かぼちゃ栽培は地這い栽培が手間がかからず簡単ですが、広い敷地が必要なので雑草の対策も広範囲及びます。ここではかぼちゃ栽培に使える除草剤の種類の特徴や、効果的な使い方についてわかりやすく説明します。
かぼちゃ栽培の雑草対策
かぼちゃ栽培の雑草対策は、地温を上げるためと防草対策のためにビニールマルチをし、つるを伸ばす場所には、敷きわらや、遮光シートなどを使うのが一般的です。敷きわらには防草の効果の他、乾燥や防虫防止の効果もあります。最近では畝間への敷きわらの代わりに、麦などの植物をマルチ替わりにするリビングマルチなども行われています。
雑草の多い畑では、これらの対策をしても雑草が生えてくる場合があります。上記のような物理的防除と併用して除草剤を使うことで、効果的に雑草の防除や駆除が行えます。
かぼちゃ栽培に使われる除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。茎葉処理剤には、葉や茎にかけるだけで根まで枯れるものと、薬剤がかかった部分のみ枯れる接触型の除草剤があります。
かぼちゃに適用がある除草剤は、栽培前から生育中にも使えるものがあります。時期や雑草の種類にあった除草剤をつかうことが大切です。
体系的に防除するのであれば定植前後の雑草発生前に「土壌処理剤」で雑草の発生を抑制し、その後に発生した雑草に対して、「茎葉処理剤」を散布します。土壌処理剤は、雑草が生える前に散布する除草剤です。圃場にすでに雑草が生えている場合には、グリホサート系の除草剤を使い根元からしっかり雑草を枯らしておきましょう。
除草剤の使い方
土壌処理剤
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ40日~60日ほどです。かぼちゃ栽培に使う場合は、定植前にマルチ栽培をする場合は、マルチの前に、ほ場全面に散布します。
茎葉処理剤
定植時にマルチをしたり、土壌処理剤を散布しても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかっても、「かぼちゃ」は枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
かぼちゃ栽培におすすめの除草剤
土壌処理剤
土壌処理剤は、雑草発生前に使います。
トレファノサイド粒剤2.5
有効成分 トリフルラリン2.5% HRACコード3
トレファノサイド粒剤は、トリフルラリンを成分とするジニトロアニリン系の除草剤で、発芽時の雑草の成長分裂を阻害することで、雑草を抑える土壌処理剤です。ツユクサ科、カヤツリグサ科、キク科、アブラナ科を除く一年生雑草に効果を発揮します。特にイネ科の雑草(オヒシバ、メヒシバ、ノビエ、イヌビエ、スズメノテッポウなど)に優れた効果を発揮し、スベリヒユ、ハコベにも効きます。イネ科雑草に比べ広葉雑草に対してはやや効果が劣るので、イネ科一年生雑草の優占する圃場で使用するのが効果的です。
かぼちゃ栽培には、定植前(植穴掘前、マルチ前)に全面散布して使う他、生育期・トンネル除去前に収穫45日前まで、畦間土壌散布して使えます。トレファノサイドには乳剤もありますが、かぼちゃに適用があるのは粒剤のみ、またマルチ・トンネル栽培のみに適用があります。定植前に使う場合には、散布から定植まで7日以上あける必要があります。
クレマート乳剤
有効成分 ブタミホス 50.0% HRACコード3
クレマート乳剤は、萌芽前に全面土壌散布して使う土壌処理剤で、特にメヒシバ、スズメノカタビラ等のイネ科雑草に高い効果を発揮し、さらにアブラナ科、ナデシコ科等の多くの広葉雑草にも効果があります。かぼちゃの栽培には定植・マルチ前に全面散布して使います。多年生雑草、キク科雑草、ツユクサには効果が薄いので、これらの雑草が占有している圃場では異なる除草剤を使いましょう。
茎葉処理剤
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草に使われる選択制の茎葉処理剤です。かぼちゃに直接かかっても影響がないため、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。かぼちゃ栽培には、雑草生育期イネ科雑草3〜5葉期 但し収穫14日前までに雑草の雑草茎葉散布するか、全面散布も可能です。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤を使う必要があります。
セレクト乳剤
有効成分 クレトジム 24.0% HRACコード1
セレクト乳剤は、従来のイネ科雑草除草剤では難しかったスズメノカラビラにも効果のある、イネ科雑草専用の選択制茎葉処理剤です。スズメノカタビラの除草には、適期に散布することが非常に重要です。葉齢をしっかり観察し適期(3~5葉期)に散布するしましょう。かぼちゃには、雑草生育期(イネ科雑草3〜5葉期)収穫30日前まで雑草茎葉散布するか、全面散布も可能です。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤と組み合わせて使う必要があります。
グルホシネート系除草剤
かぼちゃには、イネ科以外の雑草に効果のある選択制の茎葉処理剤はないので、それらの雑草が生えている場合は非選択性の除草剤を使いましょう。
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。かぼちゃには、雑草生育期の植えつけ前又は植え付け後の畦間処理で収穫30日前まで使うことができます。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤がありますが、かぼちゃ栽培に使えるのはバスタ液剤のみです。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
かぼちゃ畑使用 | ○ | ✖ |
プリグロックスL
有効成分 ジクワット 7.0% パラコート 5.0% HRACコード22
プリグロックスLは、速効性を持つ、パラコート系の非選択性の接触型の茎葉処理剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草にぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
雑草発生期の植付前か、植え付け後の畦間処理で収穫前14日まで使うことができます。農薬上の毒物にあたりますので、取扱には十分な注意が必要です。劇物を取り扱っている農薬販売店、JAなどで購入できます。
グリホサート系茎葉処理剤
多年生の難雑草が何年も生えている場所などでは、耕起前に使えるグリホサート系の除草剤を使って除草しましょう。
グリホサート は、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全 な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。グリホサートは、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎、根っこも含めて全体を枯らし、根絶する効果があるため、根を残したい田んぼの畔や傾斜地には向きません。
グリホサート系の除草剤は多くありますが、畑には必ず「農耕地用除草剤」を使用しましょう。下記の除草剤はかぼちゃには適用がありませんが、野菜類に適用があるためかぼちゃの畑にも使用することができます。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。それは殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
農薬の希釈について
除草剤は水で希釈してつかうものがほとんどです。除草剤の希釈方法の記事や、便利な計算アプリもあります。
かぼちゃに適用がある除草剤・農薬
この他、かぼちゃに適用がある除草剤は、「農家web農薬検索サービス」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、かぼちゃに使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。作物名は「かぼちゃ」の他「野菜類」に登録のある農薬が使えます。
かぼちゃの栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
かぼちゃの栽培は、幼苗期は雑草に弱いので、生育初期は植え付け後は雑草が小さなうちに、株元を除草しましょう。雑草は大きくなると、除草に手間がかかります。除草剤をうまくつかって雑草の発生を押さえ、雑草が生える前に、敷き藁や防草シートなどをうまく活用して、雑草を防除しましょう。
農家webには、このほかにも畑・農地、水稲に使える除草剤や作物別の除草剤の使い方などの
記事も多くあります