品質のよい小豆(あずき)を生産するには雑草対策が重要です。ここで小豆(あずき)栽培に効果的な体系的散布の方法や適用のある除草剤の成分や特徴について説明します。
小豆(あずき)栽培の除草剤の使い方
除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。茎葉処理剤には、葉や茎にかけるだけで根まで枯れるものと、薬剤がかかった部分のみ枯れる接触型の除草剤があります。
栽培期間の長い小豆(あずき)は、土壌処理剤と茎葉処理剤を使い体系的に雑草を防除する必要があります。また中耕培土も小豆(あずき)にとっては重要な除草対策です。
除草剤散布スケジュール
- 手順1耕起前
すでに雑草が生えている場所には、事前に非選択性の茎葉処理剤でしっかり除草してきます。
- 手順2播種直後
播種(種まき)から出芽までの間に、土壌処理剤を使って雑草の発生を抑制します。
- 手順3中耕・培土
小豆の畝間を耕やす「中耕」とその土を株に寄せる「培土」は、小豆の除草に大切な作業です。小豆が2~3葉の頃と4~5葉の頃2回行います。
- 手順4小豆生育期
土壌処理剤で抑制できず、成長してきた雑草には茎葉処理剤を使って、雑草を駆除する。選択制の除草剤が全面散布できるので薬害の心配がなく安心です。
土壌処理剤の使い方
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ40日~60日ほどです。小豆栽培に使う場合は、雑草発生前の「は種直後」もしくは「定植前」に全面散布して使います。
茎葉処理剤の使い方
定植時にマルチをしたり、土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかっても、小豆は枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
農薬の希釈について
除草剤は水で希釈してつかうものがほとんどです。希釈倍率や使用量を間違えると、雑草の除草に効果がないばかりか、作物等に影響を与えることもあります。除草剤の希釈方法の記事や、便利な計算アプリもあります。
小豆(あずき)に適用のある除草剤
小豆(あずき)に適用のある除草剤について、特徴や散布時期について説明します。
耕起前に適用のある茎葉処理剤
畑にすでに多年生雑草が生えている場合には、耕起(こうき)だけでは雑草を駆除できないこともあります。特に土壌水分が高い畑や、砕土率の低い畑では注意が必要です。その場合は根までからす除草剤を事前に散布するとよいでしょう。
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、土壌に根を張っている雑草にも効果的です。小豆(あずき)で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布時期は、耕起の2週間前までに散布するのがおすすめです。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
播種直後に適用のある土壌処理剤
ゲザガード50
有効成分 プロメトリン 50.0% HRACコード5
ゲザガード50は、非ホルモン型、吸収移行性の除草剤で特に畑地一年雑草に有効な土壌処理剤です。雑草の根部や茎葉部から吸収され植物の光合成および炭水化物の生成を阻害し、除草効果を示します。水和剤なので、水に希釈して使います。小豆(あずき)には、は種直後に土壌散布して使います。
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤
有効成分 トリフルラリン44.5%(乳剤)、トリフルラリン2.5%(粒剤)HRACコード5
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤は、トリフルラリンを成分とするジニトロアニリン系の除草剤で、発芽時の雑草の成長分裂を阻害することで、雑草を抑える土壌処理剤です。イネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ、ノビエ、イヌビエ、スズメノテッポウなど)に優れた効果を発揮し、スベリヒユ、ハコベにも効きます。イネ科雑草が生えてる圃場におすすめ。小豆(あずき)には、は種後出芽前に土壌に全面散布して使います。
クロロIPC乳剤
有効成分 IPC(化管法 1種) 45.8% HRACコード23
クロロIPC乳剤は、非ホルモン型移行性除草剤で、スズメノテッポウやスズメノカタビラ等のイネ科雑草、ハコベ、ノミノフスマ、タネツケバナ、ミチヤナギ、タデ類等に効果があります。気温が20℃以下の時期に効果がでるので冬から春の畑に使われます。小豆(あずき)栽培では、は種直後に全面土壌散布して使います。
ビンサイド乳剤
有効成分 プロメトリン 15.0% HRACコード5 ,IPC 25.0% HRACコード23
ビンサイド乳液は、北海道のみで使える畑地一年生広葉雑草に効果のある土壌処理剤です。2成分の有効成分を混合することにより、タニソバを含むタデ類とハコベ、オオツメクサ等に高い効果を発揮します。高温乾燥時期及び散布後高温が予想されるような条件下では、薬害や効果が低減する可能性があるので注意が必要です。小豆(あずき)には、雑草発生前に「は種後2〜5日」に土壌に全面散布して使います。
生育期に適用のある茎葉処理剤
中耕後は、土壌処理剤の効果がなくなり雑草が生えてきます。生育期には、小豆(あずき)は枯らさず雑草を枯らす選択制の茎葉処理剤がおすすめです。除草剤によって効果のある雑草が異なりますので、それぞれ圃場に合わせて選んで使いましょう。
パワーガイザー液剤
有効成分 イマザモックスアンモニウム塩 0.85% HRACコード2
