土壌医検定は、農業従事者や土壌管理に関心のある方々に向けた資格です。本記事では、土壌医検定の概要、重要性、試験内容、取得方法について詳しく解説します。
土壌医検定とは
土壌医検定は、一般財団法人日本土壌協会が主催し、農林水産省、全国農業協同組合中央会、全国農業協同組合連合会、全国農業高等学校長協会等が後援している検定試験です。
近年、日本の農地では、地力の低下、土壌病害の発生等や生産コストの低減が課題となっており、土壌診断に基づく土づくりの推進が重要となっています。こうした課題に対応できる土づくりの専門家を育成するために、土壌医検定試験が行われています。
主に、農業従事者、農機具・肥料・農薬販売等農業関連サービス企業の従事者、農業コンサルティング従事者、JAや団体等の指導員、農業高校の生徒などが受験する試験となります。
試験は、下記のとおり3つの級に区分され、毎年度、11月頃から申込みが開始され、翌年2月頃に実施されます。
- 土壌医検定1級:登録資格名 土壌医
- 土壌医検定2級:登録資格名 土づくりマスター
- 土壌医検定3級:登録資格名 土づくりアドバイザー
2024年度(令和6年度)は、2025年2月9日(日)に実施される予定です!
各級と対応する登録資格、技術レベルの一覧
土壌医検定は、3階級にわかれていますが、それぞれの試験に合格し、登録申請をすることで「資格」を取得し、名乗ることができます。各級と対応する登録資格、技術レベルの一覧は下記のとおりです。
検定試験 | 資格名 | 技術レベル |
---|---|---|
土壌医検定 1級 | 土壌医 | 土づくりについて高度な知識・技術を有し、また、5年以上の指導実績又は就農し土づくりに取組んできた実績を有する者で、処方箋作成とともに施肥改善、作物生育等改善の指導ができるレベルにある者。 |
土壌医検定 2級 | 土づくりマスター | 土づくりに関しやや高度な知識・技術を有するとともに、土壌診断の処方箋を作成できるレベルにある者。 |
土壌医検定 3級 | 土づくりアドバイザー | 土づくりに関する基礎的な知識・技術を有し、土づくりアドバイザーとして対応できるレベルにある者。 |
土壌医検定を受験し、合格したあとに登録申請をすることで、「土壌医」「土づくりマスター」「土づくりアドバイザー」を名乗ることができます!
土壌医検定 資格取得のメリット・重要性
土壌医検定は、土壌管理の方法を改めて学習する良いきっかけとなりますが、それだけがメリットではありません。土壌医検定を受験・合格し、資格登録することのメリットを紹介します。
メリット① 土作りの知識を深め、自身の営農に活かすことができる
最大のメリットは、やはり土壌医検定試験のために勉強することで、土作りに関する基礎知識や技術レベルを上げられることではないでしょうか。
実際に営農している方でも、意外に知らない知識であったり、誤っていた考え等が発見できたりするので、土壌医検定のための勉強も悪くありません。
また、実際に土壌の分析、改善等を自身で行えるようになると、最終的に栽培作物の収量、品質の向上に繋がります。土壌は、一度として同じ状況を再現することは難しいからこそ、その状況に合わせて適切な判断ができるよう、自身に知識を蓄えておくのはとても良いことでしょう。
ちなみに私も営農している間に土壌医検定3級を取得しました。土壌の基礎知識を改めて学び直すことができ、とてもよい機会でした。また、基礎知識がわかると、その先の応用もしやすくなったり、他の農家との情報交換もしやすくなりました。
メリット② キャリアアップや会社の信頼度向上に役立つ
あなたがもし、農薬・肥料メーカーや農機具のメーカー、農業コンサルティングの会社にお勤めの場合は、土壌医検定を受験し、登録することで、あなた自身のキャリアアップにつなげることも可能でしょう。会社内での土壌専門家の立場となり、会社にもさまざまなメリットを寄与することができると思います。
また、会社としては土壌に関する有資格者がいることで、顧客である農家などへの信頼感を向上させることができます。サービスの品質向上、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
農業高校の生徒も土壌医検定試験を受けることがあります。就職や進学のための一つのツールとしても活用できるでしょう。
メリット③ 各種研修会への参加割引がある
日本土壌協会では、各級の試験に向けた研修会と資格登録者向けのレベルアップ研修会を実施しています。
どちらの研修会も、資格登録し、なおかつ土壌医の会「正会員」となることで、研究会の費用が割引されます。
また、その他にも、土作り推進フォーラムの講演やシンポジウム等への参加が割引される場合があります。土壌医検定資格登録者のためのウェブサイト 土壌医ネットワークで各種フォーラム・講演会の情報を確認することができます。
メリット④ 土壌医のネットワークに参加し、現場の最新情報を知ることができる
土壌医試験は、取得し登録するだけで終わりではありません。日々の研鑽を続けることが必要です
