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農薬

農薬のデメリットは?農薬のメリットデメリットをわかりやすく説明します!

代表的な農薬(水和剤)プレオフロアブルの写真 農薬

近年、食物の安全性に注目が注がれ、指定された農薬、肥料しか使わない「有機農業」や農薬自体を使わない「無農薬農業」への関心が増えています。

農薬とはそもそも一体何なのか、農薬の必要性、農薬を使うメリット、デメリットは何か、わかりやすく説明します。

農薬とは?

「農薬」とは農薬取締法で、「農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」と定義されています。

まとめると、農薬とは、「農作物を害する菌、昆虫、線虫、その他動物やウイルスの防除に使う殺虫剤、殺菌剤その他薬剤、天敵」と言えるでしょう。

具体的によく使う農薬の種類は以下のようなものがあります。

種類内容
殺虫剤農作物を加害する害虫を防除する薬剤
殺菌剤農作物を加害する病気を防除する薬剤
除草剤雑草を防除する薬剤
植物成長調整剤農作物の生育を促進したり、抑制する薬剤
展着剤ほかの農薬と混合して用い、その農薬の付着性を高める薬剤
天敵農作物を加害する害虫の天敵
微生物剤微生物を用いて農作物を加害する害虫病気等を防除する剤
この他、殺虫殺菌剤、殺鼠(殺そ)剤、誘引剤があります。

参考:「農薬とは」(農林水産省)

農薬の必要性とメリット

もともと農耕地は、自然の一部に見えて、実は自然なものではありません。自然には生えない数少ない種類の植物が、1箇所に大量に栽培されている状態なのです。

編集さん
編集さん

もともと農作物は、自然から発生した品種を育種、選抜を繰り返し、人が食べるために味覚や栄養素が改良されてきた植物で、自然に生える植物とは全く種類も生態も違うものなのです!

この農耕地の状態は病害虫にとってはイレギュラーで格好の餌場といえ、その場に集まってくるのは当然の現象です。

このため、集まってくる病害虫をしっかり防除しないことには、下記のように収穫時に適切な収量を確保できなくなります。

また、防除や除草には、農薬による科学的防除の他に、物理的に取り除いたりする物理的防除や、発生しにくくする耕種的防除、また天敵、微生物を利用する生物的防除があります。が、農薬を使用しないで他の方法で防除するのは非常に時間と労力がかかってしまいます。わかりやすい例が下記の、「農業での総労働時間の変化」です。農薬が普及して、物理的な草刈りから農薬利用にシフトするなどして、農作業の負荷が減り労働時間が格段に少なくなったことがわかります。

このように、農薬は、

  • 病害虫等による収量、品質減を防ぐ
  • 農作業における労働時間の軽減

ことに大きく寄与しています。現代の地球人口増加からの大量消費を補うための食糧大量生産をクリアするため、農薬は現代の農業に必要な側面、欠かせないメリットがあると言えます。

参考:農薬はなぜ必要か(厚生労働省)

農薬のデメリット

上記では、農薬が持つ必要性とメリットについて説明しました。ではここからが本題です。農薬にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。農薬を使用すると生じるデメリットについて説明します。

毒性があるものや環境汚染につながる可能性があるものがある

農薬によっては、少なからず人体への毒性が「0」とは言い切れないものがあります。また、周りの生物環境、水棲動物に少なからず影響を与えてしまう場合もあります。

抵抗性病害虫を発生させてしまう

同系統の農薬を連用すると、その成分が効かない病害虫が生き残り繁殖することでその農薬に抵抗性を持つ病害虫がどんどん残っていく現象が生じます。農薬が普及した現在、このことが大きな問題になっています。

農薬代がかかる

農薬は種類によりますが、単価が高いものもあり、使用量が増えれば、当然コストは増え、農家の方にとって農業経営のデメリット要因になると言えます。

この中でも特に最近では農薬の健康上の安全性への関心が高まっています。それでは、農薬は実際に人体に毒性があると言えるのでしょうか?

農薬の毒性の検査について

農薬は戦後急速に普及し、農産物の多量生産に貢献してきました。その過程で人に対する毒性(発がん性など)、農作物に残留する性質(作物残留性)(DDTなど)、土壌への残留性による様々な問題が生じ、農薬汚染で田んぼ(水稲)の生き物が少なくなった、など農薬の悪影響が社会問題となったのは事実です。

これを受けて日本政府は、昭和46年に農薬取締法を改正し、「国民の健康の保護」と「国民の生活環境の保全」を目的として、農薬の登録に、農薬の性質、残留性など様々な試験成績書の提出などを義務付けることとなりました。

具体的には、FAMICと言う機関で農薬の薬効、薬害、安全性及び製品の性質について検査を行い、農薬の作物残留、土壌残留、水質汚濁による人畜への被害や水産動植物への被害を防止する観点から、国が決めた基準を超えないことを確認して、登録されます。基準を超えるものは農薬登録ができません。

編集さん
編集さん

原則、すべての 農薬等について、残留基準を超えて農薬が食品の中に残留する場合、その食品の販売等の禁止を行うとした残留農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)も実施されています!

厚生労働省 ポジティブリスト制度について

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/060516-1.pdf

この農薬取締法改正を境に、農薬の開発方向は、人に対する毒性が弱く、残留性の低いものへと移行し、天敵、微生物を利用した農薬も開発され、次第に普及しています。

このため、農薬取締法が改正され、その運用が数十年なされている現代においては、一般に思われているほど農薬の毒性については、農薬に定められている使用量、使用回数が守られている限りは、人体に影響を及ぼすとは言えないと考えます。

また、近年では農薬の使用量を減らすために病害虫の駆除、防除を農薬だけに頼らない技術(IPM(総合的害虫管理))が進んできています。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

まとめ

以上のように、農薬取締法が改正されて以来、農薬の毒性や環境への影響というのはかなり厳密に検査、運用がされています。このため、規定を守って使用されている限り、思っている以上の危険性はないと言えるでしょう。また、農薬といった科学的防除を利用することで新規就農など就農自体の負荷、ハードルを下げているのは事実です。

しかし、微量とはいえ食に関することもあり、気になる方はいらっしゃるかもしれません。近年の農業は従来の農薬を使用した慣行栽培の他に、限られた農薬しか使用できない有機栽培や、そもそも農薬を使用しない無農薬栽培も徐々に増えてきています。そのような栽培手法で作られた野菜、農作物を選ぶのも良いかと思います。

下記は、慣行農法、有機農法、自然(無農薬)農法を詳しく説明していますので、ご興味ある方は参考にしてみてください。

農法肥料の使用農薬の使用安定栽培の難しさ(※)生産量
自然農法不使用不使用非常に難しい非常に少ない
慣行農法使用(化学肥料・有機肥料使用比較的易しい多い
有機農法使用(有機肥料)使用(極力使用しない)難しい少ない

(参考文献)

  • 農薬とは何か( 日本植物防疫協会 (1996/1/1))
  • 世界の田畑から 草取りをなくした男の物語―ダイコンのくびれから除草剤処理層理論を確立し数々の除草剤を開発した松哲夫の業績(全国農村教育協会 (2002/6/1))
執筆者・監修者情報
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編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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