沢山のホシが付いていてテントウムシのように見えるテントウムシダマシは、農作物や観葉植物の葉を食べてしまう厄介な害虫です。ここではテントウムシダマシとはどういう虫なのか、その特性と、テントウムシダマシを駆除、防除するための農薬を解説します。また、農薬を使わない、自然農薬、生物農薬を使った効果的な防除方法についても解説します。
そもそも、テントウムシダマシはどういう害虫?
テントウムシダマシとは?
テントウムシダマシは、主に、ニジュウヤホシテントウとオオニジュウヤホシテントウを指し、テントウムシ科の昆虫です。赤い体に黒い斑点(黒斑)、そして体長は6mm程度と、ナナホシテントウに似ていますが、黒斑の数が非常に多く、この点で見分けを付けることができます。
ニジュウヤホシテントウは関東南部から東海、近畿と西の地方に生息していて、オオニジュウヤホシテントウは北海道、東北、関東北部に生息しています。
テントウムシダマシの成虫も幼虫も、ナス科の植物(ナス、ジャガイモ、ピーマン、トマトなど)が大好物です。葉裏を食べ、横線が何本もできたように見える跡を残すのが特徴です。テントウムシはアブラムシなどを食べる肉食性の益虫として有名ですが、ニジュウヤホシテントウとオオニジュウヤホシテントウは、草食性であることが特徴です。
産卵してから7日で孵化し、幼虫の期間は1ヶ月、蛹の期間は1週間で成虫になり、越冬します。
どうしてはテントウムシダマシは害虫なのか?
テントウムシダマシの幼虫、成虫は、ナス科の植物が大好物なため、ナスやジャガイモといった農作物を食べて、食害を与えてしまいます。また、ナス科に限らずキュウリやカボチャなどのウリ科やマメ科の植物、ゴボウ、デントコーンでの食害も報告されています。
テントウムシダマシに効く農薬
テントウムシダマシはメジャーな農業害虫のため、多くの適用農薬があります。
テントウムシダマシに効く代表的な農薬
有機リン系
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオン、マラソンがあります。
ネオニコチノイド系 モスピラン、ダントツなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
テントウムシダマシに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、コガネムシに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はテントウムシダマシだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ、ヨトウムシ、キスジノミハムシ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、コガネムシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシ、アオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
防除するタイミング
効果的な防除の時期は、成虫の飛来が最も多くなった時期、おおよそ6月と、卵から幼虫になった時期に薬剤散布するとよいでしょう。とくに、幼虫が集団でいる時期の防除は効果的です。
IPM防除体系
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
テントウムシダマシの天敵はカエルやヤモリ、鳥類、蜘蛛などになってくるため、市販されている生物農薬はありませんが、他の害虫に適用する生物農薬は多くあります。
生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご興味ある方はご参考ください。
物理的防除
防虫ネット
テントウムシダマシの被害は直接的な食害なので、網目のある防虫ネットなどで農作物を物理的に守るのも効果的です。家庭菜園だと、寒冷紗(かんれいしゃ)でも)でも防除出来ます。
耕種的防除
周りをしっかり除草する
圃場の周りに雑草があるとテントウムシダマシの住処になり、発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、被害を少なくするのに極めて重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
ナス科の農作物を食べ、縞々の食べた跡を残してしまう厄介なテントウムシダマシ。農作物だけでなく、ガーデニング、観葉植物、花木の葉、草花にも食害を発生させ、生育を損ねてしまいます。(類似する種として外来種でマメ科を食害するインゲンテントウがいます)
本記事が、適切に退治、防除を行い、畑の野菜を守る一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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