ここでは、スナップエンドウに発生しやすい病害虫と、それを防除するためのおすすめ農薬、そしてスナップエンドウ栽培に使える除草剤もあわせて紹介します。
スナップエンドウ(サヤエンドウ)の一般的な防除暦を確認したい方は、下記をご覧ください。
スナップエンドウに発生しやすい病害虫とおすすめ農薬
アブラムシ類
アブラムシは直接植物の汁を吸うことで作物に害を与えるだけでなく、排泄物を作物にかけ、黒いすす状のカビを増殖させたり、光合成が妨げられて作物の生育を悪化させます。
また、アブラムシはウイルスを運びます。口針を植物に探り挿入するため、ウイルスを持っていると口針から簡単にウイルスの感染が広がってしまうのです。アブラムシから広がるウイルスで有名なのは、モザイク病です。その中でも特に、キュウリモザイクウィルス(CMV)、カブモザイクウィルス(TuMV)が代表例と言えるでしょう。
スナップエンドウでアブラムシ類に使えるおすすめ農薬
IRACコード | グループ名 | 主な農薬 |
---|---|---|
1B | 有機リン系 | マラソン スミチオン |
4A | ネオニコチノイド系 | モスピラン アドマイヤー ダントツ スタークル アルバリン |
9B | ピリジン アゾメチン誘 導体 | コルト |
29 | フロニカミド | ウララDF |
サンクリスタル アフィパール ムシラップ |
ハダニ類
ハダニはダニの仲間で、クモの仲間、ハダニ上科に属します。体長は0.3~0.8mmと非常に小さく、吐糸管から糸を出すため、英名は「Spider mite」と呼ばれています。ハダニの種類は非常に多く、主なものでは、ミカンハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニなどがいます。農業上でよく問題になるハダニは赤いアカダニ(ミカンハダニ、カンザワハダニ、リンゴハダニなど)を指すことが多いです。(チャノホコリダニは乳白色です)
高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはハダニが繁殖する格好の場所と言えます。ハダニは卵期間2~3日、幼虫~若虫期間6~7日で成虫になる、蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすい害虫です。
ハダニは直接植物の葉、果実の汁を吸うこと(吸汁)で、小さな白班が点々とできてしまいます。吸汁が増えると植物の株、葉茎の伸長が悪くなり、最悪、落葉したり、枯れてしまいます(枯死)。
1箇所に大量発生するとハダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
スナップエンドウで、ハダニに使える農薬一覧
ハモグリバエ
ハモグリバエは、ハエ目ハモグリバエ科(学名:Agromyzidae)に属する昆虫です。全世界で2500種以上の種類があり、日本では1990年代から農業害虫として認知されています。主に日本では、トマトハモグリバエ、マメハモグリバエ、ナモグリバエの3種類が有名です。
スナップエンドウで発生しやすいのは、ナモグリバエです。
種類 | トマトハモグリバエ (L.satibae) | マメハモグリバエ (L.trifolli) | ナモグリバエ (C.horticora) |
---|---|---|---|
成虫の大きさ(体長) | 1.3~2.3㎜ | 約2㎜ | 1.7~2.5㎜ |
幼虫の大きさ(体長) | 約3㎜ 蛹:1.3~2.3㎜ | 2.5㎜ 蛹:約2㎜ | 約3㎜ |
特徴 | 主に葉表を食害。 線状、蛇行型の食害痕。 | 主に葉表を食害。 渦巻き型の食害痕。 | 主に葉裏を食害。 点状(斑点)の食害痕。 |
主な寄生植物 | マメ科:インゲン,エンドウ,ソラマメ ナス科:トマト,ピーマン ウリ科:カボチャ,キュウリ,メロン | マメ科:インゲン,エンドウ,ソラマメ ナス科:トマト,ピーマン ウリ科:カボチャ,キュウリ,メロン キク科:キク,シュンギク,ガーベラ アカザ科:ホウレンソウ アブラナ科:コマツナ | マメ科:エンドウ キク科:レタス |
幼虫は葉の内部に潜り込んでトンネルを掘るように食い進みます。成虫は飛来し、歯の表面を傷つけ、葉の汁を舐めます。生長した幼虫は、ナモグリバエは葉の内部で蛹になり、マメハモグリバエは外に出て蛹になります。マメハモグリバエ以外(トマトハモグリバエ、ナモグリバエ、ネギハモグリバエ、ナスハモグリバエなど)は成虫や蛹で越冬します。葉の組織内に産卵し、孵化した幼虫が葉の内部を食害する、というサイクルです。
スナップエンドウで使えるナモグリバエに効く農薬一覧
うどんこ病
うどんこ病はウドンコカビ科の糸状菌によって起こる病害の総称で、糸状菌が繁殖して、葉や茎がうどん粉をかけたみたいに、はじめは白い斑点から、末期は光合成を阻害するくらいに葉全体が白くなる病気です。英語では、「Powdery mildew」と呼ばれます。
うどんこ病は他の灰色かび病などとは異なり、寄生した植物に拒絶反応を起こさせないため、枯らさない、という特徴があります。このため、うどんこ病が蔓延して作物が全滅、ということにはならないのですが、植物と共存する共生菌のため、繁殖しやすく、しぶとくて完治し辛い病気です。
枯れなくても、うどんこ病にかかった農作物は商品にならないので、農家の方にとって厄介な病気であるのは間違いないでしょう。
さらにうどんこ病が蔓延すると、糸状菌を食べるハダニなどが増加し、食害や灰色かび病などのキズ感染性の、被害の大きい病原菌が侵入し、二重感染を引き起こします。
最近はうどんこ病に耐性を持つ品種も広がっていますが、特にイチゴやウリ科の植物(メロン、スイカ、きゅうり、カボチャ、ズッキーニ)、トマト、ぶどう、ナスなどが被害作物として有名です。