土壌管理に対する最新技術の習得や情報交換は、土壌医検定資格登録者中心で構成される「土壌医の会」などのネットワークに参加することで実現できます。
土壌医の会は、土壌医検定試験に合格した資格登録者を中心とした組織で、研鑽や交流を行う場です。土壌医の会全国協議会、首都圏土壌医の会、各地域の土壌医の会などに参加することで、リアルな現場の声や分析・土壌改良手法の習得をすることができます。
メリット⑤ 土作りの専門家として農業会・地域に貢献ができる
土壌医検定の資格登録者は、「土づくりアドバイザー」「土づくりマスター」「土壌医」の肩書きを名乗ることがdけいます。土作りの専門家として、その地域の農家に土壌改良のアドバイスを行うことができます。
特に「土壌医」は、「施肥技術マイスター並びにシニアマイスター資格」と並び、「土づくりの専門家」として認められている資格です。農林水産省の土作り専門家リストにも、本人同意の上、掲載され、名実ともに土作りの専門家として活動することができます。
また、土壌医ネットワークにプロフィールを掲載することもできます。
土壌医検定の試験内容
土壌医検定の試験内容は、受験する級によって異なります。各級の出題範囲は下記のとおりです。
3級合格のための出題範囲
「土づくりと作物生育との関係の基礎知識」が必要となります。
- 作物の健全な生育と土壌環境
- 作物生育と土壌化学性・物理性・生物性との関連
- 土壌管理・施肥管理
- 主要作物の施肥特性
- 土壌診断の内容と進め方等
2級合格のための出題範囲
「3級レベルの知識に加え、施肥改善の処方箋が作成できる知識」が必要となります。
- 作物生育と化学性・物理性・生物性の診断と対策
- 肥料・土壌改良資材
- 堆肥の種類と特色
- 主要作物の栽培特性と土壌管理
- 土壌診断の種類と進め方等
1級合格のための出題範囲
「2級レベルの知識に加え、作物生育との関係での土壌診断と対策(処方箋)の指導ができる知識と実績」が必要となります。実績が必要となりますので、受験資格にも就農実績・指導実績が必要となります。
- 土壌化学性・物理性・生物性と農作物の安定生産・品質向上対策
- 栽培環境の変化と土づくり対策
- 環境負荷軽減を目指した土づくり対策等
土壌医検定の受験・取得方法
土壌医検定の受験・取得方法について、紹介します。
受験資格
2級、3級については、受験資格は問われません。農家であろうが、何をしてようが誰でも自由に受験することができます。
1級は「土づくり指導または就農実績5年以上」が必要となります。必然的に、農業者または農業関連企業・団体等に従事した実績が必要となります。
申込方法
申し込みは、「インターネット申込または受験願書の郵送(簡易書留)」で行います。毎年度、土壌医検定試験公式サイトで情報が公開されますので、忘れずにチェックしましょう。
試験対策
試験対策は、主に下記の方法があります。
- 各級の参考書、既出問題集を購入し、勉強する
- 各土壌医の会が開催している講習会に参加する
- 民間企業のオンライン講座を受講する
各級の参考書、既出問題集を購入し、勉強する
各級の参考書、既出問題集は、土壌医検定試験公式サイト、または農文協農業書センターで購入することができます。検定試験問題は、基本的にこれらの参考書から出題されることになっています。
2級〜3級レベルであれば、参考書、既出問題集だけでも対応することが可能だと思われます。ただ、2級は少しレベルが上がりますので、難しいようであれば、講習会等に参加しても良いでしょう。
土壌医検定研修会や各土壌医の会が開催している講習会に参加する
主として土壌医検定試験の受験対策を目的とした研修会が開催されます。その現地研修会に参加したり、Web配信を閲覧することで、より理解を深めることができます。
また、各土壌医の会も土壌医検定の講習会を開催していたりします。たとえば、首都圏土壌医の会では、土壌医検定3級の直前Zoom講習会などを過去に開催していました。
民間企業のオンライン講座を受講する
試験対策のためのオンライン講座を開催している民間企業もあるようです。
アグリガーデンスクール&アカデミーが開催するオンライン講座等を受講して、習得の効率を上げるのも良いでしょう。
土壌医検定のよくある質問
資格登録について
先述しているとおり、土壌医等の資格は、土壌医検定に合格するだけでは取得することができます。土壌医検定合格後、登録申請が必要です。登録申請は、下記サイトから行うことができます。
土壌医検定の合格率
受験するにあたって、どの程度の合格率か気になる方も多いでしょう。
2023年度の土壌医検定試験の試験結果は下記のとおりです。毎年、3級の合格率は55%〜60%程度、2級の合格率は25〜30%程度、1級の合格率は15〜30%程度のイメージです。
級 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
1級 | 86名 | 14名 | 16.3% |
2級 | 1203名 | 320名 | 26.6% |
3級 | 1548名 | 882名 | 55.7% |