美しい個性的な葉が特徴のフィロデンドロンは、耐陰性もあり室内で育てる観葉植物として人気があります。生育が旺盛なので、剪定した枝から水挿しで増やすこともできます。
この記事では、フィロデンドロンのさし木の水栽培(水挿し)の方法や、水耕栽培やハイドロカルチャーでの育て方の基本などをわかりやすく説明します。
フィロデンドロンの水耕栽培について
フィロデンドロンの基礎知識
栽培を始める前に、フィロデンドロンのことを知っておきましょう。植物を育てるときに、植物のルーツや自生する環境などを知ると、植物がどんな環境を好むか知ることができ栽培しやすくなります。
フィロデンドロンは、サトイモ科の常緑多年草で中南米に600種類以上が自生しているといわれます。つる性やほふく性、直立性のものもあり、葉っぱの色や形、姿もさざまざです。観葉植物として人気のヒメカズラもフィロデンドロンの一種です。
丈夫で成長が早く、自生地では10m以上にもなる高木です。熱帯が原産のため暑さに強く、耐寒性もそれほど弱くありません。10℃以下になったら室内で栽培すれば冬越しもできます。生育旺盛なのでさし木で簡単に増やすこともできます。
学名 | Philodendron |
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属名 | サトイモ科 フィロデンドロン属 |
原産地 | 熱帯アメリカ、中南米 |
樹高 | 10cm~10m以上 |
生育適温 | 20℃~30℃(品種による) |
耐寒性等 | 耐寒性 普通 耐暑性 強い |
花言葉 | 「壮大な美」「華やかな明るさ」 |
品種
品種名 | フィロデンドロン ・セローム | フィロデンドロン ・バーキン | フィロデンドロン ・シルバーメタル | フィロデンドロン・ オキシカルジウム | フィロデンドロン ・ピンクプリンセス |
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概要 | |||||
特徴 | 和名ヒトデカズラ。直立性 葉は大きく、深い切込みが特徴的。 | 葉に白い美しい斑が入る人気種 成長により葉の色が変化する。直立性 | ツヤのあるメタリックシルバー色 の葉が特徴的。つる性。 | 和名ヒメカズラ つる性 ハート形の葉が垂れ下がる様子が 可愛らしい品種。 | ダークピンクとブラウンの葉の コントラスが美しい品種。つる性。 |
フィロデンドロンの水耕栽培の始め方
水耕栽培とは、土を使わず培養液(肥料分を含んだ水)で、野菜や草木を栽培する方法です。土の変わりにハイドロボールやゼオライトなどの培土を使った栽培も水耕栽培の一種でハイドロカルチャーと呼ばれます。水耕栽培で育てる場合には、土から栄養をとれないため水耕栽培で使える液体肥料を使って育てる必要があります。
大きく育つフィロデンドロンは土の栽培の方が容易ですが、ハイドロカルチャーでも育てることができます。観葉植物を水耕栽培で育てると、成長が土より遅くなるためコンパクトに育てたい観葉植物におすすめ。
土で育った大きな苗を水耕栽培に植え替えると、環境に対応できずに枯れてしまうことがあります。フィロデンドロンは、さし木を水栽培(水挿し)でも簡単に増やせるので、挿し木から始めるのがおすすめ。水栽培(水挿し)で発根した後に土に植え替えることもできます。
フィロデンドロンの水挿しの方法
剪定した茎をつかった、挿し木の水栽培(水挿し)で発根させる方法について説明します。
さし木の時期
水栽培を始めるには植物の生育期がおすすめです。フィロデンドロンの生育期は4月〜10月の春から秋です。この時期であればいつでも行えますが、できれば真夏を避けた、生育初期の5月下旬~7月頃が最適です。冬は剪定された親株も成長が止まるため、ダメージがおおきいので避けましょう。
さし木の準備
フィロデンドロンは、生育が旺盛なのでつる性の場合は、つるが伸びて乱れてくるため剪定して育てます。その剪定したつるをつかって挿し木にします。節は2~3節あるのが理想です。
