かいよう病はみかんなどの柑橘(かんきつ)類やキウイ、サツマイモなどでよく発生する病気です。ここでは、かいよう病とは何なのか、また、梅に特化して、かいよう病を防ぐために使える農薬やその他の方法もあわせて解説していきます。
かいよう病はどんな病気?
かいよう病とは?
かいよう病は、柑橘(かんきつ)類やキウイフルーツ、さつまいもなどでよく発生する、葉や枝、果実に褐色の病斑が出る病気です。原因は糸状菌により、葉では通常、気孔がある裏側から菌が侵入し、病はん(病班)が広がっていきます。
その後、病はんから菌が飛散し、果実にも感染していきます。風当たりが強い圃場や、低気圧の通過などに伴う強風雨の後には,葉の基部に多く発病します。
梅の場合は、葉や果実、枝に病斑を作ります。病斑は,最初はやや盛り上がった濃緑色水浸状円形ですが、病状の進展に従い、先はザクロ状に亀裂を生じます。そして、中央部が徐々にコルク化し、病班の周りは黄色化したハローが作られ、葉が歪んだ状態になります。
かいよう病にかかった果実はかさぶたのようなものを表面に形成し、価値を著しく損ねてしまいます。
かいよう病は、よくそうか病と間違われます。かいよう病、そうか病の違いは、病斑がかいよう病の方がやや大きく、またかいよう病の方が少し褐色がかっていて、黄緑色の縁取りが見られること、で見分けるようにします。
かいよう病の伝染方法
かいよう病は細菌が雨によって運ばれて発病します。菌は新鞘時の葉裏の気孔から主に侵入します。新芽に病班ができると次々に若葉に二次感染を繰り返します。ミカンハモグリガの被害や強風などが重なると、一気に感染は拡大します。
かいよう病の防除のポイント
とにかく、春梢に対する初期防除を徹底しましょう。発芽前、生育期の化学的防除(農薬)が大事です。また、梅雨時期は被害が拡大しやすいため、降雨前の防除をしっかり行います。
春期から梅雨明けまでの防除が徹底できた場合は、果実の被害はかなりおさえられます。とにかく初期防除が大事です。
かいよう病は薬剤による防除が重要ですが、薬剤による科学的防除だけではなく、IPMを念頭に防除計画を立てることもそれ以上に重要です。農薬以外の防除についても記載しますので、是非栽培に役立ててください。
かいよう病に効果がある農薬
ICボルドー、Zボルドー(銅水和剤)
有効成分の銅剤(ドイツボルドーA)は古くから幅広い野菜や果樹の病害防除に効果を発揮する汎用性殺菌剤です。幅広い病害に効果を発揮します。(ICボルドーは,樹勢の弱い樹や異常低温が予想される場合は、落葉を助長するおそれがある場合があります。そのような場合は、使用を控えることをおすすめします。)
アグリマイシン(オキシテトラサイクリン・ストレプトマイシン水和剤)
アグリマイシンは細菌病に優れた効き目があり、作用の異なる2種類(ストレプトマイシンとオキシテトラサイクリン)を配合しているため、広範囲のグラム陰性菌や陽性菌に対して殺菌効果があります。また浸透移行性があるため、薬剤付着以外でも効果が発揮されます。また効果の持続性もあり耐雨性も高い薬剤です。
銅性剤(ハイカッパー、Zボルドウ、コサイドボルドー、キノンドー、オキシボルドー、デランK等)と交互に使うとさらに耐性がつきにくくなります。
バリダシン液剤5
バリダシンは天然由来の成分バリダマイシンが病原菌に作用する薬剤です。病勢伸展阻止効果が強く、安定した効果を発揮します。
薬害等を出さないように製品ラベルをよく読んで使用しましょう。上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
殺虫剤はコナジラミだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、オオタバコガ、チャドクガ、アオムシ、毛虫など幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。
農薬を散布する時期
農薬を散布する時期はかいよう病の発生程度に応じて決めますが、多く発生している圃場では、発芽前、春梢発芽期,春葉の展開が開始した時期、また、台風など強風、多雨が予測される時は、その前に適宜が目安になります。
前年、果実に多くの病班を確認したときは、発芽直前の防除を必ず行ない春先感染を防止しましょう。
耕種的防除
台風襲来の予報や雨量を把握し、効果的な化学的防除を
かいよう病は雨を介して伝染し、強風によって被害が大きくなります。このため、台風時、降雨時にしっかり薬剤の効果を効かせられるか、がポイントです。天気予報やアメダス、雨量計等を利用し、雨が少ない場合は薬剤散布を遅らせたり、台風前には薬剤散布する、雨が多い時は前倒しで散布する等、雨の量を考慮しながらうまく防除するとよいでしょう。
防風ネット
風当たりが強いと、被害が拡大するため、防風ネットや防風垣は効果があります。
耐雨性を高めるための展着剤
かいよう病は前述の通り、降雨時に伝染することから、雨の日にしっかり薬剤の効果を効かせれるか、が大事になってきます。農家の方の中には、ミカンハダニ防除に使っているマシン油乳剤を展着剤として混用し、耐雨性(雨が降っても流れにくくする)を高めることで、しっかり効果を持続させて防除されている方もいらっしゃいます。例えば、ジマンダイセンに展着剤アビオンを組み合わせている方もいらっしゃいます。展着剤については、是非下記を参考にしてみてください。
まとめ
かいよう病は多発してしまうと果実の収穫に大ダメージを受けてしまうので、多発する前に防除したい病気です。早期防除が大事です。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。また草花、観葉植物などの家庭園芸用の農薬として、フマキラーが販売するカダンK(有効成分はマシン油、アレスリン(ピレスロイド系))、住友化学園芸のボルン(有効成分はマシン油)、カイガラムシエアゾールなどもあります。手に取ってみて、確認してみてください。
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