この記事では、家庭で甘くておいしいぶどうを収穫するためのおすすめの肥料と施肥・栽培のポイントを詳しく解説します。
ぶどうを甘くするおすすめ肥料
ぶどう栽培で利用する代表的な肥料をご紹介します。散布量などは商品のパッケージをよく読んであたえすぎないようにしましょう。
有機肥料
庭植えにおすすめなのは有機肥料です。有機肥料は土壌の改善になり元肥や、11月の追肥にも使えます。ぶどう専用の肥料「ぶどうがおいしくなる肥料」や「花ごごろの果樹・花木の肥料」、油かす・鶏けいふん・米ぬかなどの有機肥料も使えます。牛ふんは土壌改良にもおすすめ。いづれも完熟しているものを使いましょう。
ぶどうがおいしくなる肥料
つる性の植物用につくられたぶどう専用肥料です。カニガラ・魚かすなどの有機物にマグネシウム・アミノ酸が配合されています。
花ごごろの果樹・花木の肥料
園芸用土や肥料など農業資材を取り扱う会社、花ごごろが販売する「果樹・花木の肥料」です。油かす・米ぬかなどの有機物を含み、リン酸成分が多いので、果実のつきがよくなります。ホームセンターなど手軽に購入できます。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
鶏糞
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた粒状の有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。特に、植物の実や花に栄養を与えたい時に使われるリン酸が豊富です。同じ堆肥として牛糞(牛ふん)が比較されることがありますが、成分が異なるとともに、牛糞(牛ふん)は土壌改良の目的でも利用される点が異なります。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
牛ふん
牛の糞を原料に生産した肥料を「牛糞肥料」あるいは「牛糞堆肥」とよびます。カリウムを主な成分として含有しており、リン酸や窒素も多少含んでいます。多くの場合、牛糞肥料(堆肥)には、稲わらに由来する繊維質が含まれています。そのため、土壌改良効果が期待できます。バーク堆肥や腐葉土などの植物性堆肥も併せてつかうとより効果が高まります。
なお、牛糞肥料(堆肥)と石灰資材を同時に施用することは、避けましょう。一般に、石灰資材は土壌の酸度調整のために用いられますが、そこに含まれるカルシウム成分が化学反応してしまうことを防ぐため同時に施用することは避けるようにします。
化成肥料
庭植えの追肥や鉢植えには、化成肥料がおすすめ。化成肥料は早く効く速効性とゆっくり効く両方の成分を持っているものが多いです。有機肥料は、臭いや虫などが気になるためベランダなどで鉢植えで育てる場合は、有機入りの化成肥料もおすすめです。
マイガーデンベジフル
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得しています。土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用
ハイポネックスジャパンが製造販売する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」という肥料もあります。追肥に利用する錠剤タイプで、置くだけでOKという簡便な肥料です。窒素:リン酸:カリ=8:10:9で配合されているほか、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウムも加えられています。
また、ハイポネックスには「ハイポネックス原液」などの液体肥料(液肥)もあり、樹勢が弱っているときに与えると良いでしょう。
ぶどうを甘くする肥料の与え方
甘いぶどうを育てるためには、肥料の与え方や種類も大切です。
ぶどうは肥料を与えすぎると、枝・葉・根などの果実は関係のない樹勢が良くなります。植物にとって果実をつくることは、タネを作って子孫を残すことです。木が弱ると子孫を残そうと植物はタネを作ることに力を注ぎます。よってぶどうは樹勢を抑えることでおいしい果実を実らせることができます。
庭植えの場合は、11月に元肥として堆肥などの有機物や有機肥料を使い、収穫がおわったあとお礼肥として化成肥料を与えます。
鉢植えは、植え替えのときに元肥として、緩効性肥料を与え、その後は生長期の6月~9月に木の様子をみて元気がないようなら化成肥料を追肥をします。必ず施肥しなくてはいけないわけではありませんので、樹体をよく観察して判断をするようにしましょう。
ぶどうの肥料時期の年間スケジュールは、詳しく書いている記事がありますのでそちらを参照ください。
甘いぶどうを育てる栽培のポイント
糖度の高いぶどうを育てるには、肥料のほかにも多くの大切なポイントがあります。順に説明していきます。
品種について
ぶどうは、大きくわけて「欧州種」「米国種」「欧米雑種」の3つに分けられます。耐寒性は普通で耐暑性も強いのですが、乾燥した地域に育つ欧州種は特に多湿が苦手で日本で育てるのは難しいといわれています。米国種は病気につよいのですが、果実の味は欧州種に劣るといわれ、その両方の長所をもつ「欧米雑種」が日本がではよく栽培されています。
日本でおなじみの巨峰やピオーネ、シャインマスカットはすべて「欧米雑種」です。日本では近年栽培農家では、ぶどうの大粒化や収量の多い品種の栽培がすすんでいます。しかし家庭で育てる場合には、粒の大きさにこだわらず、糖度が高く栽培が容易な「デラウェア」「キャンベル・アーリー」「バッファロー」「ネヘロスコール」などもおすすめです。
種あり?種なし?
