ソーセージの語源ともいわれるセージは、さわやかな香りと美しい花が特徴のハーブ。特にヨーロッパでよく使われており、肉料理と相性がよくハーブティーや入浴剤にも使われます。水耕栽培(水栽培)でも育てやすい植物で、挿し木で増やす時にも、土を使わず水挿しで行うことができます。
この記事では、セージの茎を使った挿し木や苗から始める水耕栽培(水栽培)の方法や、ハイドロカルチャ―への植え替え、育て方のポイントなどを初心者の方にもわかりやすく説明します。
セージの基礎知識と水耕栽培を始める時期
セージの特徴
植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると枯れずに育つのかわかってきます。
セージはシソ科の多年草で、多くの品種があります。料理によくつかわれるのはコモンセージで別名ヤクヨウサルビアと呼ばれます。食用に使われるものの他、花が美しく観賞用として使われる品種はサルビアと呼ばれて花壇などによく植えられています。
セージの耐寒性や耐暑性はその品種によって異なりますが、コモンセージは暑さ寒さにも比較的強いので育てやすいですが、生育適温は15℃~20℃と涼しい気候を好み、高温多湿が苦手。栽培は種からも育てられますが、発芽率が悪く生育も遅いため苗から始めるとよいでしょう。さし木も水に挿しておくだけで発根するので、挿し木から始めるのもよいでしょう。
学名 | Salvia officinalis |
属名 | シソ科アキギリ属 |
原産地 | 地中海沿岸 |
樹高 | 60cm~100cm |
生育適温 | 15~20℃ |
花言葉 | 「尊敬」「知恵」「家族愛」 |
セージの種類
セージには観賞用、食用のものがあり両方を兼ね備えているものもあります。ここでは食用のセージについていくつか紹介します。
種類 | 用途・特徴 |
---|---|
コモンセージ | 食用ハーブとしてよく使われる品種 開花時期は5月~7月。斑入り品種などもあり、観賞用にも。 |
パープルセージ | コモンセージの紫葉の品種。 コモンセージより生育が緩やかですが、葉色が美しい品種 |
ホワイトセージ | お清めなどに使われる「聖なるハーブ」 白みがかった葉が美しい品種。茎が太く草丈が高くなります |
ゴールデンセージ | 葉に黄色い斑が入るコモンセージの品種 コンパクトに育つ |
水栽培を始める時期
水栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。セージの生育期は春から秋。多湿を嫌うため梅雨から夏を除いた時期に始めるとよいでしょう。挿し木から始める場合、おすすめは3月中旬~5月、9月~10月が適期です。セージの苗も春と秋にホームセンターなどでも販売されるので、そのころ始めるとよいでしょう。
セージの挿し木
セージは、挿し木で増やすのが成長も早く、確実に同じ種類のセージをふやすことができるのでおすすめ。水挿しで簡単に発根します。セージを育てている友人から分けてもらったり、スーパーなどで売っているセージも、茎節があるものなら増やせます。
さし木の準備
セージの苗から挿し木をする場合は、元気の良い若い芽を選んで先端から10㎝~15㎝にカットします。スーパーなどのセージもなるべく新鮮なうちに、挿し穂にしましょう。
一番上の葉だけ残し、下葉は切り落とします。一番上の葉が大きいようなら蒸散を防ぐために切り取ります。切り口は斜めにスパッときって断面を広げます。すぐに水に浸けるので先に器に水を入れておきましょう。
準備するもの
- 剪定した茎
- 透明な器(空き瓶やグラス・ペットボトルなどでもOK)
- メネデール(発根促進剤なくても可・あると発根の成功率が上がります)
手順
- 容器に水(水道水)を入れます。メネデールを使う場合は100倍に希釈した水を使います。
- 準備したセージの挿し穂を入れます。
- 発芽するまで2~3日に1回に水は変えましょう。
- 1週間程度は明るい日陰で室内で管理しましょう。7日~10日程度で新しい根が生えてきます。
- 根が十分に発根したら、ハイドロカルチャーや水栽培(水耕栽培)で育てましょう。
発根促進剤について
生命力の強いセージは、生育期であれば水だけでも発根しますが、発根を早くしたり太く丈夫で元気な根を促進させるために、発根促進剤も有効です。植物活力素 メネデールは、発根だけでなく肥料でも農薬でもないので、発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます。水替えのときに発根するまで入れると効果的です。水替えの都度でなくとも、1週間に一度でも入れてあげる、また希釈率を200倍にしても効果はあります。
セージの水耕栽培の手順
ポット苗を使う場合
水耕栽培でセージを育てたい場合は、できれば水栽培の挿し木で増やしたものを使うのがおすすめですが、お気に入りの品種がない場合などは、小さな苗使って水栽培に植え替えることもできます。
- 植え替えるセージのポット苗は、事前にしばらく水やりをせず乾いた土の状態で始めます。
- 鉢からセージの苗を取り出し、根から土をほぐして落とします。
- 根を水でよく洗い土を落とします。園芸用のシャワーノズルなどがあればより根元の土を落とすことができます。
- 傷んだ根がある場合は清潔なハサミで切っておきましょう。
準備するもの
- 水挿しで発根したセージの苗 or 土を洗い流したセージの苗
- 容器(透明なガラスのほうが根の成長も見え水量も調整しやすい)
- 根腐れ防止剤(ミリオンA・ゼオライトなど)
