柿の育て方と肥料を与えるタイミング
柿は、庭植え(露地への植え付け)のほか、鉢植えでも育てることができます。庭植えの場合は、潅水や植え替えの手間が少ないというメリットがある反面、移動させにくいというデメリットがあります。日陰を避け、なるべく日当たりのよい場所に植え付けるようにしましょう(畑地であれば基本的に問題ありませんが、水はけのよい土壌が好ましいです)。鉢植えの場合は、根が伸長することを考えて、苗木に対して少し大きめの鉢を用意するとよいでしょう(野菜などの作物と異なり、柿は永年性の作物であることに留意しましょう)。赤玉土と腐葉土を半量ずつ混合し、用土にすると簡単でよいです。
柿栽培の流れは、以下の通りです。「元肥(寒肥)」、「追肥(夏肥)」、「追肥(礼肥)」のタイミングで肥料を与えます。必ず施肥しなくてはいけないわけではありませんので、樹体をよく観察して判断をするようにしましょう。
なお、イメージしやすいように、関東地方以西での作業実施月の例を記載しています。実際には、栽培地域や栽培品種によっても異なりますので、目安としてとらえてください。
- ~3月
- 5月摘蕾・受粉
- 新梢につく蕾について、枝1本について蕾1つを残すよう摘み取ります。
- 生理落果の多い品種では、ミツバチなどを用いた受粉作業を行います。
- 6月追肥(夏肥)
- 速効性の化成肥料などを施肥します。
- 樹勢が強い場合には、夏肥は行いません。
- 7月摘果
- 果実の品質や収量を向上させるために、摘果により果実の量を調整します。
- 傷や日焼けのないものを残すようにします。
- 9~10月追肥(礼肥)
- 速効性の化成肥料などを施肥します。
- 礼肥は果実の収穫後の樹勢回復などを目的に行いますが、効果が出るまでタイムラグがあるので少し早めに実施します。
- 9~12月収穫
- 品種によりますが、9月下旬から12月上旬くらいまでが収穫期です。
- 成熟につれて果実表面が黄色を経て朱色に色づく様子を観察し、適期を判断します。
- 12月~整枝・剪定
- 毎年きちんとした整枝・剪定作業ができると、隔年結果を防ぐことができ収量が安定します。
- 柿が休眠している間に、のこぎりを使って太い枝を切り、ハサミを使って細い枝を切り落とすとよいでしょう。
- 春に伸びた枝の先端に花芽がつくので、切り詰める場合には注意が必要です。
柿に発生する病害虫
上記の「柿栽培の流れ」では割愛していますが、プロ農家や大規模に栽培する場合には、病害虫防除の作業もしなくてはいけません。病害虫防除には、落ち葉の処理(病気の防除)、粗皮削り(樹幹や樹皮に潜む害虫の駆除)、農薬散布などがあります。農薬散布の対象となる主な病気や害虫には、次のようなものがあります。
こうした病気や害虫が大量発生すると、農薬として殺菌剤や殺虫剤といった薬剤を施用しなくてはいけません。鉢植えであったり、庭植えでも小規模であったりする場合には、目視によって病斑部や食害部を見つけることができます。当該部分を取り除くだけでも改善できる可能性がありますので、継続的に観察をするようにしましょう。
また、庭植えの場合、春先になると草花などの雑草が発生し始めます。雑草は、病気や害虫の発生源になるだけでなく、柿に注がれるべき土壌中の養分を奪ってしまうという悪影響があるので、しっかり除草する必要があります。除草には、除草剤を用いる方法、刈払機を用いて下草を刈る方法などがあります。
柿に与えるおすすめの肥料
代表的な柿の肥料は、次の通りです。施肥については、肥料成分やタイミングによって、花芽形成、開花、結実、落果などの生育や生理状態に影響を及ぼしますので、重要な作業といえます。しかしながら、柿は他の作物に比べるとはるかに丈夫なので、あまり考えすぎることなく積極的に挑戦してみるとよいでしょう。
鶏糞
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。特に、植物の実や花に栄養を与えたい時に使われるリン酸が豊富です。同じ堆肥として牛ふんが比較されることがありますが、成分が異なるとともに、牛ふんは土壌改良の目的でも利用される点が異なります。
