梨(なし)栽培では、ナシヒメシンクやモモヒメシンクイなどのシンクイムシ類が発生して、果実の内部を食い荒らします。ここでは梨栽培のシンクイムシ類に効果のある農薬や、その他の防除方法について説明します。
梨(なし)のシンクイムシ類の種類・被害について
梨の果実を食害するシンクイムシ類は、ナシヒメシンクイやモモシンクイガなどが多く発生します。特にナシヒメシンクイの被害が多い傾向です。
ナシヒメシンクイは年に3~4回、暖かい地域ではもっと多く発生することもあります。梨の栽培では幼果にはあまり侵入しないため、7月頃から被害が大きくなります。シンクイムシは果頂部から果実内に食入して果心を食害し果肉にまで広がります。
7月から収穫まで被害が続くことから、発生時期や発生量の把握に注意し農薬散布等の時期を逃さず防除しましょう。


梨(なし)栽培 シンクイムシ類の防除期間・方法
シンクイムシ類への防除は、6月頃に性フェロモン剤を設置、その後は害虫発生が最も多い7月頃から収穫期までは10日~14日おきに化学農薬を散布します。また8月下旬~9月上旬に枝幹に粗布などを巻き付けるバンド誘殺をし、休眠期には粗皮削りをして、越冬場所を減らすことも重要です。
梨のシンクイムシ類の防除方法は、化学農薬による化学的防除の他、バンド誘殺や冬の粗皮削りなどの耕種的防除、袋かけなどの物理的防除があり、組み合わせて行うことでシンククイムシ類のの被害を抑えることができます。クイムシ類のの被害を抑えることができます。
梨のシンクイムシ類に使える農薬と使い方
化学農薬の散布を減らすためにも6月初旬に性フェロモン剤を設置します。誘殺数が増えたころに化学農薬を散布すると効果的です。その後は10日~14日おきに化学農薬を散布します。
農薬はシンクイムシ類への抵抗性を発生しないためにも、RACコードを参考に作用が異なる農薬を使い、使用回数や期限、他の害虫の発生時期に気をつけてローテーション散布をしましょう。
梨のシンクイムシ類に適用のある農薬と散布時期
なしのシンクイムシ類に使える農薬と散布時期の一例です。
散布時期 | 農薬名 | 害虫 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期間 | 使用回数 | 使用方法 | IRACコード | 備考 |
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5月下旬~6月上旬 | コンフューザーN | ナシヒメシンクイ モモシンクイガ | ー | 50〜200本/10a(52g/200本製剤) 150〜200本/10a(52g/200本製剤) | 成虫発生初期から終期 | ー | ディスペンサーを対象作物の枝に巻き付け、 または挟み込み設置する。 | ー | 交信かく乱用性フェロモン剤 ナシヒメシンクイ・モモシンクイガ両方に効果があります。 |
7月~8月 (ローテーション散布) | オリオン水和剤40 | シンクイムシ類 | 1000倍 | 2200〜700㍑/10a | 収穫3日前まで | 2回以内 | 散布 | 1A | なしにはアブラムシ、ハマキムシ類、カイガラムシにも効果を発揮します。 |
7月~8月 (ローテーション散布) | ダントツ水和剤 | シンクイムシ類 | 2000〜4000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | 4A | ネオニコチノイド系殺虫剤 アブラムシ類、コナカイガラムシ類、カメムシ類、ケムシ類、チュウゴクナシキジラミにも適用があります。 |
7月~8月 (ローテーション散布) | 兼商ヨーバルフロアブル | シンクイムシ類 | 5000〜10000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | 28 | 新規のジアミド剤で浸達性、耐雨性に優れる薬剤です。 |
7月~8月 (ローテーション散布) | ディアナWDG | シンクイムシ類 | 5000〜10000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | 5 | マクロライド系の有効成分スピネトラムを含む新規殺虫剤 幅広い殺虫スペクトラムを持ち、既存の抵抗性害虫にも効果を発揮します。 |
化学農薬以外の防除方法
バンド誘殺(捕殺)
バンド誘殺(バンド捕殺)とは、主枝に米袋や布などの誘引バンドを巻き付け、越冬のため移動する幼虫をそこに誘引し、冬になったら取り外して焼却します。設置時期は8月下旬~9月上旬までに行いましょう。
粗皮削り
果樹の樹皮は古くなると、表面がゴツゴツしてその隙間に、害虫が入り込み越冬したり卵を産むため、粗皮削りは休眠中の大切な病害虫の防除方法です。
樹皮の表面を鎌などを使い、削り落とします。厳冬期に大きく削りすぎると、木が弱る可能性があるので気をつけましょう。
被害枝や被害果の除去
幼虫は、新梢に食入し、心折れの被害をおこします。被害は大きくありませんが、被害枝を見つけたら早急に焼却します。7月になり被害果が出た場合も同様に早急に取り除きましょう。
その他対策のポイント
梨(なし)園の周囲に放任の核果類がある場合は、伐採する、伐採できない場合にはそこでも対策が必要になります。
各地域の防除暦や予察情報などに注意し、適期に防除対策をすることが大切です。多発している場合には、地域で対策に取り組む必要があります。
シンクイムシ類以外にも梨に発生する病害虫は多いため、発生しやすい病気と一緒に予防しましょう。梨の黒星病や防除暦については詳しい記事がありますのでそちらも参考にしてください。


農業アプリを活用しましょう
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