直立性の場合は、茎が成長すると気根が伸びてくるので、その部分を残してカットします。節のない葉、葉柄では新しい芽がでる生長点がないためさし木には使えないので注意しましょう。
切り取った茎は、下葉を落とします。一番上の葉は大きい場合は、半分に切っておくことで葉から蒸発を防ぐことができます。切り口は斜めにカットして給水面をふやしましょう。切った際に白い樹液がでてきます。これに触れるとかぶれたりすることがあるので、手袋などをして触れないようにて洗いながします。
準備するもの
- フィロデンドロンの茎
- 透明な容器(花瓶やペットボトルなどでも可)
- 水道水
- メネデール(発根促進剤なくても可・あると発根の成功率が上がります)
手順
- 容器に水(水道水)を入れます。メネデールを使う場合は100倍に希釈した水を使います。
- フィロデンドロンの茎を入れます。
- 発芽するまで2~3日に1回に水は変えましょう。
- 明るい日陰で室内で管理しましょう。2週間~1か月程度で新しい根っこが生えてきます。
- 根が十分に発根したら、ハイドロカルチャーや土に植え替えして育てましょう。
発根促進剤について
生命力の強いフィロデンドロンは、生育期であれば水だけでも発根しますが、発根を早くしたり太く丈夫で元気な根を促進させるために、発根促進剤も有効です。植物活力素 メネデールは、発根だけでなく肥料でも農薬でもないので、発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます。水替えのときに発根するまで入れると効果的です。水替えの都度でなくとも、1週間に一度でも入れてあげる、また希釈率を200倍にしても効果はあります。
ハイドロカルチャーへ植え替え
土を使わないで植物を育てる栽培方法を水耕栽培と言いますが、水耕栽培の中でも土の代わりに用土(培土)として、ハイドロコーン、ハイドロボールという丸い発泡煉石を使用したり、ゼオライトを使用して栽培する方法をハイドロカルチャーと呼びます。水だけの栽培とは異なり、培土は空気を含み植物を固定することもでき、根域の水分量の維持をすることもでき、またインテリアとしてもハイドロカルチャーでの栽培は人気があります。
培土を使わず水だけで育てることも、ある程度の大きさまでであれば可能ですがフィロデンドロンは成長も早く、背丈が大きくなるためハイドロカルチャーでの栽培がおすすめです。水耕栽培にこだわらないのであれば、土に植え替えたほうが大きく成長します。
準備するもの
- 水挿しで発根したフィロデンドロンの苗
- ハイドロボールなどの人工石
- ミリオンA・ゼオライトなどの根腐れ防止剤
- 底に穴がない鉢(透明な容器であれば水位がわかりやすくなります)
- 土入れ(小さな容器に植え付けるときはスプーンなどで代用可)
- 割り箸等の棒状のもの
- この他、水やりをするじょうろなどがあると便利です。水やりの失敗が少ない水位計もおすすめ
手順
- 底穴のない鉢に、根腐れ防止剤としてゼオライトを底が見えなくなる程度入れる
- ハイドロボールをゼオライトの上にいれます。
- フィロデンドロンの苗をハイドロボールの上に置き、根を広げます。
- 根と容器の間にハイドロボールを入れて固定します。
- 最後にじょうろで水やりを。水の量は容器の5分の1程度与えます。水位計を使っている場合は、最適水位(OPT)まで入れましょう。
フィロデンドロンの水耕栽培の育て方
栽培環境・置き場
基本は風通しの良い、明るい室内に置きましょう。置き場は窓辺などが適しています。ガラスの鉢で育てている場合は、夏の直射日光はガラス越しの光で中の温度が上がってしまうこともあるので、直射日光が当たる場合には、カーテン越しの光で管理するとよいでしょう。
フィロデンドロンは耐陰性もあるので、日陰でも育ちますが、元々は日当たりの良い場所を好みます。日当てないとヒョロヒョロと徒長してしまうこともあります。なるべく部屋の明るい場所で管理しましょう。