有機肥料は緩効性なので、徐々に分解され吸収されます。柿の栽培においては、元肥として冬の寒い時期に施用します。
油かす
柿栽培では、有機肥料として油かす(油粕)肥料が利用されることが多いです。油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
元肥のタイミングで、他の有機肥料(有機質肥料)と合わせて油かす肥料を使用すると良いでしょう。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
有機肥料は緩効性なので、徐々に分解され吸収されます。柿の栽培においては、元肥として冬の寒い時期に施用します。
化成肥料
主要な三大栄養素とされる窒素・リン酸・カリウム(加里)のうち2つ以上を含むものを「複合肥料」と呼びます。「化成肥料」は、その「複合肥料」に含まれるものを言います。つまり、窒素・リン酸・カリウム(加里)のうち2つ以上を含む化学肥料を一般的に化成肥料と呼びます。化成肥料は粒状や固形(ペレット、ブリケット)になっているものが多いです。
柿の栽培においては、窒素:リン酸:カリウム=8:8:8もしくは10:10:10の化成肥料が使われることが多いです。追肥と元肥の両方として使うことができます(元肥としては、有機肥料が分解される十分な時間がとれない春先のタイミングで使用されます)。
産地や各地方の土壌の特性に合わせたカキ配合肥料がある場合は、それらを使用すると良いでしょう。
また、有機質肥料に似て緩効性であるIB肥料、CDU複合肥料も、保肥力の悪い土壌では効果的でしょう。
グリーンパイル
グリーンパイルは、ジェイカムアグリが販売する肥料です。公園・街路・庭などの樹木に対しても用いられる、棒状の打ち込むタイプの肥料で、造園の施工で樹勢を回復させる目的でよく使われる資材でもあります。グリーンパイルには、樹木の生育にとって理想的なバランスで窒素・リン酸・カリウムが配合されており、樹木の根元から少し離れた位置に打ち込むことで、成分が土壌の深層までしっかりと浸透し長持ちします。とにかく処理が簡単な点が魅力です。
肥料焼けすることもなく、緩効性肥料のように効果が長持ちするので、柿の栽培においても年1回施用するイメージで使用するとよいでしょう。
柿を甘くする肥料はある?
与えるだけで、柿を甘くすることができる肥料はありません。剪定、摘蕾、摘果なども含めた日々の栽培管理により、光合成産物を無駄なく配分させることが、柿を甘くすることにつながります。
一方で、上記の代表的な肥料に加えて、「かきがおいしくなる肥料」という柿専用の肥料も販売されています。窒素(チッソ)、リン酸、カリが最適なバランスで配合されていることに加え、アミノ酸成分も配合されています。アミノ酸成分は、開花や結実をよくすることに寄与し、特に低温、長雨、日照不足などの悪条件下で明確な効果が出やすいとされています。
「かきがおいしくなる肥料」は、柿だけでなく、その他の落葉果樹や落葉花木にも効果的とされていますので、興味がある場合には試してみるとよいでしょう。
柿の肥料の購入方法
ホームセンターなど店舗で購入する
上記で紹介した肥料は、コメリなどのホームセンターでも販売されています。また、ダイソーなどの100円均一でも販売されていることがありますが、取り扱いのない店舗も多いようなので注意が必要です。
通販で購入する
店舗で実物をみて購入することも良いことですが、「その店舗での取り扱いがない」ことや「そもそもその商品がホームセンターなどの小売店で販売されていない」ことも多いです。時間とお金を節約するため、積極的に通販(インターネットショッピング)を利用しましょう。今ではAmazonや楽天市場など様々なECサイトで農業・園芸用品が取り扱われています。店舗よりも安く購入できる場合も多いですので、一度のぞいてみましょう。
柿の品種
柿(カキ)は、カキノキ科カキノキ属の永年性果樹で、原産地は東アジア温帯から東南アジア熱帯とされています。原産地は温暖な地域であるにも関わらず、耐寒性に優れ、潅水もほとんど必要ないという丈夫な性質なので、家庭の庭木として植え付けられていることも多いです。
