタイムの水耕栽培
タイムの種は小さく、初期の生育が遅いので10日~15日程度かかることもあります。低温だと発芽がおそくなるので、発芽温度20℃を保てる時期を選びましょう。
準備するもの
- タイムの種
- スポンジ(キッチン用のスポンジでOK 。メラニンスポンジは不可。やわらかめがおすすめ)
- 水
- ラップもしくはティッシュペーパー
- 竹串(爪楊枝でも可)
- 500mlのペットボトル
- 水耕栽培用の肥料
- カッターもしくはハサミ
手順
- 手順1ペットボトルの準備
ペットボトルの上部を7㎝~8㎝のところでカットします。キャップは、外しておきます。
- 手順2スポンジの準備
スポンジを、2㎝~3㎝程度に四角にカットし、十字に切り込みを入れます。
- 手順3種まき
飲み口を逆さにしたペットボトルに、スポンジをセットします
スポンジに水を十分含ませて、切込みに竹串などを使って、種を2~3粒差し込みます。あまり深く押し込まないようにします。
- 手順4ペットボトルにセットして発芽を待つ
切り取ったペットボトルの下部に水をいれ、手順3でスポンジをセットしたペットボトルをセットします。上からラップをして、爪楊枝で数か所穴を空けます。
直射日光のあたらない、暖かい場所で管理します。スポンジが乾かないように、水を足して発芽を待ちましょう。10日~15日程度で発芽します。
- 手順5育苗
発芽したら、すぐに明るい日の当たる窓際などへ場所へ移しましょう。根が伸びてきたら、ペットボトルの水の量を減らし、根の半分程度が水に浸るようにします。水は毎日取り換えます。
- 手順6肥料を与える
ペットボトルの飲み口の部分から根がでるぐらいに成長したら、肥料を与えて育てます。濃度は、使用する肥料によって異なりますので、肥料のラベルをよく読んで適合する濃度に薄めると良いでしょう。まだ、苗が小さいときにはそのさらに半分程度の濃度で栽培すると安心です。
培養液(肥料をいれた水)は3日1度は交換しましょう。
編集さん光があたるとペットボトルには、藻が発生しやすくなります。アルミホイルやペットボトルカバーなどでカバーしましょう。根が伸びやすくなる効果もあります。
- 手順7収穫する
草丈が20cmほどになったら、収穫が始められます。株が混みあっている部分から、枝先から5cm~6cmのところを切り取って収穫します。
挿し木(水挿し)から育てるタイム水耕栽培
タイムは、挿し木で増やすのが成長も早く、簡単にふやすことができるのでおすすめ。水挿しで簡単に発根します。タイムを育てている友人から分けてもらったり、スーパーなどで売っているタイムからも増やせます。
コップなどに水をいれて、挿し穂をいれておくだけで発根します。比較的成功率は高めですが、発根に失敗することもあるので、複数作るとよいでしょう。
挿し木の準備
タイムの苗から挿し木をする場合は、元気の良い若い芽を選んで先端から10㎝~15㎝にカットします。木質化している部分からは発根しにくいので、新芽を選びましょう。スーパーなどのレモンバームもなるべく新鮮なうちに、挿し木にしましょう。
下の葉は水につかると腐る可能性があるので、切り落としておきます。切り口は斜めにスパッときって断面を広げます。すぐに水に浸けるので先に器に水を入れておきましょう。
準備するもの
- タイムの挿し木(挿し穂)
- スポンジ
- ペットボトル500ml
- メネデール(発根促進剤なくても可)
- 水耕栽培用肥料
- 水
発芽促進剤のメネデールは、あると発芽の確立がUPします。小さなものがホームセンターでも売られています。活力剤ですので、植物が弱った時にも使えます。
手順
- 手順1ペットボトルの準備
ペットボトルの上部を飲み口から7センチ程度のところをカッターやハサミなどで切り取ります。
上部を逆さにして下部にセットして使います。
- 手順2スポンジに枝をセットする
スポンジを3㎝角に切り、カッターで切込みをいれ、水を吸わせます。スポンジの間にタイムの茎をいれます。
- 手順3ペットボトルに設置
