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土壌水分計・センサー

土壌水分センサーとは?種類、効果的な利用方法とその重要性

土壌水分センサーが埋設されている例 土壌水分計・センサー

土壌水分センサーは、農業技術の進歩において重要な役割を果たしています。これらのセンサーは、農地の水分レベルを正確に測定し、持続可能な水資源管理を支援します。この記事では、土壌水分センサーの基本的な概念、使用方法、およびそのメリットについて詳しく説明します。

土壌水分センサーとは

土壌水分センサーは、一般的に土壌の水分量を測定するデバイスとして紹介されます。しかし、「土壌水分センサー」という言葉は曖昧です。

土壌中の水分は、下記2つの指標で現されることが多いです。

  1. 含水量(土壌中の水の量または割合)
  2. 水ポテンシャル(土壌中の水のエネルギー状態)/マトリックスポテンシャル

これらは、農業分野での灌漑管理を最適化し、水の無駄遣いを防ぐために使用されます。センサーは土壌の異なる深さに設置され、リアルタイムでデータを取得することができます。

土壌水分センサーの種類

土壌水分センサーには、いくつかの種類・方式があります。下記の表に代表的なセンサーの概要と長所、短所をまとめました。

センサー(プローブ)概要使用される場面長所短所
抵抗センサー2つの電極に電圧差を設け、電極間に微小な電流を流し、抵抗値または電気伝導度の値を出力することで土壌水分率を求める方式家庭菜園 等、水分量の変化がわかれば良いという場面低価格・精度が悪い:土壌の種類や土壌の塩分によって校正が変化する
・センサーの経年劣化が早い
静電容量センサー土壌をコンデンサー素子として使用し、土壌の電荷蓄積能力を利用して水分量を求める方式家庭菜園での実験、プロ農家など、より正確な水管理を実現したい場面・土壌別の校正で正確(2~3%)である
・消費電力が少ない
・比較的安価
・土壌中の塩分濃度が高いと精度が下がる
・モノによっては精度や性能が劣るものがある
TDR(Time Domain Reflectometry)センサー土壌に直線状の電極棒を刺し電極内に電磁波を流して透過時間を測定するもので、透過時間と誘電率の関係から土壌水分量を求める方式。また誘電率の他、電気伝導度(EC)、温度の測定も可能プロ農家など、より正確な水管理を実現したい場面・土壌別の校正で正確(2~3%)である
・信号が消えるまで塩分の影響を受けにくい
・設置に時間がかかる場合がある
・塩分濃度が高いと動作しない
・消費電力が大きい
TDT(Time Domain Transmission)センサー電極棒がループ状になっており電磁波を流して戻るまでの時間を測定し誘電率と土壌水分を求める方式。また誘電率の他、電気伝導度(EC)、温度の測定も可能プロ農家など、より正確な水管理を実現したい場面・土壌別の校正で正確(2~3%)である
・信号が消えるまで塩分の影響を受けにくい
・設置に時間がかかる場合がある
・塩分濃度が高いと動作しない
・消費電力が大きい
FDR(Frequency Domain Transmission)センサー土壌をコンデンサーとして使用し、電気回路の最大共振周波数を測定し、共振周波数と水分量を関連付ける方式プロ農家など、より正確な水管理を実現したい場面

(※上記のほかにも、中性子センサー(中性子法)やCOSMOS(専用検出器を用いて宇宙線中性子数を測定する方式)、電磁波式土壌水分計など、さまざまありますが割愛します)

上記の中で利用されることが多いのは抵抗方式と誘電率方式(TDRセンサー、TDTセンサー、FDRセンサー、静電容量センサー)です。

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抵抗方式の抵抗センサーは、安価に導入ができますが、信頼性の高い体積含水率の測定はできません。但し、家庭菜園やご家庭での実験で、水分量の変化を大まかに見たいというニーズであれば満たすと思います。

実際にプロ農業の現場で利用する方式としては、誘電率方式(TDRセンサー、TDTセンサー、FDRセンサー、静電容量センサー)です。理由は誘電率方式による体積含水率(水分量)の測定が、かさ密度(仮比重)、つまり土壌の空き具合の影響を受けづらいためです。

土壌センサーで体積含水率を測定するときには、かさ密度、土壌の種類、塩分、粘土の割合、センサーと土壌の接触具合など、さまざまな要因によって誤差が生じます。詳細は省略しますが、抵抗方式よりも誘電率方式のほうがこの誤差を軽減することができます。