自然状態で成木になると高木になりますが、品種選定や仕立て次第で低木として取り扱うことができます(一般的には、樹高は2~5m程度です)。紅葉による葉の色の移り変わりもすばらしいので、ガーデニングもしくは観葉目的での栽培も楽しむこともできます。
日本には奈良時代に渡来したのではないかと考えられており、古くから果物(フルーツ)として親しまれてきたので、現在でも全国に産地があります。柿には枝変わりや接ぎ木(枝毎に、台木と穂木を活着させる高接ぎなど)が可能という性質があるので、各県の農業試験場などで盛んに育種が行われてきました。
その結果、さまざまな特性をもった品種が生み出されました。糖度や甘みなどの食味に優れる品種、肉質や食感に優れる品種、ビタミンやカロチンなどの栄養含有量に優れる品種など、さまざまな特性をもった品種があります。
多くの品種がある柿の分類方法として、「甘柿か渋柿かによる分類」、「収穫時期による分類」があります。
甘柿か渋柿かによる分類
柿には、甘柿と渋柿があります。甘柿は生食でも甘く食べられる柿を指し、渋柿は渋抜きすることで食べられるようになる柿を指します(アルコールや焼酎を用いて処理することで、渋みが抜けることは広く知られています)。渋み成分であるタンニンが、水に溶ける水溶性であるか、水に溶けない不溶性であるかによって、甘柿か渋柿かが決まります。水溶性の場合は、舌を刺激し、渋みを感じさせてしまうというメカニズムです。
甘柿には、果実内の種子の有無に関わらず甘くなる「完全甘柿」、果実に種子が入る場合は甘くなる「不完全甘柿」があります。渋柿には、果実に種子が入っても渋くなりがちな「不完全渋柿」、果実内の種子の有無に関わらず渋くなる「完全渋柿」があります。この4つの分類によって、柿の品種を整理することがあります。
柿には雌花と雄花があるものの、単為結果性(受粉をすることなく果実を実らせる性質)もあるので、受粉および種子がなくとも果実ができるという現象が起きます。こうしたことから、同じ品種の柿であっても種子の有無が異なることがあり、品種によってはその種子の有無によって甘渋も異なるというわけです。
「完全甘柿」、「不完全甘柿」、「不完全渋柿」、「完全渋柿」のいずれであるかによって、栽培管理作業(受粉作業の有無など)や収穫後の利用方法(生食用として販売できるかなど)が異なってきます。この点からも、4つを区別し分類することが重視されています。
分類 | 特徴 | 代表的な品種 |
---|---|---|
完全甘柿 | 果実内の種子の有無に関わらず甘くなる | ・早秋 ・麗玉 ・前川次郎 ・太秋 ・富有 |
不完全甘柿 | 果実に種子が入る場合は甘くなる | ・禅寺丸 ・西村早生 |
不完全渋柿 | 果実に種子が入っても渋くなりがち | ・刀根早生 ・平核無 ・太天 |
完全渋柿 | 果実内の種子の有無に関わらず渋くなる | ・愛宕 ・市田柿 |
収穫時期による分類
「極早生」、「早生」、「中生」、「晩生」のように収穫時期によって、柿の品種を分類することもあります。収穫時期が異なるということは、すべての作業スケジュールも連動して変化します。栽培管理を考える上で、やはり重要な目安となります。品種によって適期や旬は異なりますが、9月頃から12月頃まで収穫することができます。
分類 | 特徴 | 代表的な品種 |
---|---|---|
極早生 | 収穫時期が極めて早い | ・早秋 ・刀根早生 ・西村早生 |
早生 | 収穫時期が早い | ・麗玉 ・前川次郎 ・市田柿 |
中生 | 収穫時期が普通程度 | ・太秋 ・平核無 ・禅寺丸 |
晩生 | 収穫時期が遅い | ・富有 ・太天 ・愛宕 |
まとめ
好きな果物(フルーツ)として、真っ先に柿を挙げる人はどれほどいるでしょうか?最近では、リンゴ、みかん、レモン、イチゴ、ブドウ、ブルーベリーなどの方が人気かもしれません。柿はさしずめ、キウイ、プルーン、スモモ、イチジク、ラズベリーなどと同程度の人気かもしれません。
しかし、歴史的には、柿ほど日本人に好まれてきた果物はないと言っても過言ではありません。関ヶ原の合戦に出陣中の徳川家康に、堂上蜂屋という品種の干し柿が献上されたというエピソードが残るほどに由緒ある果物なのです。