ほうれん草は「青菜の王様」とも呼ばれ、栽培期間も短く栽培も比較的簡単なことから家庭菜園でも人気の野菜です。育て方に少しコツがいりますが、水耕栽培でも育てることができます。
この記事ではほうれん草の播種(タネまき)から始める水耕栽培の方法や、育て方のコツなどをわかりやすく説明します。
ほうれん草の基礎知識
栽培を始める前に、ほうれん草のことを知っておきましょう。植物を育てるときに、植物のルーツや自生する環境などを知ると、植物がどんな環境を好むか知ることができ栽培しやすくなります。
ほうれん草は、冷涼な気候を好みます。寒さには強いですが、25℃以上の暑さには耐えられません。種まきから30日~50日前後で収穫が可能なので、比較的育てやすい野菜です。品種には葉が丸く厚みのある西洋種、葉の切り込みが深く甘みのある東洋種があり、西洋種と東洋種の両方の優れた点を掛け合わせた交雑種(交配種)が一般的には出回っています。
ほうれん草は、寒さにあたると甘みが増し、栄養価も高くなることから冬が旬の野菜です。露地栽培やプランター栽培、水耕栽培でも育てることができます。
学名 | Spinacia oleracea |
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属名 | アカザ科ホウレンソウ属 |
原産地 | イラン・西南アジア |
発芽温度 | 15℃~20℃ |
生育適温 | 15℃~20℃ |
耐寒性等 | 耐寒性 強い 耐暑性 弱い |
ほうれん草の水耕栽培のポイント
水耕栽培とは、土を使わず培養液(肥料分を含んだ水)で、野菜や草木を栽培する方法です。土の変わりにハイドロボールやゼオライトなどの培土を使った栽培も水耕栽培の一種でハイドロカルチャーと呼ばれます。水耕栽培で育てる場合には、土から栄養をとれないため水耕栽培で使える液体肥料を使って育てる必要があります。
葉物野菜は水耕栽培に向いており、リーフレタスやベビーリーフ、ルッコラ、大葉、クレソンなどのハーブ類は人気が高く簡単に水耕栽培ができます。ハーブなどに比べると少し難易度は上がりますが、葉物野菜のほうれん草も水耕栽培で育てることができます。
ホウレンソウは植え替えが苦手なので、あまり苗が販売されていません。水耕栽培は種から始めるのが一般的です。ポイントは、発芽・光対策・窒素抜きです。これらのポイントを押さえて、上手なほうれん草を作りましょう。
ほうれん草の種まきと育苗
ほうれん草の最初の栽培ポイント、発芽から説明していきます。ほうれん草の種は自然採取のほうれん草の種は、殻がかたい種皮に包まれており発芽率が低く、時間がかかります。
ほうれん草の種の選び方
ほうれん草の種を選ぶときには「エボプライム加工」もしくは、「ネーキッド加工」されているものを選びましょう。エボプライム加工とは、硬い種皮を削いで薄くする加工で、ネーキッド加工は硬い種皮をすべて取り除いた裸の状態の種です。
ネーキッド加工の方が、簡単に発芽しますが時間が経つと、発芽率が落ちてしまうので使いきりが基本です。どちらの加工もされていないほうれん草の種を使う場合には、事前に発芽された種をまく「「催芽処理(芽出しまき)」」をすると発芽率がUPします。
またトウの立ちにくい西洋種は、春まきに向いていて、東洋種はトウが立ちやすいので秋まきにします。種のパッケージに、春まき向き、秋まき向きとの記載がありますので、播種の時期に合わせて種を選びましょう。
種まきの時期
ほうれん草の発芽温度は15℃~20℃ですが、冷涼な気候を好み暑さは苦手です。4℃ほどでも発芽しますが、温度が25℃を超えると発芽率が下がります。
露地栽培では、3月~5月の春まきと9月~10月の秋まきが種まきの適期です。最近は9月になっても暑いので、温度が高い時期に種をまく場合には「催芽処理(芽出しまき)」をするとよいでしょう。
種まきの事前準備
種にエボプライム加工・ネーキッド加工がされていて、気温が高くなければ事前準備は必要ありません。加工がしない種、気温が高い時には「催芽処理(芽出しまき)」をすると発芽率がUPします。
催芽処理(芽出しまき)
事前に種を発根させる方法です。発根した種は発芽率がUPします。
- 密閉のできるタッパーなどに、キッチンペーパーを敷きます。
- キッチンペーパーを水で湿らせます。
- キッチンペーパーの上に、種を置きます
- タッパーの蓋を閉めて、乾燥しないように暗い場所で管理します。(温度が高い時期には冷蔵庫の野菜室にいれておきます)
- 根が出たらすぐに、種まきをします。竹串や爪楊枝でそっと持ち上げて種をまきましょう。
準備するもの
- ほうれん草の種
- スポンジ(キッチンスポンジでOK やわらかいものを選びましょう。メラニンスポンジは不可)
- ペットボトル(350mlか500ml)
- ハサミ・水・竹串
種まきから育苗の手順
- 手順1ペットボトルの準備
ペットボトルの上部を7㎝~8㎝のところでカットします。キャップは、外しておきます。
- 手順2スポンジの準備
スポンジを、2㎝~3㎝程度に四角にカットし、十字に切り込みを入れます。
- 手順3種まき
飲み口を逆さにしたペットボトルに、スポンジをセットします。スポンジに水を十分含ませて、切込みに竹串などを使って、種を2~3粒差し込みます。
- 手順4ペットボトルにセットして発芽を待つ
切り取ったペットボトルの下部に水をいれ、手順3でスポンジをセットしたペットボトルをセットします。上からラップをして、爪楊枝で数か所穴を空けます。
直射日光のあたらない涼しい場所で管理します。スポンジが乾かないように、水を足して発芽を待ちましょう。発芽までは5日~7日程度かかります。
