青色申告は節税効果が高いといわれるけど、それほど収入もないし青色にする必要はないと思っていませんか?しかし青色申告のメリットは所得税が安くなるだけではありません。ここでは農業者が青色申告する場合のメリットについてわかりやすく説明します。
青色申告のメリットについて
特別控除
青色申告の一番大きなメリットは、この特別控除です。青色申告にするだけで所得から最大65万円控除することができます。
この特別控除ですが10万円、55万円、65万円と3種類あるのをご存じでしょうか。青色申告は複式簿記が必要だからよくわからないのでしないという人も多いのですが、それは控除額の大きい55万、65万円の場合。
10万円の場合は白色申告と同じ簡易帳簿でOK。手間は変わらないのに、青色申告にするだけで10万円の控除が受けれられるのです。
たかだか10万円と思うかもしれませんが、今までの同じ手間で青色申告の申請を出しておくだけで単純計算で、所得が1,950,000円未満の一番低い税率(5%)でも所得税が5000円、住民税が1万円、合計15,000円安くなるのです。所得税は所得が多いほど税率が高くなる累進課税なので所得が多い人は、もっと節税効果を実感できます。
親族の給与が経費にできる
白色申告時には、生計を一にしている親族は「専従者控除」として配偶者で最大86万円、その他の親族に関しては最大50万円の所得から控除できます。青色申告の場合は、労務の対価として相当であると認められる金額であれば、事前に申請書を提出しておけばその金額の範囲内であれば、経費として認められます。
家族で農業を営んでいる場合、例えば妻と息子に年間100万円の給与を支払った場合、200万円が経費としてみとめられるため、白色申告の専従者控除は最大でも136万円なので、所得が64万円少なくなるため税負担が軽減します。
収入保険に加入できる
自然災害に備えるため、農業共済に入っている人もいるのではないでしょうか。青色申告に変更すると農業共済だけでなく、収入保険に加入することができます。
農業共済と収入保険の違いは、農業共済が自然災害によって受けた損失だけが対象ですが、収入保険は自然災害によって受けた損害を含む、さまざまな農業者の経営努力では避けられない収入減少の損失を補填します。たとえば市場価格の下落や盗難、自分が病気になった時などの損失も対象です。
収入保険は保険料が高い場合には補償のパーセンテージを下げたり、積立金のないタイプもあります。保険料自体も積立金以外は経費として認められるので、さまざまなリスクに備えたいという人にはこちらもメリットといえるでしょう。
39歳以下なら農協年金の保険金の補助がもらえる
農協年金をご存じでしょうか。個人事業主である農家は、老後の保障として国民年金しかありません。老後が不安という農家のためにつくられた「農協年金」があります。
積立方式・確定拠出型の年金で全額社会保険料控除することができる制度で、月額2万円から始められます。この保険料ですが、認定農業者かつ青色申告者である経営主は39歳以下であれば最大5割政府の補助が受けられます。
その他
その他にも赤字になった場合にその損失分を翌年以降に繰り越しができることや、30万円未満の資産を一括償却できる、貸倒引当金を計上できる、農業経営基盤強化準備⾦制度が使えるなどがあります。
所得が減ることのメリット
青色申告にすることにより、控除額が増えたり経費にできる費用が増えたりすることで所得が減り、所得税の負担が軽減されます。しかし所得税が節税できるだけではありません。
住民税が安くなる
確定申告は、所得税を計算するための申告書ですが、確定申告をすることで住民税も自動的に計算されます。
住民税は所得割が道府県民税(都民税)は4%、市町村民税(特別区民税)は6%、合計10%が住民税として計算されます。そのため所得が減った分×10%分住民税も安くなります。
国民健康保険料が低くなる
個人事業主である農業者は、国民健康保険に加入しています。国民健康保険の保険料は、所得により決められています。世帯所得にかけられるため専従者給与で減った所得は、その分専従者の給与に加算されるため変わりませんが、特別控除額は控除されます。市町村によって健康保険料率は違いますが介護保険までいれると所得の11%ほどが国民健康保険料として計算されるため、国民健康保険料も所得が減ることにより軽減れます。
また所得の合計額が一定以下であれば、軽減も受けることができます。
青色申告承認申請書を出しましょう
青色申告は、事前に税務署に青色申告承認申請書を提出しないと認められません。今年の確定申告と一緒に提出しておけば、来年から青色申告ができます。親族の給与を経費にしたい場合には、青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書も同時に提出します。
10万円の控除を受けるには、白色申告の時に出した収支報告書の代わりに損益計算書を出す必要がありますが、貸借対照表を提出する必要はありません。農業用の損益計算書を見てみると収支報告書とほぼ同じ内容であることが分かると思います。
55万円、65万円の控除をうけたいと思う人は会計ソフトを使うか、税理士さんに頼みましょう。確定申告だけなら10万円程度から(取引量による)代行してくれる税理士さんもいます。所得が多い人は税理士に頼んでも得なこともあるので、検討してみましょう。