この記事では、初期剤より効果が長く続く一発剤と呼ばれる水稲のおすすめの除草剤の成分や散布時期などの情報や、効果的な使い方についてわかりやすく説明します。
水稲の一発除草剤とは
水稲の除草剤は、その散布する時期と効果により「初期剤」「中期剤」「後期剤」「一発処理剤」に区分されます。
一発処理剤は、初期剤より残存期間が30日~50日ほどと長く広範囲の雑草に効果があります。そのため1度の散布で初期剤と中期剤の両方の効果が期待できるため、省力化できる便利な除草剤です。さらに使用できる時期によって、田植直後からノビエ2葉ごろ間に散布する「初期一発剤」と、田植後7日以上たってから散布する「初中期一発剤」に区分されています。
雑草が少なければ、それぞれ一発剤だけの散布で済む場合もありますが、初期剤の後に初中期一発剤を使ったり、初期一発剤に後期剤を使ったりする場合もあります
おすすめの水稲初期一発剤
クサホープD粒剤(粒剤)
有効成分 ジメタメトリン0.20%、ピラゾレート6.0%、プレチラクロール1.5%
クサホープD粒剤は、3成分を配合した、非SU(スルホニルウレア)系除草剤で、移植後3日~ノビエ2葉期まで使うことができます。アゼナ、アメリカアゼナ、ホタルイ、コナギなどの他、アオミドロ、表層はく離にも効果が期待できます。SU抵抗性雑草(アゼナ、 ホタルイ、コナギ等)の発生地域では登録の範囲内でできるだけ早く使用することで効果を発揮します。
ヨシキタフロアブル(フロアブル剤)
有効成分 イマゾスルフロン 1.7%、 ブロモブチド 16.3% 、ペントキサゾン 7.0%
ヨシキタフロアブルは、3つの有効成分配合でノビエだけでなくホタルイ、コナギ、アゼナなどのSU抵抗性雑草にも高い効果が期待できます。移植直後から散布できるため、田植同時散布も可能で効果が40日~50日続きます。オモダカ、クログワイ、コウクキャガラは発生期間が長いので、遅い発生のものは効果が劣るため、それらが発生する田んぼでは、後期剤の使用を体系的に使いましょう。フロアブル剤の他、錠剤、ジャンボ剤もあります。
サスケ ラジカルジャンボ(ジャンボ剤)
有効成分 カフェンストロール10.5%、、シクロスルファムロン2.25%、ダイムロン22.5%、ベンゾビシクロン10.0%
サスケーラジカルジャンボは、4つの有効成分配合でSU抵抗性雑草のホタルイ、コナギ、アゼナ類や
難防除雑草に対しても、優れた除草効果が期待できます。移植後3日~ノビエ2葉期まで散布でき、50~60日効果が持続します。ラジカル製剤で1パックの重さが20gと軽く、10アールあたり10パックを投げ入れるだけです。
おすすめの水稲初中期一発剤
ホクト粒剤 (粒剤)
成分 ピラゾフルフロンエチル0.070%
ピラゾスルフロンエチルは、スルホニルウレア系化合物(SU)系の除草剤、通称SU一発処理剤の一つです。田植え後5日後を目安に、水田に撒くだけで、幅広い効果を発揮し、ノビエ、クサネム、アゼナ、カヤツリグサをはじめ、水田一年生雑草及び主要な多年生雑草に優れた効果を発揮し、更にアオミドロや表層はく離にも防止の効果が期待できます。
イネキングジャンボ・イネキングフロアブル
有効成分 ピラクロニル4.0%、ピラゾレート20.0%、ベンゾビシクロン4.0%
3成分3製剤をそろえた非SU系の一発除草剤で、広い殺草スペクトラムを有し、SU剤抵抗性雑草にも高い効果を発揮します。畦畔からの侵入雑草にも高い効果を発揮します。水稲への薬害が少ないので、移植後1日から使用が可能です。ジャンボ剤・フロアブル剤・錠剤もあります
ジャンダルムMX豆つぶ250(豆つぶ剤)
有効成分 ピリフタリド:7.2%、メソトリオン3.6%、ピリミスルファン:2.0%
3成分を有効成分とする水稲用除草剤で、ノビエはもちろん、SU抵抗性の各種雑草や多年生雑草まで幅広い草種に高い効果を発揮します。移植後3日~ノビエ3.5葉期まで使えます。袋のまま、ひしゃくで散布するのに加え、動力散布機や無人航空機(ドローン)での散布も可能です。オモダカ、クログワイ、シズイ、コウキヤガラは発生期間が長く、これだけでは防除できないため、これらの雑草が発生する場合は、体系的に後期剤の使用が必要です。
除草剤の剤型について
水稲の除草剤には、粒剤・ジャンボ剤・豆つぶ剤・フロアブル剤などの多くの剤型があります。剤型で効果に違いはありませんが、特性に合わせた使い方をしないと本来の効果を発揮できません。自分の田んぼの環境にあった剤型を選ぶために、剤型の特徴を説明します。
