ヒエは、水田の生える代表的な雑草で、イネの生育に影響を及ぼすだけでなくヒエが多発すると、斑点米カメムシ類も発生し斑点米被害が生じる恐れもあります。
この記事では、ヒエに効果の高い、田んぼで使える除草剤のおすすめの商品や効果的な散布について、わかりやすく説明します。
ヒエ(ノビエ)の特徴
ヒエは、タイヌビエ、ケイヌビエ、イヌビエ、ヒメタイヌビエ、イヌビエ等を総称してノビエと呼ばれ、水田に生える代表的な雑草です。
ヒエは水田、水路内や水田周辺の畦畔などに生えます。ひとたび発生し定着してしまうと、株やほふく稈の除去が大変困難になってしまいます。生育初期にしっかり駆除することが大切です。
生長初期は、イネと見た目が似ています。イネには節の部分に「葉耳」と呼ばれる毛が生えています。またその節に葉舌と呼ばれる、突起があります。迷った時には、この葉耳と葉舌がないものがヒエと憶えておきましょう。
ノビエの葉期の数え方
田んぼ(水稲)の除草剤には、移植後〇日もしくは、収穫前〇日などの記載と同時に、ノビエ〇葉期までと、除草剤の使える期間が、初めの日から終わりの日まで記載されています。この時期にキチンと散布することで除草剤は効果を発揮します。
この除草剤に書かれているノビエの葉期について、きちんと理解しておきましょう。ノビエの葉期とは、田んぼに生えている中でも一番大きく育ったノビエの葉数です。ノビエの平均の葉数ではないことに注意しましょう。期間内の始めと終わりの期間ギリギリより真ん中ぐらいに余裕をもって散布します。
ノビエは、水稲と異なり、鞘葉の次にすぐ本葉が抽出します。これを1葉として数えます。0.5葉は成長が止まった時の葉の大きさを1としたときに、伸長中の葉の長さが、半分ほどになった時の頃を指します。
田んぼのヒエにおすすめの除草剤
ヒエには、生長すればするほど除草が難しくなります。3葉期までにきっちり抑えるのがポイント。初期剤や一発剤で早期に対応しましょう。
初期剤
問題になる雑草が、ヒエだけであれば、有効成分が1つの初期剤でも効果を発揮します。田植と同時に初期剤を散布します。初期剤は効果が15日~20日ほどと短いため、そのころに生える雑草がある場合は中期剤や一発剤を使って体系処理する必要があります。
ソルネット(粒剤)
有効成分 プレチラクロール 4.0%
ソルネットは、植代時から移植前7日まで、または移植時、移植直後からノビエ1葉期(ただし,移植後30日までに使用する)まで効果のある初期剤です。植代から移植まで6日以上の水田やアゼナ類,ホタルイの多発する水田において、一発処理剤・中期剤との体系処理剤として高い除草効果を示します。
エリジャンジャンボ(ジャンボ剤)
有効成分 プレチラクロール:15.0%
有効成分のプレチラクロールは、非ホルモン型吸収移行性の除草剤であり、雑草に対して主に幼芽部の
伸長を抑えて、成長を阻害して枯死させます。ノビエをはじめ抵抗性雑草のアゼナ類・ホタルイ等に高い効果を発揮します。雑草の発生前から生育初期に有効なので、ノビエの1葉期までに時期を失しないように散布してください。抵抗性雑草が多発している場合には、一発剤、中期剤を体系的に使って除草する必要があります。
一発剤
一発処理剤は、初期剤より残存期間が30日~50日ほどと長く広範囲の雑草に効果があります。そのため1度の散布で初期剤と中期剤の両方の効果が期待できるため、省力化できる便利な除草剤です。一発剤には、移植後すぐにつかえるものと、数日たってから使うものがありますのでヒエの発生時期に合わせて使いましょう。
ホクト粒剤
成分 ピラゾフルフロンエチル0.070%、シハロホップブチル:0.60%、ジメタメトリン:0.20%、プレチラクロール:1.5%
ピラゾスルフロンエチルは、スルホニルウレア系化合物(SU)系の除草剤、通称SU一発処理剤の一つです。田植え後5日後を目安に、水田に撒くだけで、幅広い効果を発揮し、ノビエ、クサネム、アゼナ、カヤツリグサをはじめ、水田一年生雑草及び主要な多年生雑草に優れた効果を発揮し、更にアオミドロや表層はく離にも防止の効果が期待できます。
ジャンダルムMX豆つぶ250
有効成分 ピリフタリド:7.2%、メソトリオン3.6%、ピリミスルファン:2.0%
3成分を有効成分とする水稲用除草剤で、ノビエはもちろん、SU抵抗性の各種雑草や多年生雑草まで幅広い草種に高い効果を発揮します。移植後3日~ノビエ3.5葉期まで使えます。袋のまま、ひしゃくで散布するのに加え、動力散布機や無人航空機(ドローン)での散布も可能です。オモダカ、クログワイ、シズイ、コウキヤガラは発生期間が長く、これだけでは防除できないため、これらの雑草が発生する場合は、体系的に後期剤の使用が必要です。
中・後期剤
初期剤や一発剤などをつかっても、防除できなかったヒエには、中・後期剤で直接生長したヒエに散布すして除草しましょう。
ヒエクリーンバサグラン粒剤
ヒエクリーンバサグラン粒剤は、ノビエに対し優れた効果を示すヒエクリーンと、ノビエ以外の一年生広葉雑草や多年生雑草、オモダカ等の難防除雑草までの水田雑草に優れた効果を示すバサグランをひとつにした水稲用中・後期除草剤でヒエ剤の代表格です。ノビエ4葉期まで散布が可能です。
ヒエ以外にもSU(スルホニル尿素)剤に抵抗性を示す一年生広葉雑草(アゼナ、ミゾハコベ等)、コナギ、ホタルイ等に対しても高い除草効果を発揮します。また、多年生難防除雑草でSU抵抗性が確認されているオモダカに対しても優れた効果を示します。
トドメMF
トドメMFはヒエ専用の除草剤で、水稲用の後期除草剤です。移植水稲は、粒剤5葉期まで乳剤であれば7葉期までの高齢ノビエに散布が可能な薬剤です。
有効成分のメタミホップは、除草効果の発現が早く、残効性(2週間程度の土壌処理効果)にも優れている薬剤です。広葉雑草には効果がないので、広葉雑草がある場合には、他の薬剤と組み合わせて使う必要があります。
効果的な除草剤の使い方
除草剤の効果を最大限まで広げるには、散布の方法にもいくつか気をつけたいポイントがあります。これらのポイントを抑えることで、より効果的に雑草を防除することができます。初期剤や一発剤の効果的な使い方を説明します。
- 丁寧な耕起・代かきを行って、凸凹をなくし平坦な田んぼにすること
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
- 水稲をしっかり植え付ける。代かき不足による浮き苗や浅植えは、稲に薬害が生じる可能性があります
- 水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。ジャンボ剤や豆つぶ剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください