パイナップルは、実の上についているヘタ(クラウン)の部分を使って、パイナップルの木を育てることができます。ここでは、水栽培で増やすクラウンを使ったパイナップルの挿し木の方法や鉢上げ、育て方について初心者の人にもわかりやすく説明します。
パイナップルの水挿し(水栽培)について
水挿しの時期
水栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。パイナップルの生育期は5月〜9月の春から秋です。この時期であればいつでも行えますが、生育初期の5月~8月頃が最適です。国産のパイナップルの旬の時期と重なるので、スーパーなどでも手に入れやすい時期です。
パイナップルの選び方
パイナップルは、追熟しません。追熟とは果物を収穫した後に一定期間置くと甘くなる現象のこと。そのためおいしい実を食べるには、完熟したものを選びましょう。
完熟したものは、クラウンが抜きやすいのでさし木として使うのにも便利です。完熟したパイナップルは、色は黄色やオレンジ色にかわり、芳醇な甘い香りがします。葉の部分に艶があり、濃い緑色で葉先が枯れていないものを選びましょう。
挿し木の準備
完熟したパイナップルは、手でクラウンを抜くことができます。トゲや葉は素手で触るとケガをする恐れがあるので、軍手など厚手の手袋をはめて行いましょう。
- 利き手でヘタの部分(クラウン)を持ち、反対の手で実の部分を持ちます。
- クラウンをねじって回転させて、抜き取ります。
- クラウン側に実が残っている場合は、カッターなどで切り取ります。
- 下の葉は、水につくと腐る恐れがあるので、ぐるっと一周ほど葉を落としておきます。
- 風通しのよい日陰で、2日~3日乾かします。
パイナップルの挿し木の手順(水栽培)
上記の挿し木が準備できたら、挿し木を始めましょう。手軽に家にあるものでできます。発根促進剤は絶対必要ではないですが、あると格段に成功率があがります。
準備するもの
- 実から抜き取って乾かした、パイナップルのクラウン
- 花瓶やコップ(ペットボトルを切ったものなどでも可能。透明な方が根が見えてよい)
- 水道水
- メネデール(発根促進剤)
手順
- コップやガラスの器に、メネデールを100倍に希釈した水を入れます
- パイナップルのクラウンを、切り口を下にしていれます。水位は切り口が水に浸かる程度です。
- 置き場所は、室内の明るい日陰で管理します。(夏は窓辺に置くと温度が上がるので注意)
- 水は2日に1度かえましょう。発根するまでメネデールを100倍~200倍に希釈した水を使います。浸かっている部分が腐りやすいので、水をいれすぎないようにしましょう。水替えのときには、軽くぬめりを取るように水で流します。
- 早ければ3日ほどで発根します。1カ月程度そのまま育て、根がしっかり伸びてきたら鉢上げします。
発根促進剤について
生育期であれば水だけでも発根しますが、発根を早くしたり太く元気な根を促進させるために、発根促進剤も有効です。
植物活力素 メネデールは、発根だけでなく発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます。液肥でも農薬でもないためいつでも使うことができます。
最初の水挿しのときにメネデールをいれる。また水を交換するときには、発根まで2~3日に一度メネデールを薄めた水を使うとよいでしょう。
土や土の代わりの培土を使う場合にはルートンも使えます。ルートンは、さし木、さし苗の発根を促進させる植物成長調整剤です。粉末状ですので枝の切り口3㎝ぐらいを水に浸して、粉末をまぶして使います。
パイナップルの水挿しの成功のポイント
- さし木の時期は、5月~8月
- さし木にする枝は、実は完熟し、葉はツヤのある濃い緑色のものを選ぶ。
- 抜き取ったヘタ(クラウン)の部分に、実が付いている場合はカッターで切り落とす
- 発根促進剤を使用する
- 水は2日に一度、直射日光には当てない。葉水で水を与える。
鉢上げ(土への植え替え)
根がしっかり伸びてきたら、鉢上げして土に植え替えましょう。
根は水や栄養を取るために伸びて生長します。しかし水栽培の場合は根が水に直接ついているため水や栄養を取りやすいため根が発達しにくいので、冬の休眠期に入る前9月上旬までには、鉢上げをしたほうがよいでしょう。庭植えにする場合もまずは、鉢植えにして1年ほどたってから庭植えにします。
準備するもの
- 発根したパイナップルのクラウン部分
- ポットや鉢(3号~4号鉢程度のもの)
- 用土(赤玉土7・腐葉土3などの配合土)
- 鉢底石
手順
- 鉢の底に鉢底石を入れ、培養土を鉢の3分の1程度入れます。
- パイナップルの苗をいれ、根を広げます
- 3の上から用土を入れて、最後に鉢底をトントンと打ち付けてならしましょう。
- 水を鉢底から出るまで与えます。
- 肥料は根付くまで与えません。冬に入り休眠期にはいるので翌年4月頃から与えましょう。
パイナップルの育て方
栽培環境・日当たり
パイナップルは日当たりの良い場所を好みます。春から秋は、屋外の日当たりがよい風通しの良い場所で管理しましょう。水栽培で1ヵ月ほど育てた苗は、すぐに屋外の直射日光に当てると、葉焼けすることがあるので、窓辺の明るい場所から、徐々にならしていくとよいでしょう。
熱帯アメリカが原産のパイナップルは、暖地では地植えで冬越しをすることもできますが、5℃以下になると生長が止まります。10℃以下にならないように冬は室内の日当たりの良い場所で、管理しましょう。耐暑性は高いですが、ベランダなどのコンクリートに鉢を直接置くと、土の温度が上がり、蒸れて根腐れするリスクもあります。台などの上に置いて、風通し良くそだてましょう。
用土
パイナップルを育てる用土は、水はけのよい用土を選びます。市販の鉢植え用の果樹用の土や、酸性を好むため、同じ酸性を好むブルーベリーの培養土でもよいでしょう。自分で配合する場合は赤玉土小粒7・腐葉土3などの配合がよいでしょう。庭などに地植えする場合には、ピートモスを土に混ぜてPh調整しましょう。
水やり
水耕栽培から植え替えた直後は、水を直接吸い上げるに適した根になっているので、土にいれると上手く水を吸い上げられないことがあります。霧吹きなどで、葉水も上げてあげましょう。
春から秋の生長期には、土が乾いたらたっぷりと水やりをします。秋から冬にかけては成長が緩慢になるので、水やりの回数を控え乾かし気味に管理しましょう。
肥料
さし木で増やすことができたら、肥料を与えて育てましょう。うまく育てれば2年~3年で実をつけます。生育期の春から秋(5月~9月)に、緩効性肥料や液体肥料(液肥)を与えます。
窒素(N):リン酸(P):カリ(O)が均等に含まれている肥料や、実をつけるのでリンが多く含まれる果樹用の肥料などもおすすめです。ハイポネックスの「花と野菜と果実の肥料」や「マイガーデンベジフル」などはバラまくだけで便利な緩効性肥料で、植え替え時の元肥や追肥の両方に使えて便利です
花と野菜と果実の肥料 | マイガーデンベジフル |
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まとめ
いかがでしたでしょうか。普段は捨ててしまう部分から、簡単にパイナップルの苗ができてしまうなんて楽しいですよね。南国ムードあふれるパイナップルは観葉植物としても人気があります。果肉は未熟なうちに食べると、口の中が荒れてしまうので注意しましょう。
それぞれの環境によっても、発根や育て方は変わります。うまくいけば実をつけてくれるかもしれません。失敗して枯れてしまうこともあるかもしれませんが、試行錯誤するのも植物を育てる楽しみの一つです。パイナップルをまるごと購入したら、ぜひ一度パイナップルの水栽培にチャレンジしてみてください。