白い花のような仏炎苞と葉の緑のコントラストが美しいスパティフィラムは、丈夫で育てやすい観葉植物として人気があります。
半日陰を好むスパティフィラムは、室内で育てる水耕栽培(水栽培)でも育てやすい植物です。この記事では、スパティフィラムを水耕栽培で育てたい方向けに、スパティフィラムの水耕栽培の始め方や、ハイドロカルチャーへの植え替え、育て方についてわかりやすく説明します。
スパティフィラムの基礎知識と水耕栽培を始める時期
スパティフィラムの特徴
植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると枯れずに育つのかわかってきます。
スパティフィラムは、熱帯地域の森林の湿地などに自生している常緑多年草の植物です。白色に着色するのは花ではなく、葉が変形した仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる部分で、花は仏炎苞から細く伸びたひも状の部分(肉穂花序)に多数つくのが特徴です。
熱帯に自生するスパティフィラムは暑さには比較的強いですが、寒さが苦手です。春から秋が生育が旺盛になり、5月~10月が開花時期です。直射日光は葉焼けをするので避けますが、日が当たらないと花が咲かないので、室内の明るい場所で育てるとよいでしょう。
冬は、10℃以下にならない場所で管理し、肥料や水やりを控えて育てれば冬越しが可能です。手間のかからず丈夫な植物ですので、初心者の人にもおすすめの観葉植物です。
学名 | Spathiphyllum |
属名 | サトイモ科ササウチワ属(スパティフィラム属) |
原産地 | 熱帯アメリカ |
樹高 | 30㎝~80㎝ |
耐寒性等 | 耐寒性 弱い 耐暑性 やや強い |
花言葉 | 「上品な淑女」「清らかな心」 |
水耕栽培を始める時期
スパティフィラムの水耕栽培は、株分け、もしくは苗の植え替えから始めます。水耕栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。生育期は5月~10月頃まで、この頃に植え替えや株分けは行います。真夏や開花期は株が弱るため避けた方がよいでしょう。できれば生育初期の5月から7月頃に行うのがおすすめです。
スパティフィラムの株分け
スパティフィラムは、親株の周りに子株ができて成長します。生育が旺盛であっという間に鉢の中が根詰まりします。植え替え時に、株分けしてた子株から水耕栽培を始めてみましょう。
準備するもの
- スパティフィラムの苗
- ハサミ(ライターなどであぶって消毒しておく)
- 園芸用シャワーノズル
株分けの手順
- 植え替える鉢植えのスパティフィラムは、事前にしばらく水やりをせず乾いた土の状態で始めます。
- 鉢からスパティフィラムを取り出し、根から土をほぐして落とします。
- 親株をハサミ等で、3~4個に分けます(一株は3芽以上あるようにします)
- 水栽培に使う子株は、根を水でよく洗い土を落とします。園芸用のシャワーノズルなどがあればより根元の土を落とすことができます。
- 傷んだ根や、長すぎる根は清潔なハサミで切ります。日陰で切った根を乾かしておくと雑菌が入りにくくなります。
苗を使う場合
小さなポット苗から水耕栽培を始めることもできます。大きな苗であれば、株分けして別々に植え付けしましょう。土で育てた根っこは、うまく水栽培に移行できないこともあります。
- 植え替える鉢植えのスパティフィラムは、事前にしばらく水やりをせず乾いた土の状態で始めます。
- 鉢から苗を取り出し、土を落とします
- 根を水で良く洗い土を落とします。園芸用のシャワーノズルなどがあればより根元の土を落とすことができます。
- 日陰で半日から1日ほど根を乾かしておくと、雑菌が入りにくくなります
スパティフィラムの水栽培の手順
準備するもの
- 土を洗い流したスパティフィラムの苗
- 容器(透明なガラスのほうが根の成長も見え水量も調整しやすい)
- 根腐れ防止剤(ミリオンA・ゼオライトなど)
手順
- 器の底に根腐れ防止剤をいれます。鉢底が隠れる程度OK
- 苗を入れます。
- 器に水道水を入れます。この時の水位は根が全部浸からない程度。3分の2が水に浸かっているぐらいがよいでしょう。せめて3㎝程度は空気に当ててください
- 水替えは1週間に一度程度行います。根腐れ防止剤を使わない場合は2~3日に一度は替えます。
- 新しい芽や根がでるまでは、日陰で管理しましょう。
ハイドロカルチャーへの植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
ある程度の大きさになったらハイドロカルチャーでの植え付けして栽培するのもおすすめです。
準備するもの
- 土を洗い流したスパティフィラムの苗
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- ハサミ
