スミチオンは住友化学が創製した、有機リン・有機硫黄系を有する殺虫剤で,多くの作物に適用があり,特に果樹害虫にすぐれた効果を発揮する農薬で、液剤の乳剤と、粉剤の水和剤があります。
ここでは、農薬スミチオンとはどんな殺虫剤なのか、特長や、効果と注意点を説明していきます。
スミチオンとは、どんな殺虫剤?
スミチオンは、住友化学が創製した、フェニトロチオン(MEP)という有機リン・有機硫黄系を有する殺虫剤です。
強い殺虫力と広い適用範囲を持ち、1961年に農薬登録を受け、以来日本では50年以上にわたり使用されています。
スミチオンの有効成分、性状
- フェニトロチオン(MEP(PRTR・1種))・・・水和剤、乳剤などにより含有%が異なる
有効成分のフェニトロチオン(MEP)は、住友化学が開発した有機リン・有機硫黄系の殺虫剤で、昆虫体内でオキソン体となり、コリンエステラーゼと結合することで酵素活性を低下させ、正常な神経伝達機能を阻害することによって殺虫します。
性状は、スミチオン乳剤が黄褐色可乳化油状液体、スミチオン水和剤が淡褐色水和性粉末になります。乳剤、水和剤なので、水で希釈して散布します。農薬の希釈については下記をご参考ください。
スミチオンの特長
スミチオンの最大の特長は、多くの作物に適用があること、特に果樹害虫にすぐれた効果を発揮し,その広い適用範囲から同時防除も可能なことがあげられます。
微量でも高い殺虫効果を発揮し、接触毒,食毒効果,殺卵効果に優れています。
使用するときに注意したい点
蚕毒・魚毒が強い
蚕毒・魚毒が強いので、桑園や養魚田,養魚池などに飛散,流入しないように充分注意しましょう。
アブラナ科作物には薬害
アブラナ科作物には,薬害のおそれがあるので付近にある場合には薬液がかからないよう注意して散布しましょう。
その他
ミツバチには悪影響があるため、ミツバチの巣箱、その周辺には薬液がかからないように注意しましょう。周辺で養蜂が行われている場合は、関係機関へ農薬使用に係る情報を提供し、ミツバチの危害防止に努めてください。
また、ボルドー液と混用する場合は散布直前に行い、できるだけ早く使用すること、その他のアルカリ性の強い農薬との混用は避けるようにしましょう。
その他、使用する際は、使用上の注意をしっかり確認するようにしましょう。
効果・薬害・毒性
スミチオンは以下のように、幅広い「適用作物」と「適用病害虫名」に対応しています。
スミチオン乳剤
作物名 | 適用病害虫名 |
---|---|
稲(イネ) | アブラムシ類 ヒメトビウンカ カメムシ類 イネシンガレセンチュウ イネドロオイムシ イネハモグリバエ サンカメイチュウ ニカメイチュウ フタオビコヤガ イネツトムシ アワヨトウ |
稲(箱育苗) | イネシンガレセンチュウ |
麦類(大麦、小麦を除く) | アブラムシ類 ヒメトビウンカ ムギキモグリバエ アワヨトウ ムギアカタマバエ |
小麦 | アブラムシ類 ヒメトビウンカ ムギキモグリバエ アワヨトウ ムギアカタマバエ |
とうもろこし | カメムシ類 アワノメイガ ツマジロクサヨトウ |
水田作物 畑作物(休耕田) | カメムシ類 |
かんしょ | アブラムシ類 ヨツモンカメノコハムシ イモコガ |
こんにゃく | アブラムシ類 |
ばれいしょ | アブラムシ類 テントウムシダマシ類 |
ごぼう | アブラムシ類 フキノメイガ |
たまねぎ | アブラムシ類 アザミウマ類 |
らっきょう | アザミウマ類 ネダニ類 ネギハモグリバエ |
ねぎ | アザミウマ類 ネダニ類 ネギコガ |
豆類 (種実、ただし、だいず、あずき、いんげんまめ、そらまめを除く) | アブラムシ類 カメムシ類 マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
あずき(小豆) | アブラムシ類 カメムシ類 マメホソクチゾウムシ マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ アズキノメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
いんげんまめ | アブラムシ類 カメムシ類 インゲンテントウ マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
そらまめ | アブラムシ類 |
だいず(大豆) | アブラムシ類 カメムシ類 マメヒメサヤムシガ ダイズサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ ウコンノメイガ マメシンクイガ マメハンミョウ ダイズサヤタマバエ |
