唐辛子は収穫が長いので肥料を切らさず育てる必要があり、肥料の与え方で辛味が変わるともいわれます。ここでは唐辛子栽培における肥料の与え方の基本と、おすすめの肥料についてわかりやすく説明します。
唐辛子に必要な肥料成分
唐辛子にはどのような肥料成分がどれぐらい必要なのでしょうか。下記は栃木県のとうがらしの施肥基準です。10aあたりリン酸、カリウムがそれぞれ15kg、窒素が19kgです。(施肥基準は県によっても異なり、土壌によっても変わるので目安としてください。)実付がよいので、長く収穫を続ける場合は肥料を切らさず育てます。
唐辛子栽培におすすめの肥料
唐辛子には、肥料の3大要素(窒素、リン酸、カリウム)がバランスよく含まれた肥料がよいでしょう。地植えでは、土壌改良効果もある有機肥料を、追肥には速効性の化成肥料がおすすめです。
プランター栽培では、元肥入りの野菜の培養土を使い、追肥は速効性の化成肥料や液体肥料を水やり代わりに与えとよいでしょう。
トウガラシ(ピーマン)の専用肥料であれば、元肥や追肥に使えて肥料成分も調整されているので、誰でも簡単に使えます。
それではそれぞれの肥料の特性や製品について説明します。
有機肥料
畑などでは油かすや米ぬか、鶏糞などの肥料をつかうこともできます。扱いは少し難しく、肥料効果が土の状況によって左右されるため使い方を間違えると悪臭や、害虫が発生してしまうこともあります。初心者の人には有機配合肥料や、化成肥料がおすすめです。
有機配合肥料
土壌に緩効性の有機成分と、速効性のある化学肥料を組み合わせている有機配合肥料は、使いやすいため人気があります。元肥にも追肥にも使えるのもが多く、少量のものもあるのでプランター栽培などにもおすすめです。
有機100%配合肥料
有機質の原料を100%使い、肥料成分のバランスのよくなるように配合された肥料です。そのまま原材料を混ぜたものもありますが、化学的な加工により粒状にした化成肥料もあります。有機物が原料なので微量要素を含み、土壌改良効果もあります。肥料成分は製品によってまちまちですが、緩効性肥料として元肥に使います。
ハイポネックス「いろいろな野菜用粒状肥料」
ハイポネックスから販売されているアミノ酸入りの肥料もおすすめです。有機と化成(肥効機関の異なる4種類)の組合せで、すぐに効き始め安定した効果が約1〜2ヶ月間持続します。アミノ酸も含まれているので、根張りがよくなったり品質が向上します。元肥・追肥どちらでも使用することができるので、家庭菜園やプランター栽培などでも気軽に使用することができる肥料です。肥料成分は、N-P-K-Mg-Ca=12-12-10-2-4で元肥にも追肥にも使えます。
マイガーデンベジフル
住友化学園芸のマイガーデンベジフルは、粒状で様々な野菜やくだものの元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得しています。土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが特徴です。N:P:K:Mg=7:7:10:1.5で効果が3ヵ月続きます。マイガーデンベジフルには液体肥料もあります。
化成肥料(固形)
化成肥料8-8-8
元肥には有機肥料がおすすめですが、プランターなどでベランダで育てる人には臭いや虫が気になる人もいるでしょう。その場合は化成肥料を使いましょう。また実がついた後の追肥にはすぐ効く化成肥料がおすすめです。
化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、N-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などは、ほとんどの野菜に使えるので便利です。
ピーマン・シシトウ・トウガラシの専門肥料
トウガラシ専門の肥料も販売されています。唐辛子はピーマン、シシトウの仲間なので、それらの専用肥料でもよいでしょう。専用肥料は、施肥量なども記載してあるので初心者の人でも簡単に使うことができます。肥料により成分量が異なるので、パッケージをよく読んで使いましょう。
液体肥料
葉色が薄くなるなどの肥料不足の症状がでたら、速効性のある液体肥料を使うのもおすすめ。水やり代わりに与えることもできます。液体肥料は追肥につかいましょう。
ハイポネックス原液
液体肥料(液肥)国内トップシェアを誇るハイポネックスの定番液体肥料です。ハイポネックス原液は、「三大要素(窒素、リン酸、 カリ)」の他、マグネシウムやカルシウムなどの「二次要素(多量要素)」、さらに鉄をはじめとした「微量要素」を含む15種類の栄養素を最適のバランスで配合された液体肥料(液肥)で、水で薄めて使います。
この他にもハイポネックスには、「野菜の液肥」や「今日から野菜 野菜を育てる液肥」もあります。こちらは有機入りなので野菜の追肥におすすめです。