品種にもよりますが、耐寒性はそれほど強くありません。冬は窓辺に置いておくと夜間に急激に寒くなりますので、窓辺から部屋の中央に移してあげましょう。できれば冬は10℃以下にならないようにして冬越します。
水やり
土やハイドロカルチャーなどに植え替えなくとも、水耕栽培で育てることはできます。その場合は、ある程度まで根がでたら根腐れ防止剤を底に入れて育てましょう。
水替えは、1週間に1度程度。透明な器は藻が生えやすいので、器も洗ってあげましょう。水位が高いと茎の部分が腐ることがあるので、根が3分の2ほどつかるようにして育てるとよいでしょう。
ハイドロカルチャーの水やり
観葉植物は、生育期と休眠期で水やりの量を変える必要があります。ハイドロカルチャーでもそれは同じです。フィロデンドロンは、春から秋は生育期で、冬は休眠期です。
ハイドロカルチャーは、水を鉢の中に溜めて育てるので通常の観葉植物でも、水がなくなってから2日~3日ほど待って水やりをします。生育期には、水やりはハイドロボールなどは外から乾いているように見えても、鉢の中側は湿っていることも多いので、3日~5日ほど待ってから与えましょう。水は鉢の5分の1まで、容器にもよりますが鉢底1cm程度で大丈夫です。
水位計を使っている場合も同様に、水位計の針がmin(水切れ)まで下がってから3~5日ほど待ってから水をopt(適正水位)まで入れます。休眠期は、月に1~2回、霧吹きで水を上げる葉水で行います。冬でも室内の温度が高い場合には、適宜水やりをしましょう。
もし水を入れすぎてしまったら、鉢の上からタオルなどで押さえて、鉢を傾けて水を出しましょう。水耕栽培は新鮮な水を与えることが大切です。水をいれすぎると、根腐れのほかにも、水が腐る可能性もあります。
フィロデンドロンは高湿度を好みます。室内はエアコンなどの影響により乾燥することが多いので、葉水はこまめに与えましょう。葉水は葉についたホコリをとったり、ハダニの予防効果もあります。
肥料
ハイドロカルチャーで育てるときには土から栄養をとれないため正しく肥料を与える必要があります。肥料は、粒上肥料や液体肥料(液肥)などがありますが、ハイドロカルチャーに最適な肥料は液体肥料です。
春から秋の生育期は、水やりの代わりに1か月に1度程度、水耕栽培用の肥料を与えます。容器に書いてある希釈量で薄め、さらに2倍の量で薄めたものを与えます。(あくまで目安)。肥料の上げすぎは枯れる原因にもなりますので、必ず希釈量を守りましょう。
水栽培やハイドロカルチャーに使える肥料は、ハイポネックス微粉やハイポニカ液体肥料などがあります。
ハイドロカルチャーの肥料についての記事がありますので、肥料について興味のある方はお読みください。
植え替え
ハイドロカルチャーは、育てていると周りにカビや藻などが生えてきます。また根が張って根詰まりを起こしているようなら、一回り大きな鉢に植え替えをしましょう。植え替えは5月~8月が適期です。
ハイドロボールなどの資材は、洗って再利用することができます。再利用する場合はよく洗って日に当て乾かしてから使用します。
まとめ
フィロデンドロンは、品種によって葉色や姿も異なります。つる性のものはポトスのように、ハンギングで吊るして飾ったり、モンステラのような大きな葉が特徴なものはお部屋のシンボルツリーにもなります。サトイモ科の植物は丈夫で育てやすいので、水耕栽培でも失敗しにくい植物です。
最近はダイソーや3coinsなどで見かけることもあり、手軽に手に入る品種もありますのでぜひ水耕栽培で育ててみてください。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。観葉植物だけでなく、野菜やハーブなどは収穫も楽しめます。
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