この記事では、植物を育てるために必要なカリウム肥料の種類について、その特徴や効果、使い方とともに解説します。
カリウムとは
カリウム(K、加里)は、肥料の三要素の一つで植物体内でカリウムイオンとして存在しています。カリウムイオンは葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促したり、植物を丈夫にして病気などに対する抵抗力を高める働きがあります。そのため、カリウム肥料は「根肥(ねごえ)」と呼ばれます。
カリウム肥料の種類
カリウム肥料の種類を分ける場合、いくつかの切り口があります。
単肥・加里質肥料
一番基本となるのは、肥料取締法による分類です(出典:15 肥料取締法について – 農林水産省)。
肥料取締法では、加里質肥料は下記のように分類されています。
加里質肥料の中でも、下記は代表的なものです。それぞれの特性に合わせて使用方法を検討しましょう。
肥料 | N(窒素) | P(リン酸) | K(カリウム) | 肥効のタイプ | 特性 |
---|---|---|---|---|---|
硫酸カリウム (硫酸加里) | – | – | 50% | 速効性 | 水溶性加里。副成分に、硫酸イオン(硫酸根)を含む。 |
塩化カリウム (塩化加里) | – | – | 60% | 速効性 | 水溶性加里。副成分に、塩素イオンを含む。 |
ケイ酸カリウム(けい酸加里) | – | – | 20% | 緩行性 | く溶性加里。可溶性のケイ酸を多く含む。 |
硫酸カリウム(硫酸加里)
硫酸カリウム(硫酸カリ、硫加、K2SO4)は、天然のカリ鉱石、もしくは塩化カリを原料とする肥料です。硫酸加里の公定規格は、水溶性加里(K2O)成分が45%以上とされていますが、実際に販売されているものは50%程度のものが多いです。また、可溶性硫黄1%以上を保証成分としている硫酸カリウム肥料もあります。
硫酸カリウムの成分は、水溶性のカリウムで水に溶けやすく速効性があります。溶け出すカリウムイオンは、作物に吸収されるほか、土壌(土壌コロイド)にもよく吸着、保持されるため、流亡の心配は少ないです。
副成分には、硫酸イオン(硫酸根)が含まれています。硫酸カリウム肥料は、化学的中性の肥料ですが、作物がカリウムを吸収したあとは硫酸イオン(硫酸根)だけが土壌に残るため、生理的酸性の肥料として分類されます。
塩化カリウム(塩化加里)
塩化カリウム(塩化カリ、塩化加里、KCl)は、大半が天然のカリ鉱石を原料とする肥料です。塩化カリの公定規格は、水溶性カリ(K2O)成分が50%以上とされていますが、実際に販売されているものは60%のものが多いです。また、水溶性ホウ素0.1%を保証成分としている塩化カリウム肥料もあります。
塩化カリウムの成分は、水溶性のカリウムで水に溶けやすく速効性があります。溶け出すカリウムイオンは、作物に吸収されるほか、土壌(土壌コロイド)にもよく吸着、保持されるため、流亡の心配は少ないです。
副成分には、塩素イオンが含まれています。塩素イオンは、他の塩基成分と溶解性の高い塩を作るため、多量に施用すると土壌中のEC(電気電解度)が高くなります。これが原因で、以下の現象を引き起こすこともありますので、注意が必要です。
- 濃度障害が発生する
- 石灰・苦土(マグネシウム)などが土壌から流亡する
ケイ酸カリウム(けい酸加里)
けい酸加里(ケイ酸カリウム、珪酸カリウム、けい酸カリウム)は、緩行性加里質肥料で、加里(カリウム)と苦土(マグネシウム)のほか、ホウ素や石灰、鉄などがケイ酸と結合された肥料です。
けい酸加里の公定規格は、く溶性加里10%、可溶性けい酸25%、く溶性苦土3%です。実際に販売されている商品は、く溶性加里20%、可溶性けい酸30〜34%、く溶性苦土4%程度のものが多いです。
ケイ酸カリウム肥料に含まれているケイ酸は、可溶性ケイ酸であり、徐々に溶け出して作物に吸収されます。
主に土作りのときの元肥として施用されます。ケイ酸カルシウム(ケイカル)とは異なり、生理的中性肥料なので土壌酸度をそこまで気にせずに施用することができます。水田や畑などどの環境や作物にも施用することができます。水稲では、元肥だけではなく中間追肥、秋施用(秋肥え)にも使えます。
複合肥料・化成肥料
カリウムが多量に含まれた複合肥料、化成肥料もあります。
硝酸カリウム
