この記事では、硫酸加里(硫酸カリウム)を肥料として活用する場合の基本と特徴、効果、使用方法について詳しく解説します。
硫酸カリウム肥料とは
硫酸カリウム(硫酸カリ、硫加、K2SO4)は、天然のカリ鉱石、もしくは塩化カリを原料とする肥料です。硫酸加里の公定規格は、水溶性加里(K2O)成分が45%以上とされていますが、実際に販売されているものは50%程度のものが多いです。また、可溶性硫黄1%以上を保証成分としている硫酸カリウム肥料もあります。
硫酸カリウムの成分は、水溶性のカリウムで水に溶けやすく速効性があります。溶け出すカリウムイオンは、作物に吸収されるほか、土壌(土壌コロイド)にもよく吸着、保持されるため、流亡の心配は少ないです。
速効性と聞くと、土壌から流れ出たりすることで、効果がすぐなくなるイメージがあると思います。窒素質肥料については気にする必要がありますが、加里質肥料の場合は異なります。「カリウムイオンは土壌に吸着しやすい」ことを覚えておきましょう。
また、水に溶けやすいため養液栽培の液体肥料としても活用されます。また、溶かした液体肥料を葉面散布する事例もあるようです(硫酸カリウムの葉面散布による夏秋トマト葉先枯れ症の効果的な抑制技術 – 農研機構)。
副成分には、硫酸イオン(硫酸根)が含まれています。硫酸カリウム肥料は、化学的中性の肥料ですが、作物がカリウムを吸収したあとは硫酸イオン(硫酸根)だけが土壌に残るため、生理的酸性の肥料として分類されます。
硫酸カリウム肥料の特徴・効果
硫酸カリウムには、以下の特徴・効果があります。
- 水溶性で溶解性が高く、土壌施用後によく溶け出し作物に吸収されます。速効性の加里質肥料です。速効性ではありますが、カリウムイオンが土壌によく吸着されるため、流亡は少ないです。
- 副成分として、硫酸イオンを含んでいるので施用の時期や作物、施用量には十分注意が必要です。
- 硫酸イオンが流亡しにくく、土壌に蓄積しやすいため、土壌pHを下げる(酸性化させる)恐れがあります。
- 過りん酸石灰や重過りん酸石灰、りん安(MAPとDAP)などと混合しても、リン酸が難溶化しません。そのため、化成肥料などの原料としても使われています。
- 化学的中性であるため、他成分との反応が乏しく、尿素や硫安、塩安などを混合してもアルカリ反応によるアンモニアガスが発生しません。
- 硫酸イオンが石灰(カルシウムイオン)と結合して不溶性の硫酸カルシウム(石膏)を生成するため、土壌を固くする恐れもあります。
加里質肥料は、それぞれ一長一短あります。土壌や作物、肥料の特性に合わせて選択することが重要です。
硫酸カリウム肥料の使用方法・活用方法
基本的には、畑で使用されることが多いです。硫酸カリウム肥料は硫酸イオンを含むので、水田で使用する場合はその性質を理解した上で活用しましょう。
水田での利用は注意する
硫酸カリウムは、カリウム成分が吸収された後、硫黄イオンが土壌に残留します。残留した硫黄イオンは湛水などで嫌気環境(酸素のない条件)となっているときに、有害な硫化水素に還元されます。
川などから水を引いてきて水が入った状態の水田がその状態といえるでしょう。硫化水素が発生すると、イネの根の発育と吸収機能を阻害する恐れがあります。
最近では、老朽化水田の土壌改良などが進み、硫酸イオンが含まれている肥料を施用しても「秋落ち」現象は少なくなってきています。
畑での利用
畑では、幅広い作物に利用可能です。
タバコ、ジャガイモやサツマイモなどのイモ類、スイカ等は塩素を嫌うため、塩化カリウムではなく硫酸カリウムを施用するほうが良いでしょう。また、ネギや玉ねぎ、ニラ、ニンニクなど硫黄を好む作物への施用も効果的です。
カリウム自体は土壌に保持されるので、元肥にも追肥にも向いています。カリウムは、植物の茎や葉を充実させ、根張りも良くします。特にイモ類の収穫量を増やしますので、イモ類への追肥としても効果的でしょう。
硫酸カリウム肥料の主な注意点
硫酸カリウムの主な注意点を以下にまとめました。
- カリウム成分が吸収された後、硫黄イオンが土壌に残留し、嫌気環境では有害な硫化水素に還元されるため、老朽化水田など硫化水素の発生が懸念される水田への施用は避けたほうが良いでしょう。
- 長期的に多量施用すると土壌が酸性化するため、施肥量には注意が必要です。土壌のpH(酸性度)を定期的に計測し、酸性化していれば消石灰や苦土石灰などのアルカリ性資材で、その作物に合ったpHに調整が必要です。
硫酸カリウム肥料の購入場所
家庭菜園等で使用する肥料は、ホームセンター、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。プロ農家の方は、JAや資材店等に相談すると良いでしょう。