サツマイモは、別名「甘藷(かんしょ)」と呼ばれ、比較的栽培がしやすく、初心者でも簡単に育てることができるため人気の栽培作物です。雑草が生えると、生産量に影響を及ぼすだけでなく、病害虫などのリスクも高まります。
この記事ではさつまいも(かんしょ)栽培で使える除草剤や、効果的な使い方をわかりやすく説明します。
除草剤の種類とさつまいも畑での使い方
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。
さつまいもは、畝と畝の間に雑草が生えます。植え付け後30日〜45日ぐらいまでに雑草を防除できれば、をその後はさつまいものツルを通路まで伸ばすことによって、雑草の抑制が可能となります。
体系的に防除するのであれば定植後の雑草発生前に「土壌処理剤」で雑草の発生を抑制し、それでも生えてきてしまった雑草には、「茎葉処理剤」を使って雑草を枯死させます。
またマルチを張って(雑草の防除には黒マルチがおすすめ)生育初期の雑草を抑え、その後に発生した雑草に対し「茎葉処理剤」で雑草を枯死させることもできます。
除草剤の使い方
土壌処理剤
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ45日~60日ほどです。さつまいも(かんしょ)には、植え付け後に畝と畝の間に土壌散布してつかいます。
- 砕土、整地はていねいに行い、土壌表面をなるべく均等に平にする
- 植え付け後、雑草が発生する前に畦間に土壌散布する。(作物にかからないように注意する)
- 噴霧器(散布機)を使って散布しましょう。ジョウロでの全面散布は薬量を超える可能性があります。
- 使い方は除草剤によって異なります。しっかりラベルを読んで使いましょう。
茎葉処理剤
定植時にマルチをした場合や、土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
さつまいもにおすすめの除草剤
ゴーゴーサン乳剤
有効成分 ペンディメタリン 30.0%(ゴーゴーサン乳剤) HRACコード3
ゴーゴーサン乳剤はBASF社が開発したジニトロアニリン系の除草成分ペンディメタリンを有効成分とする、主に畑作に使う除草剤で、さつまいも栽培に広く使われている土壌処理剤です。一年生イネ科雑草、広葉雑草の両方の効果があり、45〜60日間と長期間効果が持続します。挿苗10日後まで(雑草発生前)に畦間土壌散布して使います。さつまいもにかかると薬害が生じる恐れがあるため、作物にかからないように注意が必要です。
レンザー
有効成分 レナシル80.0% HRACコード5
レンザーは、かんしょ(さつまいも)に選択制のある土壌処理剤です。畑作の一年生イネ科雑草、広葉雑草に効果があり、選択制なのでさつまいもに薬液がかかっても、安全なため全面散布することも可能です。さつまいもには、植付後但し、収穫30日前まで使うことができます。
残効性が長く、後作物に対して影響がある可能性があります。特にいね科、まめ科、うり科、なす科及びあぶらな科作物については、薬剤使用後6カ月は栽培ができないので注意が必要です。
ワンクロスWG
有効成分 フルアジホップP7.0%、リニュロン 30.0% HRACコード 1,5
ワンクロスWGの有効成分は、特に広葉雑草に対して高い除草効果を持つリニュロンと、イネ科雑草に強いフルジアップPが2つの配合された葉茎兼土壌処理剤です。生育期(雑草発生揃期)但し、収穫60日前まで使うことができます。
雑草が生える前の土壌処理剤としても使えますが、雑草が生えそろう時期(草丈10㎝)までに、茎葉処理剤として使うと、雑草を枯らし、その後雑草の発生も抑える効果もあります。作物にかかると薬害が生じる可能性があるので、薬液がかからないように注意しましょう。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。さつまいもには、雑草生育期の植えつけ前又は植え付け後の畦間処理で収穫14日前まで使うことができます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
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概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
プリグロックスL
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の除草剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
雑草発生期の植付前か、植え付け後の畦間処理で収穫30日前まで使うことができます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
この他のかんしょに適用がある除草剤
この他、さつまいもに適用がある除草剤は、「農家web 農薬検索サービス」からも探せます。作物名は、農薬では「かんしょ」で探してください。
グリホサート系の除草剤は、基本的には植え付け前に使えますが、植え付け後に使える除草剤はあまりありません。ラウンドアップマックスロードは、畝間除草としても使えます。ツルやマルチなどに飛散すると、作物に影響があるため散布時には専用のノズルを使って飛散しないように注意することが大切です。