里芋(さといも)は栽培期間が長く、雑草が畑に生えると里芋の収穫に影響を及ぼします。防除の方法はいくつかありますが、除草剤を使うことで効果的に雑草を防除することができます。
この記事では里芋(さといも)栽培で使える除草剤や、効果的な使い方をわかりやすく説明します。
里芋(さといも)栽培に使われる除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。
里芋(さといも)に適用がある除草剤は、栽培前から生育中にも使えるものがあります。時期や雑草の種類にあった除草剤をつかうことが大切です。定植前に雑草が生えている場合には、事前にグリホサート系の茎葉処理剤でしっかり除草してから定植しましょう。
体系的に防除するのであれば定植前後の雑草発生前に「土壌処理剤」で雑草の発生を抑制し、その後に発生した雑草に対して「茎葉処理剤」を散布します。里芋(さといも)の除草は、畝間を茎葉が覆うまで成長すれば、雑草の発生がすくなるため、生育前半の防除が大切です。
またマルチ(雑草の防除には黒マルチがおすすめ)や、土寄せなどを組み合わせて除草剤の使用を減らすこともできます。
除草剤の使い方
土壌処理剤
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ45日~60日ほどです。里芋(さといも)には、植え付け後に全面土壌散布か、マルチを使う場合には畝と畝の間に土壌散布してつかいます。
茎葉処理剤
定植時にマルチをしたり、土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかっても里芋(さといも)は枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
里芋(サトイモ)におすすめの除草剤
植え付け前
グリホサート系茎葉処理剤
里芋(さといも)を植えつける前に、すでに雑草が生えている場合は根元まで枯らす、グリホサート系の茎葉処理剤を使って、雑草を枯らしておきましょう。
グリホサート は、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全 な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。グリホサートは、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎、根っこも含めて全体を枯らし、根絶する効果があるため、根を残したい田んぼの畔や傾斜地には向きません。
グリホサート系の除草剤は多くありますが、畑には必ず「農耕地用除草剤」を使用しましょう。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
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概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
植付後萌芽前
ゴーゴーサン乳剤・ゴーゴーサン細粒剤F
有効成分 ペンディメタリン HRACコード3
ゴーゴーサンはBASF社が開発したジニトロアニリン系の除草成分ペンディメタリンを有効成分とする、主に畑作に使う除草剤で、さまざまな野菜栽培に広く使われている土壌処理剤です。一年生イネ科雑草、広葉雑草の両方の効果があり、40〜60日間と長期間効果が持続します。
里芋には、ゴーゴーサン乳剤、ゴーゴーサン細粒剤Fが使えます。また植え付け後だけでなく、土寄せ後にも使えるので、土寄せ時に除草した後に散布することで雑草の発生を抑えることができます。
ロロックス粒剤・ロロックス水和剤
有効成分 リニュロン 50.0% HRACコード5
ロロックス粒剤、ロロックス水和剤は、さまざまな野菜に使える土壌処理剤です。特にヤエムグラ、スベリヒユ、ノミノフスマ、ハコベなど一年生の広葉雑草に効果を発揮します。里芋には植え付け直後に土壌全面散布してつかうことができます。マルチ栽培では薬害が生じる可能性があるためさけてください。
デュアールゴールド
有効成分 S-メトラクロール 83.7% HRACコード15
デュアルゴールドは、雑草発生前に散布して使う選択制の土壌処理除草剤です。イネ科・カヤツリグサ科に効果が高く、広葉雑草(特にアカザ科)には効果が劣ります。イネ科雑草優占圃場での使用がおすすめです。里芋には植付後萌芽前に全面散布して使います。効果は40日以上続きます。
植え付け後
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草に使われる選択制の茎葉処理剤です。里芋(さといも)に直接かかっても影響がないため、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。遅効性で完全に枯殺するまでに7~10日かかるので、誤ってまき直しなどしないように注意しましょう。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤を使う必要があります。
グルホシネート系除草剤
ジャガイモ(ばれいしょ)には、イネ科以外の雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤はないので、それらの雑草が生えている場合は非選択性の除草剤を使いましょう。
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。ジャガイモ(ばれいしょ)には、雑草生育期の植えつけ前又は植え付け後の畦間処理で収穫21日前まで使うことができます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
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概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
プリグロックスL
有効成分 ジクワット 7.0% パラコート 5.0% HRACコード22
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の非選択性の接触型の茎葉処理剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
雑草発生期の植付前か、植え付け後の畦間処理で収穫前日まで使うことができます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
農薬の希釈について
除草剤は水で希釈してつかうものがほとんどです。除草剤の希釈方法の記事や、便利な計算アプリもあります。
その他里芋(さといも)に適用がある除草剤・農薬
この他、さといもに適用がある除草剤は、「農家web農薬検索サービス」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、さといもに使える除草剤や農薬が一覧でみられます。作物名は、「さといも」や「いも類」で検索しましょう。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。
里芋の栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
里芋をたくさん収穫するためには、植えつけ前から生育初期の防除が大切です。雑草は生えてからではコストや手間も多くかかります。事前に防除できるよう上手に除草剤を使いましょう。最近では土寄せしない栽培方法もありますが、除草には中耕、土寄せなども効果的です。いつも使っている除草剤が効かなくなったら、圃場に生えている雑草の種類をよく観察し、体系の違う除草剤をつかってみるなどの見直しもしてみましょう。
栽培期間が長い里芋は肥料の与え方も大切です。里芋の肥料やプランター栽培についての記事もありますので、そちらも参考にしてください。