すす病はみかんなど柑橘類でよく耳にします。ここではすす病とは何なのか、またすす病を防ぐためにはどうすればいいのか解説していきます。
すす病はどんな病気?
すす病とは?
すす病は葉や果実に黒色、黒褐色のススのようなカビ(糸状菌)が発生する病気です。その菌は6種類以上と言われ、病斑の色も暗褐色や緑黒色、褐色など様々で、外観もビロード状、紙状、粉塊状と、こちらも様々な病徴が見られます。
主にカイガラムシなどが出した甘露に寄生することで発病します。このため、すす病が発生した部分の近くには必ずカイガラムシ類などの寄生が関係しています。
すす病によって、果実の外観が悪くなって、商品価値が下がる、また葉などがすす病の菌に覆われて樹勢が悪くなる、といった悪影響が生じます。
すす病の防除のポイント
すす病は主にカイガラムシの発生によって起こります。つまり、カイガラムシの発生度合いがすす病かどうかの診断ポイントになり、カイガラムシを防除することがすす病防除になります。
カイガラムシに効果がある農薬
カイガラムシ類の成虫は、蝋状の物質で覆われたり、硬い殻があったりするため、農薬を散布しても付着しにくく、農薬の散布だけで防除を図るのは難しい害虫です。
このため、成虫になる前の幼虫の時期に農薬を散布することを基本とします。目安となる時期は、5〜7月です。この時期に農薬を散布するようにしましょう。
そして、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要だという前提で、防除に取り組むことをおすすめします。
カイガラムシ類に効く代表的な農薬
有機リン系 オルトラン、エルサン、スミチオン、マラソン
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオン、マラソンがあります。
ネオニコチノイド系 モスピラン、ダントツなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
庭木、花木によく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
コルト
コルト顆粒水和剤は、日本農薬などが販売する昆虫の行動を制御する昆虫行動制御剤(IBR剤)で、従来の有機リン系やネオニコチノイド系に対して抵抗性を発達させた害虫にも有効なため、ローテーションのなかに組み込みやすい殺虫剤です。
スルホキシイミン系 トランスフォーム
トランスフォームフロアブルは2017年12月に農薬登録が認可された新規殺虫剤です。ネオニコチノイド系や有機リン系などの既存の殺虫剤とは構造が異なる新規系統の殺虫剤なので、コルトと同様、ローテーションに組み入れやすい殺虫剤です。
カイガラムシに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、カイガラムシに効く代表的な農薬は以下のようになります。
他、物理的に作用する剤であり、抵抗性が発達するおそれが殆どない「マシン油乳剤」や、殺虫、殺菌作用を持つ「石灰硫黄合剤」(共に有機JASで使用可能)があります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はコナジラミだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、オオタバコガ、チャドクガ、アオムシ、毛虫など幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。
農薬を散布する時期
上記の科学的農薬は、成虫になる前の幼虫の時期に農薬を散布することを基本とします。目安となる時期は、5〜7月です。この時期に農薬を散布するようにしましょう。
そして、5〜7月の科学的農薬の散布だけで発生を抑えられない場合、冬期の1〜2月に、「マシン油乳剤」や、殺虫、殺菌作用を持つ「石灰硫黄合剤」を散布して防除します。
カイガラムシの防除では、マシン油乳剤の希釈倍率はハダニなどに比べて50〜と高くなっています。効果をしっかり出すために、ラベルの倍率を確認するようにしましょう。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
カイガラムシの天敵はテントウムシ(てんとう虫)、柑橘系で厄介なヤノネカイガラムシの天敵である寄生蜂などが存在します。が、屋外発生が多いことなどから、カイガラムシ類に対する生物農薬市場はまだそんなに発展はしていいないのが現状です。
生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
物理的防除
剪定時に,カイガラムシ類を見つけたら竹べらやたわし,ワイヤブラシ等でこすり落とします。
寄生の多くなってしまった枝は,思い切って切除するようにしましょう。「こうやく病」が見られる場合は、その跡に防菌ゆ合促進剤を塗布、また該当部分の枝を切り落とし、切り口に防菌ゆ合促進剤を塗布すると良いでしょう。
ゼラチンと液体石鹸液
ゼラチンを水で溶き、液体石鹸を加えた溶液を作って、スプレーで散布してアブラムシ、カイガラムシに付着させることで防除している農家の方もいらっしゃいます。
耕種的防除
越冬期に粗皮削り
カイガラムシは越冬期に樹木の粗皮下などに潜り込みます。このため、粗皮削りは非常に有効な防除手段です。粗皮削りを行うことで、樹皮の割れ目や粗皮下で越冬している害虫の生息場所を無くします。
粗皮削りをする方法としては、専用の刃物で行う方法と、バークストリッパー(高圧水流を噴射する器具)の水圧で剥がす方法があります。バークストリッパーが使用できる場合は、水圧で害虫自体を圧殺できます。
また、粗皮削りを行なった後、アルバリン顆粒水溶剤を高濃度で希釈した薬液を樹皮に塗ることでコナカイガラムシ類の防除効果を高める方法もあります。
詳しくは下記を参考にしてみてください。
http://greenjapan.co.jp/arubarin_ks.pdf
剪定をしっかり行い、樹木に日がたくさん当たるようにする
枝と枝が密集していて、日が当たりにくい圃場では、カイガラムシは発生しやすくなります。しっかり剪定を行い、樹木、枝に日光が当たるようにしましょう。
まとめ
カイガラムシは一度大量発生すると、厄介で、駆除するのは簡単ではありません。
5〜7月の化学的農薬散布による防除と、冬期の、粗皮削り、マシン油乳剤による防除、そしてしっかりとした剪定で予防、と通年かけて計画的に退治を行なっていく必要があります。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。また草花、観葉植物などの家庭園芸用の農薬として、フマキラーが販売するカダンK(有効成分はマシン油、アレスリン(ピレスロイド系))、住友化学園芸のボルン(有効成分はマシン油)、カイガラムシエアゾールなどもあります。手に取ってみて、確認してみてください。
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