万田アミノアルファプラス
根強い人気がある商品として万田発酵の「万田アミノアルファプラス」という液体肥料があります。万田酵素は皆さん聞き覚えのある商品名だと思いますが、「万田アミノアルファプラス」はその万田酵素を開発する過程で培ったノウハウを活かして製造されたものになります。果実類、根菜類、穀類、海藻類など数十種類の植物性原材料を発酵させたものと、有機質を主体とした液肥を配合した肥料です。希釈タイプやそのまま散布できるストレートタイプもあります。
唐辛子に対する肥料の与え方
それではの肥料はいつ、どれくらいあげればいいのでしょうか。育て方によって肥料の与え方は変わるため、地植え、プランター(鉢植え)別に説明します。
地植え
元肥
唐辛子は、栽培が長いので元肥はゆっくりと効果が表れて持続するように、溝施肥で行います。
- 栽培するスペース(畝)を決め、土壌phの調整が必要な場合は苦土石灰1㎡あたり100gまいて、深く耕しておきます。
- 1から2~3週間ほどたってから、幅70cm、高さ10㎝~20cmほどの高畝を作ります。
- 畝の中央に深さ20cmの植え溝をつくり、1mあたり堆肥0.5kgを入れ化成肥料80g、熔成りん酸15g程度を施し、土を戻します。畝立てのあとに1平方メートルあたり約70gの化成肥料を散布します
- マルチをはって苗を植え付けします。
土づくり
元肥は、土づくりと一緒に行いましょう。唐辛子栽培に適した土壌ph6.0〜6.5です。日本の土壌は雨や肥料などにより酸性に傾いていることが多いので、酸性に傾いている土壌は石灰などを使い酸度調整をする必要があります。
土の酸度が高いようなら、苦土石灰で調整します。土壌酸度は、市販の土壌酸度計や土壌酸度測定液をつかって図りましょう。家庭菜園をする人は一つもっているとよいでしょう。
堆肥には、動物の糞をつかった牛糞、馬糞、豚糞、鶏糞、植物性のバーク堆肥、腐葉土などがあります。土壌の改良には牛糞、馬糞、パーク堆肥、腐葉土などがよいでしょう。鶏糞は肥料分が多くふくまれていますが、土壌改良効果は少ないです。鶏糞は肥料としてつかうのがおすすめです。
未発酵のものはガスなどがでて作物に影響を及ぼすことがあるので、完熟堆肥を使うのが安心です。未発酵のものをつかうときは植え付けの1か月前ほどに施しておくとよいでしょう。
追肥
追肥は、最初の実がついてから行います。中耕と土寄せと同時に行いましょう。草取りを兼ねて株の周辺を耕す中耕をして、株の周辺に1㎡あたり30g程度の化成肥料を施し、土と肥料をまぜてから株の周辺に土寄せします。その後は、収穫が始まったら2週間~3週間に1度、生育を見ながら同様の追肥を行いましょう。
プランター・鉢植え
プランター栽培の場合肥料は、元肥と追肥を行います。元肥とは植え付け時に施す肥料で、プランターなどでは、元肥入りの野菜の培養土などが便利です。肥料がはいっていない土や、自分で配合した場合は、緩効性肥料を土に混ぜて使います。
実が付いたら、2週間に1度追肥をします。化成肥料10g程度を株の周りにばらまいておきます。葉色が濃いときには、追肥は控えます。唐辛子は、収穫期間が長いので肥料を切らさず育てましょう。その一方で、唐辛子は水や肥料が不足すると、ストレスで辛くなるといわれるので、辛い唐辛子を作りたい人は肥料を控えめにしてみるのもよいでしょう。
そもそも植物に必要な養分って?植物が必要な養分に関するおさらい
植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウム(加里)の三要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(中量要素)」、さらに鉄、マンガン、ホウ素をはじめとした「微量要素」が必要です。
チッソ(窒素)は、葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
リンサン(リン酸)は、開花・結実を促し、花色、葉色、蕾や実に関係するため、実肥(みごえ)と言われます。
カリウム(加里)は、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、抵抗力を高めるため、根肥(ねごえ)と呼ばれています。不足すると根・植物が弱ります。
肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)を指しています。その他、肥料についてより詳しいことは、下の記事を参考にしてみてください。
色々あって複雑ですが、最初は葉や茎活力を与えたいときは窒素(チッソ)多めの肥料を、花を咲かしたい、実の成長を促したいというときはリン酸多めの肥料を施すというイメージでやってみましょう。
肥料はどんな種類があるの?