手順
- 器の底に根腐れ防止剤をいれます。鉢底が隠れる程度OK
- 苗を入れます。
- 器に水道水を入れます。この時の水位は根が全部浸からない程度。3分の2が水に浸かっているぐらいがよいでしょう。せめて3㎝程度は空気に当ててください
- 水は2日~3日に一度。根腐れ防止剤などを使っている場合は、一週間に1度程度でも大丈夫です。
ハイドロカルチャーへの植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培地)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
セージは多年草なので翌年になると、より株が大きくなって多くの収穫が楽しめるため、土の代わりの培地をつかったハイドロカルチャーがおすすめです。苗から直接ハイドロカルチャーに植え替えることもできますが、できれば水栽培で水耕栽培用の根を発根させてから植え替えると、失敗しにくいでしょう。
準備するもの
- 水挿しや水耕栽培で発根したセージの苗
- ハイドロボールなどの人工石(事前に水洗いをしておく)
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- ミントの苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の6分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
ハイドロカルチャーでの多肉植物の育て方の詳しい記事もあります。ハイドロカルチャ―の用土などにに興味のあるかたはお読みください。
セージの水耕栽培での育て方
置き場所、日当たり
セージは風通しのよい日当たりの良い場所で育てましょう。しかし真夏の直射日光は葉焼けや容器内の水温が高くなりすぎる危険があるため、レースのカーテン越しの光が当たる場所で管理するとよいでしょう。
セージは品種にもよりますが、耐寒性も強い多年草ですが、屋外で霜や雪にあたると葉が傷みます。寒さで地上部が枯れることありますが、根は生きているので春にはまた葉が伸びてくるでしょう。室内で育てる場合には、温度が5℃以下にならないように育てれば、一年中枯れずに楽しめます。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、弱って枯れてしまう可能性もあります。特に夏場は注意が必要です。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
ハイドロカルチャーの水やり
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てます。ハイドロボールなどは外から乾いているようでも鉢の中側は湿っていることも多いです。生育期である春から秋は、鉢の中が乾いてから2日~3日ほど待ってから与えましょう。
水は鉢の5分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから2~3日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。秋から休眠期の冬は成長が鈍化しますが、室内であれば成長しているので同様に水やりをしましょう。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
ハイドロカルチャーの水やりは意外と難しいので、水位計があると安心です
肥料
収穫を楽しむセージの水耕栽培は、土から栄養がとれないため水耕栽培専用の肥料を使って育てます。水の交換のときか、ハイドロカルチャーの場合は水やりのときに水代わりに規定量より薄めて使います。
水栽培やハイドロカルチャーに使える肥料は、ハイポネックスやハイポニカ液体肥料などがあります。
ハイドロカルチャーには、肥料ではないですが、根腐れを防止し栄養剤としての効果がある「イオン交換樹脂栄養剤」や、薄めず使える活力剤なども使えます。
収穫
収穫は、春に植え付けをしたら7月~10月頃まで収穫することができます。若い葉を必要な分だけ収穫しましょう。花芽は前年の枝につきます。花が咲くと葉が固くなったり、香りが弱くなるので葉っぱの収穫を長く続けたいのであれば、花芽は早めに摘み取りましょう。
多湿が苦手なので、梅雨前に多めに刈り取ることで株の風通しがよくなります。多めに収穫し、乾燥して保存するのもよいでしょう。
まとめ
コモンセージは薬用サルビアと名の付くように、防腐、殺菌、抗菌作用があるともいわれ古くから人々の健康にかかわってきたハーブです。ハーブの水耕栽培は、料理などにほしい分だけ収穫して使えるので、いつでも新鮮な葉が使えるのも魅力です。
水耕栽培は、土や病気の心配も少なく手入れも簡単です。初心者の方でも思いついたら、水とペットボトル・空き瓶などの器があればすぐ始められる栽培方法で、野菜やハーブなどは収穫も楽しめます。ぜひ水耕栽培でいろいろな野菜やハーブ、観葉植物などを育ててみませんか。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。ハーブはセージの他にも、ミントや大葉、ルッコラ、ローズマリー、バジルなどの記事があります。
この他にも収穫を楽しめる野菜や、モンステラ、パキラ、ドラセナ、アイビー、ガジュマル、ウンベラータなどの観葉植物、花を楽しむ球根やサボテンや多肉植物なども育てることができます。
多肉植物
球根
観葉植物
野菜