除草剤を効果的に使うためには、必要な時期に、その時期に合った除草剤を使うことが大切です。この記事では、水稲におすすめの中期・中後期除草剤について、その成分や効果、効果的な散布方法についてわかりやすく説明します。
水稲の中期・中後期除草剤の散布時期
水稲の除草剤は、その散布する時期と効果により「初期剤」「中期剤」「後期剤」「一発処理剤」に区分されます。それぞれの除草剤に使用適期があり、この適期を外すと除草の効果が十分発揮できません。必ずその適期にあった除草剤を使いましょう。
中期除草剤は、初期剤を散布した後、その後に生える後発雑草に対してノビエが3~4葉期になるまでに使用する除草剤です。一発剤などより後に散布するため、発生期間の長い雑草にも効果が続きます。
中後期剤は、初中期一発剤の後その後に生える後発雑草にも使えます。
おすすめの中期・中後期水稲除草剤
ハイカット1キロ粒剤(粒剤)
有効成分 シハロホップブチル1.8%、ジメタメトリン1.0%、、ハロスルフロンメチル0.9%、ベンゾビシクロン2.0%
ハイカットは、初期剤を使った後、移植後15日からノビエ3.5葉期までに散布できる、一発剤の代わりに使うの中期剤です。一発剤の後にも中後期剤としてつかうこともできます。最大の特徴は大きくなってしまったクログワイ、シズイ、オモダカ、ノビエといった、防除が難しい難防除の雑草にしっかり、長く効く点です。
ゲパードジャンボ(ジャンボ剤)
有効成分 ダイムロン 25.0%,ピラクロニル 5.0%,ベンゾビシクロン 5.0% ,メタゾスルフロン 3.0%
ゲパードは、4つの除草成分を合理的に配合して、ミズアオイ、クサネム、コナギ、イボクサなどの主要雑草の他、ホタルイ、ノビエ、クログワイ、オモダカなどにも高い効果が期待できます。除草成分「アルテアを配合しており、アルテアは多年生雑草に強く、地上部だけでなく塊茎も減らすことが可能なです。投げ込むだけで簡単なジャンボ剤の他、粒剤やドローン散布に最適なエアー粒剤もあります。
アトトリ豆つぶ250(豆つぶ剤)
有効成分 ピリミスルファン 3.0%
アトトリは、有効成分1成分で、初期剤や一発剤が取りこぼした後の、後発生雑草防除に有効な中期除草剤です。散布期間は移植後14日~収穫45日前まで、ノビエ4葉期までに散布します。10a当り250gと軽量で、ひしゃくなどでの散布の他、無人航空機でも散布可能です。5葉期未満の稲に対しては、薬害を生じる恐れがあります。使用は避けてください。
クリンチャーEW
有効成分 シハロホップブチル30%
クリンチャーEWは、発芽後から5葉期又は6葉期まで使える茎葉処理剤で、大きくなってしまったノビエに茎葉処理することにより、速やかに雑草体内に吸収されます。アゼガヤ、キシュウスズメノヒエにも有効です。クリンチャーには他に粒剤、ジャンボ剤、液剤があります。
除草剤の剤型について
水稲の除草剤には、粒剤・ジャンボ剤・豆つぶ剤・フロアブル剤などの多くの剤型があります。剤型で効果に違いはありませんが、特性に合わせた使い方をしないと本来の効果を発揮できません。自分の田んぼの環境にあった剤型を選ぶために、剤型の特徴を説明します。
粒剤
粒剤は、手間がかかるが、棚田や・場所によって雑草の生え方に違いがある、水持ちの悪い田んぼにおすすめの剤型です。
粒剤は、昔からある剤型で薬剤は地面に定着してから処理層が広がり、水中であまり移動しません。そのため均一に聞かせるためには散粒機で、田んぼ全体に満遍なく散布する手間がかかります。
ただしその特性のため、散布後の雨で有効成分が流亡することもすくなく、棚田などでは薬剤が上から下に流されることもないため、効果にむらがでることもありません。また薬剤も自分で調整できるので雑草の多い場所に多めになどの調整も可能です。
ジャンボ剤
ジャンボ剤は、畔から田んぼに投げるだけで、水溶性フィルムが溶けて成分が拡散。ゴミも少なく散布量の計算が楽な状型です。
ジャンボ剤は、粒剤や豆つぶ剤を水溶性フィルムで包んだパック上になっています。1パック25g~50gで、10a当たり10~20個投げ込むだけで水面に広がります。大きさの違う田んぼがいくつかあっても計算もしやすく、水で溶けるフィルムなのでゴミも出ないのが魅力です。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
豆つぶ剤
豆つぶ剤は、粒剤でアゼからひしゃくや手などで、直接散布するだけで、水面に浮かんで拡散。大きな田んぼでも簡単に遠くまでで飛ばせます。
豆つぶ剤と、ジャンボ剤と同様に、あぜ際から、ひしゃくなどを使って、水面にまくだけで水面を移動して拡散する便利な剤型です。計量する手間はかかりますが、大きな田んぼなどではジャンボ剤を田んぼの真ん中まで、投げ込めないため田んぼに入る必要があります。その点、豆つぶはひしゃくでまけば10m程度まで飛ぶため、1haほどの田んぼならアゼ際からの散布で中央まで薬液が届くでしょう。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
フロアブル剤
フロアブル剤は、粘着のある液体で希釈せずにアゼ際から散布する、水口からの流し込みも可能な剤型です。
フロアブル剤は、散布後一度沈殿した後に水に溶けだして、広がり数日間かけて沈殿します。幅30mほどの畑であれば、アゼから散布するだけで全体に広がります。また水口から流し込みも可能なので、用水が豊富であれば簡単に散布が完了します。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
効果的な散布のためのポイント
除草剤の効果を最大限まで広げるには、散布の方法にもいくつか気をつけたいポイントがあります。これらのポイントを抑えることで、より効果的に雑草を防除することができます。
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
- 水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。ジャンボ剤や豆つぶ剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください
- 中期剤は、初期剤もしくは、一発処理剤との体系処理が欠かせません。地域の雑草の生える時期や、雑草の種類によってそれぞれに合った除草剤をうまく使いましょう。
除草剤の体系処理とは
田んぼには毎年同じ時期に、同じ雑草が生えてきませんか。除草剤をつかっているのに、全然効果がないと思っている人には、事前にしっかり雑草の生える時期・種類を見極めて除草剤を体系的に使ってみることをおすすめします。
体系処理とは、当初から計画的に、効果のある除草剤を組み合わせて複数の除草剤を使うこと。除草剤は適期に散布しないと効果が半減します。そこで発生する雑草の適期に合わせた、効果のある除草剤を使うことで、省力化・コスト減にもつながります。
初期剤の効果はおおよそ15日~20日しかないため、その後に発芽した雑草には効果がありません。中期剤をつかって体系的に防除する必要があります。
一発剤は便利で長く効果がでますが、コストも高めで、田植直後には散布できないものもあります。初期剤+中期剤を使った方がうまく防除できる場合もあります。散布の時期と雑草の発芽時期を見極めて、どちらが良いか見極めて使いましょう。