ブドウは家でも「ジベレリン処理」をすれば種なしのぶどうをつくることはできます。でも実は種があるまま育てた方が果実は、甘く香りもよいとされています。食べやすさでは種なしに軍配があがりますが、両方そだてて食べ比べてみるのもよいかもしれません。
ジベレリン処理
品種によって満開前に1回、満開後に2回目を処理する品種と、満開後に1度処理する品種があります。花房整形が終わった後行います。コップやペットボトルを切ったものにジベレリン液にいれ、花房を浸してすぐに引き上げます。ジベレリン液は、ジベレリン粉末や錠剤を水に溶かしたものです。液剤はぶどうには使えませんので注意しましょう。
剪定・整枝
毎年12月~3月には、よい果実と樹勢の調整・病気の予防のために剪定・整枝をしましょう。また剪定は、枝の途中で切って枝を切る切り戻し剪定で行います。切る枝の長さにより、「短梢剪定」と「長梢剪定」に分かれます
短梢剪定
鉢植えなど、枝を大きくさせたくないときにおすすめ。前年に実をつけた枝(結果枝)を、基部から1~2節残してすべて枝をきります。乾燥や寒さで枝が傷みやすいので0℃以下の日に行うのはやめましょう。
長梢剪定
前年に実をつけた枝(結果枝)を間引きして、残した枝を長めに残して切る剪定方法です。大半の枝は、基部から枝を切り取ります。残した枝を基部から7節~8節残してきります。4~6節ぐらい残す方法を中梢剪定といいます。残す節が長いほど、基部から切り取る枝を多くきります。
芽かき
4月になると新しい芽がでてきます。一節から2つ以上の芽がでてきたら一つを残して、あとはすべて落とす芽かきをしましょう。葉が6枚以上になる前に行うと、枝の消費を抑えることができます。
風通しをよくし、光があたるようにすることで大きな実がつき、病害虫の予防にもなります。
摘房・花房整形
大きくて糖度の高い果実をとるためには、必ず摘房をしましょう。花が咲く前の5月に行います。一つの枝につける実は、鉢植えの場合は1つ。庭植えの場合は、大粒品種は1つ。中型~小型の品種は2つまででに切り詰めます。
枝のつけ根の花房が大きいものを残して、あとはすべての花房を切り落とします。また残した花房も、花房が2つついている場合は、大きい一つを残して切り取ります。また花房の下の肩の部分も大型種は4段、小型種は2段ほど切り取ります。
摘粒
小粒品種には不要ですが、大粒品種は満開後、粒が大豆ほどになってきたら摘粒(てきりゅう)をしましょう。品種によりますが出来上がりが30粒程度になるように、果実の成長に合わせて2回程度行います。
最初の摘粒の手順
- 果粒のついていない部分を切り落とす
- 外側の、小さな果粒や傷んだ粒を取り除く
- 2で空いた隙間に、ハサミをいれて内側の小さな果粒を切り取りとる
2回目の摘粒の手順
- 外側の、小さな果粒や傷んだ粒を摘みとる
- 1で空いた隙間から、果粒がふれあわない程度に切り取り、隙間をつくる。
【補足】肥料の呼び名について 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。花や結実の後に与える追肥をお礼肥といったり、冬に与える追肥を寒肥(かんごえ)といったりもします。
【補足】ぶどうの栽培で気をつけること
栽培環境・水やり
ぶどうは、日当たりのよい風通しの良い場所で栽培しましょう。ぶどうは暑さにも強く、寒さも品種によりますが、マイナス10℃ぐらいまでは耐えます。しかし多湿は苦手で病気が発生しやすくなるので注意が必要です。
鉢植えの水やりは、鉢の表面が乾いたら鉢底から水がでるまでたっぷり与えます。庭植えは、乾燥には強いのであまり気にしなくてよいでしょう。夏に日照りがつづときに与えれば十分です。
用土について
やせ地でも育つぶどうは、用土は特に選びません。水はけと通気性のよい土がおすすめです。自分で配合する場合は腐葉土7・赤玉土3などがよいでしょう。
病害虫
ぶどうの病気としては、うどんこ病、べと病、灰色かび病、晩腐病、黒とう病、褐斑病などがあります。雨で伝染する病気が多いので、予防としては果房に袋がけをしたり、落ち葉や枯れた枝などを取り除いてあげることも重要です。薬剤も効果的です。病気が発生したら、すぐに取り除きましょう。
害虫は、コウモリガ、ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバ、フィロキセラ、コガネムシなどが発生します。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまで家庭で甘いぶどうを収穫するための肥料や、栽培方法について説明してきました。初心者の人でも栽培しやすい品種をえらんで、手間をかけてあげれば自宅でぶどうを収穫することは可能です。
ぶどうは、つる性落葉低木なので日よけや垣根としてもすぐれています。ぜひ庭やベランダで甘いぶどうを育ててみてください。