展着剤とは?
展着剤とは、界面活性剤や接着剤となるパラフィンや樹脂酸エステルを有効成分としたもので、薬剤の付着性や浸達性を高めたり、溶けにくい水和剤や乳剤などの混用性を高めて、農薬の効果のムラを減らす働きをしてくれます。
植物や害虫の表面には、水を弾くワックスや糸状の物質があり、農薬を散布しても葉茎や害虫体に簡単には付着しません。キャベツやネギ、イネなどは特に付着しにくい代表的な作物もあります。
このような作物や害虫にしっかり農薬の効果を効かせたい時、展着剤は薬液の濡れ性、付着性、拡展性、懸垂性などを強化し、薬液を均一に付着させ、活躍します。
展着剤には様々な種類がありますが、機能で「一般展着剤」「アジュバント(機能性展着剤)」「固着剤」の3つに分けることができます。
また、有効成分(主成分)で、「エステル型ノニオン系展着剤」「エーテル型ノニオン系展着剤」「アニオン配合系展着剤」「カチオン配合系展着剤」「シリコーン系展着剤」「パラフィン系固着剤」の6つに分けることができます。(マシン油乳剤も入れて7つに分ける場合もあります)
展着剤の種類と特徴
一般展着剤
一般展着剤は、散布液の表面張力を下げる効果があり、濡れにくい作物や病害虫・雑草などへの付着性を改善し、液体の散布ムラを減らしてくれます。
アジュバントに比べると希釈濃度は薄め(大体5000倍以上)です。より効果を出そうと、アジュバントくらい(1000〜3000倍)の高濃度にするのは、薬害をもたらす危険性があるので、やらないようにしましょう。
アジュバント(機能性展着剤)(adjuvant)
アジュバント(機能性展着剤)は、一般展着剤よりも高濃度で使用し、濡れ性や付着性を改善するとともに、農薬の効果を積極的に引き出す展着剤です。殺虫剤や殺菌剤などに使うタイプと、除草剤のみに使用するタイプに大別されるので、使用農薬の種類に従って選ぶことが必要です。
機能性展着剤は、アジュバント、スプレー・アジュバントと呼ばれます。「シリコーン系展着剤」である「まくぴか」は表面張力を下げる働きが強く「濡れ性(湿展性)」を大幅に改善します
使う農薬のタイプに合わせて選ぶのが大事です!シリコーン系(まくぴか、ブレイクスルーなど)は泡立ちを避けるために、最後に混ぜるのがおすすめです。
固着剤
固着剤は一般展着剤やアジュバントと異なり、界面活性剤ではなく、パラフィン(ろうそくなどで使われます)や、接着剤となる樹脂酸エステルを有効成分にする展着剤です。初期付着量を高めることにより、耐雨性を高めて残効性を延ばすことができます。
ただし、特性上、他の展着剤に比べ、くっつく量が多くなるので、一緒に使用できる農薬が限られる場合があります。ラベルをよく見て確認するようにしてください。
固着剤は、ラベルをしっかり確認し、泡立ちを避けるために、最後に混ぜてください。
それぞれの特徴を表にすると、下記のようになります。
項目 | 一般展着剤 | アジュバント (機能性展着剤) | 固着剤 |
---|---|---|---|
主要な 有効成分 | エーテル型ノニオン系展着剤 アニオン配合系展着剤 | エステル型ノニオン系展着剤 カチオン配合系展着剤 シリコーン系展着剤 | パラフィン系固着剤 他 |
濡れ性(湿展性) | ○ | ◎ | ✖️ |
付着性 | 比較的均一であ るが少ない | 均一であるが少 ない | ムラはあるが多 い |
耐雨性 | ✖️ | 農薬との相性がある | ○ |
混ぜるタイミング | 最初 | 最初 (ただし、シリコーン系は最後) (また、スピードスプレーヤー使用時は最後に混ぜる) | 最後 |
主な製品 | アグラー アイヤーエース アドミックス クイックタッチ シンダイン スプレイザーエース ダイン ネオエステリン ハイテンパワー マイリノー Yハッテン ワンオフ クミテン(エース) グラミンS サンクトテン | (殺虫剤、殺菌剤) アプローチBI スカッシュ アップライト レインコート ワイドコート ブレイクスルー(シリコーン系) まくぴか(シリコーン系) (除草剤) サーファクタントWK、30 クサリノー バスファテン | ペタンV アビオンE アグロガード ステッケル KKステッカー |
除草剤におすすめの展着剤
除草剤におすすめの展着剤は下記になります。
商品名 | サーファクタントWK、30 | クサリノー |
---|---|---|
概要 | ||
タイプ | アジュバント (除草剤) | アジュバント (除草剤) |
補足 | クチクラワックスを溶解して表皮細胞中へ農薬を浸透させる。 グリホサート系、グルホシネート系除草剤だけでなく、芝生に使うMCPPなどの選択制除草剤の効果も高める。また、土壌処理型除草剤の葉面吸収も促進させる等、かなりの種類の除草剤で使用可能。 | ジクワット、パラコート、プログリックスLなどのカチオン型茎葉処理剤に適合し、効果を高める (アルソープ30も同様の効果) |
製造、販売元 | 丸和バイオケミカル | 日本農薬 |
展着剤を選ぶ際の注意点
除草剤専用でなくても大丈夫?