パワーガイザー液剤は、広葉雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤です。タニソバ、スカシタゴボウをはじめとする一年生広葉雑草の発生始期から2葉期までに散布することで、高い除草効果を示します。土壌処理剤の効果が弱く、広葉雑草が生えてきてしまっている場合などにも使えます。有機リン系殺虫剤またはイネ科雑草処理除草剤との10日以内の近接散布は、薬害のおそれがあるので散布しないこと。
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草(スズメノカラビラを除く)に使われる選択制の茎葉処理剤です。小豆には直接かかっても影響がないため、雑草への茎葉処理だけでなく、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤と組み合わせて使う必要があります。小豆には、イネ科雑草の3〜5葉期の雑草生育期に収穫14日前まで雑草に茎葉処理するか全面散布も可能です。
セレクト乳剤
有効成分 クレトジム 24.0% HRACコード1
セレクト乳剤は、従来のイネ科雑草除草剤では難しかったスズメノカラビラにも効果のある、イネ科雑草専用の選択制茎葉処理剤です。スズメノカタビラの除草には、適期に散布することが非常に重要です。葉齢をしっかり観察し適期(3~5葉期)に散布するしましょう。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤と組み合わせて使う必要があります。小豆には、イネ科雑草の3〜5葉期の雑草生育期に収穫45日前まで雑草に茎葉処理するか全面散布も可能です。
ポルトフロアブル
有効成分 キザロホップエチル 7.0% HRACコード1
ナブ乳剤、ポルトフロアブルは、畑作のイネ科雑草(スズメノカラビラを除く)に使われる選択制の茎葉処理剤です。イネ科雑草にしか効果がないので、小豆(あずき)には直接かかっても影響がないため、雑草への茎葉処理だけでなく、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。冬場の寒い時期には効果が劣ることがあります。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤が必要です。小豆には、イネ科雑草の3〜8葉期の雑草生育期に収穫50日前まで雑草に茎葉処理するか全面散布も可能です。
グルホシネート系除草剤
小豆(あずき)には、大きくなった広葉雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤はないので、それらの雑草が生えている場合は非選択性の除草剤を使いましょう。
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。小豆(あずき)には、雑草生育期は種前又は畦間処理に収穫28日前まで使えます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
プリグロックスL
有効成分 ジクワット 7.0% パラコート 5.0% HRACコード22
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の非選択性の接触型の茎葉処理剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
は種前又は植付前、雑草生育期の畦間処理に収穫3日前まで使えます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
除草剤の選び方
除草剤は、圃場に合った除草剤を散布することが大切です。圃場にどんな雑草が生えているのか、まずは観察し適切な時期に適用のある除草剤を散布することが、最大限に効果を発揮します。
乳剤と粒剤はどちらがいいの?
土壌処理剤には乳剤と粒剤がありますが、どちらを選んだらよいのでしょうか。
乳剤と粒剤どちらにも適用があれば、どちらをつかっても効果に違いはありません。水で薄めて使う乳剤は、経済的に使うことができます。土壌処理剤は土が乾燥しているとムラがでやすく処理層ができるのに時間がかかったり処理層が薄くなったりします。水で希釈して使う乳剤は粒剤よりそのリスクは低いといえます。
一方粒剤は、そのまま土に散布するだけですので希釈の手間も計算も不要です。また散布後に雨が降ると乳剤の方が処理層が崩れやすいので、粒剤の方がよいという農家の方もいます。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。それは殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
小豆(あずき)に適用がある除草剤・農薬
小豆に適用がある除草剤は、このほかにも多くあります。「農家web農薬検索データベース」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、小豆(あずき)に使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。作物名は「あずき」「豆類(種実)」に登録のある農薬が使えます。
小豆の栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
小豆の雑草対策は、雑草が生える前に防除するのが基本です。雑草は大きくなると、除草に手間がかかります。除草剤やビニールマルチをうまくつかって雑草の発生を押さえ、それでも生えてきた雑草は早めに手取りしたり、中耕で除草をこまめに行いましょう。
農家webには、このほかにも畑・農地、水稲に使える除草剤や作物別の除草剤の使い方などの
記事も多くあります。