- 手順5育苗
発芽したら、すぐに明るい日の当たる窓際などへ場所へ移しましょう。根が伸びてきたら、ペットボトルの水の量を減らし、根の半分程度が水に浸るようにします。水は毎日取り換えます。
- 手順6植え替える
本葉が3~4枚ほどになり、ペットボトルの口から根がでてくるようになったら植え替えの時期です。スポンジのまま苗をペットボトルから外し、ハイドロカルチャーへ植え替えます。
ほうれん草水耕栽培 植え替え
育苗ができたら、水耕栽培をする容器に植え替えします。ほうれん草は、育苗のときのままペットボトルにいれて、培養液(肥料を入れた水)で育てればある程度の大きさまで育てることも可能です。しかし、横に広がって成長するので支える部分がスポンジだけだと倒れやすくなります。
ここでは土の代わりの培土として、100均などでも手に入りやすいハイドロボールをつかったハイドロカルチャーでの水耕栽培の手順を説明します。ハイドロボールは空気と水を含むことができ、ほうれん草自体を支えることだけでなく、根が張り大きく成長しやすい環境を作ります。
準備するもの
- 育苗したほうれん草の苗
- ハイドロボール・小粒 (事前に水洗いをしておきます)
- 穴の開いていない容器(透明なものだと、外から水量がわかりやすい)
- 根腐れ防止剤(ゼオライト・ミリオンAなど なくても可)
- 水耕栽培用の肥料
手順
- 手順1ほうれんの苗を準備する
スポンジで育苗した苗は、スポンジは外さず、そのまま植え付けます。元気な苗を一つ残してあとは間引きします。
- 手順2容器に植え付け
穴の開いていない容器に、底が見えなくなるぐらい根腐れ防止剤を入れます。その上に、ハイドロボールを3分の1ほど入れます。
ほうれん苗を、中央に置きハイドロボールを追加して、隙間ができないよう割り箸等で突いて固定させます。
- 手順3培養液を入れる
培養液(肥料を入れた水)を、容器の5分の1ほどの量を入れる。水位計があれば水位計のOPまで入れます。
- 手順4培養液で育てる
ハイドロボールが乾いたら、培養液を足して育てます。
- 手順5窒素抜きをする
収穫前に、ほうれん草のえぐ味をとる窒素抜きをします。生育の後半に窒素が効きすぎると、シュウ酸や硝酸塩といった成分がふえ、えぐみや渋みがでて味に影響がでます。収穫の5日前~1週間ほど前になったら培養液ではなく、水だけで育てます。
- 手順6収穫
草丈が20㎝~25㎝ほどになったら、収穫の時期です。茎が伸びすぎないうちに早めに収穫しましょう。
ほうれん草の水耕栽培の育て方
置き場所、日当たり
ほうれん草は日の当たる場所を好みます。基本的には日当たりがよく風通しの良い場所で育てましょう。窓際などで直射日光に当てると、温度が気付かずに上がってしまうことがあります。暑さに弱いほうれん草は、25℃以上になると暑さで生育が悪くなったり病気になるリスクもあります。室内でも夏の栽培は地域にもよりますが、難易度が高くなります。
寒さには強く、0℃以下の温度にも耐えられます。室内であれば冬でも収穫が楽しめます。
室内で育てる場合は、夜の生活光対策をしましょう。ほうれん草は、日が長くなるとトウ立ち(花芽の形成される)する長日性の植物です。花芽をつけると味が落ちます。夜は、光のない部屋に置くか、段ボールなどを被せて遮光してください。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、弱って枯れてしまう可能性もあります。特に夏場は注意が必要です。
発芽するまでは、スポンジがかわかないように管理し、発芽した後は育苗中はできれば毎日水を交換してください。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。鉢の中が乾いてから2日~3日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の5分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから2~3日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。成長が早いと水をよく吸収します。水切れにも注意が必要です。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、水位計があると安心です
肥料
収穫を楽しむほうれん草の水耕栽培は、土から栄養がとれないため水耕栽培専用の肥料を使って育てます。水の交換のときに水代わりに規定量より薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水栽培やハイドロカルチャーに使える肥料は、ハイポネックスやハイポニカ液体肥料などがあります。
まとめ
ほうれん草は発芽がポイントです。時期を少しづつずらして育苗すると、夏以外は収穫が楽しめます。品種改良もされ、暑さに強い品種やトウ立ちしにくい品種などもあります。またサラダほうれん草やベビーリーフを楽しむものでしたら、より簡単に栽培ができます。
水耕栽培は、室内でも土を使わずに育てられるので、部屋が汚れず虫が付きにくいのも魅力です。本格的な野菜づくりにはエアポンプなどが必要ですが、ハーブ類や葉物野菜など水と肥料だけで育ちます。ハイドロボールなどは100均などでも手に入りやすく、土のように処理に困ることもないので水耕栽培にはおすすめです。
ぜひ一度水耕栽培で、収穫したての野菜の楽しみを味わってみてください。観葉植物や多肉植物、球根なども水耕栽培で育てることができますよ!