そのため、養液土耕栽培など土壌水分量の精密な測定・制御が要求される栽培方法では、誘電率方式のセンサーがよく用いられます。

プロ農業の現場で未だに多く使われるテンシオメーター
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テンシオメータは、植物が土の中の水分を吸い上げるのに必要な力をテンシオメータ法を用いて測るものです。

テンシオメーターは、特に植物生理学など土壌水のポテンシャルの測定に適しています。ポーラスカップと呼ばれる素焼きの筐体に水を満たした状態で、土壌に埋設し利用します。素焼きの孔を通して土壌中に水分が流出しますが、その変化を圧力センサーやアナログ式圧力計で感知して、土壌の乾燥の程度をpF値として測定します。そのため、pFメーターと呼ばれることもあります。

圧力センサの出力から土壌水分を知り、灌水(水やり)の時期を決める参考にします。または土壌の水分移動特性を把握するために使用されています。

アナログな方法ではありますが、信頼性のあるメーターの一つです。最近では、デジタルロガーもあります。

編集さん
編集さん

ざっくり水管理をしたいのであればテンシオメーター(pF計)、それよりも細かくかつデータも取得したということであれ誘電率方式の土壌水分センサーを使うといいかもです。

土壌水分センサーの設置方法と使い方

土壌水分センサーの設置は、測定したい土壌の種類や土壌センサーの種類、農地のサイズによります。

通常、センサーは根の成長可能な深さに設置します。そうすることで、植物の根域圏の土壌水分を正確に把握することができ、正確な灌水(水やり)のタイミング・量を推測することができます。

土壌水分センサーで取得されたデータは通常、データロガーなどの機器によって記録します。最近では、農業IoT機器が多く利用されるようになり、アプリなどでのデータ計測・閲覧が簡単に行えるようになってきました。

また、データ計測の結果を、灌水制御(水やりのタイミング、量を自動で制御)に応用する機器も多く存在します。

灌水制御の一つの指標 圃場容水量

一言で「土壌」といってもその性質(土質)はさまざまです。同じ体積土壌水分率であっても、砂質、ローム(火山灰土)、粘土の土質の違いから、植物の根が吸収できる水分量は異なります。なんとなく想像できるかもしれませんが、砂質は吸いやすく、ローム、粘土の順で吸いにくくなっていきます。

土壌水分量の適正値は、土質によって異なるのです。植物にストレスなく水分を吸収してもらうためには、圃場容水量を推測し、そのときの体積土壌水分率を維持するように灌水管理をします。

圃場容水量とは、多量の降雨もしくはかん水し、重力による水の下降運動が、非常に小さくなったときの含水量を指します。この土壌水分率を維持するようにセンサーで測定・水やりができるようになると、植物に水分ストレスがかかりづらいです。

土壌水分管理におけるセンサーの利点

土壌水分管理における土壌水分センサー導入の利点は、以下のとおりです。

  • 水資源の節約: 過剰な灌漑、灌水を防ぎ、水の使用を最適化します。
  • 収穫量の向上: 植物に適切な水分を供給することで、健康と成長を促進します。
  • コスト削減: 水やエネルギーのコストを削減し、全体的な運営コストを低減します。
  • 土壌・環境汚染の低減: 無駄な灌水を減らすことで肥料分が地下に流れづらくなります。
編集さん
編集さん

日本だと水資源が豊富なので、あまり気にしないかもしれませんが、世界的に見ると水は貴重です。イスラエルでは、限りある水資源を有効活用するために、土壌水分をセンサーでしっかり管理する農法が急速に発展しました(養液土耕栽培)。

ケーススタディと市場での選択肢

市場にはさまざまな土壌水分センサーがあります。

まずは、用途や求める精度、耐久性に合わせて、導入するセンサーの方式等を検討しましょう。

日本では、メータージャパン株式会社クリマテック株式会社大起理化工業株式会社などがセンサーを開発、または輸入販売しています。

また、ゼロアグリ(ZeRo.agri)のように土壌水分センサーを活用した灌水制御装置を開発、販売しているメーカーもあります。

まとめ

土壌水分センサーは、現代農業における必需品です。適切なセンサーを選択し、正しく設置することで、水資源の管理が向上し、持続可能な農業実践が促進されます。この技術を活用することで、食料自給率の向上と環境保護の両立が可能になります。

この記事が土壌水分センサーの理解に役立ち、効果的な使用方法を提供することを願っています。さらに詳しい情報や製品選びについては、専門の販売店や製造元に相談することをお勧めします。

執筆者・監修者情報
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農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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