大豆栽培では、外来種による難防除雑草の問題もあり、品質のよい大豆を作るには除草は重要性は増しています。ここでは大豆栽培に適用のあるおすすめの除草剤の特徴や、効果的な使い方、選び方について詳しく説明します。
大豆栽培での体系的除草剤の使い方
大豆栽培に使える除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。茎葉処理剤には、葉や茎にかけるだけで根まで枯れるものと、薬剤がかかった部分のみ枯れる接触型の除草剤があります。
栽培期間の長い大豆は、土壌処理剤と茎葉処理剤を使い体系的に雑草を防除する必要があります。また中耕培土も大豆にとっては重要な除草対策です。
除草剤散布スケジュール
- 手順1耕起前
すでに雑草が生えている場所には、非選択性の茎葉処理剤でしっかり除草する
- 手順2播種直後
播種(種まき)から出芽までの間に、土壌処理剤を使って雑草の発生を抑制
- 手順3中耕・培土
大豆の畝間を耕やす「中耕」とその土を株に寄せる「培土」は、大豆の除草に大切な作業です。大豆が2~3葉の頃と4~5葉の頃2回行います。
- 手順4大豆生育期
土壌処理剤で抑制できず、成長してきた雑草には茎葉処理剤を使って、雑草を駆除する。選択制の除草剤が全面散布できるので効率的です。
大豆の耕起前に適用のあるおすすめの茎葉処理剤
畑にすでに多年生雑草が生えている場合には、耕起(こうき)だけでは雑草を駆除できないこともあります。特に土壌水分が高い畑や、砕土率の低い畑では注意が必要です。その場合は根までからす除草剤を事前に散布するとよいでしょう。
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全 な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、土壌に根を張っている雑草にも効果的です。大豆畑で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布時期は、耕起の2週間前までに散布するのがおすすめです。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
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概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
大豆の播種直後に適用のある土壌処理剤
クリアターン乳剤、クリアターン細粒剤F
有効成分 ベンチオカーブ HRACコード15, ペンディメタリン HRACコード3, リニュロン HRACコード5
クリアターン乳剤、クリアターン細粒剤Fは、ベンチオカーブ、ペンディメタリン、リニュロンという3つのそれぞれ異なる有効成分が、だいず、麦類、とうもろこし等のイネ科雑草および広葉雑草を同時に防除できます。 残効期間が長く、長期間雑草の発生を抑えるのが特長です。だいずには、雑草発生前の、は種直後に全面土壌散します。乳剤は定植3日前にも全面土壌散布が可能です。
ラクサー乳剤
有効成分 アラクロール30.0% HRACコード15、リニュロン12.0% HRACコード5
ラクサー乳剤は、雑草発生前に散布して使う畑作用土壌処理除草剤です。有効成分のイネ科雑草に強いアクロール、広葉雑草に強いリニュウロンの2成分が配合されています。難防除のツユクサにも効果があります。両方の雑草が生えている場所におすすめです。大豆には、は種後出芽前に全面散布して使うことができます。
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤
有効成分 トリフルラリン44.5%(乳剤)、トリフルラリン2.5%(粒剤)HRACコード5
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤は、トリフルラリンを成分とするジニトロアニリン系の除草剤で、発芽時の雑草の成長分裂を阻害することで、雑草を抑える土壌処理剤です。イネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ、ノビエ、イヌビエ、スズメノテッポウなど)に優れた効果を発揮し、スベリヒユ、ハコベにも効きます。イネ科雑草が生えてる圃場におすすめ。大豆(だいず)には、は種前(乳剤のみ)、は種後出芽前、定植前に土壌に全面散布できるほか、枝豆の生育期 但し、収穫45日前に畦間土壌散布することもできます。
フィールドスターP乳剤
有効成分 ジメテナミドP 64.0% HRACコード15
フィールドスターP乳剤は、酸アミド系の除草成分ジメテナミドPを有効成分とする野菜・畑作用土壌処理型除草剤です。ノビエ、メヒシバ、オヒシバなどの一年生イネ科雑草をはじめ、カヤツリグサ、イヌホズキ、スベリヒユに優れた効果があり40日間効果が続きます。アカザ科・アブラナ科・タデ科には効果が劣るのでそれらの雑草が生えている場合は、他の土壌処理剤を使いましょう。播種後だいずが発芽前に、水で希釈して全面土壌散布します。
大豆栽培の生育期に適用のある茎葉処理剤
中耕後は、土壌処理剤の効果がなくなり雑草が生えてきます。生育期には、大豆は枯らさず雑草を枯らす選択制の茎葉処理剤がおすすめです。除草剤によって効果のある雑草が異なりますので、それぞれ圃場に合わせて選んで使いましょう。
大豆バサグラン液剤(ナトリウム塩)
有効成分 ベンタゾン(Na塩) 40.0% HRACコード6
