この記事では、米ぬかぼかし肥料の概要と特徴、入手方法、作り方から使い方まで詳しく解説します。
米ぬかぼかし肥料の概要
米ぬかぼかし肥料とは、米ぬかを主原料としたぼかし肥料です。植物を育てるために必要な三大要素である窒素、リン酸、カリウム(加里)をバランス良く含ませるために、米ぬかの他に油かす、魚粉やカキ殻石灰などを配合し発酵させます。カキ殻石灰などを使用することでカルシウムやミネラル分やアミノ酸などを多く含み、野菜などの栽培においては食味や品質の向上にもつながります。
米ぬかは、リン酸が豊富に含まれている有機物資材で入手もしやすいため、ぼかし肥料の原材料としては人気のものとなります。
米ぬかぼかし肥料の成分比は原材料の配合によって異なりますが、米ぬかを主成分とした場合は窒素成分が少し抑えられたものが多いです(N-P-K=3-5-2など)。
米ぬかぼかし肥料を作る際の発酵のさせ方は、「好気性発酵」「嫌気性発酵」の2種類があります。
米ぬかぼかし肥料の特徴
米ぬかぼかし肥料の特徴は、以下のものが挙げられます。
- 米ぬかは比較的安価(むしろコイン精米機などで無償で手に入る)であるため、材料費を安く抑えることができる。
- 米ぬかを主原料にすることで、リン酸の含有割合が大きいぼかし肥料に仕上がる。
- 米ぬかは本来C/N比(炭素率)が高い有機物であるため、そのまま使用すると窒素飢餓や有害ガスの発生など心配されるが、ぼかし肥料にすることでその心配を取り除ける。また、緩行性の肥料としての持続的な効果を期待できる。
米ぬか、米ぬかぼかし肥料はどこで手に入るか?
「米ぬかぼかし肥料」として市販されているものは少ないかもしれませんが、市販されているぼかし肥料にはよく米ぬかが含まれています。
また、米ぬか自体は、下記の場所で無償で手に入れられることが多いです。
- コイン精米機
- 産地直売所や米農家の直売所
販売されているものを使いたいということであれば、市販品を購入することもできます。
米ぬかぼかし肥料を作る前に用意したいもの
ぼかし肥料を作るにあたって、原材料や発酵菌などが必要になることはすでにお分かりいただけたと思いますが、その他にも必要なものがあります。下記を例に、ぼかし肥料づくりの準備をしてください。
- スコップ、移植ゴテなど
- ビニールシート(原材料と発酵菌の混合などに使用)
- 衣装ケース、発泡スチロール、ジップロック、ビニール袋など(限られたスペースで発酵を進める場合)
上記のものに加えて、pH計やEC計などがあると、発酵の目安や含有されている養分濃度の確認ができるので便利です。
米ぬかぼかし肥料の作り方
米ぬかを使ったぼかし肥料の作り方はいくつかあります。ヨーグルトなど身近なものを使ったぼかし肥料の作り方もあります。
下記の記事に、米ぬかを使ったぼかし肥料・堆肥の作り方をまとめましたので、参考にしてください。
米ぬかぼかし肥料の使い方
ぼかし肥料は、元肥・追肥として使用することできます。ただし、ぼかし肥料は速効性を兼ね備えているとともに窒素も多く含まれているため、使い方には注意が必要です。効かせすぎると樹勢が強くなりすぎたり、病害虫による被害を受けやすくなったりします。
私の印象ですが、速効性があるので、追肥として使用するほうが栽培しやすいかもしれません。元肥として使用して定植後に樹勢が強くなりすぎてしまう方を多く見てきました。
また、ぼかし肥料は、原材料によって成分が異なります。そのため、一概に「どの程度撒けばいいか」ということが言えません。含まれている成分と土壌、作物の様子を見ながら、少量から施していくと良いでしょう。
下記に、ぼかし肥料全般の使い方についてまとめていますので、参考にしてください。
その他のぼかし肥料
米ぬかぼかし肥料のほかにも、○○ぼかし肥料と呼ばれているものがあります。
先述したとおり、ぼかし肥料は使用される原材料や微生物(発酵促進剤)によって、種類(呼ばれ方)が異なります。一般的には、下記の種類が主流であると考えられます。
種類(呼ばれ方) | 概要 |
---|---|
EMぼかし肥料 | EMを使用して発酵させたぼかし肥料 |
米ぬかぼかし肥料 | 米ぬかを主原料としたぼかし肥料 |
籾殻ぼかし肥料 | 籾殻(もみ殻)を主原料としたぼかし肥料 |
生ゴミぼかし肥料 | 生ゴミを主原料としたぼかし肥料 |
それぞれ原材料などによって、保証成分量や特徴が異なるので、いろいろ調べてみると面白いと思います。
補足:ぼかし肥料とは
ぼかし肥料とは、油かすや米ぬか、籾殻(もみ殻)、鶏糞(鶏ふん)など複数の有機質資材を配合させたものに土(土着菌)や発酵促進剤などを加えて、発酵させた肥料のことを指します。昔は有機質を土などで肥料分を薄めて肥効を「ぼかす」としていたことから、ぼかし肥料という名前がついたと言われています。
ぼかし肥料は、昔の農家では自分たちで独自で作っていましたが、化学肥料が発明されて窒素、リン酸、カリウム(加里)などの養分が手軽に補えるようになったことから、製造、使用されることも少なくなりました。しかし、近年は可能な限り化学肥料を使わない栽培方法(特別栽培や有機栽培)が人気となり、再び「ぼかし肥料」に注目が集まっています。
発酵させることにより、有機肥料(有機質肥料)に比べて植物が吸収することができるアンモニア態窒素、硝酸態窒素に無機化されるため、施してからすぐに肥料が効き始める速効性が備わっています。緩効性、遅効性という有機肥料の特長に、速効性を併せ持つことによって、より使い方の幅が広がる肥料となっています。
また、自分でぼかし肥料を作ることもできます。正直、良質なぼかし肥料を作るのは結構難しく手間のかかる作業なので、家庭菜園や園芸などで有機栽培に挑戦されたいという方は購入されることをおすすめします。
補足:米ぬかとは
米ぬかは、精米するときに玄米の表面が削られて粉状になったものを指します。精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用できます。リン酸が多く含まれ、糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
米ぬかは脂質を多く含み、有機物に含まれる炭素(C)含有率(%)と窒素(N)含有率(%)の比を表すC/N比(炭素率)が高いため、土壌中での分解が相対的に遅いので、そのまま使用するよりもぼかし肥料の原材料として使用するのが一般的かと思います。
米ぬかはコイン精米機やJAのライスセンターでもらえることもありますし、資材として販売されていることもあります。