うどんこ病と一言で言っても、作物毎に菌は違うことに注意しましょう。ムギのうどんこ病は水に弱いですが、キュウリやピーマンにつくうどんこ病は水に強かったりします。このため水をかけても大半は防ぐことはできないなど、注意が必要です。
スナップエンドウで、うどんこ病防除に使えるおすすめ農薬
灰色かび病
灰色かび病(白斑葉枯病)はカビ(糸状菌)によって起こり、灰色の粉(分生子)が生じてしまう病害です。通称、灰カビ病とも呼ばれます。
春から秋にかけて発生(4~11月)し、ある程度の温度と多湿な環境で多発生します。梅雨時期は特に発生が目立つ病害です。
灰色かび病はほとんどすべての野菜や花を冒すばかりでなく、多くの果樹や畑作物、林木までも冒し、その範囲はかなり広いのが特徴です。
灰色かび病が発病すると、花びらや蕾(つぼみ)にシミができたり、下葉に小さい白っぽい色の小班ができたり、果実の一部が灰色のシミを形成したり、葉の一部が灰色、黒、褐色に変色して枯れたようになります。次第に変色した部分は拡大していったり、小斑点が上葉に広がっていき、やがてその部分が腐敗して灰褐色のカビに覆われます。
軟腐病
軟腐病の病原菌はカビではなく細菌の一種で、病原菌名は「Pectobacterium carotovorum」と命名されています。通常は結球してから発生します。はじめは結球部の軟らかい葉に(水浸状の)小斑点ができ,これがやがて急速に広がっていきます。その後、全体が褐色(飴色)に軟化腐敗してどろどろになり,悪臭を発するようになります。
発育適温は30℃前後,50℃以上で10分経過すると死滅します。イネ科,マメ科以外のほとんどの植物に寄生します。大根(ダイコン)や白菜(ハクサイ)、キャベツ、カリフラワー、レタス、ショウガ、セルリー、パセリ、ネギ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマト、ピーマン、チンゲンサイ、小松菜(コマツナ)、ニラ、カブ、ニンニク等が軟腐病にかかる野菜で有名です。
軟腐病の病原細菌は寄生される植物の根の周辺に生存します。降雨などによるはね返りで土とともに葉上に運ばれ,植物の傷口、害虫の食害痕などから侵入します。発育適温は30℃前後なので、高温期結球のものに多く発生が見られます。具体的には、降雨の多い夏,秋の年に発生が多くなる傾向があります。
スナップエンドウで、軟腐病防除に使えるおすすめ農薬
スナップエンドウ栽培におすすめの土壌処理剤
トレファノサイド
有効成分 トリフルラリン44.5%(乳剤)・トリフルラリン2.5%(粒剤)
トレファノサイド乳剤・トレファノサイド粒剤は、ジニトロアニリン系の除草剤成分トリフルラリンを有効成分とする土壌処理剤です。一年生イネ科雑草、広葉雑草の抑制に効果が期待でき、ブロッコリーには定植前(植穴掘前)に、全面散布して使います。ツユクサ科、カヤツリグサ科、キク科、アブラナ科には効果が劣ります。
土壌処理剤を2回散布する場合はこちらを1回目に使用できます。トレファノサイドの有効成分は日光の強い光にあたると分解・帰化しやすいので夕方や曇りの日の散布が効果的です。
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00%
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草に使われる選択制の茎葉処理剤です。ネギには直接かかっても影響がないため、雑草への茎葉処理だけでなく、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤と組み合わせて使う必要があります。
土壌処理剤の使い方
土壌処理剤は、播種直後(種まき後すぐに)全面に土壌散布します。ラベルに決められた薬量を守って散布します。乳剤は希釈して使います。
- 雑草発生前に散布すること。すでに生えている雑草には効果がありません
- 播種後は、しっかり覆土をして鎮圧し水やりをした後、表面が乾いたら除草剤を散布します。
- 芽が出た後は薬害が生じるため、発芽前に散布しましょう。
- 噴霧器(散布機)を使って散布しましょう。ジョウロでの全面散布は薬量を超える可能性があります。
- 使い方は除草剤によって異なります。しっかりラベルを読んで使いましょう。
スナップエンドウ栽培におすすめの茎葉処理剤
スナップエンドウ栽培では、まだ雑草が生えていない時期には、土壌処理剤、すでに生えている雑草には茎葉処理剤をつかって除草しましょう。栽培に使えるおすすめの茎葉処理剤を紹介します。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~ 20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せん。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全 な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、ほうれん草の栽培中ではなく、耕起前までに大きくなってしまった雑草に散布して使います。畑で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
その他スナップエンドウに関する情報
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。
農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
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