果樹

梨の防除 カメムシに使える農薬・その他の防除方法

なし園 果樹

梨などの果樹園には、果樹カメムシ類によって果実を吸汁し奇形果等の被害が起きます。ここでは梨栽培のカメムシ類の防除方法や効果的な農薬の使い方について説明します。

この記事の執筆者・監修者
農家web編集部
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梨(なし)のカメムシ類の種類・被害について

梨の果実を食害するカメムシ類は、30種類以上あるといわれますが、特にチャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシの3種類の被害が多く報告されています。

カメムシ類は果実に口針を突き刺して吸汁します。幼果が被害にあうと凹凸がひどい奇形果になります。果実が大きくなってからの被害は、奇形はそれほど大きくありませんが、果実がスポンジ状になり品質を著しく低下します。

カメムシ類の発生は、地域やその年によって発生量が大きく変わることから、カメムシ類の生育を理解し、飛来時期と飛来量を推測することが防除の基本となります。

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梨(なし)栽培 カメムシ類の防除期間・方法

カメムシの被害は開花後から収穫まで続きますが、この期間農薬を散布し続けると回数が増えるだけでなく、土着天敵にも影響を及ぼし、カイガラムシハダニ類が大発生する可能性もあります。そのため、カメムシの防除には、飛来時期と飛来量の推測が重要になるのです。

それにはカメムシの生態を理解することが大切です。カメムシ類の寿命は8月頃~7月頃までの1年間です。7月までの被害は越冬成虫、8月からは今年羽化した成虫なので発生量は8月を起点に予測します。

元来カメムシは果実を好んでエサにしているわけではなく、スギやヒノキ、サクラの球果を好みます。スギやヒノキで発生したカメムシはエサとなる球果が不足すると、近くの果樹園に飛来し果実を吸汁します。

上記のことから、スギやヒノキの結実量が多いとカメムシが8月以降に多く発生し、翌年の7月までの発生量も多くなります。逆に今年発生量が少なければ、翌年の7月までは被害が少ないため7月までの防除はそれほど必要なくなります。地方ごとに予察情報も発令されますので、それに合った防除をすることで余計な農薬散布や手間を省けます。

梨のカメムシ類の防除方法は、化学農薬による化学的防除の他、防虫ネット設置などの耕種的防除、袋かけなどの物理的防除があり、組み合わせて行うことでカメムシ類のの被害を抑えることができます。

梨(なし)のカメムシ類に使える農薬と使い方

カメムシ類には有機リン系、合成ピレスロイド系、ネオニコチノイド系殺虫剤の農薬散布で効果を発揮します。合成ピレスロイド系やネオニコチノイド系の殺虫剤は、効果が長く続きますがハダニ類やカイガラ類が増える可能性があるので、6月~7月の散布は避けた方がよいでしょう。

農薬は害虫への抵抗性を発生しないためにも、RACコードを参考に作用が異なる農薬を使い、使用回数や期限、他の害虫の発生時期に気をつけてローテーション散布をしましょう。

梨のシンクイムシ類に適用のある農薬と散布時期

なしのカメムシ類に使える農薬と散布時期の一例です。

農薬を使用する際は必ず登録内容を確認の上、希釈倍率、使用量、回数を遵守しましょう。地域で果樹を栽培している地域では、初めて使う農薬等は、営農指導員、専門家、メーカーなどに相談してから使うようにしましょう。

散布時期農薬名希釈倍率使用液量使用期間使用回数使用方法IRACコード備考
害虫発生初期~スミチオン乳剤1000倍200〜700㍑/10a収穫21日前まで(無袋栽培)
収穫14日前まで(有袋栽培)
6回以内散布1Bスミチオンは、有機リン・有機硫黄系を有する殺虫剤
アブラムシシンクイムシ類など幅広い殺虫スペクトラムを持っています。
害虫発生初期~ダントツ水和剤2000〜4000倍200〜700㍑/10a収穫前日まで3回以内散布4Aネオニコチノイド系殺虫剤で、残効性が長く、浸透移行性に優れる。
アブラムシ類、コナカイガラムシ類、シンクイムシ類、ケムシ類、チュウゴクナシキジラミにも適用があります。
害虫発生初期~アディオン乳剤2000倍200〜700㍑/10a収穫前日まで2回以内散布3Aピレスロイド系の殺虫剤で、速効性と残効性にすぐれた薬剤です。
アブラムシ類、シンクイムシ類、ハマキムシ類にも適用があります。
害虫発生初期~テッパン液剤2000倍200〜700㍑/10a収穫前日まで2回以内散布28ジアミド系殺虫剤で、特にチョウ目害虫に効果が高い
優れた耐雨・残効性を持ちますが、カメムシ類が多発している場合には効果が薄いことがあります。

この他なしに適用のある農薬は下記からほぼすべての農薬を検索することができます。

化学農薬以外の防除方法

防蛾灯(黄色蛍光灯)

チャバネアオカメムシは、波長の長い光を忌避するため防蛾灯として使われる黄色蛍光灯の設置が有効です。ただし他の種類のカメムシには効果がなく、クサギカメムシは黄色灯を好む傾向があるためカメムシの種類に注意が必要です。

防虫ネットの設置

ナシ園全体を4mm目の網で覆うことで、カメムシの飛来を阻止することができます。ただし風通しが悪くなるためうどんこ病などの被害に注意が必要です。

その他対策のポイント

各地域の防除暦や予察情報などに注意し、適期に防除対策をすることが大切です。多発している場合には、地域で対策に取り組む必要があります。

カメムシ類以外にも梨に発生する病害虫は多いため、発生しやすい病気と一緒に予防しましょう。梨のシンクイムシ類、黒星病や防除暦については詳しい記事がありますのでそちらも参考にしてください。

農業アプリを活用しましょう

今まで農業日誌や栽培記録、ノートやパソコンで管理していたという人には、農業に役立つアプリを活用しませんか。農家webの「かんたん栽培日誌」アプリはスマホから作物と地域を入力するだけで、防除暦、栽培カレンダーが自動表示。実際の栽培記録はタップ一つで登録可能。自社の「農薬検索データベース」「かんたん農薬希釈計算アプリ」と連動しているので、散布したい農薬をいれればラベルをみなくとも希釈計算も可能で、散布回数もカウントしてくれます。

また地方自治体から発表される予察情報も反映しているので、農家の防除に役立つアプリです。ダウンロードも不要で、ID登録だけですべての機能が無料で使えるアプリです。ぜひ一度使ってみてください。

執筆者・監修者情報
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農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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