大豆バサグラン液剤は、広葉雑草に効果のあるだいず用の選択制の茎葉処理剤です。水田転換の畑で問題となっているアメリカセンダングサやタデ科・アブラナ科に効果を発揮します。だいずの2葉期~開花前まで、広葉雑草の6葉期まで使える除草剤で、全面散布が可能です。イネ科雑草には効果がないので、イネ科雑草が生えている場所には、イネ科雑草用の除草剤と併用して使う必要があります。
大豆の種類によって、薬害が生じる可能性がありますので病害虫防除所等指導機関の指導を受けてください。
パワーカイザー液剤
有効成分 イマザモックスアンモニウム塩 0.85% HRACコード2
パワーカイザー液剤は、大豆出芽直前~3葉期までの除草に使える広葉雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤です。タニソバ、スカシタゴボウをはじめとする一年生広葉雑草の発生始期から2葉期までに散布することで、高い除草効果を示します。大豆バサグランが散布できない時期に散布が可能ですので、土壌処理剤の効果が弱く、広葉雑草が生えてきてしまっている場合などにも使えます
アタックショット乳剤
有効成分 フルチアセットメチル2.0%
アタックショット乳剤は、大豆バサグランと同様に広葉雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤です。新しい除草剤で、大豆バサグランの散布が1回しか行えないため、散布後に成長してきた広葉雑草の除草にも使える除草剤としても使われています。特にシロザ、アオゲイトウ等のヒユ科、ヒロハフウリンホオズキ、イヌホオズキ等のナス科雑草、イチビに高い効果が期待できます。帰化アサガオ類などの難防除雑草にも有効な除草剤としても注目されています。(販売地域限定商品)大豆には、雑草の生育期に本葉2葉期〜開花前但し、収穫45日前までに雑草茎葉散布するか、全面散布も可能です。
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草(スズメノカラビラを除く)に使われる選択制の茎葉処理剤です。だいずには直接かかっても影響がないため、雑草への茎葉処理だけでなく、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤(大豆バサグランやアタックショットなど)と組み合わせて使う必要があります。
セレクト乳剤
有効成分 クレトジム 24.0% HRACコード1
セレクト乳剤は、従来のイネ科雑草除草剤では難しかったスズメノカラビラにも効果のある、イネ科雑草専用の選択制茎葉処理剤です。スズメノカタビラの除草には、適期に散布することが非常に重要です。葉齢をしっかり観察し適期(3~5葉期)に散布するしましょう。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤(大豆バサグランやアタックショットなど)と組み合わせて使う必要があります。
除草剤の効果的な使い方・選び方
土壌処理剤の使い方
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ40日~60日ほどです。大豆栽培に使う場合は、雑草発生前の「は種直後」もしくは「定植前」に全面散布して使います。
茎葉処理剤の使い方
定植時にマルチをしたり、土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかっても、大豆は枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
乳剤と粒剤はどちらがいいの?
土壌処理剤には乳剤と粒剤がありますが、どちらを選んだらよいのでしょうか。
乳剤と粒剤どちらにも適用があれば、どちらをつかっても効果に違いはありません。水で薄めて使う乳剤は、経済的に使うことができます。土壌処理剤は土が乾燥しているとムラがでやすく処理層ができるのに時間がかかったり処理層が薄くなったりします。水で希釈して使う乳剤は粒剤よりそのリスクは低いといえます。
一方粒剤は、そのまま土に散布するだけですので希釈の手間も計算も不要です。また散布後に雨が降ると乳剤の方が処理層が崩れやすいので、粒剤の方がよいという農家の方もいます。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。それは殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
大豆(だいず)に適用がある除草剤・農薬
大豆に適用がある除草剤は、このほかにも多くあります。「農家web農薬検索データベース」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、大豆(だいず)に使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。作物名は「だいず」に登録のある農薬が使えます。
大豆の栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
大豆の雑草対策は、雑草が生える前に防除するのが基本です。雑草は大きくなると、除草に手間がかかります。除草剤やビニールマルチをうまくつかって雑草の発生を押さえ、それでも生えてきた雑草は早めに手取りしたり、中耕で除草をこまめに行いましょう。
農家webには、このほかにも畑・農地、水稲に使える除草剤や作物別の除草剤の使い方などの
記事も多くあります。