ダインやアグラー、マイリノーといった一般展着剤は濡れ性(湿展性)を高めることを主眼にしています。雑草への付着率が高まることで効きやすくする効果があります。
しかし、サーファクタントWK、サーファクタント30、クサリノー、バスファテンといった除草剤専用の展着剤(アジュバント)は、単に雑草への浸透を高めるだけでなく、速効性・難防除雑草処理・耐雨性の向上など、プラスαの効果があり、一般展着剤とは効果が遥かに違います。このため、除草剤専用のアジュバントの使用をおすすめします。
また、アジュバントのアプローチBI、まくぴか、ハイテンパワー、アイヤーエースなども殺虫剤、殺菌剤だけでなく除草剤にも使うことはできますが、除草剤専用の展着剤のような効果は期待できません。このため、やはり上記のような除草剤専用のアジュバントの使用をおすすめします。
使用可能なものを選びましょう
アジュバントは組み合わせを間違うと凝集したりと効果が発揮できなくなったり、薬害を起こすリスクがあります。除草剤の注意事項に展着剤の加用が認められていない場合は、液剤に絶対に混ぜないようにしてください。
例えば、有効成分名の最後に「ナトリウム」や「カルシウム」の文字がある陰イオン性展着剤を、グリホサートカリウム塩(ラウンドアップマックスロード、タッチダウンiQなど)に混ぜると、凝集してしまうリスクがあったりします。
アジュバントは強い薬効アップのため、薬害を生じさせる可能性もあります。使う農薬の注意事項をよく確認して使用するようにしましょう。特に、農作物の生育期に散布する選択制除草剤に混ぜると薬害リスクが高まります。
使い方のポイント
除草剤を水で希釈する際に展着剤を加用します。タンクに混ぜる順番は基本的に展着剤が一番最初と言われていますが、シリコーン系(まくぴか、ブレイクスルーなど)と固着剤の展着剤は泡立ちを避けるために一番最後に混ぜるようにしましょう。農薬原液の希釈については下記記事が役立ちます。
また一般展着剤はアジュバントに比べると希釈濃度は薄め(大体5000倍以上)です。より効果を出そうと、アジュバントくらい(1000〜3000倍)の高濃度にするのは、薬害をもたらす危険性があるので、やらないようにしましょう。
まとめ
アメリカを中心とする欧米では、噴霧器での農耕地や水田への液剤の高濃度少水量の散布、空から農耕地への散布がメインになってきていることもあり、展着剤の上手な添加がかなり進んでいます。
日本は大量散布をメインにしてきたこともあり、農薬ラベルを見ても、農薬に推奨される展着剤の記載などはほとんどなく、欧米に比べ、展着剤の活用、技術は進んでいるとは言えない状況です。
日本でも今後、水稲、果樹などでのドローンの活用や、効率を高めるために高濃度少水量の散布にシフトしていくのは間違いありません。除草剤に加用し、付着を高め、流れ落ちるのを防ぐ展着剤を活用する時期に来ています。
展着剤を上手く利用することで除草効果を高め、農作業の効率、省力化に寄与できます。ぜひ、ホームセンターや農業資材販売所のガーデニング・資材コーナーで手に取ってみてください。