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろや、ピンセットなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- スパティフィラムの苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 割り箸などを使って、根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の5分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
ハイドロカルチャーでの多肉植物の育て方の詳しい記事もあります。ハイドロカルチャ―の用土などにに興味のあるかたはお読みください。
スパティフィラムの水耕栽培での育て方
置き場所、日当たり
スパティフィラムは、半日陰を好みます。直射日光に当てると葉焼けを起こすので気をつけましょう。耐陰性もありますが、あまり暗いところで育てると花がつかない、またはヒョロヒョロと徒長してしまうこともあります。
春から秋の生育期は、風通しのよい明るい日陰。室内であればレースカーテン越しのやわらかな光が当たる場所がよいでしょう。冬は室内で10℃以下にならない窓際などで管理します。秋からすこしづつ日向に慣らすと葉焼けをせずに管理できます。夜は窓際は温度が急激に下がるので注意しましょう。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、弱って枯れてしまう可能性もあります。特に夏場は注意が必要です。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
スパティフィルムは多湿を好みます。乾燥が続く時には夕方に霧吹きなどで、葉水を与えてあげましょう。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てるます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。生育期である春から夏は、鉢の中が乾いてから2日~3日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の5分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから2~3日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。秋から水やりの回数を減らし、休眠期の冬は、月に1~2回、霧吹きで水を上げる葉水で行います。
スパティフィルムは多湿を好みます。乾燥が続く時には夕方に霧吹きなどで、葉水を与えてあげましょう。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、水位計があると安心です
肥料
スパティフィラムは、肥料を与えて育てないと花が咲きません。水耕栽培は土から栄養が取れないため、水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。水耕栽培の肥料は、液体肥料(液肥)を薄めたり、粉末状のものを水に溶かして使います。春から秋までは2週間に1度ほど肥料を与えます。水の交換のときか、ハイドロカルチャーの場合は水やりのときに水代わりに規定量に薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水栽培やハイドロカルチャーに使える液肥は、ハイポネックスやハイポニカ液体肥料や水草用メネデールなどがあります。活力剤は、元気がない時などにも使えます。
花がら摘み
スパティフィラムは花が終わったら、根元から刈り取りましょう。白い花が緑色にかわったら花の終わりのサインです。なるべく早く刈り取ると、株の消耗を防ぐことができます。
まとめ
水耕栽培は、さし木から始めることが多いのですがスパティフィラムは、実生(種まき)と株分けで増やします。小さな苗であれば100均でも売られています。
強い光が苦手なスパティフィラムは、直射日光が入らないマンションなどの窓辺でもよく育ち、室内での水耕栽培でも育てやすい植物です。水耕栽培は、リボベジや収穫野菜なども楽しめ、水とペットボトルなどの容器だけでも始められる手軽な栽培方法です。
水耕栽培用の栽培セットなども売られています。水位計や専用のポットは栽培をより簡単にしてくれます。最近はダイソーなどで水耕栽培用にセットされた苗も見かけます。スタイリッシュな雰囲気を持つスパティフィラムの花をぜひ咲かせてみてください。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。観葉植物だけでなく、野菜やハーブなどは収穫も楽しめます。
品種名から栽培方法を探すことができます。
植物別、育て方と肥料、水やりの解説コンテンツ