みかんは、オレンジ、キンカン、レモンなどの柑橘(かんきつ)類の中でも、最も身近なもののひとつと言っても過言ではありません。みかんを果樹として栽培することも人気で、プロ農家の果樹園だけではなく、ご家庭の庭での地植え栽培も盛んに行われています。
みかんに米ぬか肥料は使えるか、という話題をよく聞きます。この記事では、みかんに米ぬか肥料が使えるか、その理由とともに紹介します。
みかんに米ぬか肥料は使える、但し使い方に注意
みかんには、米ぬかの肥料が使えると聞いたことがある方も多いと思います。
結論としては、「みかんの肥料として米ぬかは使える」ということです。ただし、使い方に注意が必要です。
米ぬかを肥料として使用するときには、2つのやり方があります。
- 生の米ぬかをそのまま散布する
- 米ぬかをEMや発酵促進剤などの微生物によって発酵させて散布する(米ぬかぼかし肥料)
1月など休眠期の頃に、生の米ぬかをそのまま散布するというやり方をされている方もいます。但し、米ぬかの特性などをよく知った上で施肥をする必要があります。最悪、窒素飢餓(逆に肥料が不足する状況)や発酵熱による被害、カビなど腐敗の温床となることもあります。
比較的、肥料の効きもわかりやすく、安心して使用できるのはぼかし肥料にしたものです。
米ぬかぼかし肥料とは、米ぬかを主原料としたぼかし肥料です。植物を育てるために必要な三大要素である窒素、リン酸、カリウム(加里)をバランス良く含ませるために、米ぬかの他に油かす、魚粉やカキ殻石灰などを配合し発酵させます。カキ殻石灰などを使用することでカルシウムやミネラル分やアミノ酸などを多く含み、野菜などの栽培においては食味や品質の向上にもつながります。
米ぬかは、リン酸が豊富に含まれている有機物資材で入手もしやすいため、ぼかし肥料の原材料としては人気のものとなります。
米ぬかぼかし肥料の成分比は原材料の配合によって異なりますが、米ぬかを主成分とした場合は窒素成分が少し抑えられたものが多いです(N-P-K=3-5-2など)。
米ぬかぼかし肥料を作る際の発酵のさせ方は、「好気性発酵」「嫌気性発酵」の2種類があります。
みかんに使えるその他の肥料
\みかんにおすすめの肥料まとめ/
みかん専用の肥料
みかんなど柑橘類(かんきつ類)専用の肥料として、販売されている商品も多々あります。「みかんがおいしくなる肥料」として販売されていたり、「みかんが甘くなる資材」として販売されていますので、初心者の方はそのような商品を使用することで、栽培が楽になるでしょう。
油かす肥料
結論としては、「みかんの肥料として油かす肥料は適している」といえます。特に油かす肥料などの有機肥料(有機質肥料)は、元肥として施すとゆっくり長く肥料の効果を効かせることができます(緩効性肥料)。
みかんの養分吸収(土壌などからの養分の吸い上げ)の特性としては、主に下記のことが言えます。
- 新芽の発芽など初期生育のときは、大部分が前年までに体内に吸収された栄養を使用して生長する。
- 葉や枝が充実してくる5月頃から窒素(N)をよく吸収する。そして6月頃〜7月頃に吸収のピークを迎え、その後も一定量吸収される。
- カリウム(K)も窒素同様、春頃から良く吸収される。
油かす肥料は、窒素が多く含まれています。そして、肥効(肥料の効果)も長い緩効性肥料です。みかんの施肥(肥料やり)の考え方として、夏の生育期の追肥(夏肥)によって補うことも重要ですが、元肥に油かす肥料などの有機肥料(有機質肥料)を多く使うことによって、肥効を持続させることも重要です。油かす肥料は、その代表的な資材と言えるでしょう。
\みかんに油かす肥料を使う/
鶏糞肥料
結論としては、「みかんに鶏糞(鶏ふん)は使えるが、鶏糞の特性をよく理解しておく必要がある」ということです。
鶏糞肥料は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)が豊富に含まれており、かつ牛糞(牛ふん)や豚糞(豚ぷん)よりも速効性のある肥料として知られています。また、比較的安価であることから、栽培のコストを下げたいというニーズにも合致する資材です。
しかし、みかんなどの柑橘類(かんきつ類)に施用すると、果実の品質が下がるということも言われています。これにはいくつか理由がありますが、鶏糞の特性を知っておくことで果実の品質劣化を防ぎながら、肥料のコストを下げることができます。