粒剤
粒剤は、手間がかかるが、棚田や・場所によって雑草の生え方に違いがある、水持ちの悪い田んぼにおすすめの剤型です。
粒剤は、昔からある剤型で薬剤は地面に定着してから処理層が広がり、水中であまり移動しません。そのため均一に聞かせるためには散粒機で、田んぼ全体に満遍なく散布する手間がかかります。
ただしその特性のため、散布後の雨で有効成分が流亡することもすくなく、棚田などでは薬剤が上から下に流されることもないため、効果にむらがでることもありません。また薬剤も自分で調整できるので雑草の多い場所に多めになどの調整も可能です。
ジャンボ剤
ジャンボ剤は、畔から田んぼに投げるだけで、水溶性フィルムが溶けて成分が拡散。ゴミも少なく散布量の計算が楽な状型です。
ジャンボ剤は、粒剤や豆つぶ剤を水溶性フィルムで包んだパック上になっています。1パック25g~50gで、10a当たり10~20個投げ込むだけで水面に広がります。大きさの違う田んぼがいくつかあっても計算もしやすく、水で溶けるフィルムなのでゴミも出ないのが魅力です。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
豆つぶ剤
豆つぶ剤は、粒剤でアゼからひしゃくや手などで、直接散布するだけで、水面に浮かんで拡散。大きな田んぼでも簡単に遠くまでで飛ばせます。
豆つぶ剤と、ジャンボ剤と同様に、あぜ際から、ひしゃくなどを使って、水面にまくだけで水面を移動して拡散する便利な剤型です。計量する手間はかかりますが、大きな田んぼなどではジャンボ剤を田んぼの真ん中まで、投げ込めないため田んぼに入る必要があります。その点、豆つぶはひしゃくでまけば10m程度まで飛ぶため、1haほどの田んぼならアゼ際からの散布で中央まで薬液が届くでしょう。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
フロアブル剤
フロアブル剤は、粘着のある液体で希釈せずにアゼ際から散布する、水口からの流し込みも可能な剤型です。
フロアブル剤は、散布後一度沈殿した後に水に溶けだして、広がり数日間かけて沈殿します。幅30mほどの畑であれば、アゼから散布するだけで全体に広がります。また水口から流し込みも可能なので、用水が豊富であれば簡単に散布が完了します。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
効果的な散布のためのポイント
除草剤の効果を最大限まで広げるには、散布の方法にもいくつか気をつけたいポイントがあります。これらのポイントを抑えることで、より効果的に雑草を防除することができます。
- 丁寧な耕起・代かきを行って、凸凹をなくし平坦な田んぼにすること
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
- 水稲をしっかり植え付ける。代かき不足による浮き苗や浅植えは、稲に薬害が生じる可能性があります
- 水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。ジャンボ剤や豆つぶ剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください
除草剤の体系処理とは
田んぼには毎年同じ時期に、同じ雑草が生えてきませんか。除草剤をつかっているのに、全然効果がないと思っている人には、事前にしっかり雑草の生える時期・種類を見極めて除草剤を体系的に使ってみることをおすすめします。
体系処理とは、当初から計画的に、効果のある除草剤を組み合わせて複数の除草剤を使うこと。除草剤は適期に散布しないと効果が半減します。そこで発生する雑草の適期に合わせた、効果のある除草剤を使うことで、省力化・コスト減にもつながります。
例えば、田植の頃に生えるのがヒエだけのような場合は、安価な初期剤を使い、5月下旬から6月にかけて大きくなるコナガイ、スズメノヒエ、マツガイが発芽してくるのでそのころに効果的な中期剤を散布する。初中期一発剤は、効果が長く効くので初期にあまり雑草が大きくならないなら、初中期一発剤を遅めに散布して、さらに効果がなくなる時期に中期剤を散布するなど。それぞれの地域に合った方法があります。
一発剤は便利で長く効果がでますが、田植直後には散布できないものもあります。初期剤や中期剤とうまく組み合わせて体系的に除草剤を散布しましょう。