豆類 (未成熟、ただし、えだまめ、さやいんげん、未成熟そらまめを除く) | アブラムシ類 カメムシ類 マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
えだまめ(枝豆) | アブラムシ類 カメムシ類 マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ ウコンノメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
さやいんげん | アブラムシ類 カメムシ類 インゲンテントウ マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
未成熟そらまめ | アブラムシ類 カメムシ類 マメヒメサヤムシガ シロイチモジマダラメイガ マメシンクイガ ダイズサヤタマバエ |
きゅうり しろうり かぼちゃ スイカ メロン | アブラムシ類 アザミウマ類 |
トマト | アブラムシ類 オオニジュウヤホシテントウ |
なす | アブラムシ類 テントウムシダマシ類 |
モロヘイヤ | アブラムシ類 カメムシ類 マメコガネ アザミウマ類 |
せり | アブラムシ類 |
ほうれん草 | アブラムシ類 ホウレンソウケナガコナダニ |
うど | アブラムシ類 センノカミキリ ヒメシロコブゾウムシ ウドノメイガ ヨトウムシ |
わらび | ナガゼンマイハバチ |
いちご | アブラムシ類 |
オリーブ(葉) | オリーブアナアキゾウムシ |
たらのき | センノカミキリ幼虫 ヒメシロコブゾウムシ |
かんきつ | アブラムシ類 サンホーゼカイガラムシ カメムシ類 ミカンキジラミ ケシキスイ類 カネタタキ コアオハナムグリ アザミウマ類 フラーバラゾウムシ ハマキムシ類 コナカイガラムシ類 ミカンツボミタマバエ |
なし | アブラムシ類 カメムシ類 ナシグンバイ ハマキムシ類 クワコナカイガラムシ ナシチビガ ナシホソガ シンクイムシ類 アメリカシロヒトリ |
りんご | アブラムシ類 ナシグンバイ ハマキムシ類 クワコナカイガラムシ モモシンクイガ ナシヒメシンクイ アメリカシロヒトリ |
おうとう | アブラムシ類 ナシグンバイ ハマキムシ類 アメリカシロヒトリ |
もも | アブラムシ類 クワコナカイガラムシ クビアカツヤカミキリ カメムシ類 ハマキムシ類 モモハモグリガ モモシンクイガ ナシヒメシンクイ |
うめ | アブラムシ類 クビアカツヤカミキリ ハマキムシ類 アメリカシロヒトリ |
大粒種ぶどう 小粒種ぶどう | アブラムシ類 ブドウトラカミキリ ブドウスカシバ キンケクチブトゾウムシ成虫 ハマキムシ類 フタテンヒメヨコバイ クワコナカイガラムシ ブドウトリバ |
オリーブ | オリーブアナアキゾウムシ |
いちょう(種子) | コウモリガ ヒメボクトウ |
かき(柿) | イラガ類 カメムシ類 ハマキムシ類 ミノガ類若齢幼虫 オオワタコナカイガラムシ フジコナカイガラムシ カキホソガ カキノヘタムシガ アメリカシロヒトリ |
花き類・観葉植物 | バッタ類 アザミウマ類 ハマキムシ類 アオムシ |
下記の有効成分を含む農薬の総使用回数(年限)は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- フェニトロチオン(MEP) 〜6回
フェニトロチオン(MEP)を含む農薬の使用可能回数(年限)は、適用作物によって〜6回と変わってきます。適用作物と使用回数をよく確認するようにしましょう。また、使用時期(収穫何日前など)もしっかりチェックしてください。
スミチオンの効果を高めるために
薬液を広範囲にまく際には、効果的に散布できる散布機(噴霧機)やスプレイヤーの使用をおすすめします。
また、展着剤を、果実を加害する害虫、または発生する病害の初期防除には加えるのがおすすめです。
まとめ
スミチオンの最大の特徴は、接触毒,食毒効果,殺卵効果にすぐれていて,微量でも強い殺虫力を発揮、また深達性が強く,吸汁性害虫にも有効な点です。オルトランやスミトップ、オルチオンなど、フェニトロチオン(MEP)が含有された薬剤は多くあります。
コガネムシ類、ケムシ、アブラムシ類など幅広い殺虫スペクトラムを持ち、水稲、畑地、果樹園の作物と、広い適用範囲を持つスミチオンは、相対的に人畜毒性が低い農薬と言われ、使いやすい農薬と言えるでしょう。
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