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
有機肥料と化成肥料どちらにもメリット・デメリットがありどちらがいいというわけではありません。育てる環境によって適している肥料は異なります。それぞれの特徴にあった肥料を選ぶことが大切です。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
元肥
苗を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
追肥
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
追肥は必要な肥料分がすぐに作物に届くように、速効性の化成肥料を使うことが一般的です。
唐辛子の基礎知識
唐辛子というと思い浮かべるのは、香辛料として料理によく使われる、鷹の爪と呼ばれる乾燥した赤い実が多いのではないでしょうか。トウガラシの仲間には、辛みのある「トウガラシ」の他、辛みがない「甘トウガラシ」があり、甘トウガラシにはピーマンやししとうも含まれます。
暖かい気候を好み、暑さに強いので春に植え付けると秋まで収穫が楽しめます。赤く完熟させた実は乾燥して使いますが、未成熟の青唐辛子は生で食べることができます。実だけでなく葉っぱも食べることができます。
品種にもよりますが、種まきから植え付けまで約2か月、植え付けから収穫までは1ヵ月ほどかかります。育苗期間が長いため、市販の苗を買ってきて植えつければ栽培は難しくありません。育苗をする場合は温度管理が必要です。
作物名 | トウガラシ |
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科目 | ナス科トウガラシ属 |
原産地 | 熱帯アメリカ |
発芽適温(地温) | 25℃〜30℃ |
生育適温 | 28℃~30℃ |
土壌酸度(pH) | 6.0〜6.5 |
育てやすさ | 簡単 |
防ぎたい!肥料にまつわるトラブルあれこれ
肥料の過不足
肥料は適切な時期に適量与えることが大切です。しかし畑などでは作物を育てる土壌にすでに肥料分が多く含まれていることもあるため、目安の施肥量はありますが、一律に同じ量の肥料を与えても、過不足が生じることもあります。
唐辛子は栽培期間が長いので、肥料不足になると実がつかない、なり疲れなどの症状がおきることもあります。肥料不足の症状は、葉の色がうすくなったり、草勢が弱いことなどがあげられます。実がつくまでに葉の色が薄くなっているようなら早めに速効性の化成肥料や液体肥料で追肥をしましょう。
しかし肥料が多ければ多いほどよいというわけではありません。一般的に窒素分が多すぎると、葉色が濃くなり葉が大きくなります。肥料過多は花落ちや着果不良がおきることもあります。また肥料が直接根にあたると、肥料やけを起こして最悪枯れてしまうこともあります。
肥料のパッケージをよく読んで使い方を間違えないことも大切です。
肥料は生育に合わせて与えるのが基本です。育てている土壌によっても必要な肥料量は変わります。葉色が薄くなると肥料ぎれ、葉が濃い緑色になり葉や茎が大きくなりすぎたら肥料過多です。よく観察して、肥料を与えるようにしましょう。
肥料は絶対混ぜないで!
よくある失敗として、いろいろな肥料を混ぜて高い栄養素の肥料を作り与えようとしてしまうことが挙げられます。肥料を混ぜると化学反応を起こし、植物自体に被害が出るだけでなく、有害物質・ガスが発生したりと、大きな事故につながる危険性があります。くれぐれも、肥料同士を原液で混ぜることはしないでください。
まとめ
唐辛子の辛味成分のカプサイシンは、血行を良くし、新陳代謝を良くします。連作障害がでやすく同じ場所では3年以上開けて育てましょう。トマトやピーマン、ナスなどのナス科との連作も避けましょう。品種にもよりますが、1株で100個以上収穫できるので、プランターでも十分収穫を楽しめます。
品種を選べば激辛のものから、辛みの少ないものまでいろいろと栽培できるので、ぜひ栽培にチャレンジしてみてください。
この他にも、農家webには野菜の肥料の記事や栽培の記事がたくさんあります。
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