硝酸カリウム(硝酸加里、硝酸カリ、KNO3)は、硝酸性窒素とカリウムを含み、複合肥料に分類されます。硝酸加里の公定規格は、硝酸性窒素が9.7%以上、水溶性加里(K2O)が32.5%以上とされています。実際に肥料として販売されているものは、硝酸性窒素が12.5〜13.5%、水溶性加里が43〜46%程度のものが多いです。

分類上、厳密には加里質肥料とは異なりますが、カリウム分を補給するために施用されることが多いことから、農家webでもカリウムに着目して説明します。
硝酸カリウムの成分は、水溶性のカリウムで水に溶けやすく速効性があります。溶け出すカリウムイオンは、作物に吸収されるほか、土壌(土壌コロイド)にもよく吸着、保持されるため、流亡の心配は少ないです。
硝酸カリウムの最大の特長ですが、塩化カリウムや硫酸カリウムなどのように副成分が含まれず、土壌に残留しないことにあります。作物がカリウム、窒素を吸収したあと、土壌に残留成分は残りませんので、生理的中性肥料として分類されます(化学的中性肥料でもあります)。
リン酸カリウム肥料(リンカリ肥料)
リンカリ肥料(リン酸カリウム肥料)とは、窒素(N)を除く、リン酸(P)、カリウム(K)を含む肥料のことを指す総称です。肥料の三要素の中で、リン酸とカリウムに特化した肥料と言えます。
肥料のパッケージや「生産業者保証票」、「輸入業者保証票」の表成分量には「N:P:K=0:20:10」のように窒素(N)は0と記載されています。
カリウムが含まれた化成肥料
化成肥料には、カリウムが含まれていることが多いです。化成肥料は、三要素のうち二要素以上を含んでいる肥料のことを指しますが、カリウムに窒素もしくはリン酸(またはその両方)を含んだ肥料が多いです。
化成肥料に含まれているカリウムは、どの作物を対象に肥料を開発するかによって異なります。イモ類など塩素を嫌う作物に対する化成肥料には、硫酸カリウムが使われていることが多いです。
実際に使用する肥料がどのような性質なのかは、ラベルをよく読みましょう。基本的には、元肥、追肥どちらにも使用できる肥料が多いでしょう。
カリウムが含まれた有機肥料(有機質肥料)
化学肥料以外にも、有機肥料(有機質肥料)でカリウムを補うこともできます。
一言で有機肥料(有機質肥料)と言っても、様々な種類があります。また各肥料は、肥料の三要素の成分を含んでいますが、その種類によって含有されている成分の量が異なります。
下記に、主な有機肥料(有機質肥料)の種類と窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の含有量のイメージ、肥効のタイプをまとめました。
肥料 | N (窒素) | P (リン酸) | K (カリウム) | 肥効のタイプ |
---|---|---|---|---|
油かす(油粕) | 多 | 少 | 少 | 緩効性 |
魚かす(魚粕) | 多 | 中 | 少 | 緩効性・遅効性 (但し窒素分は速効性が高い) |
発酵鶏糞 | 中 | 多 | 中 | 速効性 |
骨粉 | 中 | 多 | – | 緩効性 |
米ぬか(米糠) | 少 | 多 | 中 | 遅効性 |
バットグアノ | 少 | 多 | 少 | 緩効性 |
草木灰 | – | 少 | 多 | 速効性 |
上記からもわかるとおり、カリウムが多く含まれている有機肥料は、「草木灰」や「米ぬか」、「発酵鶏糞」などが挙げられます。
カリウムの多い肥料
保証成分量に記載されている成分のうち、「水溶性加里」、「く溶性加里」などと記載されているものの割合(%)が他のものと比べて高ければ、カリウムの多い肥料と言えるでしょう。
カリウム肥料の効果
先述したとおり、カリウムは植物にとって重要な三要素(三大栄養素)の一つです。カリウムが不足(欠乏)すると、植物の生長が鈍化したり、収穫する果実・根茎・根塊の品質にも影響を与えます
カリウムは、植物を形作るために必要なタンパク質、炭水化物の合成や移動に関与する大事な成分です。また、葉からの水分蒸散の調節などにも関与し、根や茎を丈夫にし、病害虫や寒さに対する抵抗力をつけることにも役立っています。
栽培においては、以下のような効果があります。
- テンサイや果実の糖分を増加させる
- ジャガイモやかぼちゃのデンプン価を向上させる
- イネの茎葉を丈夫にし、倒伏や病害への抵抗性を向上させる
逆に、カリウムを与えすぎることも植物・土壌にとってはよくありません。適量を必要なときに与え続けることが重要です。肥料のラベルなどには化学式や元素記号で表され、カリウムのことを「K」と記述されることが多いです。