梨を甘くするには、どのように栽培すればよいのでしょうか。ここでは、甘い梨を収穫するための肥料の種類や、与え方や栽培のポイントについて説明します。
梨(ナシ)の甘さの鍵は品種選びと肥料
梨の甘さを決める鍵は、「品種選び」と「肥料」です。
日本ナシには、果皮が赤褐色の赤ナシと緑色の青ナシがあります。栽培は赤ナシの方が簡単です。梨には多くの種類があるので、甘い梨を育てたい場合には糖度の高い品種を選ぶとよいでしょう。
また、肥料のやり方や種類によっても食味は異なるといわれます。肥料は有機肥料を使うと食味がよくなるとされます。その他にも摘果や収穫のタイミングを外さないことも大切です。
有機肥料とは動植物由来(油粕や米ぬかなど植物性の有機物、鶏糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物)の原料を使って作られている肥料で、表示されている肥料成分以外にも植物の成長に必要な成分(アミノ酸など)が含まれ、土壌環境を良くする効果もあります。
梨の品種
梨には、ニホンナシ、チュウゴクナシ、セイヨウナシがありますが、栽培は日本の気候にむいているニホンナシがおすすめです。梨は1本では実がつかないため、相性のよい受粉樹が必要です。日本ナシの品種についていくつか紹介します。
種類 | 品種名 | 特徴 | 糖度目安 |
---|---|---|---|
赤ナシ | 南水 | 甘味が強く酸味は少ない品種 果肉がやわらかく幸水より甘い。 幸水より栽培は難しい | 13.5~15.0 |
赤ナシ | 幸水 | 日本で最も生産されている品種 糖度は豊水より低いですが、酸味がないため甘く感じる 早生種でお盆頃に収穫が可能 | 12.0~12.5 |
赤ナシ | 豊水 | 幸水の次に生産が多い品種 ほどよい酸味があるため、酸味と甘みのバランスの良い品種 甘みの後に、さっぱりとした酸味が残ります。 | 12.0~13.0 |
青ナシ | かおり | 非常に糖度の高い品種 流通が少なく、高級。病気に弱く栽培が難しい | 13.0~16.0 |
青ナシ | 秋麗 | 青ナシの中トップクラスに甘い品種 流通量が少ないですが、かおりと比べて栽培が容易です | 13.0~15.0 |
梨(ナシ)におすすめの肥料
有機肥料
油かす
有機肥料として、油かす(油粕)は臭いもすくなく、手に入れやすいので梨(ナシ)栽培でもよく使われます。油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。元肥のタイミングで、施肥するようにしましょう。
油かすは、リン酸が少ないのでリン酸を多く含む骨粉などと一緒に使うか、油かすに配合されているものもあります。
鶏ふん
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。効果が比較的早く出やすいので、苗木などには注意が必要です。鶏ふんは発酵したものを使いましょう。乾燥鶏ふんは、発酵させてから使うものでそのまま土にばら撒くと、悪臭やガスが出ることもあります。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。窒素やカリウムも適度に含まれています。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
肥料として使うのであれば、脱脂米ぬかが使いやすいでしょう。生の米ぬかはそのまま使うと、分解が遅く害虫や雑菌の巣になってしまうこともあるため、ぼかし肥料の発酵促進剤として使われます。
果樹の肥料
有機肥料は肥料成分が製品によってまちまちで、使い方が難しいと思われる人は、市販の有機肥料がおすすめです。肥料成分や使い方、量などが書いてあるので安心して使えます。花ごごろが販売する「果樹・花木の肥料」や大和「 甘いフルーツの肥料」などがあります。
化成肥料
庭植えの追肥や鉢植えには、化成肥料がおすすめ。化成肥料は早く効く速効性とゆっくり効く両方の成分を持っているものが多いです。有機肥料は、臭いや虫などが気になるためベランダなどで鉢植えで育てる場合は、有機入りの化成肥料もおすすめです。
化成肥料8-8-8
化成肥料「8-8-8」は、最も一般的な化成肥料で、野菜や果樹など様々な肥料に使われます。窒素、リン酸、カリウムがバランス良く含まれているため、適用できる作物の範囲が広く、成分量が少ないため、安心して使用することができます。
マイガーデンベジフル