鶏糞を施用しても、適正量であれば果実品質に及ぼす影響は小さいと言われています。ただし、鶏糞を夏肥としても施用した場合は,果皮色が悪くなったり、クエン酸含量が高くなったりしたという報告があることから、施肥時期としては春肥もしくは秋肥が適しているのではないかと考えられます。
\みかんに鶏糞肥料を使うことへの考え方/
化学肥料(緩行性化成肥料・速効性化成肥料)
化学肥料には、緩行性化成肥料と速効性化成肥料がよく使われます。
但し、樹の状態や気候を考慮した施肥が必要です。また、硝酸態窒素やアンモニア態窒素などの無機態窒素(チッソ)は速い効果すなわち速効性があり、よく効くものの「肥料焼け」の原因となるので、利用する場合には様子を見ながらよく観察して、少しずつ与える必要があります。
そのため、初心者の方は既に配合された果樹用の化成肥料、もしくはみかん・かんきつ類専用肥料を使用することをおすすめします。
有機質肥料を配合した、有機配合肥料もおすすめです。
甘いみかんを収穫するためには?
「みかんを甘くする肥料はありませんか?」と聞かれることがあります。結論から言うと、「みかんを甘くする肥料」として販売されている肥料はありません。肥料の種類ややり方だけではなく環境や栽培方法によって大きく差が出ます。
基本的には、みかんなどかんきつ類に適した肥料を適した時期に適量施すことが重要です。そのうえで、甘みなどの食味向上に繋がるような資材を試してみましょう。
\みかんを甘くする肥料の詳細/
みかんがおいしくなる肥料とは?
「みかんがおいしくなる肥料」は、その名の通り、おいしいみかんを収穫するために設計されたみかん専用肥料です。同様の名前を持つ肥料はたくさんあり、種苗店や資材店がそれぞれ独自に開発しているものが多いです。
どの肥料にも共通して言えることは、化成肥料(化学肥料)成分だけではなく有機質肥料を多く配合していることです。カニ殻などの甲殻物質肥料や魚かす肥料などを含むことによって、アミノ酸やミネラル分を補えるようにしています。また、葉緑素の構成成分として重要なマグネシウムも配合することで、葉を残し光合成の能力も高まるようになっています。
\みかんがおいしくなる肥料の詳細/
みかんの肥料の購入場所
みかんの肥料は、ホームセンター、100均、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。
各購入場所・購入方法のメリット・デメリットをまとめました。購入方法選びの参考にしてください。
購入方法 | ホームセンター | 100均 | インターネット |
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メリット |
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デメリット |
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補足:米ぬかとは
米ぬかは、精米するときに玄米の表面が削られて粉状になったものを指します。精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用できます。リン酸が多く含まれ、糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
米ぬかは脂質を多く含み、有機物に含まれる炭素(C)含有率(%)と窒素(N)含有率(%)の比を表すC/N比(炭素率)が高いため、土壌中での分解が相対的に遅いので、そのまま使用するよりもぼかし肥料の原材料として使用するのが一般的かと思います。
米ぬかはコイン精米機やJAのライスセンターでもらえることもありますし、資材として販売されていることもあります。
補足:ぼかし肥料の材料による成分比の違い
ぼかし肥料は、その原材料となる有機物資材によって成分比が変わってきます。
ぼかし肥料の原料に向いている主な有機物資材の成分をまとめてみましたので、参考にしてください(製品によって、成分比が異なる場合がありますので注意してください)。
肥料名 | 商品例 | N(窒素) | P(リン酸) | K(カリウム) |
---|---|---|---|---|
菜種油かす | 5 | 2 | 1 | |
大豆油かす | ー | 7 | 1 | 1 |
魚かす | 5〜7 | 5〜7 | – | |
米ぬか | 2 | 5 | 1 | |
乾燥鶏糞 | 2 | 5 | 3 | |
骨粉 | 4 | 16 | – | |
貝化石(カキ殻石灰) | – | – | – |
\ぼかし肥料に関する詳細/