ペットボトルの下の部分に水をいれ、手順2で作った苗とスポンジを上部にセットします。口の部分から水を吸い込みます。
- 手順4水の交換
明るい日陰に置いて、2~3日に1度水を換えましょう。スポンジが乾かないようにします。水替えはメネデール100倍液を使います。ペットボトルの下の部分が汚れていたら、洗って清潔にしておきます。
- 手順5栽培
発根には、2週間から1か月ほどかかります。根がスポンジの下からでてきたら水の量を変えます。根の半分が根につかるぐらいにして根の上部は空気が当たるようにして育てましょう。
ここからは水耕栽培用の肥料を与えて育てます。培養液(肥料を入れた水)は3日に1度は替えましょう。
- 手順6収穫
草丈が20cmほどになったら、収穫が始められます。株が混みあっている部分から、枝先から5cm~6cmのところを切り取って収穫します。
タイムの水耕栽培での育て方
置き場所、日当たり
タイムは、日当たりのよい風通しの良い場所を好みます。高温多湿が苦手なので、夏はカーテン越しの光が当たる場所で管理しましょう。直射日光は葉焼けや容器内の水温が高くなりすぎる危険があるため、避けましょう。梅雨前には剪定して風通しをよくし、風が通らない場所では扇風機やサーキュレターで株を蒸らさないようにしましょう。
タイムは、耐寒性も強い多年草です。冬は寒さで葉色が悪くなることがありますが、屋外でも冬越しできるので特段冬越しのための保温などは必要ありません。寒くなると生育が衰え、株が弱るので収穫は控えめにしましょう。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、弱って枯れてしまう可能性もあります。特に夏場は注意が必要です。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
肥料
収穫を楽しむタイム栽培は、土から栄養がとれないため水耕栽培専用の肥料を使って育てます。水の交換のときに規定量に薄めて使います。苗が小さいうちは規定量より薄めて使いましょう。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水栽培やハイドロカルチャーに使える肥料は、ハイポネックス微粉やハイポニカ液体肥料などがあります。
切り戻し
株が混みあっている場合には、梅雨に入る前に、切り戻し(剪定)して株の風通しをよくしましょう。品種にもよりますが、5月~6月が開花のタイミングです。かわいらしい花が咲くので鑑賞用として育てる場合には、開花後。茎葉をハーブとして利用する場合には、花が咲くと茎葉の香りが弱くなるので、開花前に剪定します。
株全体を1/3程度、枝先から刈り取ります。切り取ったタイムは使いきれない時は、生のまま冷凍したり、乾燥させてドライハーブとして保存しましょう。水耕栽培では何年も育てるのは難しいので、新芽を挿し木にして増やしておくことも忘れずに。
まとめ
タイムは、魚や肉、トマト料理やスープなどの多くの料理に使われ、特に魚との相性がよいことから、ディルやフェンネルとともに「魚のハーブ」とも呼ばれます。小まめに収穫すればするほど新芽が伸びて、フレッシュなタイムが収穫できるので、室内でも育てられる水耕栽培に向いているハーブです。
ここでは、ペットボトルとスポンジで始められる方法を紹介しましたが、水耕栽培にはこのほかにも、ハイドロボールなど土の代わりとなる培地をつかった栽培方法もあります。ハイドロカルチャーは観葉植物の栽培にもおしゃれで人気があります。ハーブは水耕栽培に向いているものが多いので、ぜひ水耕栽培でいろいろなハーブや野菜を育ててみましょう。
その他の水耕栽培のコンテンツ
ハーブの水耕栽培はタイムの他に、アロマティカス、イタリアンパセリ、大葉(しそ)、クレソン、ディル、パクチー、バジル、三つ葉、、ラベンダー、ルッコラ、ローズマリー、ミント、レモンバームの育て方の記事があります。下記の記事から、それぞれのコンテンツにアクセスすることができます。
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