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得しています。土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用
ハイポネックスジャパンが製造販売する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」という肥料もあります。追肥に利用する錠剤タイプで、置くだけでOKという簡便な肥料です。窒素:リン酸:カリ=8:10:9で配合されているほか、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウムも加えられています。
また、ハイポネックスには「ハイポネックス原液」などの液体肥料(液肥)もあり、樹勢が弱っているときに与えると良いでしょう。
梨(ナシ)を甘くするの肥料について
梨を甘く育てるためには、品種だけではなく肥料の種類ややり方も重要です。
梨に必要な肥料成分
梨にはどのような肥料成分がどれぐらい必要なのでしょうか。下記は埼玉県の幸水の施肥基準です。10aあたり窒素が25kgリン酸が20kg、カリが21kgです。(施肥基準は県によっても異なり、土壌によっても変わるので目安としてください。)
施肥量(kg/10a) | 基肥 | 追肥 | 追肥 | 追肥 | 成分合計 |
---|---|---|---|---|---|
窒素(N) | 15 | 3 | 4 | 3 | 25 |
リン酸(P) | 20 | 0 | 0 | 0 | 20 |
カリウム(K) | 11 | 11 | 0 | 0 | 22 |
肥料は、元肥、追肥、お礼肥の年3回を標準とするとよいでしょう。梨の元肥は冬の休眠期に行います。冬に有機肥料などの緩効性肥料を施し、その後は5月~6月に速効性の化成肥料を追肥し、収穫の後お礼肥として追肥を施します。
基本的な考え方としては、元肥には有機肥料、追肥には固形化成肥料を施すと良いでしょう。
梨(なし)の肥料 時期と与え方のポイント
それでは梨の肥料はいつどのように与えればよいのでしょうか。
元肥
1年間の生育のために必要な養分の大半を施す大切な肥料です。適期は11月~2月です。冬に行う肥料なので寒肥とも呼ばれます。この頃に有機質肥料を施すと、ゆっくりと効果がでて春の根が伸びるころに肥料効果が表れます。
元肥には有機肥料がおすすめです。有機肥料は油粕や鶏ふん、米ぬかなどがありますがいずれも発酵済のものを使いましょう。完熟したものは臭いがあまりありませんが、臭いが気になるという人は有機入りの肥料を使いましょう。
追肥
春に施した肥料が吸収されて、肥料の成分が弱まる時期に追肥を行いましょう。果実の肥大が大きくなる頃に施します。適期は5月~6月です。
追肥には効果が早く効く化成肥料がよいでしょう。窒素、りん酸、カリウムが同等に含まれている肥料などがよいでしょう。
礼肥(追肥)
果実をつけて弱っている木に、収穫の後のお礼として礼肥(追肥)を施します。来年の収穫のためにも大切な肥料です。
肥料は、有機肥料か緩効性の化成肥料がよいでしょう。
実際の施肥方法については、こちらでも詳しく説明しています。
その他甘い梨を栽培するポイント
摘果と収穫のタイミング
大きくておいしい果実を収穫するには、摘果は必ず行いましょう。1回目はビー玉大になったら、できるだけ斜め上を向いた実を1つ残しましょう。2回目はピンポン玉台になったら20cm間隔に1個に摘果します。
梨は追熟しないので、しっかり熟してから収穫しましょう。果皮から青みがなくなったら収穫のタイミングです。袋がけをしている場合は、収穫の1週間前に袋を外します。熟したものは上に持ち上げると、簡単に果柄から外れます。
病害虫管理
梨は病害虫被害の多い果樹です。病気は、黒星病、赤星病、炭疽病、輪紋病などにかかりやすく害虫は、アブラムシ類、カイガラムシ類、シンクイムシ類、ハダニ類、ナシヒメシンクイなどが発生し、食害や病気を発生させます。
病害虫が発生しやすい梅雨の前までに、袋がけをして虫が入らないようにしっかりと口を閉じておきましょう。毎年害虫が発生してしまう場合は、農薬も効果的です。どのような農薬をつかったらよいかわからないという人には、webで検索できる防除暦もおすすめです。作物名と地域を入れると、発生しやすい害虫や病気がわかり、おすすめの農薬が検索できます
まとめ
梨は果樹の中でも栽培が難しいといわれますが、追熟しないので完熟した採れたての梨を収穫できる喜びは、格別です。収穫した梨は冷やしてから食べると甘みを感じるといわれます。ぜひ有機肥料をうまく使いながら、おいしい梨を育ててみてください。